不動産証券化マスター 過去問で重複出題のテキスト箇所⑨
テキスト103下
不動産譲渡の会計基準(売却先ヴィークルの種類)
①資産運用型
収益認識会計基準:通常の営業活動による売却
実現主義 :通常の営業活動によらない売却
②資産流動化型
実現主義 :5%ルール(不動産流動化実務指針)
収益認識会計基準は、国際会計基準審議会(IASB)と米国財務会計基準審議会(FASB)が共同で開発した基準であるIFRS第15豪「顧客との契約から生じる収益」の好評を受けて、日本の収益認識に関する包括的な会計基準として開発されたものである。収益認識会計基準では、個々の契約における履行義務を識別し、識別した履行義務ごとに価格付けを行い、履行義務の充足の都度収益が認識される。
収益を認識するためのフロー5段階
1.顧客との契約の識別
2.契約における個々の履行義務の識別
3.取引価格の算定
4.取引価格を契約における別個の履行義務に配分する
5.企業が別個の履行義務を充足時に又は充足するにつれて収益を認識する
企業の通常の営業活動として行われるものではない不動産の売却や、不動産流動化実務指針の適用対象となる不動産の譲渡に当たっては、収益認識会計基準は適用されない。また、金融商品に関する会計基準に含まれる金融商品の取引、リース取引に関する会計基準に含まれるリース取引などにも収益認識会計基準は適用されない。
関係会社間の取引にかかる土地・設備などの売却益の計上についての監査上の取扱い
1.譲渡価格に客観的な妥当性があること
2.合理的な経営計画の一環として取引がなされていること
3.買戻し条件付売買または再売買予約付売買でないこと
4.資産譲渡取引に関する法律的要件を備えていること
5.譲受会社において、その資産の取得に合理性があり、かつ、その資産の
運用につき、主体性があると認められること
6.引渡しがなされていること、または所有権移転登記がなされていること
7.代金回収条件が明確かつ妥当であり、回収可能な債権であること
8.売主が譲渡資産を引続き使用しているときは、それに合理性が認められ
ること
金融資産の譲渡にかかる消滅の認識は財務構成要素アプローチによって行う。不動産を譲渡した際の譲渡人の会計処理については、リスク・経済価値アプローチによって行われる。
譲渡人が不動産の譲渡取引を売却取引として会計処理するためには、適正な価格で譲渡されており、当該不動産に係るリスクと経済価値のほとんど全てが、譲渡人である特別目的会社を通じて他の者に移転していると認められる必要がある。
以下の継続的関与がある場合に、流動化した不動産の譲渡時の適正な価額によって除して算定したリスク負担割合が概ね5%の範囲内であれば、売却取引として会計処理することが認められる。譲渡人が譲渡した不動産の管理業務を行っている場合、譲渡人が不動産を買戻し条件付きで譲渡している場合、特別目的会社が売戻の権利を有している場合、譲渡人が、譲渡不動産の対価の全部又は一部として特定目的会社の発行する証券などを有しており、形式的には金融資産であるが、実質的には譲渡不動産の持分を保有している場合。譲渡人がセールス・アンド・リースバック取引により、継続的に譲渡不動産を使用している場合。などが上げられる。
不動産信託受益権の譲渡についても、不動産を特別目的会社に譲渡することによる流動化の場合と同様に、リスク・経済価値アプローチに基づいて会計処理を行う。
子会社および関連会社の基準には、持株基準と支配力基準がある。持株基準は議決権のある株式の過半数を有しているか否かによって子会社を判定する考え方。支配力基準は他の会社を実質的に支配しているかどうかを判定する考え方。
他の意思決定機関を支配している企業とは、
・他の企業の議決権の過半数を自己の計算において所有している企業
・他の企業の議決権の100分の40以上、100分の50以下を自己の計
算において所有している企業であって、かつ、以下の要件に該当する企業
⑴自己の計算において所有している議決権と、自己の意思と同一の内容の
議決権を行使すると認められる者および自己の意思と同一の内容の議決
権を行使することに同意している者が所有している議決権と合わせて、
他の企業の議決権の過半を占めていること
⑵役員もしくは使用人である者、又はこれらであった者で自己が他の企業
の財務及び営業又は事業の方針の決定に関して影響を与えることができ
る者が、当該他の企業の取締役会その他これに準ずる期間の構成員の過
半数を占めていること
⑶他の企業の重要な財務及び営業又は事業の方針の決定を支配する契約な
どが存在する
⑷他の企業の資金調達額の総額の過半の融資を行っていること
⑸自己の計算において所有している議決権と、自己と出資、人事、資金、
技術、取引などにおいて密接な関係があることにより自己の意思と同一
に内容の議決権を行使すると認められる者及び自己の意思と同一の内容
の議決権を行使することに同意している者が所有している議決権と合わ
せて、他の企業の議決権の過半数を占めている企業であって
⑵~⑸までの要件に該当する企業