令和の悩めるリーダーへ贈る『部下のほめ型』 前編
30年近いサラリーマン人生で、記憶から消えないシーンがある。
10数年前、あるプロジェクトの主担当として私がチームを率い、競合コンペに勝利した。
初めて、億単位の案件を自身が主導し獲得した。しかも業界最大手の競合に会心の勝利!
心の底から、歓喜した。
その勝利を祝う会。直属の上司のスピーチ。
私はポーカーフェイスを装いつつも、内心では、もの凄くドキドキしていた。。
同僚や後輩の前で、自分は一体どれだけほめられるのだろうか、と。
秘かに答辞のコメントまで考えるほどに。鼓動が高まる。手に持つグラスが波打つ。
ところが、上司の口から出た第一声は、あまりにも予想とかけ離れた言葉だった。
「みんな、我々は本当にツイてる!
いま、我が社には神風が吹いている!!」
そのスピーチの中で、私の名前が呼ばれることはなかった。
来る日も来る日も深夜残業を重ね、何度も心が折れた。最後はボロボロだったが、やるべき重責を果たし、もぎ取った勝利。
そんな私の必死の努力は、どうやら上司には全く伝わっていなかった。。
いや、彼に見えてはいたが、評価されなかっただけなのか?
それとも、個人の賞賛はあえて避け、チーム全員を鼓舞しようと意図したのか?
今でも当時の彼の真意は分からない。
ただ、とても惨めな気分になったことだけを強く憶えている。
そして、もうひとつ。心に誓った。
「自分は、周囲を惜しみなく、いつでもほめてあげられるリーダーに、絶対なってみせる」
◾️「ほめ」に飢えるニッポン
このnoteを読んでくれているあなたは、もしかしたら誰かの「上司」かもしれない。
そんなあなたに聞きます。
「毎日、必ず、部下をほめていますか?」
迷うことなく「YES」と答えられる方は、どうぞ他のnoteをご覧下さい。
でも大半の方は、確実に「NO」でしょう。
「部下をほめない日なんて、ザラにある」
「面談とか改まった場でしか、ほめない」
「社内表彰とか特別な会でしか、ほめない」
つまり、ほめない日の方が圧倒的に多い。
そんな感じでは?
私が職場でいつもイラッとする場面があります。
〝え?ここほめるトコじゃないの!?〟
〝なぜこの人は、ほめ言葉の一つもないの!?〟
ほめないだけならまだマシで…まさかの自分アピールしちゃう上司もいたっけ…上司だってほめられたいのかな。まぁその気持ちも分からんではないが。。
『日本人は、他人をほめるのが下手』
外国人に言われるまでもなく、これは自他共に認める日本人の国民性でしょう。。
つまり…ほめるのが下手だから、ほめることができない(少ない)
職場だけじゃないです。子育て、学校教育、スポーツ、武道、芸能の世界。。残念ながら日本のあちこちで、誰しもが「ほめ」に飢えている。
SNSの隆盛を見ても明らかでしょう。
みんな「いいね=承認」されたくて仕方ない。
リアルな世界では無理でも、SNSなら簡単に承認して貰える。だからネットの世界に入り浸る。
その結果、リアル(対面)でのコミュニケーションが減り、ますます「ほめられる」機会は無くなる。
こうして〝ほめてもらえない〟負のスパイラルは、悪化の一途を辿る。
◾️「ほめ」の凄まじいメリット
言うまでもなく、上司が部下を「ほめる」ことは、良いこと尽くめです。
・部下のモチベーションがUPする
・仕事への意識や、行動までもが変わる
・チームや職場の空気、雰囲気も良くなる
・部下の上司に対する信頼、忠誠が増す
などなど。
〝ほめられるのが嫌〟な人なんて、いません。口ではそう言う人が稀にいますが、本心は別。誰しも自分のことが一番好きな訳で。
『マズローの欲求5段階説』からも推察できます。
上司が部下を「ほめる」という行為は、5段階のうち、上位の3・4・5を満たし得る。
なぜなら部下にとって「ほめられる」とは
・上司(職場の所属長)からの愛情であり
・自身が認められた結果(承認)であり
・成長(自己実現)意欲が刺激される
それらを与えてくれる最上のご褒美だから。
人の根源的な欲求を満たしてくれるから。
そして「ほめ」のもう一つのメリット。
それはなんと言っても〝コストゼロ〟
当たり前ですが、考えてみて下さい。
どんな報酬にも、物理的制約がある。人事評価の査定にせよ、給与の増額にせよ。つける側はいつも、雀の涙ほどの差配をするのに四苦八苦している。
こうした物理的な報酬に対して、「ほめ」はいわば精神的な報酬。だから、上限がない。
部下へ絶大なプラス効果を生む「ほめ」という報酬は、無限に生み出せる。
ほめることに熟達した上司であれば、ですけどね。
◾️ほめられないのは「型」を知らないから
ここまで読んでくれたあなたは「ほめ」の効果や可能性を感じてくれたはず。
でも他方で、こんな本音も残るのでは?
「とはいえ、部下を毎日ほめるのは無理」
「そもそも、そんなにほめる所がない」
いえいえ大丈夫。必ずできますよ。
あなたが「毎日ほめられない」原因は、ほめのバリエーションが少ないからです。
「ほめ方」には決まったパターンがある。あなたはそれを知らないか、知っているのに使っていないだけ。
「ほめ方」のパターン=『ほめ型』
それを知り、使えるようになれば、あなたの「ほめ力」は格段に進化する。
いよいよ、ここからが本題。このnoteでは、効果がありスグに使える『ほめ型』の厳選30パターンをご紹介していきます。
◾️「ほめ」の心構え
本題の『ほめ型30』をご紹介する前に、注意点として「ほめる際の心構え」について触れます。
焦らしてしまってゴメンなさい。でもコレ、とても大事。なぜなら、心構えなき「ほめ」は、時にマイナスに作用してしまうから。
特に令和の現代。良かれと思って発した言葉がセクハラやパワハラなどのハラスメントに捉えられてしまうケースも少なくない。
そんな悲しい事故を起こさないためにも、最低限の『ほめの心構え』を持っておくことが大切です。
まず、1のスタンスに立って下さい。〝必ずほめ所がある〟という意識で、部下を観察することが重要です。
人は意識(=アンテナ)を張ることで、それまで見えなかった部分に気付くことができます。
2は、意外と要注意です。特に令和の現代。安易なほめが、思わぬ事故に繋がるリスクも。
見える部分、例えば女性の容姿に関する言及は基本的に避けましょう。
「スタイルが良いね」「脚が長いね」「今日のメイク、いつもと違うね」
悪気はなくとも、これらは全てセクハラと捉えられる可能性が高い。男性はついやってしまいがちですが。
かつて、あのオバマ元大統領ですら「彼女は美人だ」という発言でバッシングを浴びました。容姿や見た目には触れない方が無難です。
それよりも、その人の性格や態度などの内面をほめることです。そうすれば事故が起こるリスクは格段に下がります。
部下からすれば、内面をほめてくれる=自分のことを深く理解してくれていると感じます。だから自尊心が満たされ、素直に受け入れられる。
とはいえ、内面をほめたとしても、適当なことを言って相手が不快になれば、それもハラスメントになってしまう。
だから、3が重要なんです。当たり前ですが、あなたが本当に思ったことを、心を込めて、丁寧に伝えきる。
笑顔も必須。言葉より表情の方が先に伝わります。渋い顔でほめても効果は半減。笑顔に不慣れな人は、ぎこちない作り笑顔でも全然OK。さらに相手と視線を合わせる。目を見てくれない相手には不信感が生じます。
嘘のほめは、相手にも分かります。おざなりなほめは、逆に不快です。そういう行為は、完全なる逆効果。そして「お世辞」や「ご機嫌取り」と部下に感じられてしまうと、あなたのほめ言葉は二度と効かなくなる。だから、ほめる時は本心で。これは絶対に守って下さい。
◾️「ほめ型」厳選30パターン
さぁ、お待たせしました!前項の心構えを前提に、いよいよ具体的な30個の「ほめ型」をご紹介していきます。
数も多いので分類しますね。分ける切り口(軸)は『3W1H』
どこを(What)/いつ(When)/どこで(Where)/どのように(How)
「ほめる」を分解して定義するならば『観察+発見+言語化+伝達』というステップです。
多彩なほめ言葉を生み出し続けるためには、その時々で、どのステップに注力するかが重要。それは相手によっても、シチュエーションによっても異なる。
そこで頼りになるのが、先に挙げた4つの軸。〝どこに軸足を置いてほめるか?〟を意識しながら実践することで、あなたの語彙は増え、精度も上がっていきます。
それでは、4つの切り口(軸)で分類した「ほめ型」ベスト30!いざ参りましょう!!
What 〝どこを〟ほめるか?
部下の〝どこを〟ほめればよいのか?「毎日ほめる所なんて見つからない」そんな時は、部下を〝ひとりの人間〟として眺めてみる。
以降でご紹介する「型」を意識しながら、部下の日常を観察してみましょう。
【型1】 人柄や人間性をほめる
まずはこれでしょう。そのために部下の「本質」を見極め、理解する。あなたの部下はどんな人ですか?どんな魅力がありますか?
もしあなたが、部下本人も気付いていない魅力をほめることができたら、間違いなく部下のハートを射止めることでしょう。
(例)
「いつも太陽のように明るい君の笑顔が、チームの雰囲気を明るくしてくれる」
「君のような縁の下の力持ちがいてくれるから、皆が自分の仕事に専念できる」
【型2】 発言をほめる
部下の成長は、ときに発言に現れます。だから一言一句を聞き逃さず、根こそぎ拾ってあげて下さい。コメントだけでなく、その背景にある視点や考え方も。ほめ所を見つけ出せるか否か?は、あなたの力量にかかってます。
(例)
「昨日の会議、君の一言で議論が深まった。視点が秀逸だったよ」
「あそこで矛盾に気付いて、即座に質問できたのは素晴らしいね」
【型3】 ちょっとした行いをほめる
普通なら見逃してしまうような、部下のちょっとした何気ない行いこそ、ほめて下さい。「あれを見ててくれたんだ」という驚きが、部下の感動を増幅します。
(例)
「シュレッダーのゴミ、いつも変えてくれて、みんな助かってます」
「こないだ会食したお店のチョイス、センス最高だったね」
【型4】 結果よりも過程をほめる
成功という結果は、時の運。それよりも途中過程をほめて下さい。運なんかに左右されない、努力や頑張りには、確実に「ほめ所」がある。そこをちゃんと見れているか?あなたの普段からの観察力が問われます。
(例)
「この3ヶ月、1日も休むことなく頑張ってくれた。本当にありがとう」
「営業の外回りを半年間コツコツと、地道にこなしてくれた成果だよ」
【型5】 成果物のプロセスをほめる
部下が作った提案資料や報告資料などの成果物。クオリティに申し分なければほめやすいが、必ずしもそうとは限らない。そんな時は、作成プロセスにおける着眼点や発想、苦労や努力にフォーカスします。
(例)
「この着眼点は気付かなかった。さすがだよ」
「これだけのデータ、この短期間でよく集めたね」
【型6】 成長をほめる
他人と比較するのはご法度ですから、部下本人の「現在」と「過去」を比較して、そこにある確かな「成長」にフォーカスします。
(例)
「前回の失敗を、見事に教訓として生かしたね」
「1年前とは雲泥の差だ。一皮も二皮も剥けたな」
【型7】 オーラ・雰囲気をほめる
どんな人にも、身に纏う独特の空気感ってありますよね。それもれっきとした個性のひとつ。発言や行動が少なめの部下には、それをほめるのもアリ。言われた側は、意外と嬉しいものです。
そして部下がリアルに成長・覚醒した時は、そのみなぎる自信で、更に空気が変化します。その瞬間を見逃さず、ほめに繋げましょう。
(例)
「君には、大物に化けそうなオーラを感じる」
「こないだの成功で雰囲気変わったよね。自信が溢れ出てるよ」
【型8】 ラッキーをほめる
運も実力のうち。起こったラッキーは全部、部下の手柄にしちゃいましょう。「自分はツイてるかも」と素直に思える部下は、伸びます。そのポジティブな感情は、自然と周囲への感謝と行動に繋がるからです。
(例)
「梅雨時の撮影なのに晴れたのは君のお陰かも。ホント晴れ男だね〜」
「君がチームに来てくれてから、競合コンペ3連勝!持ってるよね〜」
When 〝いつ〟ほめるか?
ほめはタイミングが命。その瞬間を逃せば「とってつけた感」がどうしても出てしまう。然るべきタイミングを逃さずほめるためには、入念な準備が必要。以降の「型」を意識して、しっかり備えましょう。
【型9】 朝の挨拶でほめる
部下への挨拶、ちゃんとしてますか?挨拶は先手必勝。必ずあなたから発して下さい。それが「おはよう」の一言だとしたら、とても残念。朝の挨拶こそ、上司にとって最大のチャンス。なぜなら、毎日必ず訪れる「自然に話しかけられる」機会だから。
ここは欲張りましょう。「おはよう」に加え、できれば二言三言プラスすると、部下の心象が確実に変わります。朝からテンションが上がり、その日の職場やチームの空気までも変わります。
(例)
「おはよう!昨日は遅くまでお疲れ様。今朝も早くからありがとう!」
「おはよう!朝からやる気に満ちてるね。今日も1日、頼りにしてるよ」
【型10】 ありふれた日常でほめる
部下のいつもの態度や、いつもやってくれていることをほめて下さい。当たり前のようにやってくれていること、それは当たり前ではありません。全国基準、世界基準でみれば、どれだけ恵まれていることか。その原点に立てれば、部下への感謝の念が自然と生まれてきます。
(例)
「いつもこまめに報告をしてくれて、とても助かってます。ありがとう」
「相手の目を見て頷きながら聞いてくれる。君と話してると気分がいいよ」
【型11】 リアクションでほめる
料理の『さしすせそ』ならぬ、合コンの『さしすせそ』って聞いたことあります?女性が「男性を一言のリアクションで上手に褒める言葉」だとか。
さすが/しらなかった/すごい/センスいい/そうなんだ!
リアクションとしての一言ほめ。単なる相槌(おぉ〜/うん/いいね)よりも気が利いてます。反射的に言うのがコツ。相手の口から思わず出た言葉って、信憑性を感じません?
これこそタイミング命。瞬発力が問われる。瞬時に出せるフレーズを沢山持ちましょう。おススメは「一言ほめ」50音を作ること。あまり使われない新鮮なワードを多用して。私の50音を参考までに。
【型12】 別れ際にほめる
「終わりよければ全てよし」は、職場にも当てはまる。部下にしてみれば、その日の最後にかけられた言葉は、翌日まで悶々と脳裏に残る。部下が〝明日も頑張ろう〟と思ってくれるような言葉で、1日を締め括りましょう。
(例)
「今日は圧巻の活躍だったね。明日も頼むよ!」
「今日もいい仕事したね。家でゆっくり休んで」
【型13】 特別な日にほめる
特別な日に貰った言葉って、記憶に残りますよね?上司たるもの、最低でも部下の誕生日くらいは覚えておきましょう。部下の結婚記念日やお子さんの誕生日まで把握してたら上級者。
「こんなことまで覚えてくれてるなんて…」部下がそう感じてくれたら御の字。特別な日は、気兼ねなくほめられる絶好のチャンスです。
(例)
「誕生日おめでとう。実り多き、手応えのある一年だったんじゃない?」
「お子さんの誕生日だったよな?今日くらい手抜きしていいから帰ろう!」
【型14】 苦しい時こそほめる
部下が仕事で追い込まれている窮地。あるいは失敗して失意のどん底にいる。それは上司のあなたにとっても辛い局面かもしれない。
そんな時こそ、プラスのほめ言葉で部下を奮い立たせる。苦しい時こそポジティブな言葉をかけられるか?上司の真価が問われます。
(例)
「君の実力なら絶対に乗り切れると思う。私も全力でサポートするよ」
「長い目でみれば、これは失敗ではなく貴重な経験。未来に生かそう」
【型15】 成果を上げたら全力でほめる
部下の努力が実り結果を残した。成果を上げた。1年のうちでも、そうそうない機会のはず。だから全身全霊でほめ讃えましょう。大袈裟なくらいで丁度いい。
部下は絶対に期待してます。上司からの賛辞を。部下のハレの日を共に喜び、どれだけ印象深くほめられるか?将来の信頼関係をも左右する重大な分かれ道だと肝に銘じ臨んで下さい。
(例)
「君が努力に努力を重ね掴んだ成功。最後まで諦めず頑張った。君を誇りに思う」
「まさかこれほどの結果を残すとは。感謝。感激。脱帽。君に任せて良かった」
Where 〝どこで〟ほめるか?
1対1でほめるか?みんなの前でほめるか?誰に向けてほめるか?ほめる場所やシチュエーションによって効果も変わってくる。誰しも人前でほめられれば、誇らしい気分にもなる。
ほめの効果を高めるために、どんな「場」でほめればよいか?以降の「型」を意識して、部下の心情を想像してみて下さい。
【型16】 みんなの前でほめる
部下の成果がチームに貢献!そんな時はチーム全員の前で、そしてチーム全員で、ほめ讃えましょう。言葉だけでなく、拍手を忘れずに。チーム全員からの拍手による賞賛は、ほめの効果を何倍にもしてくれます。
(例)
「君の努力がチームに大きな成果と喜びをもたらしてくれた。感動をありがとう(拍手)」
「チームの誰もが、君の苦労を知っています。そして心の底から感謝しています(拍手)」
【型17】 チーム全員をほめる
『ONE for ALL , ALL for ONE』
ひとりの部下が挙げた成果は、チームのサポートあってこそ。成功を陰で支えてくれたメンバー全員を同時にほめるのをお忘れなく。
(例)
「彼を常にサポートしてくれた、君たちの陰のサポートには頭が下がります」
「これはチーム全員で掴み取った勝利。この素晴らしきチームを誇りに思う」
【型18】 ペップトークを備える
フィギュアスケートで競技直前にコーチが選手に言葉をかけるシーン、よく見ますよね?これをペップトークといいます。短い激励のスピーチで、選手のやる気や能力を引き出す。「憧れるのをやめましょう」WBC大谷翔平選手の言葉は秀逸でした。
これを職場にも応用しましょう。プレゼンやイベントの本番直前に、部下を鼓舞できるか?そのペップトークが勝敗を分けるかもしれない。上司たるもの、大一番での言葉を備えておきましょう。
(例)
「どれだけの努力をしてきたか思い返してみて。絶対に負ける気がしないよね」
「やるべき事は全て完璧にやってきた。普通にやれれば問題ない。勝ち切ろう」
【型19】 第三者に向けてほめる
部下のいないところで、当人以外の第三者に向かって、部下をほめる。そのほめ言葉が第三者の口から部下に伝わった時、部下は心底嬉しいはず。上司から直接ほめられるよりも、第三者を経由して聞く方が真実味が増すから。部下と接点があり、善意で伝えてくれそうな第三者を選ぶのがポイント。
(例)
「Aくん、君の同期だよね?彼って、新入社員の時からあんなに優秀だったの?」
「BさんのOJTって君だよね?こんな短期間でどうすればあれほど成長できるの?」
【型20】 取引先の前でほめる
担当している取引先の前で上司が自分をほめてくれたら、誰だってめちゃくちゃ嬉しい。コツは、取引先が知らないような部下の一面や陰の努力を披露して、心から評価してあげること。
(例)
「彼ほど頑張れる部下は、ちょっと記憶にないです。毎日感心させられます」
「この成果は彼の思いです。御社のお役に立ちたいと、いつも言ってますから」
【型21】 上司の上司の前でほめる
上司にとっての上司。つまり部下からすれば、あまり話す機会のない雲の上の存在。その人に向けて、直属の上司が自分をほめてくれたら、部下は飛び上がるほど嬉しいはず。
コツは、部下の頑張りがチームや会社全体にどう貢献しているかを具体的にほめること。
(例)
「彼が来て部署の空気が変わりました。持ち前の明るさと優しさ、貴重な存在です」
「仕事への貪欲な姿勢。彼の背中を見て、若手社員の意識が変わりつつあります」
How 〝どのように〟ほめるか?
さぁいよいよ大詰め。〝どこを・いつ・どこで〟3Wに続き、最後にご紹介する切り口は How〝どのように〟ほめるか?すなわち表現軸の「型」です。
同じ内容の発言であっても、表現(言い方)によって相手の受け入れやすさは簡単に変わります。以降の「型」を意識して、効果を最大化できる表現を身に付けましょう。
【型22】 良い面と悪い面はセットで
どんな物事にも、ポジとネガの両面があります。部下の性格や仕事ぶりも然り。長所の裏返しが短所であることを肝に銘じ、上手く活用しましょう。順番は、強調したい方を後ろに。相手の印象に残ります。短所を改善して欲しいならば「長所をほめ→短所を示唆」で伝えます。
(例)
「いつも丁寧な資料をありがとう。折角だから次は納期を早める工夫をしてみよう」
「毎回、仕事が早くて助かる。だからこそ、このケアレスミスは勿体ないよね」
【型23】 過去の自分と比較してほめる
部下を第三者と比較してほめるのはご法度です。比較された第三者を傷付けかねないから。一方で上司が「過去の自分」と比較してほめるのはアリでしょう。当時の自分と比べて「部下のどこがどう優れているか」を具体的に伝えることで説得力が増します。
(例)
「その仕事ぶり、入社2年目とは思えないな。既に俺の5年目を越えてるかも」
「その歳でプロジェクトを任されるの稀だよ。ちなみに俺は7年かかったからね」
【型24】 第三者の言葉でほめる
「こないだAさんが、君のことほめてたよ」
型19の逆バージョンですね。部下のいない所で誰かが部下をほめてくれたら、必ず部下本人に伝えて喜ばせてあげましょう。メモしておいてここぞという時に伝えるのも有効。最高の材料ですからスルーは厳禁!使い倒しましょう。
(例)
「取引先の部長が君のこと優秀だとほめてた。気付くの遅っ!って突っ込んどいたけど」
「専務が君のプレゼンに感心してた。彼の実力はあんなもんじゃないって言っといたよ」
【型25】 質問・疑問形でほめる
「どうしてそんなに優秀なの?」あえてストレートにほめず、質問や疑問文にすると「本音で言ってる感」が増します。人は訊かれると〝答えなきゃ〟と思い、相手の言葉を理解しようとする。だからほめ言葉も受け入れやすくなる。
しかも上手くいけば双方向の会話が発展し、コミュニケーションが活発になるというメリットも。
(例)
「プレゼン上手くなったね〜。なぜ?一体どんなトレーニングしたの?」
「1年前とはまるで別人だね。成長したなって、自分でも感じない?」
【型26】 ほめをフォローとして使う
部下に指導や注意をすべき局面。そんな時でも言及すべきは失敗・失態という出来事であって、部下の人格や自尊心を貶めるのは避けるべき。
そのためにも、さりげないプラスの言葉を織り交ぜてフォローしましょう。部下が「次は挽回しよう」と前を向けるように。失敗を将来の成長の糧に変えられるように。
(例)
「完全なる注意不足。反省しよう。でもどうした?君らしくないよ」
「どこがダメだったか深く考えてみて。君なら見つけられると信じてる」
【型27】 存在に感謝する
もしその部下がいなかったら、上司のあなたやチームにどんな不便や不都合が生まれるか?想像してみましょう。部下の存在自体に感謝する言葉が自ずと出てくるはずです。
(例)
「君のようなムードメーカーがこのチームにいてくれて、本当に良かった」
「若手がみな、君の活躍に刺激を受けてる。君は、なくてはならない存在だ」
【型28】 未来への期待でほめる
部下の成功や成長、明るい未来を常にイメージすることは大切。親が、我が子にそうするように。人は他者から期待されると成長力が高まる。心理学でいう『ピグマリオン効果』を利用します。
(例)
「10年後、君は必ず我が社のエースになってる」
「君のような面倒見のいい人材は、どんどん上に昇って行くだろうな」
【型29】 偉人の名言を引用する
ここぞという時、有名な経営者やアスリート、歴史上の偉人の言葉などを借りるのもアリでしょう。でも的確に使わないとスベります。シチュエーションに応じて使い分けられるほどのストックを用意しておきましょう。
(例)
「壁は超えられる可能性のある人にしかやってこない。だからこれはチャンスだ」
「船は荷物をたくさん積んでないと不安定でうまく進めない。仕事も同じだよね」
【型30】 ほめながら次の目標を示唆
ほめたついでに、しれっと次なる目標を伝えちゃいましょう。部下はほめられた嬉しさでモチベーションが上がり、受け入れやすくなる。良い意味で部下を乗せてその気にさせ、そのまま自然と目標達成に誘います。
(例)
「今年は最高のパフォーマンスだったね。来年も君に任せたい。宜しく頼むよ」
「君を選んで正解だった。その力を別のプロジェクトでもぜひ発揮して欲しい」
最後までお読みいただき、ありがとうございます。30個も型があるので、人によって「好き/嫌い」「合う/合わない」があるでしょう。まずはご自身が興味を持てる「型」を見つけ、明日からでも試してみて下さい。
※後編へ続く↓↓↓
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?