📗【文書版】礼拝メッセージ『あまりにも寛大な種を蒔く人が見た夢』　2023年7月16日　新約聖書　マタイの福音書第13章1～9節、18～23節

📗遅くなりましたが一昨日の礼拝メッセージのテキスト版をここに掲載いたします。
✴️礼拝メッセージ『あまりにも寛大な種を蒔く人が見た夢』　2023年7月16日
新約聖書　マタイの福音書第13章1～9節、18～23節

1その日、イエスは家を出て、湖のほとりに座っておられた。
2すると大勢の群衆がみもとに集まって来たので、イエスは舟に乗って腰を下ろされた。群衆はみな岸辺に立っていた。
3イエスは彼らに、多くのことをたとえで語られた。「見よ。種を蒔く人が種蒔きに出かけた。
4蒔いていると、種がいくつか道端に落ちた。すると鳥が来て食べてしまった。
5また、別の種は土の薄い岩地に落ちた。土が深くなかったので、すぐに芽を出した。
6しかし、日が昇ると焼けて、根がないために枯れてしまった。
7また、別の種は茨の間に落ちたが、茨が伸びてふさいでしまった。
8また、別の種は良い地に落ちて実を結び、あるものは百倍、あるものは六十倍、あるものは三十倍になった。
9耳のある者は聞きなさい。」
18　ですから、種を蒔く人のたとえを聞きなさい。
19だれでも御国のことばを聞いて悟らないと、悪い者が来て、その人の心に蒔かれたものを奪います。道端に蒔かれたものとは、このような人のことです。
20また岩地に蒔かれたものとは、みことばを聞くと、すぐに喜んで受け入れる人のことです。
21しかし自分の中に根がなく、しばらく続くだけで、みことばのために困難や迫害が起こると、すぐにつまずいてしまいます。
22茨の中に蒔かれたものとは、みことばを聞くが、この世の思い煩いと富の誘惑がみことばをふさぐため、実を結ばない人のことです。
23良い地に蒔かれたものとは、みことばを聞いて悟る人のことです。本当に実を結び、あるものは百倍、あるものは六十倍、あるものは三十倍の実を結びます。」

　主の恵みと平安が皆さんの上に豊かにありますように。
　この日も皆さんとご一緒に主の日の礼拝にあずかれますことを心から感謝いたします。

　ひところ、『木を植えた男』という絵本が話題になりました。ブフィエという名のひとりのおとこが廃墟となった森を再生させようとして、人知れず、木を植えていきます。ときは第一次世界大戦、さらに第二次世界大戦といった時を通りますが、ブフィエはただ木を植えます。話の語り手だけが、ブフィエがしていることを知っています。ブフィエ自身は、誰にも自分のしていることを言いません。
　やがて森が再生されてきたころ、何も知らない人々は「森はこうして再生するのか」「自然の力はすごいな」と感心します。でも、ブフィエは何も語りません。それどころか、その村の森林保護官は、ブフィエに向かって「この森を荒らしたりすることのないように」と命令するということまで起こります。
　でも、ブフィエは何も語らず、黙々と木を植え続けて行きました。という話です。

　それで、この「木を植えた男」の話について、とっても印象的なことを言っている人がいるんですね。

人は木を植える。木は手紙だからだ

　って言うんですね！木は手紙、とっても印象深いことばですね。どういうことでしょうか？その人は、4000万本の木を植えた日本人の生態学者のことを紹介しながら、こう言うんです。

　人はなぜ、木を植えるのだろう。
　自然をとりもどすため？
　地球を守るため？

　そうだと思う。
　けれど、それだけではない。
　なぜなら人は、人生のさまざまな場面で木を仰ぎ見ようとするから。
　ふだんは気にもとめない人でさえ、桜や紅葉の季節には目をとめる。

　まだかまだかと待ちわびる姿はまるで、懐かしい人からの便りを待つ人のようでもあるし、忙しい毎日にすっかり忘れていたところへ突然便りが届いて驚いているようにも見える。

　人生の岐路に立たされたとき、寂しさで打ちひしがれているとき、木は最高の友になる。
　そっとよりそい、だまってそばにいてくれる。
　それだけで、心は癒やされてゆく。

　人が木を仰ぎ見るとき、そうやって同じように木の側で過ごした人からの手紙を受け取っているのかもしれない。

　こういうことですね。木は文字の書いていない無言の手紙だというわけですね。
　植林をする人の中には、あるいはもしかしたら、そういうことを考えないで、ただ一本でも多く植えようとしている人もいらっしゃるかもしれません。けれども、木を植える人の心には絵がぱーって浮かんでいると思うんです。便りを待つように、その木を受け取ってくれる人の笑顔が浮かんでいるかもしれない。あるいは、一面の緑、おおーーきな森と、水のせせらぎと、木々に戯れる生き物たちの絵が浮かんでいるかもしれないんですね。

　木を植えた男ブフィエは、どんぐりを地面に埋めて行きました。そうやって種を蒔いていく、ということは、未来を夢見ること、しかも、確かな未来を夢見ることであると思います。

　今日は、イエス様の種を蒔く人のたとえ話です。クリスチャン生活が長い方は、何度も何度も聞かれた譬え話だと思います。マタイだけじゃなくて、マルコもルカも福音書に記しているんです。それだけに教会で聞く機会の多い話。
　子どもの教会・教会学校でもおなじみの話です。
　私は教会学校で教えた経験が乏しいものですから、あまり子供向けに話すことが得意ではないと思うんですけれども、それでも娘がもっとうんと小さい頃に、赤ちゃん向けくらいのミニ聖書えほんがありまして、イエス様の種蒔く人のたとえ話が載っていたんですね。そこで、こうやって鳥のマネをしながらこっこっこっことやりますと娘は大喜びしてくれました。こういうのって子供はとっても大好きなんですね。だから私がまた教会学校・子どもの教会で語るとしたら、たとえばこんな風に語るでしょうか。鳥がひゅーってやってきて道端の種をひゅうって、食べちゃいました。
その次は、岩がいーっぱいあるところに落ちて、でも、お日さまの光がね、じりじりじり、じりじりじり、って照らしてきて、芽が出てもしなしなしな～、ああやっぱりダメだった。
　その次の種は、いばらの中に落ちちゃった。いばらが、わさわさわさ、わさわさわさ、って伸びてきて、種から芽が出ても、お日さまの光をぜーんぜんあびられないで、ああやっぱりだめだった。
　次の種は、良い地に落ちました。すると、ぐんぐんぐんぐん育って、100倍、60倍、30倍の実を結びました。
　でも、そんな教会学校で、子供の頃、何度もこの種を蒔く人のたとえ話を聞き続けた牧師先生が、その頃の思い出を語って下さっていました。1年生の時、喜んで聞いている。3年生くらいまでは、素直に聞いている。けれども、たいていその教会学校の話は、こんなふうに終わるんです。「良い地に落ちた種はぐんぐんぐん育って、100倍60倍30倍の実を結びました。皆さんも、良い地になりましょう。みことばを素直に聞く、良い子になりましょう。」
　五年生六年生くらいになるともう何だかちょっとシラケて聞いているんですね。

　実は子供向けの聖書のおはなしだけではありません。皆さんの中で、このイエス様の「種を蒔く人」の話が、私の愛唱聖句だ、という方はいらっしゃるでしょうか？このみことばが好きで好きでたまらない！という方は、おそらくあまりいらっしゃらない、と思いますね。
　それには、ちゃんと理由があるんです。私もこういう説教をかつてしたかもしれまえん。大人向けの説教であっても、たいていこんな風に語られます。皆さんは、どのタイプの土地でしょうか？
　Aタイプは、誘惑に弱いタイプです。世の誘惑、鳥というのは悪魔・サタンですから、悪魔サタンの誘惑に流されて、みことばが心に根付かない。これが道端タイプ。
　Bタイプは、岩地タイプ、熱狂的に、あるいは一時の感情で信じるタイプ。すぐにイエス様を信じるけれど、困難や迫害が起こったら、すぐに教会に来るのも聖書を読むのもお祈りするのもやめてしまう、熱しやすく冷めやすい、根付かないタイプですね。
　Cタイプは、いばらタイプ。みことばを聞くけれども、この世の心遣い、生活の心配がみことばをふさいでしまう、それから、信仰よりも経済を優先するので、心の中にみことばが育たないタイプです。
　Dタイプは、良い地タイプ、みことばがすくすく育って、皆さんの中に、御霊の実、あるいは伝道の実が、100倍60倍30倍と育っていきます。
さあ皆さん、みことばを素直に聞いて、みことばに聴き従う、良い地になって歩んで行こうではありませんか。
　そんな風に結ばれる説教が語られることが多いと思います。でも、それですと、けっきょく先に話した教会学校の結論と同じになってしまいまして、良い子になりましょう、というのと、変わらないじゃないか。良い信仰者になりましょう、というメッセージですと、おそらく人の心は、深く慰められたり、励まされたり、イエス様の愛に感動したり、っていうのは、多分ほとんど起こらないんです。

　先ほどの、教会学校で、5年生6年生になると、シラケてきたというような体験をお語りになった牧師先生が、ご自身自戒を込めてと言いながらおっしゃっていたんですけれども、退屈な説教というのは、聖書に対する最大の冒涜だって言うんですよ。(退屈ということばは少々語弊があるかもしれませんが)これ私も自戒を込めて言っています。私も昔そういう説教をしたことがあると思いますから反省と自戒を込めて言っていますけれども―退屈な説教と言うのは、抑揚が無いとか、話の展開が平坦だとか、話術が巧みでないとか、小難しい話をしすぎとか、神学や文法のことを言う分量が多すぎるとか、まぁ色々ありますけれども、でもそれは本質的なことじゃなくて、一番退屈なのは、聖書のみことばが道徳の話になっちゃう時なんだ、ってその先生はおっしゃるんですね。
　で、私も礼拝の説教の聴き手として、色んな説教を聞いて来まして、実感として思います。道徳の説教、良い人になりましょう。良い信仰者になりましょう(これは律法だけで福音の無い説教ということもできるでしょう)。終始そういう説教ですと、聞いた後に心が萎えていくんですね。
でも、イエス様は道徳の話をなさっているんでしょうか？退屈な話をなさっているんでしょうか？絶対にそんなことはありません。イエス様の話は、もちろんその厳しさに立ちすくむ思いがすることもありますけれども、驚いて、わくわくして、心の底から喜びが湧きあがってくるようなものでしょう。聖書はそんな書物なんです。みことばそのものがわくわくしながら語られるのを待っている！生きていてドックンドックン鼓動してるんですよ。私も毎回わくわくしながら語らせていただいています。

　じゃあ、道徳の話ではない、としたら、何なんでしょうか？私たちはこれまで、このたとえ話について、ずっと考え違いをしてきていたのかもしれません。私たちは一所懸命、自分はどの土地だろうかと心配し、AとBとCの土地になっちゃいけない。私がDの土地になる確率を上げるために、信仰的努力を頑張ってしていこう、と思うか、「私はAでもBでもCでもない。私はオッケー」と思ってAやBやCと思われる人を心の中で見下すか、「いや、もうえいですわ」と思って心が萎えるかのどれかになるのだとしたら、…何かが違う。そうではないでしょうか？

　私たちはもしかしたらこれまで、イエス様のこのたとえ話の、読み違い、聞き違いをしてきていたのかもしれません。ここ数年、何人かの牧師先生が指摘していらっしゃるのですが、このたとえ話は、「四つの土地のたとえ話」とは呼ばれない。そうではなくて、何百年もの間、このたとえ話は、【種を蒔く人のたとえ】と呼ばれて来たんです。イエス様ご自身が「種を蒔く人のたとえ」っておっしゃっているんです(18節)。ですから私たちはこれまでとはたぶん逆の方向からこのたとえを捕らえる必要があって、イエス様はこのたとえを語られることによって、そばで聞いている弟子たちに、自分が、道端タイプ、岩地タイプ、茨タイプ、良い地タイプのどのタイプの土地あるいは種か、自己チェックしてみなさいなんて、うながしていらっしゃらないんです。それはこんにちの私たちに対しても同じです。
　自分の中を見つめてみなさい、ではなくて、別のことにイエス様は注目させようとなさっています。「種を蒔く人」のたとえとイエス様自身がおっしゃっていますから、この種蒔く人に注目してみなさい。
　この種蒔く人には、おかしなところがあります。あまりにも非効率で、無駄の多い蒔き方をしているんです。普通は良い地だけを選んで、そこに全部蒔けばいいのに、と、思います。いやいやこの当時は、そういう蒔き方をしていたんですよ、と、この当時のこの地方の農夫のやり方が説明されることもよくありますが、たぶんイエス様は、そんなことじゃなくて、あまりにも豪快で、あまりにも寛大で、あまりにも気前のよい蒔き方をする、この種蒔く人に注目しなさい。そうおっしゃっているんです。
　種は御国のことば、つまり神のことば、みことばです。種を蒔く人とは、神、そしてイエス様です。神のことば、ゆるしのことば、救いのみことば、それを、地面がたとえ岩地であっても、いばらがわさわさ生えた土地であっても、鳥がすぐやってくるような道端であっても、そんなことは一切関係無しに、ただひたすらに気前よく種をばらまく人の話です！この種を入れている袋は、不思議な袋です。蒔いて蒔いても種が減ることはない。いやむしろ、蒔くたびごとに、どんどん種が増えて行って、蒔いても蒔いても蒔き足りない！そして、やがて収穫の時が来ると、近所中の倉という倉が、屋根いっぱいまで収穫であふれるということを夢見て信じて疑うことのない、そんな種蒔く人の話です！冒頭でお話しました「木を植えた男」と似て、心の中にはブワーっと、大きな大きな絵が広がっている！
　そうしますと、このたとえが、初めて聞いたかのように、全く新しいたとえ話のように私たちの耳に、心に聞こえ始めてきます。ここで私たちが注目させられるのは、私たちの内の足りない部分ではなくて、私たちを造られた方の愚かしいほどの寛大さです。それは、土地の状態にこだわらず、種をケチらずに、良い土地、悪い土地のどこにでも蒔くお方です。良し悪しを簡単に決めず、永遠から永遠にわたって、ご自分の種袋に手を突っ込みながら、必ず豊作をもたらす真理の種によって、被造物を覆い尽くそうとしておられる方なのです。

　ある日、種を蒔く人が種まきに出かけて行きました。蒔いている間に、ある種は道端に落ち、鳥が来て食べてしまいました。そこで、彼は種袋を置き、ネットショップで鳥よけを見つけて、クリックしました。その日のうちに配達されてきたその鳥よけを、さっそくしかけて、あきらめずにもう一度その道端にも種を蒔きました。
　それから、今度は蒔いた種がいくらか石だらけの土地に落ちたことに気が付きました。そこで、彼はまた種袋を下に置き、一輪車とスコップを持ってきました。数時間かけて石ころを掘り出し、その石たちを何か別のことに利用できないかと考えながらも、もう一度その石が取り除かれた土地に種を蒔きます。
　続いて目の前に現れたのは、芽を出したばかりの小さな苗たちの成長を阻んでいるイバラの茂みでした。そこで彼は、また種袋をおいて、除草剤を家じゅう捜し回りましたが見つからず、とうとう自分の手で、いばらを引き抜くことに決めました。トゲでいっぱいのイバラを引き抜いた手からは、血潮が流れ滴りました。けれども、その手から血が滴り落ちるのも、いとうことはありませんでした。なぜなら、100倍60倍30倍の収穫を夢見て、また、その一粒の種と、ひとつひとつの土地をあまりにもこの種蒔く人が、愛して愛してやまなかったからです。

　月日はめぐり、ある日のこと、種蒔く人は驚きました。あの鳥がやってくる道端にも、石を取り除いた地面にも、イバラでいっぱいだったあそこにも、誰もがこりゃあ絶対だめだと思うようなひどかった地にも、実が実っているのを見ました。もしかしたら良い地に負けないくらいに実っているのです。種蒔く人は、嬉しさがこみあげてきて、笑い始めました。初めはくすくす、くすくすと。次第に笑い声は大っきくなって、最後には天まで届くような大笑いをするのです。
　種蒔く人は、どんどんどんどん楽しくなってきました。世界中を、この喜びで満たしたいと思いました。今度は種も地面も喜んで、この種蒔く人と一緒に喜びたいと思いました。
　あまりにも実ったので、あふれた種が近所中に転がって行きます。ぽろり、ぽろり、また一粒、ぽろり、ぽろり、また一粒、やがてざざぁーっと大～きなうねりとなって、あなたの愛する人のもとに届いて行きます。

お祈りをいたします。
恵みとあわれみに富みたもう、私たちの主イエス・キリストの父なる御神。
あなた様は、種蒔く人を遣わしてくださいました。あなた様の国の種です。この不思議な種を蒔くことに、あなたの愛するひとり子は、十字架の上で命をかけてくださいました。あまりにも寛大で、豪快で、非効率で、愚かしいほどに、種も地面も愛されるのです。誰もが、こんなところには作物も実るまいと思った土地を、あなたはほっておかれません。種は、そこにも蒔かれるのです。ご自身がいばらによって裂かれ、血潮がしたたり落ちても、蒔き続けてくださいます。そしてもう一年、もう一年、と実るのを待ち続けてくださいます。おおーきな絵が浮かびます。天の倉には、まばゆいばかりの黄金(きん)色の実が満ちていることを。その中に、私たちもいることを。そして、私たちの愛する人々もいることを。喜びにあふれて、主イエス・キリストの御名によって祈ります。アーメン。