鳥居とは何か?③ 〜鳥居の分類と構造〜【明神系鳥居・後編】+ 天と地を分ける銀座の社と、街に点在する鳥居
銀座の鳥居
東京・銀材の入り組んだ路地を歩いていると、ビルや店舗の間などに小さな鳥居を見つけることができます。この鳥居は、くぐるというより、そこに神社があることを示すもの。
神社にあるはずの、立派な社殿や広い境内はそこにはありません。鳥居と小さなお社があるのみですが、地元の商店主や、企業にお勤めの方などの厚い崇敬を受けており、忙しそうに足早に過ぎ去る人たちの傍で、熱心に手を合わせる参拝者のお姿を拝見することがあります。
毎年、銀座の町に点在する12神社が参加の「銀座八丁神社巡り」というイベントが開催されており、大変な賑わいをみせます。
イベント開催時にのみ配布される集印帳と案内図を片手に、「幸稲荷神社」をスタートし、各社を巡ります。通常は一般に開放されていない「銀座稲荷神社」なども、参拝することができます。
銀座にある神社の一つの形態として挙げられるのが、ビルの一階に鳥居と拝殿をもち、屋上に本殿(奥宮)をもつ神社です。
銀座松屋通り沿いの一角にあるビルの屋上に鎮座する、「朝日稲荷神社」は創建年代は不明ですが、かなり古い時代から現在の場所にあったとされます。
最近では映画「天気の子」の劇中にも登場し(劇中で描かれた神社のモデルとされる)、世界各地から参拝者が訪れる聖地となっています。
「朝日稲荷神社」は、江戸時代後期に発生した安政の大地震で社殿が倒壊後、長らくそのまま放置されていたそうですが、後に社殿が建立され手篤く祀られることとなりました。
しかしその後、戦災で社殿が失われてしまいます。戦後になって社殿が再建され、昭和58年に現在のビルの屋上に本殿が安置されることになりました。
こちらの「朝日稲荷神社」は、拝殿が1〜2階の吹き抜け部分に設置されています。1階と屋上はパイプで繋がれていて、パイプの中には土が入っています。つまり本殿は、屋上に位置していながらも、しっかりと大地と繋がり鎮座していることになるのです。
他にも同じく銀座にある「八官神社」も本殿が8階建のビルの屋上にあります。
こちらも拝殿は1階にあります。1階の拝殿と屋上の本殿は二重構造のパイプで繋がり、外側のパイプには土が詰められ、内側のパイプは空です。
外側のパイプで地面と繋がり、内側のパイプで拝殿より祈願された願い事が本殿に伝わるという仕組です。
1970年頃の神社本庁からの通達によれば、神社の成立要件として「社殿が直接地面と繋がっていること」「社殿の上が空であること」が必要だとのこと。
根拠となっているのは古事記に記された「高天原に千木高知り、底津石根に宮柱太敷立て」という部分。「岩の上に宮柱を立てて、千木は高天原まで届く」というような意味でしょうか。
拝殿での参拝者の祈りが、屋上の本殿に伝わるようにという工夫もさることながら、それ以上に屋上にあることで大地に根差していない、不自然かつ不安定な本殿の安置のされ方を、このパイプと中に詰められた土によって補っているということになります。
「本殿」と「拝殿」が階を隔てられて、大地と切れてしまうと神社として機能しない、神様の住まう聖なる場所として成り立たないということ。
ビルが建ち並ぶ大都会には、このような隠れた工夫が施されているのです。
銀座にお買い物に立ち寄られた際には、鳥居を見つけたら、どうぞ上を見上げてみて下さい。現代の神社のあり方が、見えてきます。
銀座にお買い物、だけでなく、銀座で神社巡りはいかがですか?
鳥居の種類(明神系鳥居・後編)
前回に引き続き、「明神鳥居」の様々な種類を見てまいりましょう。
今回は、非常に個性豊かな鳥居が目白押しです。皆さんは、どのタイプの鳥居がお好きですか?
住吉鳥居
住吉鳥居の特徴は何より、柱が四角であることです。角張った、がっしりとしたイメージです。別名を「角柱鳥居」といいます。
中山鳥居
一見、基本形の明神鳥居と同じようにも見えますが、よく見ると貫が両方の柱から外に突き出ていません。
慶雲4年(707年)創建の歴史ある社、岡山県津山市に鎮座する中山神社から、その名が取られました。
三輪鳥居
明神鳥居の左右に、「脇鳥居」と呼ばれる小さな鳥居があるのが「三輪鳥居」の特徴です。4本の柱に、3ヶ所の入口、そのそれぞれの入口には扉があります。このような鳥居を「三ツ鳥居」ともいいます。
「三輪鳥居」の代表格は、奈良県桜井市の大神神社です。
背後にそびえる三輪山を御神体とし、本殿を持ちません。拝殿の奥は禁足地となっていますが、この拝殿と禁足地とを隔てているのが「三輪鳥居」です。ただし、こちらの「三輪鳥居」の入口は一ヶ所で、中央に御扉(みとびら)があります。この拝殿奥にある「三輪鳥居」こそが、本殿に代わる役割をもっているといえるでしょう。
また、三峯神社のように扉を持たないバリエーションも存在します。
三柱鳥居
この「三柱鳥居」は、明神鳥居を三つ組み合わせたものであり、上から見て正三角形になるように建てられています。笠木と島木は角で交わり、貫は外に突き出ていません。
また、基本的に柱は八角柱となっているのも特徴です。
唐破風(からはふ)鳥居
「唐破風」とは屋根の装飾の一種で、装飾板がそり曲がった曲線状のものをいいます。
この「唐破風」が笠木と、島木に施された鳥居が「唐破風鳥居」です。「明神系鳥居」特有の反り増しはありません。
滋賀県野洲市の三上山の麓に鎮座する御上神社が、その起源とされており別名を「三上(御上)鳥居」ともいいます。
御上神社の「唐破風鳥居」は、明治10年(1877年)頃に、腐朽して撤去されて以来、京都御苑の厳島神社にある「唐破風鳥居」が最古で、唯一といわれています。
この厳島神社の「唐破風鳥居」、安井金比羅宮の「住吉(角柱)鳥居」、北野天満宮・伴氏社の「中山鳥居」(または蚕ノ社の「三柱鳥居」)を「京の三鳥居」と称します。
肥前鳥居
二本ないし三本継ぎとなった異様に太い柱(下に行くほど太くなっている)、流線型をかたどる、一体化した笠木と島木が特徴の「肥前鳥居」。
福岡市東区にある筥崎宮の鳥居が有名で「筥崎鳥居」ともいわれています。
また名称通り、肥前(佐賀県)を中心とした北部九州に広く分布しています。
鳥衾(とりぶすま)鳥居
「鳥衾(とりぶすま)」とは大棟や隅棟などの鬼瓦の上に、反って長く突き出した円筒状の瓦のことをいいます。笠木の先にこの「鳥衾」のある鳥居を「鳥衾鳥居」と呼びます。
広島県福山市の鞆の浦、沼隈町に多くみられる鳥居です。「肥前鳥居」が変形したものと見られています。
双龍鳥居
明神鳥居をベースとし、左の柱に昇り龍、右の柱に降り龍の彫り物を施したのが「双龍鳥居」です。台座にも凝った彫り物が施されています。
品川神社の台座には唐獅子や手毬、牡丹などが、馬橋稲荷神社には富士、兎、狐、亀、駿馬など、高円寺の稲荷社にも同様のものが彫られています。
江戸風の凝った、粋な造作の鳥居で、かつては各所に存在していたようですが、今は東京に三基のみ(下記参照)となっています。この珍しい東京にのみ現存する三基の「双龍鳥居」を「東京三鳥居」と称します。
今回は東京・銀座の町にある鳥居のお話と、前回に引き続いて「明神鳥居」の様々な種類をご紹介しました。鳥居という題材だけに的を絞っても、お話は尽きませんね。
次回は、全国にある、ちょっと変わった鳥居たちのお話と、「神明系鳥居」のご紹介をしたいと思います。どうぞ、引き続きお楽しみに!