鳥居とは何か?② 〜 鳥居の分類と構造〜 【明神系鳥居・前編】+ 不思議な鳥居の夢
鳥居の夢
以前、明晰夢についてお話をしました。そちらでも少し触れましたが、私は不思議で、リアルな夢を毎日見続けていた時期があり、この夢を記録することによって、その意味や、メッセージ性が解明できるのではないかという思いから、夢日記を1年に渡ってつけていたことがあります。
その中に、鳥居にまつわる奇妙な夢について綴っていることを思い出しました。
ごく私的な日記の一部ですが、奇妙で不思議なシチュエーションなので、是非ご紹介したいと思います。以下のような夢です。
こうやって読み返すと、我ながら緊迫感のある、恐ろしげな夢だったことが分かります。
前回の記事で、鳥居は「結界」であるというお話もしましたが、この夢に登場する鳥居は、私たち人間の日頃の行いをジャッジする「装置」として機能しているようです。
伏見稲荷の眷属であるお狐様は、ヒエラルキーの頂点に上がるための昇進試験として、千本鳥居をハードル走のように飛び越すテストがあり、深夜の千本鳥居でその姿を目撃したという方も多かったりします。
お狐様も、お塚に参拝に訪れる信者のために働いているのですが、どれだけ人を救い、どれだけ感謝されたのかという眷属神としての徳が、そのテストの結果に如実に表れるということなのでしょう。
私たちも、実は鳥居をくぐるたびに人としての「質」をジャッジされているのかもしれません。
鳥居の構造
さて、「鳥居とは何か?」というテーマでお送りする今回のコラム。前回は「起源と語源」に的を絞ってお話ししました。
今回は、様々な鳥居の分類について。
鳥居の構造は大きく分けて「明神系鳥居」と「神明系鳥居」の2種類に分けることができます。
「明神系鳥居」の分かりやすい特徴の一つとして挙げられるのは、「笠木」の先が「反転(反っていること)」していることと、柱に「転び(柱が傾斜していること)」があることです。
一方の「神明系鳥居」は、「笠木」「貫」ともに水平で、基本的に柱に「転び」はなく垂直です。
それでは、「明神系鳥居」「神明系鳥居」それぞれの構造と名称を見てまいりましょう。
これらが鳥居の基本構造となっています。この基本形に「扁額(額束に取り付けられた社名、祭神を記した額)」や、「藁座(柱の根元を板や竹で包んだもの)」などが取り付けられます。
鳥居の分類(明神系鳥居)
明神鳥居
明神鳥居は、笠木の下に島木を有し、ともに反り増しがあるものです。全体的に曲線が配された美しい様式の鳥居です。柱には「転び(傾斜)」があるのも特徴です。
この明神鳥居が原型となって、後世様々なタイプの鳥居が生まれることになります。
以下、その派生形の鳥居です。
稲荷鳥居
基本的には明神鳥居と同じですが、笠木と「藁座(根巻ともいいます)」の部分が黒に塗られ、他の部分は朱色、または丹塗りとなっている点が特徴です。
一見すると、明神鳥居の項でご紹介している「上賀茂神社」の鳥居と変わりないように見えますが、伏見稲荷大社の一番鳥居は「藁座」の部分が黒く塗られているのが分かります。
台輪鳥居
柱と島木の接点に注意してみて下さい。円形をした「座」がはめ込まれていることにお気づきかと思います。この「座」を「台輪」といいます。
稲荷鳥居にも「台輪」がありますが、台輪鳥居と称する場合、「藁座」は黒く塗られていません。また石造りの鳥居も多くあります。
両部鳥居
両部鳥居の代表格は、やはり広島県は宮島の厳島神社でしょう。
台輪鳥居の両方の柱に、「控柱(稚児柱)」が設けられているのが特徴です。また笠木の上には屋根が付いています。
複雑な構造を持っていることから、宮島鳥居、稚児鳥居、児持鳥居、四脚鳥居、袖鳥居、枠鳥居、権現鳥居、枠指鳥居など様々な呼び方があります。
両部鳥居の「両部」とは、真言密教の立場から唱えられた神仏習合思想である「両部神道」から名付けられたものです。
藁座(根巻)鳥居
明神鳥居の基本形に、「藁座(根巻)」が設けられた鳥居です。
板や竹を巻き付けたり、腐食防止のために黒く塗ったりしている場合もあります。年代の新しい鳥居では、鋼板が使用されていることもあります。
宇佐鳥居
明神鳥居の基本形に、「笠木」を黒く塗り、「台輪」を設置して、「額束」がないのが宇佐鳥居です。
ご覧になってもお分かりの通り、「笠木」の上には屋根があり、両端が鋭く沿っているのが特徴です。また「島木」と「貫」の間の幅も広くなっています。
山王(合掌)鳥居
「笠木」の上に合掌状の「扠首(さす)」のある、分かりやすい特徴を持った鳥居です。柱の根元には「藁座(根巻)」があります。
滋賀県の日吉大社で、はじめて建立されたため「日吉鳥居」とも呼びます。日吉大社はかつて、日吉山王社、山王権現と称したことから「山王鳥居」とも呼ばれます。
奴禰(ぬね)鳥居
山王鳥居は、「笠木」の上に合掌状の「扠首(さす)」がありましたが、奴禰鳥居は額束の部分に扠首が配されているのが特徴です。主に稲荷系の社にあり「稲荷奴禰鳥居」とも呼ばれます。
次回は、引き続きバリエーション豊かな明神系鳥居の、その他の種類を見てまいりたいと思います。