不動産証券化マスター 過去問で重複出題のテキスト箇所④
テキスト102
「インカムゲイン」とは保有期間中の配当で、「キャピタルゲイン」とは将来の売却による売却益である。リーマンショック後は、不動産投資の本来の醍醐味である安定性に基づく、中長期的な投資へシフトしてきており、その結果、インカムゲインが重視されてきている。
購入前に対象不動産についてデューデリジェンスを行うことは、リスク軽減のため必要不可欠な作業である。
１つの物件でポートフォリオ全体の7割、8割も占めるような投資を行うことはリスクが高い。投資を分散する基準としては、国、地域、用途、規模などによる分散方法がある。
建物の機能を維持・更新し、適正な状態にし、長持ちさせるには、計画的な修繕が欠かせない。また、機能的に大き後退した場合などには、改修工事を実施することにより、対象不動産の市場性や競争力を維持・回復することができる
リスク軽減の融資面での工夫として、将来の金利上昇が見込まれる場合には、固定金利を選択する方法や変動型でも金利をキャップ購入する方法がある。また、想定される投資期間をカバーする借入期間を設定することも有効である。借り換え（リファイナンス）リスクを軽減できる。
投資戦略の立案では以下の点を考慮する。エリア、不動産の種類、投資対象不動産の基準（築年数、規模（面積、価格）、立地など）、想定利回り、成長戦略、運用期間、売却（出口）戦略、リスク要因、投資家の特性※
※投資家の趣向や資金資金の性格（長期、短期）によって投資リターンの考え方も異なってくる。
デューデリジェンスとは様々な観点から投資対象不動産の調査を行うことでリスクを明確化することである。リスクを極小化することでリターンの最大化を企図するものである。デューデリジェンスは１）物的調査、２）法的調査、３）経済的調査に大別される
レントロール（賃貸借契約の主な経済条件を一覧表に整理したもの）に記載されている内容が必ずしも実態を表しているとは限らない。これはフリーレントやレントホリデーがある場合、表面上の賃料と実際に受領する賃料で差が出る場合があるためである。
アンダーライティングとは組成しようとするファンドの投資商品としての投資分析を行うことである。デューデリジェンスで得られた情報などを参考にしながら投資対象不動産に関する以下の項目の想定数値を設定する。新規募集賃料、入れ替え率、ダウンタイム、既存テナントへの対応方針、定常的管理費用、修繕及び資本的支出工事の実施内容（想定金額含む）と実施予定時期、投資期間、想定売却キャプレート、その他想定すべき項目、ベースレート及びスプレッド、固定金利か変動金利か、アモチゼーションの有無とその額
信託受託者によって受託スタンスやテナント及び物件に対する審査基準やカストディのサービス内容も相違しているので信託報酬などの諸条件を総合的に判断して適切に選択する必要がある。
※カストディとは、機関投資家の代理人として、有価証券の保管・管理等を行う業務を総称していう
PMおよびBMの選定に際しては以下の点に注意して行う。
受託実績、運営体制、財務体質、リーシング能力、テナントリレーション能力、物件管理能力、アカウンティング能力、レポーティング能力、資本的支出工事提案能力
レンダーの選定は、FAによる入札を実施し、ローン条件を競わせてレンダーを決定するのが一般的である。ただし、必ずしもFAを利用する必要はなく、取引内容に合わせて利用するか否かの判断をすればよい。
ビジネスプランとはアセットマネージャーが投資家やレンダーに提示する最終的な投資運用計画のことである。ビジネスプランには、アンダーライティングをベースとして最終的な売買金額やローン条件、リース戦略、修繕計画などの物件レベルの収支、AM報酬などを考慮したSPCレベルの収支、そして最終的な配当計画が記載されている。
投資対象不動産から発生するキャッシュフローを、元利金支払いや修繕費用支払いなどにおいて、どのような順序で支払うのかの優劣関係を規定したものを「ウォーターフォール」と言う。予算外の支払については、レンダー承認が必要な場合がある。
投資対象不動産の売却方針を決定する際には、売却時期の見極め、売却結果のシュミレーション、売却か保有継続かの検討を行う。売却時期の見極めは、マクロ的視点で対象不動産の国内外の不動産マーケット全体や金融機関の貸出スタンスなどを把握することである。ミクロな視点では当初立案したビジネスプランの達成度などを把握することである。売却結果の趣味レーションが下回る場合であっても将来見通しにおいて更なる価格下落が見込まれるのであれば損失拡大回避の観点から売却に踏み切る判断もあり得る。保有継続という判断を下す場合は、注意しなければならないのはローン返済期日までの残期間とリファイナンスの可能性についてである。