税法の解釈(門前編)【やんわり租税法 No.5】
こんにちは、大人になるに連れて春が好きになってきました。
おそらく一瞬に感じる春ですので、連休のうちにたくさん外に出ていきたいですね。
さて、前回はやや難解な引用をしてしまったりちょっとタイトルに偽りあり、といった感じになっちゃった気もするので、今回は本旨に即してやんわりいこうと努力します。笑
今回のテーマは「税法の解釈」です。緑のバイブルを開いても序盤に出てくる大切なテーマなので、その入門より前の「門前編」としていっしょに勉強していきましょう。
ところで、「税法」と言ったり「租税法」と言ったりしてますが、関東弁と関西弁の違いのようなものなのであまり気にしないでください(意味深)。
僕はかつての指導教官に合わせて「税法」という表現を用いますが、わかりやすく「租税法」という表現を用いたりします(この記事のタイトルとか)。
では本題に。そもそも「税法の解釈」っていうのがカタクルシイですが、簡単にいうと「条文の読み方、くみ取り方」といったところかと思います。
一例をもとに考えていきましょう。
例えば、犬を飼っている人に対して「犬税」という国税を課す「犬税法」が国会で成立したとしましょう。
こんな条文です。
「第〇条 犬の飼育者は、この法律により、犬税を納める義務がある」
びっくりしますが、実は犬税自体は日本において地方税として存在していたのです(1982年に廃止)。ヨーロッパにおいては今でも課されている国があります。
さて、この場合の犬はどんな犬を指すのでしょうか。
柴犬や、ダックスフントは紛れもない犬になりそうなので、これらの犬を飼っている人は納税義務者になりそうです。
では、リカオンやオオカミを飼育している動物園には納税義務がないのでしょうか。もっといえばロボット犬のアイボの所有者はどうでしょう。
こんなときに税法の解釈がヒントになってきます。
予め断っておくと、きっとこの架空の「犬税法」の条文には第1条に「趣旨」、そして第2条には「用語の意義」とかが上記の第〇条の前に規定されていて、そこまで困るようにはならないように整備されると思いますが、ここはわかりやすく当該条文だけをクローズアップします。
このようなとき税法は「文理解釈」という解釈方法をとることが通説となっています。
読まれている皆様にお手元のテキストがあるわけではないので、国税庁のwebサイトで公開されている便利な税大ジャーナルを見てみましょう。
酒井克彦先生は文理解釈について以下のようにおっしゃっています。
法律の解釈方法について初めて触れたよ、という方はきっとこう思うはずです。
「そりゃ、そうだろ」
だって、”法律に書いてあることは書いてある文章通りに解釈しましょう”って言われてるんですよ。当たり前ですよね。
犬税でいうと、猫を飼っている人は課税されないのです。
でも、もしこれが猫でもカブトムシでも課税されるということになると、それは課税権者による勝手な課税、つまり恣意的課税となってしまうのです。
なんでもかんでも課税することはできないようにすべきだ、と考えられているのですね。
前回も触れましたが、課税は国民のお財布からお金を持っていく、難しく言うと「財産権の侵害」であることから、租税法律主義により法律の根拠なしに課税をすることは厳しく制限されています。
ですので、「書いてある通り」に解釈する文理解釈が税法の解釈にもっとも適しているということができるのです(厳格な解釈)。
さて、問題の犬税です。ここまで勉強してきた通り、猫やカブトムシを飼っている人に犬税が課されないと思われることはわかりました。
では、前述のリカオンやアイボはどうでしょうか、これには文理解釈だけで判断することは実は困難なのです。
そこで、法律の「趣旨」ということを考えることが大切になってきます。
長くなってしまったので次回に続きます。
ご興味ある方はぜひお付き合いください!
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