IR(インベスター・リレーションズ)のやりがいって何ですか?
6月18日、ZUU Onlineでまたウエビナーをやりました!最近noteに告知が多いので、報告にしてみました。ライブで観たかったという方、ごめんなさい。今回は、古巣楽天の現役IRシニアマネージャーの大野さんと一緒に出ました。いつもよく話していてよく知っているので、逆にテーマを絞りづらかった。そんな中でも、コロナ禍でのIR、楽天のIRの変遷、ESGなどをテーマに、質問もたくさんお受けしました。
(アーカイブはこちら)
【経営/IRch】楽天編/急成長企業のIR戦略と実務 ー共感を生む対話ー【ウェビナー】
その質問のひとつが、この記事のタイトルの、「IRのやりがいって何ですか?」というものです。私の答えはこんな感じ。
「IRって楽しい!と思うのは、IRの会話そのものが知的バトルのような時。会話をしながら、相手(投資家)の頭の中にあるスプレッドシート(価値計算用)を動かしていくことが面白い。それで相手が価値を感じてくれて、株を買ってくれるとうれしい。さらに、それが積み重なって、公募増資で資金調達ができて、会社のためになるのであれば、それはとてもやりがいを感じる」というように答えました。(使った表現は微妙に違いますことご容赦ください)
IRってつまらない、という声もよく聞きます。事業の方が断然面白いし、相手が代わっても同じことばっかり言ってて退屈だと。
事業の方が面白いかもしれません。でも、同じことばかり言ってるわけでもないです。相手に合わせて表現を変える必要があります。なぜなら、投資家の投資スタイルや考え方も千差万別だからです。投資・運用の意思決定者の個性に負うところもありますが、機関投資家なら資金提供者のタイプによって投資方針は大きく変わります。それに合わせて会話をしていくことは本当に面白いと思ってます。
うれしかったケースをいくつか挙げます。
① 初めてコンタクトした海外の機関投資家との電話会議の終わりに、「今の君の話が面白かったから、このテレカンの最中に君の会社の株を買ったよ」と言われたとき。流暢ではなかった英語で、顔も見たことない人に60分、電話で一生懸命話した甲斐があったと思いました。
② 他社ではアクティビスト的な活動もやっていた米国の投資家。株価ではなく、会社のフェアバリュー(公正価値)についてどう思うか質問されて、私の思う理論株価を答えたところ、感心されました。(教科書的には上場会社は自分の会社の価値について答えてはいけないと上場時に指導されますが、そうしなかったわけです。)その後、役員との面談を経て、株を買ってくれました。アクティビスト的な活動は一切なし。毎回普通に有用なディスカッションをするよい株主でした。
③ 長期的な関係が築けると期待して、重点的に通った欧州の投資家。IR担当者、CFOとで7年ほど粘り強くコミュニケーションを続け、少しだけ購入してくれました。その数か月後、社長とのミーティングを経て一気に大量購入。資金調達時に重なって、会社に貢献できた瞬間でした。その後株価が下がった時にも、「あの時社長が説明してくれた方向性に変化はないから、信頼している。いい会社に投資させてくれてありがとう。」と言われたこと。いえいえ、ありがとうはこちらのセリフです。
④ 長年の大株主であった英国の投資家。日本株の責任者とはずっとやりとりしていました。当然その方のカウンターパートは社長やCFOなのですが、私はずっと彼らが話をしやすいように心を砕いてきました。業績説明などトップでなくてもいい説明は私から行い、経営戦略などの大きなテーマについては、できるだけ双方の上のクラスが直接対話できるようにアレンジしていました。日本に来たときも、英国を訪れた時も、他の投資家より長めに時間を取ったり、10年くらいはやりとりしていました。
私が療養のため会社を去った半年ほど後、その日本株責任者の方が定年で退任することになりました。日本でも退任を祝うパーティがあったのですが、その時無職だった私をパーティに招いてくれました。日本でも著名なストラテジストなどの市場関係者、企業の経営者、IR責任者などが出席する豪華なパーティでした。すでに会社の顔ではなくなっていた私を、古い友人として扱ってくださったことをとても嬉しく感じたのでした。
国内の機関投資家では、上に挙げたドラマチックさはないものの、今でも定期的にコンタクトしてくださる方が何人もいらっしゃいます。最近の市場の関心の変化などを私に教えてくれます。時には個人的な相談もします。評価され、投資される側であったものの、今や同士のような関係に変質しています。一度株主になれば、株価の上下で嬉しさも辛さも分かちあえるからでしょうか、同じ会社で働いていた人以上に思い出を共有しているような気がします。
結論。IR(インベスター・リレーションズ)のやりがいはとても大きい。