MCA Meet Up #06「マーケティング職キャリアガイド:ニューノーマル時代に生き残るマーケター」開催レポート
第一線で活躍するマーケターをゲストに招き、パネルディスカッションとネットワーキングを通して「社内ではなかなか解消できない悩み」を解決するきっかけを提供する、MCA Meet Up。2020年7月16日に開催された第6回目のテーマは、「ニューノーマル時代に生き残るマーケター」。ウィズ/アフターコロナ、あるいはニューノーマルなどといったキーワードとともに、コロナ禍以前の環境に元どおりになることはないという前提の上で今後のビジョンを考えていくことも当たり前に感じられるようになった今、働き方やキャリアの積み上げ方についてもニューノーマルな思考のヒントを探る、そんな一夜となりました。
MCA Meet Up #06
「マーケティング職キャリアガイド:ニューノーマル時代に生き残るマーケター」
2020年7月16日(木)19:00~20:30
<パネリスト>
ディー・エヌ・エー エグゼクティブマーケティングプロデューサー
今西 陽介 氏
株式会社ヤプリ マーケティングスペシャリスト
島袋 孝一 氏
<モデレーター>
MCA理事
株式会社ニューバランス ジャパン マーケティングディレクター
鈴木健 氏
<MC>
一般社団法人渋谷未来デザイン 理事/事務局次長
NEW KIDS株式会社 代表
長田新子 氏
ZoomとFacebook Liveをつかったオンライン開催もおなじみのスタイルとなりつつあるMCA Meet Up。今回も「ぜひお酒などを飲みながら」と冒頭でアナウンスされるなど、リラックスしたムードではじまります。
モデレーターの鈴木さんが「今日はユニークなふたりをお迎えしました」と紹介したとおり、終始和やかなトークを交わすおふたりが今回のゲスト。
ひとつの会社 / 複数の会社でのキャリアの積み重ね
「島袋さんと違って、僕はひとつの会社でキャリアを積み重ねてきたタイプです」と語るのはディー・エヌ・エーの今西陽介さん。対して、ヤプリの島袋孝一さんは「僕はいま3社目」と言います。
まずはキャリアの積み重ね方についてのふたりの考え方を紐解くところから。
今西さんは自身のキャリアについてこう紹介します。
「ディー・エヌ・エーにはもう16年居ます。ただいろんな部署でビジネス職全般をやっているので、“マーケター”という意識は少なく、“ビジネス全般のなんでも屋”という感覚(笑)。
ポイントは、2年ごとに社内転職をしていること。同じことをずっとやっていると自分の成長が止まってしまいます。違うことをし続けていることで、自分の中で複数の強みができてきて、キャリアが積み上がっていくんだと思います」
同じ企業に16年在籍していても、2年ごとにあたらしい環境に身を置き、あたらしいことに挑戦し続けていれば、たしかにおのずと様々な経験値と刺激を得ることができます。
「自分がするアウトプットに対して、周囲からのインプットが減ったときが潮目。例えば経験を重ねることによっていつしか、誰からも反対意見が出なかったり、賛同する人が周りに多くなりすぎたときには、周囲に忖度されてる状態ができているのでいいものは出来にくいんです。この状態はいわば、裸の王様になってしまう可能性もあって、だから僕は一定期間で異動するんです。ただし、大切なのは異動することが目的ではなく、現状の仕事で何らかの成果を出して、幅を広げて行くというのが前提です。結果が出ないのに、コロコロと仕事を変えてたりすると、厄介者扱いになってしまうリスクもあるんで要注意です(笑)」
一方、島袋さんは複数の企業を渡り歩いて来たキャリアの持ち主。
「人によって、出会った時期の差で僕の見え方は違うと思います。いまはスタートアップベンチャーに居ますが、ひとつ前は大手飲料メーカーのキリン。その前はパルコですから。
ファーストキャリアだったパルコでは、管理課という場所でレジ操作をスタッフに教えたり消防訓練をしたりということをやっていました。やがてデジタル部門を立ち上げるに当たってそちらへ移るのですが。」
そんな島袋さんに、鈴木さんは「デジタルをマーケティングツールとしてだけでなく、自分自身の打ち出し方にも使っていますよね」と指摘します。
島袋「いろんな企業や団体のウェビナーの運用支援をやったりもしています。僕は貧乏性なので、いろんなカードを持ってたいんですよね(笑)。自分は持っている引き出しを、業界に還元するように意識しています。なにかのときに“飯のタネ”になりそうだから(笑)」
キャリアの重ね方には違いがあれど、自分にできることの引き出しを広げることでキャリア形成に活用していく考え方は、ふたりに共通しているのかもしれません。
デジタルマーケティングのスキルは「当たり前」
やがて話題は「デジタルマーケティング」についてへ。
今西「“マーケターの能力”を考えるときに、今の時代、デジタルマーケティングのスキルは所持していて、当たり前になりつつあります。いまやどんなサービスにおいても、いかにユーザーのスマホの可処分時間の中にサービスを浸透させるのがポイントになります。スマートフォンのユーザー行動の理解を前提にデジタルマーケティングの素養があった上で、プラスでどういうスキルを身につけていくかが、これからのマーケターのキャリアの考え方だと思っています」
ではデジタルに強いマーケター/弱いマーケターの差はどんなところに表れるのでしょうか。
今西「CPAの数字を追いかけるようなデジタル広告の現場においては、代理店さんの言うことをプラン通りそのまま実行するマーケターもいますが、そこで自分自身でどれだけ深く考えているかが重要。大前提として、広告のプロである代理店さんよりも、ブランドマーケターは知識、戦略思考が強くなければなりません。たとえば広告運用の効果が落ちてきたときに、とっさに自分で次の策を立てているような人が強いマーケターだと思います。ただし、ここでは一人で考えるのはなく、社外の代理店さんのようなパートナーとワンチームになってディスカッションをして、良いものを作り出して行く、リーダーシップも必須です。」
SNSでの情報発信で心がけているのは?
島袋さんは、最近あらためてTwitterでの発信に執心しているのだと言います。それは「Facebookのように友達関係のなかでではなく、不特定多数に向けて“荒波”のなかでつぶやくことに意味がある」から。「外から刺されやすいような環境に身を置くようにしています」。そうしたデジタル上での日々の鍛錬も、マーケターにとっては重要なスキル形成に繋がっているのかもしれません。
鈴木「デジタルというと、いかにパフォーマンスを上げるかという議論になりがちだけど、たとえばSNS空間には“自分が知らなかったことに出会う”という実用性がある。それは“外か刺される”というリスクに身を晒すことでもあるんだけど。デジタルツールを自己アピールに使う場合、どんなことに気をつけていますか?」
その問いには今西さんがこう答えます。
「不特定多数の人が見るものなので、自分の実績をひけらかしたりすることなく、謙虚な姿勢をとりつつ、きちんと“ギブ”を提供すること。“あいつに訊けばなんとかなる”と思われるような情報発信を心がけていくことが大事です」
ニューノーマルの時代の働き方やキャリアの積み重ね方。そんなお題でのトークはやはり、 “デジタル”を介したマーケティングやコミュニケーションの話題へと漕ぎついていくようです。
アンテナ力の鍛え方
観覧者からのチャットでの質問にはこんなものがありました。
『日頃から意識している“アンテナ力”の鍛え方は?』
今西「いろんなものの一次情報をとって自分の言葉で語れるようになることが大切です。二次情報をソースにいくら熱く語っても説得力はないし、危険です。あくまでも一次情報をとりにいくことを意識しています。わかりやすいものでは企業のプレスリリースを発信しているPR TIMESなどもそうですね。ただし、これは企業目線になっているので、マーケターとしては、消費者が求める事がリリースに反映されているのかな?と俯瞰で見ていたりもします。」
島袋「僕は『TikTok』も『17LIVE』も、アカウントをつくるだけでなく実際に配信してみるということを徹底しました。そうやって体験してみることも、言うなれば“一次情報”です。YouTubeも、フォロワーは29人ですが(笑)、配信してみましたし、オンラインゲームも実際に課金してみて、身銭を切らないとわからないこともたくさんあるんです」
今回のトークで共通していたのは、かたちは違えどおふたりがあたらしい刺激や体験、経験を求めて貪欲に行動し、自身の成長、つまりはキャリアアップに繋げているということ。そしてそれを実に楽しそうに実践していることだと思われます。もちろんご本人にとっては様々な苦労があることと思いますが、それを飄々とこなし、軽やかな足取りで前進し続けているように見受けられます。
常にあたらしい環境に飛び込み、自身の感覚で感じ、経験値を吸収する。それを繰り返すことで成長していく。そんなスタンスが、おふたりの語る言葉からは感じられました。
あっというまの90分のトークセッションを終えて、そのあとは休憩を挟み懇親会へ。
いつものようにオンラインミーティングのカメラを各自がONにして、さらに和やかな時間を参加者のみなさんとともに過ごしました。