📗【文書版】⭐️ 礼拝メッセージ『ヨナのしるし』　2025年1月26日 新約聖書　マタイの福音書第12章38～45節

📗先日の礼拝メッセージのテキスト版もここに掲載いたします⬇️
📗礼拝メッセージ『ヨナのしるし』　2025年1月26日

新約聖書　マタイの福音書第12章38～45節

38　そのとき、律法学者、パリサイ人のうちの何人かがイエスに「先生、あなたからしるしを見せていただきたい」と言った。
39しかし、イエスは答えられた。「悪い、姦淫の時代はしるしを求めますが、しるしは与えられません。ただし預言者ヨナのしるしは別です。
40ヨナが三日三晩、大魚の腹の中にいたように、人の子も三日三晩、地の中にいるからです。
41ニネベの人々が、さばきのときにこの時代の人々とともに立って、この時代の人々を罪ありとします。ニネベの人々はヨナの説教で悔い改めたからです。しかし見なさい。ここにヨナにまさるものがあります。
42南の女王が、さばきのときにこの時代の人々とともに立って、この時代の人々を罪ありとします。彼女はソロモンの知恵を聞くために地の果てから来たからです。しかし見なさい。ここにソロモンにまさるものがあります。
43　汚れた霊は人から出て行くと、水のない地をさまよって休み場を探します。でも見つからず、
44『出て来た自分の家に帰ろう』と言います。帰って見ると、家は空いていて、掃除されてきちんと片付いています。
45そこで出かけて行って、自分よりも悪い、七つのほかの霊を連れて来て、入り込んでそこに住みつきます。そうなると、その人の最後の状態は初めよりも悪くなるのです。この悪い時代にも、そのようなことが起こります。」

　主の恵みと平安が皆さんの上に豊かにありますように。
　この日も皆さんとご一緒に主の日の礼拝にあずかれますことを心から感謝いたします。

　皆さん、もう超話題で持ちきりだったと思いますけれども、アメリカのトランプ大統領の就任ですね。就任前演説についても就任演説についても色々あるんですけれども、
　そしてもう1つ「勇気ある説教だ」と話題だったのが、このニュースであったと思います。

【トランプ氏に主教が「慈悲」求める　「ジェンダーは二つ」や移民に関する発言めぐり】

　たとえばそういったタイトルで色んな報道機関などが伝えてくれていたと思いますが、西原廉太(にしはら　れんた)先生という日本聖公会の司祭の方が、このことについてフェイスブックで投稿していらっしゃいました。

【2025年1月21日、米国・ワシントンの「ワシントン国民大聖堂」(Washington National Cathedral: 米国聖公会ワシントン教区主教座聖堂)で、「国民のための祈り」(A Service of Prayer for The Nation)が行われました。これは米国において大統領就任の際に行われる伝統的な礼拝で、歴史は1933年に遡ります（立教大学は1874年に米国聖公会によって創立されました）。

　ドナルド・トランプ新大統領の前で、米国聖公会ワシントン教区のマリアン・バディ(The Right Rev. Mariann Budde)主教が、大変、意味深い説教をされました。

「大統領閣下、最後に懇願させてください。何百万人もの人々があなたを信頼しています。そして、昨日、あなたが国民に語ったように、あなたは愛に満ちた神の摂理を感じておられるはずです。私たちの神の名において、今、恐怖を感じている自国の国民に慈愛を施してくださるよう、お願いいたします。

　民主党、共和党、無所属の家庭には、ゲイ、レズビアン、トランスジェンダーの子どもたちがおり、中には命の危険すら感じている子どもたちもいます。私たちの農作物を収穫し、オフィスビルを清掃し、養鶏場や食肉加工工場で働き、レストランで食事をした後の食器を洗い、病院で夜勤をこなす人々の中には、市民権を持たないか、あるいは適切な書類を所持していない人がいるかもしれません。しかし、移民の大多数は犯罪者ではありません。―これはその通りで、不法移民という言葉で訳していないのが凄いいいポイントですね。「適切な書類を所持していない人」なんらかの原因で書類が無い人も、トランプ氏は「不法移民」と言います。こう言いますと、いかにも書類がないだけの人も犯罪者のように聞こえてしますんですね。ですから専門家の中には「非正規滞在者」そのほかの言葉をチョイスする人もいます。―】

　続き読みます。

【彼らは税金を支払い、良き隣人でもあります。彼らは私たちの教会やモスク、シナゴーグ、グルドワーラ、寺院の忠実な信徒でもあります。

大統領閣下、どうか私たちのコミュニティで、親が連れ去られてしまうのではないかと恐れている子どもたちに対して慈愛の心を持ってください。(中略)神が私たちに、すべての人間の尊厳を尊重し、愛をもって互いに真実を語り、互いに、そして神とともに謙虚に歩む強さと勇気をお与えくださいますように。すべての人々のため、この国と世界のすべての人々のために。

アーメン」】

　ということですね。

　ここでは「慈愛」と訳されています。こちらがいいと思います。メディアによっては「あわれみ」となりますが、たぶん主教の頭にあるのは、聖書の概念の「ヘセド」ではないかと思いますので、どちらかというと、人権に近いものだと思います。

　そのできごとの後の話として、あるメディアでは、

【トランプ氏は自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」で、バディ主教の名前を出さずに「21日朝に礼拝で話をした主教とやらは急進左派のトランプ嫌いだ」と主張。 「彼女は非常に無礼なやり方で自分の教会を政治の世界に引き込んだ。陰険な口調で、説得力も知性も感じられなかった」とこき下ろした。 さらに、「彼女の不適切な発言は別として、礼拝自体も非常に退屈で、つまらないものだった。彼女はあの仕事に向いてない！ 彼女と教会は国民に謝罪するべきだ！」と非難した。】

　ということですね。まぁ何というかですね、色々とあるんですけれども、【礼拝自体も非常に退屈で、つまらないものだった。】というこの言葉だけでも、トランプ氏の礼拝に向き合う姿勢がうかがい知れるわけですね。ひいては、神やキリストに対する姿勢もうかがい知れます。つまり、「つまらない」と、【礼拝をジャッジできると思っていること自体がですね、自分を礼拝よりも上においている】ということだと思います。でも日本でもそういう姿勢というのはちらほら聞くようになりました。礼拝やその中のプログラムの一部を「コスパ・タイパが悪い」などの表現を使う。これも礼拝をジャッジする姿勢になりますね。(この姿勢は行きつくところは、やがて神を捨てることになると思います。コスパ・タイパ志向が行き着くところは、自分が無駄と思うものを切り捨てる、自分を「主」とし、他をー神さえもー「従」とすることに繋がるでしょう。神との出会いの体験というのは、コスパ・タイパを度外視したところに立ち現れてくるものだからです)礼拝というものはそもそも、神との出会いであり、神の前に、キリストの前に、聖書のみことばの前に【自分が問われる】ことである、ということが大統領には抜け落ちている、であろう、ということですね。
　そればかりではありません。以前は、トランプ氏は、自分の公認聖書というのを売り出しました。資金集めのために聖書を利用したり、福音派のクリスチャンを自分の支持者として大きく取り込んだりして、神も聖書も教会も自分の政治のための道具にしていて、つまり分かりやすく言い換えれば、自分は神さまよりも上だという、神に対する「上から目線」ということですね。

　実はそういう目線というのは、今日神のことばとして共に聞きました、マタイの福音書の第12章38節以下にも表れています。

38　そのとき、律法学者、パリサイ人のうちの何人かがイエスに「先生、あなたからしるしを見せていただきたい」と言った。

　とあります。でこれはですね、もちろん先週までの続きなんですね。ここで文脈は切れていません。これを記したマタイの意志としては、前のことを受けて語っているわけですね。では先週までのみことばでは何があったかというと、2週間遡ります。まずベルゼブル論争というのがありました。イエス様が、悪霊につかれて目が見えず口もきけない人を癒された。こんな奇跡はメシアでないとできないと言われていたので、群衆が「この方がメシアなのではないだろうか？」というふうに言った。
　それを完全否定したいパリサイ人たちは、「なぁに、この男は魔術を使っているんだ。悪霊どもの親玉のベルゼブルの力を使って、悪霊を追い出しているんだ」と言いました。

　せっかくイエス様が聖霊の力によって悪霊追い出しをすることによって神の国の到来をもたらしているのに、その聖霊に言い逆らう者は、聖霊によってもたらされた神の国に入ることが出来ない、という内容のことをイエス様はおっしゃいました。

　そして先週のメッセージですね。良い木からは良い実がなり、悪い木からは悪い実がなる。良い人は良い倉から良い物を取りだし、悪い人は悪い倉から悪いものを取り出す、こうイエス様はおっしゃいました。つまり、これは言葉のことですね。悪い木、あるいは悪い倉、という心を持っているなら、悪い言葉が出て来る、つまり、聖霊のみわざを、ベルゼブルのしわざだ、などと言って、聖霊をけがすような言葉が出て来る、いや、それは、ついうっかり口がすべって言ってしまった、というようなことではなくて、心のうちに、わたしへの憎しみが先に満ちているので、何をしても「いや、これはベルゼブルのしわざだ・悪霊のしわざだ」などと聖霊のみわざをけがすような誹謗中傷の言葉が出て来るのは、もう先に決まってたことなんだろ？まむしのすえたち、お前さんの毒が口から出てきているのがよーく分かるよ。
　こういうふうに主イエスに言われた後だったんですね。
　そうすると、パリサイ人たちは、もうはらわた煮えくり返っていると思うんですが、ここで律法学者たちも登場してパリサイ人たちの仲間に加わりますね。そしてその中の何人かがイエス様に言います。

「先生、あなたからしるしを見せていただきたい」

　この「しるし」というのは、証拠としての奇跡ですね。何の証拠か？神の国が到来したという証拠、イエス様がメシア・救い主である証拠、その奇跡です。われわれが気に入るように、われわれが納得するような奇跡を見せてくださいよ、そうしたら信じてやるから、と言わんばかりですよね。

　それはでもパリサイ人律法学者たちだけの神に対する姿勢かと言いますとですね、そんなこともないんですね。群衆たちは別の意味で、神に対して同じような姿勢だったんです。
　群衆たちは、イエス様の多くの奇跡や言動の噂を聞いて、彼がひょっとしたらメシアじゃないだろうか、と思ったんですが、その群衆が期待していたメシア像というのは、イエス様当時のユダヤの国はローマ帝国の属国になっていて落ちぶれて屈辱的な生活を送っているけれど、かつての1000年前の、ダビデ、ソロモン王様の時代のような古代ユダヤの栄光の独立王国をもう一度打ち立ててくれる、そういうメシア・救い主を待ち望んでいたわけですね。それは旧約聖書をよく読めば微妙に違うんですけれども、でも民衆はとにかくそういうメシアを求めていた。つまり今流行りの言葉をもじれば「メイク　イスラエル　グレイト　アゲイン」ですよね。そういうことを実現してくれる政治的なメシアなら、信じてあげる。私の望むような、期待するような神であれば、信じてあげる、という、こういう神に対する姿勢は、パリサイ人律法学者も、群衆も、実はあまり変わりなかった、ということですね。

　だからこそイエス様は、その後に奇跡を行わずに、こうおっしゃいました。

39しかし、イエスは答えられた。「悪い、姦淫の時代はしるしを求めますが、しるしは与えられません。ただし預言者ヨナのしるしは別です。

　この「時代」というのは、ここでは「世代」と訳した方がいいです。どちらとも訳せることばなんですけれども。そして、悪い、はそのまま「悪い」という意味に取っていいですけれども、その次の「姦淫」というのは、このイエス様当時の世代の人々が、特別、性的不品行が多かった、という意味ではないです。これは言い回しでして、霊的姦淫のことなんですね。
　旧約聖書以来、古代イスラエルの民と、神との関係は、結婚関係になぞらえて語られます。ですから神への裏切りが、妻を裏切る夫のように、夫を裏切る妻のように、語られます。新共同訳では、「よこしまで【神に背いた】時代の者たちは」と意訳に近いように訳していますね。新改訳の方が直訳に近いわけですね。
　つまりそういうふうに神を上から目線で見て、神を査定して、私が気に入るような神であるなら受け入れてあげますという態度の世代は、神に背いた世代だと言っているわけです。
　私が要求するものを出してください。退屈でつまらない礼拝ではなくて、もっとエンターテイメント性に富んだ礼拝にしてください。こういうのはアメリカなどに多いかも知れませんけれども、日本でも似たようなことはあるかも知れません。

　それで、証拠としての奇跡は、これ以上与えられませんが、ヨナのしるしは別です。ヨナのしるしなら与えられます、と主は言われます。
　旧約聖書のヨナ、という人物を皆さんご存じでしょう。預言者ヨナは、あんまり褒められた態度の預言者ではありませんでした。神さまからアッシリアの町ニネベに神のことばを語りに行きなさいと言われます。もう当時のユダヤ人にとってアッシリアは憎っくき敵国、残虐非道と言われていた国です。そんな国の人々を救うために悔い改めを説きに行くのは嫌だ嫌だ、と言って、全然別の方向のタルシシュ行きの船に乗ります。しかし大嵐に遭ってしまい、その原因がヨナにあると知った船乗りたちによってヨナは海に投げ込まれます。
　その海の中に、神さまは大きな魚を備えられて、ヨナは三日三晩、魚の腹の中にいて、悔い改めの祈りをしました。
　そしてニネベに着いて、ヨナが悔い改めを説くと、実にあっさりと、もう王様から庶民に至るまで悔い改めます。そこで神がこのニネベの町に降そうとしておられた災いを思いとどまられます。ニネベの人々はヨナの説教で悔い改めたことになります。
　それで今日の40節から。

40ヨナが三日三晩、大魚の腹の中にいたように、人の子も三日三晩、地の中にいるからです。
41ニネベの人々が、さばきのときにこの時代の人々とともに立って、この時代の人々を罪ありとします。ニネベの人々はヨナの説教で悔い改めたからです。しかし見なさい。ここにヨナにまさるものがあります。

　と。この41節の最後は、ヨナにまさるもの、ということで、前の新改訳第二版は「者」と漢字になっていましたが、これは、人物を指さないそうで、新しい訳や新共同訳は「もの」ひらがなと訳しています。
　つまり、ヨナにまさる人であるイエス様、ではなくて、正確には、イエス様がもたらしてくださっている神の国のことですね。

　そして42節、

42南の女王が、さばきのときにこの時代の人々とともに立って、この時代の人々を罪ありとします。彼女はソロモンの知恵を聞くために地の果てから来たからです。しかし見なさい。ここにソロモンにまさるものがあります。

　と、これも旧約聖書に載っている話です。列王記第一、第10章1節以下に書いてあります。シェバの女王が、―ソロモン王様を訪ねて来ました。シェバというのは現在のイエメンあたりではないか、などと言われていますが―この女王がソロモン王を訪問する際に、ソロモン王の知恵を試すために、数々の難問を持ってきたんですけれども、ソロモン王はそのすべてに答えたんですね。「王が知らないで彼女に説明のできないことは一つもなかった」と記されています。
　ここでソロモンにまさるもの、というのも、やはりイエス様と取るよりも、神の国、と取る方がいいようです。いずれにせよ、ニネベの人々や、シェバの女王が、さばきの時に―これは最後の審判の時に、でしょうか？―この時代の人々と共に立って―これは復活して、ということばです。―、この時代の人々を罪ありとします、と。
　これを聞きながら、パリサイ人律法学者たちは、ますますはらわたが煮えくり返ったと思います。「何！？神さまに一番近いところにいると自他ともに認めるわれわれが、こともあろうに、けがらわしいニネベの人々や南の女王にさばかれるなんてあってたまるか！」
　これはですね、当時のユダヤ人から見て異邦人である者は、天地の創り主であるまことの神を知らない者、ということで軽蔑の対象だったんですね。市場でうっかり異邦人がさわったものに触れていたらコトだから、市場に行った後は水できよめの洗いの儀式をしなさい、なんてのを教えていたのもパリサイ人律法学者たちでしょう。もうひっくり返りますよね。価値観が。
　
　そういうことで、重要なのは異邦人であるかユダヤ人であるか、ではない。主なる神の前に悔い改めているかいないか、ということです。ソロモンの知恵の場合は、シェバの女王は、たんにソロモンの知的能力をテストしに来たのではありません。そのソロモン王の知恵の背後に天地の創り主である全能の神の知恵があるのではないか、そう思って来たわけです。ですから訪問の最後には「あなたの神、主はほむべきかな」とまで言って、主なる神をほめたたえる告白をしています。

　続いてイエス様は一つのたとえをなさっています。また悪霊のたとえなんですけれども、これに関してはどうもイエス様のオリジナルのたとえではないようです。よく読んだり聞いたりしますと、笑い話のようだ、と気付いたりもしますけれども、これは当時よく広まっていた小話のようなものだったようです。その当時誰でも知っている話をここでイエス様は引用なさった。ここから出て来る「汚れた霊」って悪霊のことです。

43　汚れた霊は人から出て行くと、水のない地をさまよって休み場を探します。でも見つからず、
44『出て来た自分の家に帰ろう』と言います。帰って見ると、家は空いていて、掃除されてきちんと片付いています。
45そこで出かけて行って、自分よりも悪い、七つのほかの霊を連れて来て、入り込んでそこに住みつきます。そうなると、その人の最後の状態は初めよりも悪くなるのです。この悪い時代にも、そのようなことが起こります。」

　これはよくよく考えないと分かりにくい話になっているのですが、ちょっと逆転の発想にみたいになるんですけれども、パリサイ人律法学者たちの心って綺麗だったんですね。意外なことに。
　パリサイ人たちは、分離主義者と言われます。何から分離するか、律法を守らない堕落した生活から、自分たちだけは、と分離しまして、自分たちだけはきよい生活をしようって、立派な生活を送っているんですよ。心が掃除されて綺麗に片付いていた。真面目にきちっきちっと律法を守って。民衆から尊敬もされていた。
　けれどもイエス様に指摘されている通り、このパリサイ人たちの心は、憎しみでいっぱいで、悪霊のとりこで、7つの他の悪霊も入り込んでいたような状態でした。
　どうしてそうなってしまったんでしょうか。【心を自分の力で掃除して綺麗にしようとすることは、実は自分を神にすることなんですよ。】ルールを作れるのが神ですからね。口伝えの新しい律法・口伝律法という基準を自分で作って、それを真面目に一所懸命守り、それらを民衆にも守りなさい、って強要する。ルールを設定する。ルーラーが自分ですから。その基準に照らして、イエスというお方を、採点し、査定する、査定した結果憎しみが湧いてくるわけですね。こんなふうに、自分の心を自分で綺麗に掃除すれば掃除するほど、外側は綺麗に見えるけれども、自分を主とし、共に生きる隣人を従とする、いや自分を主とする者は、神さえも従とする、そういう生き方になっていることを、主イエスは、当時流行りのたとえをもって鋭く指摘しているんです。

　ところで気になったかも知れません。駆け足で通り過ぎたので説き明かさなかった「ヨナのしるし」とは何でしょうか？何を意味しているでしょうか？

40ヨナが三日三晩、大魚の腹の中にいたように、人の子も三日三晩、地の中にいるからです。

　この「人の子」というのは、メシア・救い主の称号です。そして、救い主が三日三晩地の中にいる、というのはどういうことでしょうか？
　この「地の中」とは直訳は「大地の心臓に」なんですが、要するに、三日間、よみにくだられた、ということなのです。ということはつまり、十字架にかかられ、死んで葬られ、よみにくだって、三日目に死人のうちよりよみがえってくださった。このことを言っているわけです。

　つまりそういう私たちのどうしようもない罪を、自分勝手に生きようとしても、真面目にきっちり生きようとしても、結局は自分を神としてしまい、自分を主としてしまうという罪に、私たちは繰り返し陥りますけれども、その罪を主はその十字架において全て担ってゆるしてくださいました。その主イエス・キリストの十字架の恵みに、私たちは浸るのです。
　その主の十字架のみもとにひざまずく時にこそ、私たちは「上がって行く呪い」から解放されるのです。人生で出会うすべてのものを、神や教会や聖書でさえも、自分を強めるために使うという、自分を主とし、自分を神とする人生は、いつか破綻することが目に見えていますし、神も隣人をも査定する目線は、関係を壊してしまいます。しかしそれらから解放されて、真に神を主として、人を人として重んじて生きるように招かれているのです。

お祈りをいたします。
恵みとあわれみに富みたもう、私たちの主イエス・キリストの父なる御神
あなた様は御子主イエス・キリストをお遣わしくださり、ヨナのしるしを私たちにお与えくださいました。今は悪い時代の風潮が広まっているように見えます。あわれみ、慈愛の心が世界からどんどん消えているかのように見えますけれども、しかし世界のあらゆるところで足元から、あなたのヘセド、真実の愛、あわれみ、慈愛の心が立ち現われています。私たちも繰り返し罪や過ちを犯す者でありますけれども、しかし自らを主とし神とすることから降りて、査定目線からもおりて、神を神として拝み、隣人を対等な目線で、人間と人間として見れますことを心から感謝して、主イエス・キリストの御名によってこの祈りをみ前におささげいたします。アーメン。