SpaceXから考える先行者優位🚀
米国時間2020年8月2日(日本時間8月3日)、米国SpaceX(スペースX)社の有人宇宙船Crew Dragon(クルードラゴン)がメキシコ湾に着水しました。5月にケネディ宇宙センター39Aより国際宇宙ステーションに打ち上げられた民間初の有人宇宙船が無事に地球に帰還したというわけです。アメリカの地から9年ぶりに打ち上げられた有人宇宙船のミッションが成功した瞬間です。
↑ 宇宙船がパラシュートにて着水する様子(2020年8月)
↑ 打ち上げの様子(2020年5月)
NASAは、スペースシャトルの退役以降、民間の宇宙開発会社を有人飛行の選びました。その会社は、SpaceX社とBoeing社です。昨年、それぞれが有人飛行の宇宙船を用い、無人飛行のテストを行いました。ここまでは2社ともに足並みが揃っていました。SpaceX社は3月に、そしてBoeing社は12月に実施。しかし、ここからそれぞれの道が分かれます。SpaceX社は国際宇宙ステーションに到着し、そして地球に無事に帰還しました。一方、Boeing社は不具合により国際宇宙ステーションに到達しませんでした。
成功したSpaceX社は、次のステップ、つまり「人を宇宙船に乗せて国際宇宙ステーションに打ち上げる」ことに進みます。一方のBoeing社は、不具合をすべて解消し、無人飛行を再び行うという流れです。そして、2020年5月にSpaceX社の打ち上げが行われ、8月に無事に帰還しました。一方のBoeing社は、不具合の解消は行われた旨発表したものの、まだ現段階において、無人飛行の再打ち上げには至っていません。
両社の状況整理すると次のようになります。(2020年8月6日現在)
・SpaceX社 → 有人飛行の打ち上げ及び帰還に成功
・Boeing社 → 2回目の無人飛行を今後行う予定
このように2社の差は大きく広がりました。この結果は、もちろん世の中の評価にもつながるでしょう。
🚀SpaceX社の有人飛行の打ち上げが行われた時や宇宙船が帰還した時、ニュースで取り上げられた。歴史的快挙なので多くのメディアが取り上げる。もちろん日本でも大々的に紹介された。
→知名度アップ、企業の信頼度アップ。
🚀次から次へとビジネスの話が進む。
→「有人飛行ならSpaceX」という認識が世界中に広まる。「人を運ぶ実績のある会社」ということで、衛星の打ち上げにおいても信頼度向上。他社より優位に。
🚀スペースシャトル最後の打ち上げの時に国際宇宙ステーションに置かれた記念の星条旗🇺🇸がSpaceX社に贈られる。
→ アメリカの歴史を変えた同社に贈呈された。歴史に残るのはNo.1。
このように一位を取ると、二位以下では得られないメリットをたくさん手にすることができます。そのメリットは、「お金を払えば奪い取れる」というようなものではありません。例えば、「歴史に名を残す」は、努力でしか得られないものです。
Crew Dragonの打ち上げは、今回で終わりというわけではありません。5月に打ち上げが成功すると、帰還を待たずして、実運用の打ち上げに関する情報が次々と流れていました。実運用第一号であるCrew-1は、今回の打ち上げ前にすでに日本人宇宙飛行士の乗船が決まっていましたが、その詳細はこの2ヶ月の間にアップデートされました。また、Crew Dragoが帰還する少し前に、Crew-2に日本人宇宙飛行士が搭乗することも発表されています。日本でも大きなニュースになりましたね。さらに、米国では宇宙での映画撮影の話も進んでいるようです。
このように、打ち上げに成功したSpaceX社は、歴史に名を残し、注目を集め、今後のビジネスの話がどんどん進んでいます。もちろん信頼も得ました。このように一位を取るということは、二位には得られない「メリット」を多く手に入れることができるとうわけです。先行者優位とは、企業にとってとても価値のあることと考えることができますね。