📗【文書版】✴️礼拝メッセージ「あなたの小さなリンゴの木を」新約聖書　マルコの福音書第13章24～37節　2023年12月3日

✴️礼拝メッセージ「あなたの小さなリンゴの木を」
新約聖書　マルコの福音書第13章24～37節　2023年12月3日

24　しかしその日、これらの苦難に続いて、太陽は暗くなり、月は光を放たなくなり、
25星は天から落ち、天にあるもろもろの力は揺り動かされます。
26そのとき人々は、人の子が雲のうちに、偉大な力と栄光とともに来るのを見ます。
27そのとき、人の子は御使いたちを遣わし、地の果てから天の果てまで、選ばれた者たちを四方から集めます。
28　いちじくの木から教訓を学びなさい。枝が柔らかくなって葉が出て来ると、夏が近いことが分かります。
29同じように、これらのことが起こるのを見たら、あなたがたは、人の子が戸口まで近づいていることを知りなさい。
30まことに、あなたがたに言います。これらのことがすべて起こるまでは、この時代が過ぎ去ることは決してありません。
31天地は消え去ります。しかし、わたしのことばは決して消え去ることがありません。
32　ただし、その日、その時がいつなのかは、だれも知りません。天の御使いたちも子も知りません。父だけが知っておられます。
33　気をつけて、目を覚ましていなさい。その時がいつなのか、あなたがたは知らないからです。
34それはちょうど、旅に出る人のようです。家を離れるとき、しもべたちそれぞれに、仕事を割り当てて責任を持たせ、門番には目を覚ましているように命じます。
35ですから、目を覚ましていなさい。家の主人がいつ帰って来るのか、夕方なのか、夜中なのか、鶏の鳴くころなのか、明け方なのか、分からないからです。
36主人が突然帰って来て、あなたがたが眠っているのを見ることがないようにしなさい。
37わたしがあなたがたに言っていることは、すべての人に言っているのです。目を覚ましていなさい。」

　主の恵みと平安が皆さんの上に豊かにありますように。
　この日も皆さんとご一緒に主の日の礼拝にあずかれますことを心から感謝いたします。

　皆さんは、140字の戦争～SNSが戦場を変えた～という本をご存じでしょうか？ディビッド・パトリカラコスという人が書きました。で、どうして140字かというと、140字というのでピンと来た方もいらっしゃると思います。ツイッターなんですね。今はXという名前に変わっていますけれども、パソコンやスマホを持っていれば140字までの短い文を写真や動画もつけることができて誰でも投稿できて世界中の人に見てもらえるSNS・ソーシャルネットワーキングサービスですね。これが戦場を変えるっていうんですね。どういうことでしょうか？
　これは2019年に日本語訳が出た本なんですが、私は去年、ロシアがウクライナ侵攻を始めた後に読みました。もちろんこの本はロシアのことも載っているんですけれども、大きく取り上げられているのは、ファラ・ベイカーという、パレスチナ・ガザ地域に住んでいた、―今は市民ジャーナリストという扱いになっていると思いますけれども―当時の16歳だったパレスチナの民間人の少女の投稿なんですね。
　彼女が英語ができましたので、2014年、イスラエル国防軍による、ガザ侵攻というのがありました。そのまさに、イスラエル軍のガザに対する爆撃が行なわれているところであるとか、そういうのをすぐに撮影してツイッターにあげたわけですね。自分のいのちもいつ失われるか分からない、そんな中で投稿を続けた。そうすると、やがてそれが世界中、特に英語圏に拡散されるようになりまして、たった一人の少女の投稿が、世界中の世論(せろん)を変えてしまったんですね。
　どういうことかというと、私もそれを読んで、頭を切り替えるのに苦労しました。というのは、イスラエル・つまりユダヤ人は、歴史の被害者として歩んできたじゃないか。あの反ユダヤ主義―約2000年間反ユダヤ主義を広めたのは教会の大きな汚点であり罪ですが―でヨーロッパ中でいじめられて差別されて迫害されて、極めつけはあのナチス・ヒトラーによって、ホロコーストで600万人のユダヤ人が殺されてしまった。
　そういうわけですから、ユダヤ人・イスラエル人は被害者、それ以外の思考方法が私の中に無かったんですね。ところが、アレ？イスラエルって昔は被害者だったけれども、今はけっこうひどいことやっているよね、という側面もあることが分かってきたわけですね。だからどっちが正義どっちが悪という単純なものではない。ということが分かった。それが当時英語圏で彼女のツイートを見た人の持った感想に近いんじゃないかと思います。
　ファラ・ベイカーは、アメリカの外交専門誌で「ガザ侵攻を140字でカタログ化した」という理由で、「世界の頭脳100人」に選ばれました。それは、活動家、とか、プロパガンダを流す人、ではなくて、「記録者」と呼ばれたんですね。「記録者」ただ自分の身近で起こったことを、そのまま自分の物語として記録して発信しただけなんですね。これは現代版「アンネの日記」と呼ばれることもあります。

　というわけで、このパレスチナ問題に、非対称性がある、ということは前回も申し上げたと思います。そのファラ・ベイカーが有名になった2014年のガザ侵攻では、イスラエル側の死者が73人だったのに対して、パレスチナ人の死者は2250人と約31倍。その前の2008年から2009年にかけてのガザ侵攻にいたっては、イスラエル側の犠牲が9人だったのに対して、パレスチナ側の死者が1400人近い、これは約150倍にも当たる数字なんですね。
　その他にも色々と非対称性がありますけれどもここでは省きます。

　その非対称性に関連して、日本の文筆家であり、戦史、紛争史研究家の山崎雅弘さんという方が分かりやすい図を描いて説明してくださっていました。

これはあらゆる差別や抑圧や人権侵害においても言えることなんです。
　にせの中立と、しんの中立の違い、ということですね。どっちもどっちという論は実は偽の中立論ということですね。ですからこの図を今回のパレスチナ問題に当てはめると、イスラエルもパレスチナもどっちもどっち、というのは実は冷たく笑うと書く冷笑主義と同じ位置であって(小さい〇を指さして)ここなんですね。偽の中立である、と。明らかにパレスチナに対してはイスラエルはやりすぎている。だからここまで戻れ、と言うのが本当の中立なんですね。つまりイスラエル支持とかパレスチナ支持とかいう話ではないんです。抑圧、弾圧している側に、やめろ、って言うんです。だからホロコーストの時にはナチスにやめろと言うし、今の時にはイスラエル軍にやめろと言うんです。イエス様は、これまで続けて、主イエスの再臨を待ち望んで生きる者の姿勢を教えてくださいました。その時に、先週ですけれども私は、靴屋のマルチンの話もいたしました。トルストイが書いた民話ですね。冬の日、寒そうにしていたり、ひもじそうにしていた人たちに親切にした靴屋のマルチン、その日の晩、彼らがマルチンの部屋に現れて、「マルチン、わたしが分からなかったのかね？あれは皆、わたしだったのだよ」いうイエス様の声を聞いた。イエス様が羊とやぎのたとえ話をなさる時、右側により分けられた羊に対して、「これらの最も小さい者に対してしたことは、わたしにしたことなのである。」と声をかけてくださいました。この最も小さい者とは、色んな解釈がありますが、最終的には、身近で、あるいはもっと広げて世界中で、もっとも抑圧され、もっとも社会の周縁に追いやられた人たちです。ですから釜ヶ崎で日雇い労働者の方々と共に生きる生き方をお選びになった本田哲郎神父様は、ご自分で聖書を訳される時に先週の箇所の「最も小さく【された】者たち」と訳しました。そうです。小さく【されて】いるんです。なぜなら、どんな社会を設計するかによって、どんな人々が社会の周縁に追いやられるか、ということが変わってきます。だからしっかり目を覚まして、ものごとをよーく見つめて、身近で、あるいは世界中で小さくされた者たちのために声を上げて行くことも良いことだと思います。
　
　今日のみことばは、待降節第一主日に入りまして、待降節はイエス様の降誕と再臨を待ち望む時ですから、読まれるみことばも世の終わり、終末とイエス様の再臨が語られている箇所が定められていて朗読されます。今日はマルコの福音書の中の「小黙示録」と呼ばれる箇所です。終末の恐ろしいことが語られているように聞こえます。目を覚ましていなさい、と繰り返し主イエスはお語りになって、この章の最後には色んなことを任せて旅に出る家の主人のたとえをお語りになって、この主人は突然帰ってくる、とおっしゃって、この主人はイエス様のことですね。イエス様がいつの日にか、再びこの世界に来てくださる、教会が「再臨」と呼ぶできごとをお語りくださっています。
　それで、その再臨ということを考える時に、これは織田昭先生という牧師のことばを紹介しますと、目を覚ましていなさいとはどういう態度が求められているかということです。

目を覚ましているっていうのは、
一部の人がするように、時のしるしを見張っていることではない。
一部の人がダニエル書読んで黙示録を計算してキリスト再臨の時を量って騒ぐことではない。
あるいは核戦争が世の終わりであるみたいに近視眼的にうろたえることではない。
備えはできているか、ということは自分のへそのごみを数えてうろたえることではない。
自分がきれいか、準備ができているか、きよらかか、そんなことじゃない。
主の務めを果たして安心しようとして宗教活動に狂奔することではない。
結局目をさましておるということは、
主が備えてくださった、【向こう側からの備え】を大事にして(この「向こう側からの備え」ということばは、私が大切だと思って傍線を引かせていただきました。向こう側、つまり人間側の備えではなくて、神さま側が下さる備えですね)、それをいただいてどっしり安心していることです。
そして安んじて自分の務めに励んでいることです。

　どんな小さな、くだらないように見える務めであっても―この務めとは、お金を得られる得られないにかかわりません―、その務めを落ち着いて、日々こつこつとして行くことが、宗教改革者マルチン・ルターが言ったとされていることば、「もし明日世の終わりが来るとしても、わたしはきょう、りんごの苗木を植える」ということと通じるし、またパウロがテサロニケ人への手紙で「落ち着いた生活をし、自分の手で働きなさい」と言っていることと通じるわけです。
　
　そういうわけで、今日のみことばは、ひとつひとつ、これは何を指していて
これは何を指していて、ということを37節まで全ての節を網羅して細かく解説して行くことはいたしません。それはそれほど有益なことではないと思われるからです。マルコの福音書の第13章は小黙示録と呼ばれていると先ほど申しました。なぜそう呼ばれているんでしょうか？福音書の中でも終末のことを書いていたら、ヨハネの黙示録のような22章もある大っきな黙示録じゃなくて1章分の小さな黙示録かと言ったら、そういうことともおそらく少し違うと思います。終末のことを書いているからというよりは、黙示文学の手法で書かれている部分が多いので、小黙示録と呼ばれている、と、こういうことだと思います。もっとも、マルコの第13章の場合、直接的な表現も多いです。
　24節から26節をもう一度お読みしましょう。

24　しかしその日―その日っていうのは再臨の日ですね―、これらの苦難に続いて、太陽は暗くなり、月は光を放たなくなり、
25星は天から落ち、天にあるもろもろの力は揺り動かされます。
26そのとき人々は、人の子―人の子っていうのはイエス様のことですね―が雲のうちに、偉大な力と栄光とともに来るのを見ます。

　再臨の日の様子が描かれているとして、これをどんなふうに聞き取ったらいいのでしょうか？これを字義通りつまり文字通りですね、太陽は暗くなり、と取り、これは、日食のことだろうか？月は光を放たなくなり、というのは、ハテナ？これを月食としたら、日食と一緒に起こることはありえない。その次の25節ですね、星は天から落ち、これはおかしい！となるわけですね。なぜなら夜空に輝く星は、恒星と言って、太陽のように核融合で燃えて明るく輝く星です。比較的近い星でも何光年つまり何十兆キロメートルも離れていて、大きさは地球の数百倍以上あります。そんなのが落ちてくるわけがないということになります。これはどういうふうに取るべきでしょうか？

　ある先生が説明をしてくださっていました。これはたとえば旧約聖書のイザヤ書の第13章を考えれば分かるんですね。イザヤ第13章の10節、

天の星、天のオリオン座はその光を放たず、
太陽は日の出から暗く、月もその光を放たない。

　これはイザヤは何を言っているのでしょうか？それは宇宙の崩壊でも天体の異常でもなく、大国バビロンの滅亡を指して言っているんです。預言者イザヤは政治的大激変を語るのに、宇宙崩壊の言語を使ったわけです。これはよく私たちにも分かることですね。日本語の言い回しで、大人物が亡くなった時に、「巨星落つ」って言いますよね。これは文字通り巨大な星が地上に落ちたのではなくて、大きな影響力を持つ人物が死を迎えた、という話ですよね。
　ほかにも預言者エゼキエルは、エジプトが滅ぶさまをこう言いました。

エゼキエルは書第32章7～8節

7あなたが吹き消されるとき、わたしは空をおおい、星を暗くする。
太陽を雲でおおい、月が光を放たないようにする。
8わたしは空に輝くすべての光をあなたの上で暗くし、
あなたの地を闇でおおう。―神である主のことば―

　まるで宇宙の崩壊のようにエジプトという大国の滅亡を言っているわけですね。こういうのも黙示文学的手法と言います。直接的に言わないで、象徴的に表現するわけですね。ですからこういう黙示文学的表現を聞くと、文字通りに取らないで、象徴的に取るわけですね。
　これはよく分かることではないでしょうか？たとえば、何かの集まりで、女性がですね、席をはずそうとして、「あれ、どうしたの？」と聞いたら、「ちょっとお花を摘みに」と言った場合どうでしょうか？文字通り取って、いやこのへんにお花が咲いてる公園とか野原とかあったかな？っていう話じゃないですよね。「トイレに行ってきます」という意味ですよね。また時代劇で、悪代官と越後屋のやりとりで、「こがね色の菓子でございます」と言ったら、文字通り、「うん、金ぴか色した美味しいお菓子をくれるのかな」とは取らないですよね。「わいろ」という意味ですよね。これと同じように、話者やその文章の著者が、象徴的表現で来たら、文字通り取らないで、「お花摘み」とか「わいろ」の時のように、話者や著者の言わんとしていることを正確に汲み取り、「元の意味を復元して取る」ということですね。だから黙示文学は象徴的解釈をした方がいいんです。ダニエル書やエゼキエル書やヨハネの黙示録は特に、象徴的表現が多いものですから、それを字義通りに取ると変な方向に行っていって、文字通り今のイスラエルがあのパレスチナの地に住むことが再臨の条件、ということにもなってしまうんですよね。
　ですからイエス様は旧約時代からのユダヤの黙示文学的表現を使って、再臨の時には社会の大激変が起こるんだと言うことを言っておられると考えることもできます。あるいは当時は月とか太陽とかは当時の異国の異教の偶像の神々の象徴だとも取れます。その偶像の光が人々を惑わさなくなる、まことの光なるイエス・キリストの光が人々を照らすのだ。ということを黙示文学的表現で言っておられるのだと考えることもできます。どっちの解釈が正しいというよりは、どちらも重なっているんでしょうね。26節の

人の子―つまりイエス様―が雲のうちに、偉大な力と栄光とともに来るのを見ます。

　この雲のうちに、というのは、前の翻訳では、雲に乗って、となっていたんですよね。雲に乗ってといったら何を思い浮かべるでしょうか？孫悟空の筋斗雲でしょうか？今の翻訳の方が良くなっているんですけれども。英語でいうinですから、うちにが適切な訳だと思いますけれども、ただこの雲というのは、旧約聖書以来の伝統では、神の栄光をあらわすんですね。あるいは旧約では、雲は聖霊を表す、と言う人もあります。いずれにせよ、神の栄光をおびて、主イエスは天から降って来られるわけですから、孫悟空の筋斗雲のようなものを想像する必要は無いんですね。そして27節、

27そのとき、人の子は御使いたちを遣わし、地の果てから天の果てまで、選ばれた者たちを四方から集めます。

　この御使いというのは、アンゲロスということばです。英語のエンジェルにあたることばですから、つまり天使と普通は解釈されることが多いんですけれども、もとは単純に使者とかメッセンジャーと意味です。だから天的なメッセンジャーである天使であるかもしれないし、もっと現実的に、世界中に宣教に行った伝道者たちのことだと考えることもできます。そして誰を集めるのか？この選ばれた者たちですね。ある人は何の説明も加えずにこう言いました。「選ばれた者たち、すなわち教会」これは途中を色々省いていますけれども正しいことです。つまり、まずイスラエルが、神の選びの民として選ばれました。しかし新約時代になって、まさしく新約と呼ぶように、新約とは新しい契約です。イエス・キリストがもたらしてくださるキリストの血による新しい契約によって、私たちは神の民とされました。かつてアブラハムに与えられた祝福の契約が、私たちにも与えられた。なぜなら使徒パウロがガラテヤ書の中で、「信仰によって生きる人々こそアブラハムの子である(ガラテヤ3:7)」と言っているからなんですね。
　
　31節のことば、

31天地は消え去ります。しかし、わたしのことばは決して消え去ることがありません。

　この消え去るということばが二回出ていますけれども、これは両方とも、前の翻訳では、滅びるとなっていました。「天地は滅びても、わたしのことばは決して滅びない。」このイエス様の力強いことばです。確かに、歴史の中で何度聖書が焼かれても、イエス様のことばは滅びずに、2000年間保たれてきました。過ぎ去ってゆく人々の葉っぱのようにひらひらと忘れられていく言葉ではなくて、これは永遠に人々を生かして行くことばである。それはそうでしょう。けれど、ここで大事なことは、「あなたは滅びない」ということなんです。なぜでしょうか？それは、神のことばであるイエス・キリストが、私たちの身代わりに滅びへと行ってくださったからです。あの十字架の上で。父なる神に見捨てられるという滅びへと、行ってくださった。だからその代わりに、罪のゆえに滅ぶべきだった私たちが救われたのです。
　この方は滅びたままでしょうか？いいえ！主は復活なさいました。三日目に。それによって私たちの罪のゆるしが確かなものとされました。救われたっていうのは選ばれたっていうことです。神の選びというのは、無条件で絶対です。その契約は、何があっても変わることがないんです。だから、だから、再臨の時に、私は残されるんだろうかとか、より分けられた羊になるんだろうか、ヤギになるんだろうか、とか、1タラントを土に埋めた外の暗闇に放り出されるしもべになるんだろうか、とか、5人の愚かな乙女になるんだろうかとか、そういった心配は一切いらないのです。なぜなら一度主イエスの救いを受けた者はその救いを失うことは決してないからです。
　
　主は言われます。目を覚ましていなさい。再臨を待ち望む者として生きる、目を覚ました生き方は、もちろん物理的に寝ないで頑張れという根性論ではありません。結局のところ、羊とヤギの話のように、最も小さくされた人々を愛して生きる、ということなのです。しかも上から目線で親切にしてあげる、ではありません。思い出してみましょう。私たちがなぜ選ばれたかを。イスラエルの民が神に選ばれた時もそうでした。

旧約聖書　申命記第7章6～8節にはイスラエルへのことばがこう記されてあります。

6あなたは、あなたの神、主の聖なる民だからである。あなたの神、主は地の面のあらゆる民の中からあなたを選んで、ご自分の宝の民とされた。
7　主があなたがたを慕い、あなたがたを選ばれたのは、あなたがたがどの民よりも数が多かったからではない。事実あなたがたは、あらゆる民のうちで最も数が少なかった。
8しかし、主があなたがたを愛されたから、またあなたがたの父祖たちに誓った誓いを守られたから、主は力強い御手をもってあなたがたを導き出し、奴隷の家から、エジプトの王ファラオの手からあなたを贖い出されたのである。

　ここで8節で、あなたがたが主を愛したから、とも言われていないんです。逆です。主があなたがたを愛されたから！人間側からではなくて、神さま側からの一方的な愛とあわれみです。しかも、あなたがたは、あらゆる民のうちで最も数が少なかった。それだから選ばれたんだ。ここである人は言います。「選びの信仰は常に、弱き者、抑圧され苦しむものを優先するという意味での選びだったのである。
　それゆえ、今日のテキストは世の苦難にさらされ、実に最も小さくされている者たちに向けて言われているのだ。」こう言うのです。それならば、弱き方に寄り添われる神は、非対称性に立ち向かわれる神である、と言っても間違いではないかと思います。
　それがそのまま私たちクリスチャンにあてはまります。何かこの選びの教理を、私たちはクリスチャン、神の選びの民である、と優越感に浸るために使う人もごくまれにいるかも知れません。けれどもそうではない、そうではないのです。私たちがイエス様に選ばれ救われたのは、おそらく、弱く、傷ついて、何らかの挫折の物語を人生において負っていたからでしょう。それだからこそ主イエスはあなたに手を差し伸べて、抱きしめて口づけし、ご自身の喜びの祝宴である神の国に、あなたを入れてくださったのではないでしょうか。ある人はこう言いました。「教会とは、人と人とが挫折の物語で出会う場所だ」って。人と人とが弱さの物語で出会う時、そして人の物語が主イエスの十字架と復活の物語と一つになる時、いのちの物語がつむがれて行きます。そこに神は共にいてくださいます。
　主イエス・キリストの十字架の苦しみを、少しでも自分の痛みとするならば、周りの身近で、また世界で最も小さくされた人々の痛みをわがことのように見ることができるのではないでしょうか？目を覚まして、その人たちのために、それぞれの小さなリンゴの木を、植えさせていただこうではありませんか。

お祈りをいたします。
恵みとあわれみに富みたもう、私たちの主イエス・キリストの父なる御神
あなた様は御子主イエス・キリストを、2000年前、この世界にお送りくださり、そして救いをもたらしてくださいました。やがてまた再び来られます。主よあなた様の選びは、世の中の選びとは全く異なります。最も小さくされた者たちを選び、ご自分の宝の民としてくださいます。私たちをも救いに選んでくださったのは、私たちのうちにふさわしいものが何かあったからではありません。ただ一方的な恵みとあわれみです。この不思議に、この神秘に、驚きつつ言い尽くせない感謝を申し上げます。クリスマスを迎えますけれども、あなたからの希望の種をいただいた者として、あなたからいただいた希望の光を、人から人へと灯して行けますようにお一人一人を祝福して世に遣わしてください。主イエス・キリストの御名によって祈ります。アーメン。