📗【文書版】礼拝メッセージ『道』新約聖書　ヨハネの福音書第14章1～7節

📗昨日2023年5月7日(日)の礼拝メッセージのテキスト版もここに掲載いたします⬇️

✴️礼拝メッセージ『道』

新約聖書　ヨハネの福音書第14章1～7節
1「あなたがたは心を騒がせてはなりません。神を信じ、またわたしを信じなさい。
2わたしの父の家には住む所がたくさんあります。そうでなかったら、あなたがたのために場所を用意しに行く、と言ったでしょうか。
3わたしが行って、あなたがたに場所を用意したら、また来て、あなたがたをわたしのもとに迎えます。わたしがいるところに、あなたがたもいるようにするためです。
4わたしがどこに行くのか、その道をあなたがたは知っています。」
5トマスはイエスに言った。「主よ、どこへ行かれるのか、私たちには分かりません。どうしたら、その道を知ることができるでしょうか。」
6イエスは彼に言われた。「わたしが道であり、真理であり、いのちなのです。わたしを通してでなければ、だれも父のみもとに行くことはできません。
7あなたがたがわたしを知っているなら、わたしの父をも知ることになります。今から父を知るのです。いや、すでにあなたがたは父を見たのです。」
 
　主の恵みと平安が皆さんの上に豊かにありますように。
　この日も皆さんとご一緒に主の日の礼拝にあずかれますことを心から感謝いたします。
 
　みなさんはベアグリルスという冒険家をご存知でしょうか？
　私、discovery channel というのが youtube でも大好きなチャンネルの一つでして、これは冒険番組なんかをよくやってるんですね(ネットフリックスなどでもこの人の番組を見られるそうです)。
　この人の番組の中でサバイバルゲームっていうのがありまして、元々の原題はman vs wild っていう題名なんですけれども、冒険家のベアグリルスさんがドキュメンタリー風に、過酷な状況の中でのサバイバル術を紹介する、そういう番組なんですね。実はこのベアグリルスさんは熱心なクリスチャンでもありまして、―もちろん番組の中では御自身の信仰について語ることはほとんどないと思いますけれども、実はデボーションの本まで出版しているくらいなんですね―
　彼はアメリカでもファンの多い冒険家の一人なんですけれども、そのサバイバルゲームのある回は、ちょっとスペシャル・特別企画みたいになっていまして、全米で大勢のファンの中から参加者を募って、2万人が応募しました、その2万人から選考されたその中の2人が、このベアグリルスさんと一緒にカナダの雪山でサバイバル生活をするというこういう企画だったんですね。
　それで、応募してきた中で選考に通った2人のアメリカ人男性は、二人ともサバイバルについては素人なんです。でもこのベアと一緒に、その雪山でのサバイバルという困難を乗り越えていくんですね。
　それでその参加者のファンの一人はジョーという男がでした。
　実はこのジョーという男は一つのトラウマを持っていたんです。
　それは銃撃事件に遭ってるんです。
　この銃撃事件に遭いまして友人が死んでしまいました。そしてこのジョー本人も背中を撃たれて傷を負っていたんです。
　彼はその傷の治療中に、きっと笑顔を取り戻すって誓っていたそうです。
　それで、その心の傷を乗り越えるために、このベアと一緒のサバイバルに参加したいと思って応募した、という経緯がありました。
それでこのカナダの雪山でのサバイバル中のある時に、この3人で進んでいる前に大きなクレバスがありました。
　クレバスというと、雪山などにある大きな割れ目ですね。そこに落ちたらひとたまりもないというところなんですけれども、そこでジョーは恐れて尻込みをしていたんですね。
しかし、この経験豊かで、数々のあらゆる危険を、持ち前の知識と、サバイバル術で乗り越えてきた頼もしいリーダーであるベアグリルスが、

「大丈夫だ クレバスは熟知している。ロープは切れない。僕を信じて。」
　
　こういうふうに何度も何度も、「僕を信じてついて来て」と言うわけですね。

　それで彼らは、「怖い」という心騒ぐ状況を乗り越えて、クレバスを渡ることができ、また他の様々な困難にも打ち勝って、そのカナダでのサバイバルの旅路を無事に終えることができるんですね。
　それで、このジョーは旅を終えた時にこう語っているんですね。
　ベアが何度も「僕を信じてついて来て」って言ってくれたことによって救われました、って言うんです。これはよくわかることだと思います。
　もう世界中のあらゆる過酷な環境で、いろんな苦しみを通って乗り越えて生還して、戻ってきた冒険家が、頼もしいリーダーとなって「僕を信じてついて来て。」と言ってくれると、それがどんなに聞いた人にとって安心になり、希望になり、勇気になったことになるかと思います
　まるで「僕が道だ。」僕が歩んだ通りに歩めば、この雪山を突破できる！と言っているかのようですね。
　ジョーはその「僕を信じて」という、この言葉によってこのサバイバルをやりぬいた、という体験によって、銃撃事件によってずっと騒いでいた心が静まり、人を信じる、という心をきっと取り戻したにちがいありません。
 
　この話が、皆さん、今日ご一緒に聴きました神さまのみことばと、どうつながるか、ということが、もうお分かりになった方もいらっしゃるかと思いますけれども、
　イエス様の非常に有名なことばが語られました。よく教会の壁掛けなどにこのことばが書かれていたりすることも多いですし、「主イエスは道、真理、いのちです」という賛美の曲もあります。
　主イエスは、今日も、「わたしが道だ、わたしを信じてついて来て」と、こう私にも皆さんに語りかけてくださっています。このみことばによって、このジョーというアメリカ人の方が、経験したのよりもずっと確かに、心騒ぐ思いが癒されて、希望と勇気を、イエス様からいただいて、また新たに歩みだす、という経験を今日共にさせていただきたいと思います。
 
　今日のみことばはヨハネの福音書の第14章の前半なんですけれども、イエス様のことばです。おそらく一番印象深く私たちの心に響くのは、先ほど申し上げました「わたしは道であり、真理であり、いのちなのです」ということばだと思いますが、もう一つ、特に私たちの心を捕らえることばがあると思うんでうすね。
　先ほどの朗読をお聞きになって、もちろん、特に心に留まったみことば、というのを、それぞれ、おひとりひとり「ああ私はここに心が留まった」「私はこの節に心が留まった」と、異なる箇所にお持ちだと思いますけれども、1節の「あなたがたは心を騒がしてはなりません。」ということばは特に多くの心を捕らえるみことばの一つなんですね。
　と言いますのも当然のことでして、人間皆、生きていれば・生活していれば、多かれ少なかれ、心騒ぐ思いを持っているものだからですね。今であればどうでしょうね。物価上昇は止まる気配が無い。わが家の経済状況、インボイス制度や保険料の値上がり、また増税の話もちらほら出ている。ロシアとウクライナは停戦の気配が全くない。ほかにもミサイルの話など、そういう心を騒がせる材料はいくらでもあります。
　また、もっと身近に、仕事のことも、人間関係のことも、家族のことも、自分自身の健康、あるいは家族の健康のことも、とっても大切な問題ですね。
　私もじつは、これはプライバシーの関係で、詳しく申し上げることはできないんですけれども、ある人の重い病気が分かって、心騒ぐ思いがいたしました。皆さんもそれぞれに、心騒がせられる何か、というのがおありだと思います。
 
　それで、弟子たちにイエス様がおっしゃった「心を騒がせてはなりません」というのは、どういう心の動揺だったのか、ということなんですけれども、やはりここは文脈を確かめることが大事です。前後の文脈によって、正確な意味をつかむことが大事なんですね。
 
　これは、ヨハネの福音書の中で、第13章から第16章までに、イエス様の訣別説教が語られているんですね。
 
　訣別説教とは、今死なんとする者が最後に語る遺言みたいなものですね。この直前の第13章でイエス様はこうおっしゃっています。最後の晩餐があって、ユダが出て行ったまさにその時に語られたことばです。
 
新約聖書　ヨハネの福音書第13章33節

33子どもたちよ、わたしはもう少しの間あなたがたとともにいます。あなたがたはわたしを捜すことになります。ユダヤ人たちに言ったように、今あなたがたにも言います。わたしが行くところに、あなたがたは来ることができません。
 
　こう不穏なことをおっしゃるんですね。なんだか別れを思わせるようなことばですね。十字架の死が身近なわけですけれども。ですから、ここで弟子たちが心騒いでいたのは、愛するイエス先生との別れ、愛する者との別れを目の前にして、心騒いでいたわけです。
このある意味不穏とも言えるイエス様のことばに反応して心騒いで、一番弟子のペテロはすぐに口を開きました。
 
新約聖書　ヨハネの福音書第13章36～37節

36　シモン・ペテロがイエスに言った。「主よ、どこにおいでになるのですか。」イエスは答えられた。「わたしが行くところに、あなたは今ついて来ることができません。しかし後にはついて来ます。」
37ペテロはイエスに言った。「主よ、なぜ今ついて行けないのですか。あなたのためなら、いのちも捨てます。」
 
　こうペテロが言った直後なんですね。ついて行く、おそらくその連想で、イエス様はこの弟子たちの心騒ぐ思いを静めるためにこそ、「道」と言われたんですね。この道、というのは、心騒ぐ思いに対して、どっしりした確かなものを与えようとして言われたことばなんです。
 
　ちなみにこのすぐ後の「真理である」とか「いのちである」とかいうのは、「道」の補足説明だと言えると思います。道である、というのを言い換えたら真理であり、またいのちである。真理でもあり命でもあるところの道なんだ。なぜそれが明確に言えるかと言うと、イエス様ご自身が「わたしが道であり、真理であり、いのちなのです」とお語りになった直後に「わたしを通してでなければ、だれも父のみもとに行くことはできません」とおっしゃっているからです。また、4節でも主イエスは、
 
わたしがどこに行くのか、その道をあなたがたは知っています。
 
　とお語りになっているからですね。その道とはどんなものなんだろうか。
 
　道、と言いますと、日本人は何でも「道」と言いますね。華道、茶道、書道、剣道、柔道、弓道、合気道。他にも色々あると思いますけれど、なんでも道、というものがあります。ほかにも「生きることは道を歩むこと」とよく言いますね。人生は道だとたとえられる。
　あの道、この道、というのがあって、皆それぞれの人生の道を歩む、あるいは皆それぞれが、これと決めた修練の道を歩む。そういうそれぞれの道、という意味ではなくて、イエス様が言われている「わたしが道である」というのは、道に定冠詞がついています。英語で言えばtheに当たるものが付いているんです。英語でTheが付くということは、あの道、この道、色々あるそれらの中の一つのa wayではなくてthe way　まさにその道、ということですね。
　しかもここでは、イエス様は、わたしが、道である、とおっしゃっています。わたしこそが、と訳してもいいんです。ここの元のことばは、エゴーエイミと言いまして、堂々たる神宣言のことばなんですね。出エジプト記の、モーセの柴の箇所で、山の上で燃える柴をモーセが見て、そこで神さまがご自身を現されて、ご自身の名を「わたしはあってある者である」と力強く宣言なさいました。そのことばと同じ、神がご自身を現される時の宣言をもって、わたしこそが、唯一の道である。ニュアンス的には、そういうことを言われたわけですね。その道を歩むことが、心騒ぐ思いから自由になる道なのだ、ということです。
 
　そして、その道である、「わたしを通してでなければ、だれも父のみもとに行くことはできません。」とおっしゃっているということは、逆を言えば、イエス様というthe way・道を通れば、父のみもとに行くことができる、ということですね。ここでいう父とは、父なる神です。父なる神のみもとに行く。2節3節では、
 
2わたしの父の家には住む所がたくさんあります。そうでなかったら、あなたがたのために場所を用意しに行く、と言ったでしょうか。
3わたしが行って、あなたがたに場所を用意したら、また来て、あなたがたをわたしのもとに迎えます。わたしがいるところに、あなたがたもいるようにするためです。
 
　イエス様の父の家、父なる神の家、まぁ平たく言って「天の御国」と言っていいんですけれども、そこには住むところがたくさんあります。この住むところ、とは、前の翻訳では「住まい」となっていました。英語のいくつかの訳では、マンションになっていました。マンションと言いますと、日本では狭い集合住宅を考えますけれど、英語でマンションと言ったら、大邸宅(豪邸)だそうですね。でもここの元々のことばは、そういう建物の意味ではなくて、イエス様がこの1章あとの、ヨハネ第15章で「わたしがぶどうの木です。わたしにつながっていなさい・とどまっていなさい」とおっしゃった時の、「つながる・とどまる」の名詞形なんですね。つまり建物というよりも、―もちろん天国の豪邸を思い描いて楽しんでもいいんですけれども―父なる神さま・イエス様とつながって、とどまっているところ、関係の方が大事なんですね。もっと現代の日本人に響く言い方をすれば、「居場所」ですね。多くの人が「居場所」に飢えていると思います。今日本にも、もちろん文字通りホームレスで、物理的に住むところのない方もいらっしゃいますけれども、ホームレス支援の奥田知志牧師がおっしゃっているように、それはハウスレス問題なんだと。ホームレス問題は、つながり、別の言い方をすれば、人との関係の中で、つながり、が無いことが本当のホームレス問題だというんですね。
　だから人は豪華な広い家に住めれば幸せというわけではないですね（ひとりっきりであれば、かえってその広さが孤独を深めるかもしれない）。そこに、家族でもなんでも、愛の関係があって、つながりがあって、あんたがいてくれることが嬉しいって、ことばにしてでも、無言のふるまいの中にでも、そういうメッセージがあって、そして演技をしないという意味でありのままの自分でいられる場所、そういうところが、安心できる、心に平安を持てる、ホームなんではないでしょうか。
　イエス様はそういう場所を用意しに行く、って言われたんですね。居場所づくりをしに行ってくださるんだ。そして、居場所を用意して、むかえに来ますよ、っておっしゃっている。天の御国には、あなたの居場所があるよ、用意されているよ。だから心配いらないよ、そうおっしゃってくださっているんですね。そのことばが、心騒ぐ私たちの心のうちに、平安を作る。揺るがぬ安心を作る。
 
　イエス様は、心騒がされているあなたがたはダメだ、っておっしゃっているんではないんです。
　愛する者との別れが目の前に迫っている。心が騒がされているは当然だ。別れや死に、その他ありとあらゆることに心乱されるなんて未熟だ、と言われているのかといえば、そうではありません。何よりもイエス様ご自身が、この心騒ぐ思いを実は経験されていたわけです。イエス様は神であるからすべての時に平然とされていたかと言えばそうではありません。そうすることもできたでしょうけれど、あえて、肉体を取って、神であり同時にまことの人間として地上の生涯を歩み、私たち人間の悩む、悩み苦しみを同じように味わってくださったんです。ゲッセマネの園では血の汗が出るほどに苦しみもだえて祈られたほどです。イエス様も、私たちと同じように、心騒ぐ思いを味あわれたことが、ヨハネの福音書の中にいくつも記されています。
 
　その一つは、ヨハネ第11章のラザロの生き返りの場面です。あの時にイエス様は、「心に憤りを覚えて、心の動揺を感じて」と記されてありましたけれども、この後の方の「心の動揺を感じて」と訳されているここも「心騒がせる」ということばなんです。
 
　イエス様は他にも、ヨハネ第12章で、一粒の麦地に落ちて死ななければ、と死のことをお語りになった後で、「今わたしの心は騒いでいる」とおっしゃいました。ここも同じことばです。
 
　そして、ヨハネ第13章、ユダの裏切りを予告するまさにその時に「霊の激動を感じ」と記されてありましたけれども、ここも「心騒ぐ」という同じことばなんです。
 
　ですからイエス様も、やはり、愛する者たちとの別れ、あるいは大きな危機の時に、心騒ぐ思いをされているのです。
 
　そんなふうに、私たちの心騒ぐ思いを、よーく知っておられる。―私たちには色んな恐れ、心配がありますけれども、それらは全部、うっすらと「死」と、もしくは「関係を失うこと」とつながっています―お前たちの気持ちはよーく分かるよ。とおっしゃってくださって、その心騒ぐ思いを静めて下さるために、私たちにほっとする、天に居場所、つながり、ホームを作って下さるために何をしてくださったか。
　それは新約聖書ヘブル人への手紙第10章20節を見れば明確に書かれてあります。
 
20イエスはご自分の肉体という垂れ幕を通して、私たちのために、この新しい生ける道を開いてくださいました。
 
　「道」ですね。ここは一節前の19節から読むと良いのです。
 
は新約聖書ヘブル人への手紙第10章19～20節
19　こういうわけで、兄弟たち。私たちはイエスの血によって大胆に聖所に入ることができます。
20イエスはご自分の肉体という垂れ幕を通して、私たちのために、この新しい生ける道を開いてくださいました。
 
　血によって開いてくださった道、それは救いの道なのです。その血とは、イエス様が十字架の上で流してくださった血です。血潮です。
　そして世の宗教家たちは、「これが道だ」って言いますね。この道を行きなさい、と。だけれども主イエスは「わたしが道だ！」っておっしゃる。罪から救う、唯一の道だ！
　それで、人間は、みんな罪をもっています。罪と言っても、みんな悪い人間という意味ではなく、むしろ神との関係の破れ、この破れのことを聖書は罪と言います。だから生まれながらにですね、造り主である父なる神と関係が悪く、この神を除外して、いないことにして歩むのが人間の本性なんですね。この関係の破れの中でいると、むなしい、人生の意味が分からない、生きる意味が分からない、こういったみじめさの中を歩むことになる。さもなくば、世の中にはそれらの悩みを感じなくてよいようにするための楽しみが沢山ありますので、それらの楽しみを常にまとい、それを失わないように失わないようにと不安(多くの場合表面化しないが)を抱えて生きることになります。―じつはここまでは統一教会も言うんです。聖書の言っていること(人間は生きる意味や目的を失っているとか、生まれつき神との関係が破れているとか―それはキリスト信仰の教えを盗用して教義を作っているからですね―)を、途中まではキリスト信仰と同じようなことを言って、途中から、あとは解決のために献金だ万物復帰だ血統転換(合同結婚式)だ、ってやるわけですね。全部ウソだと誰も騙されませんので、本当のことに嘘を混ぜる、これが巧妙で悪質なところですが、話を元に戻しまして、とにかく人間は根源的に神から離れた不完全な存在であるがゆえに不安をかかえている―
　じゃあその根源的な不安の解決として、安心の源泉である神さまとの関係を再び結ぶために、たとえば古典的なプロテスタントでよく使われる小さな冊子の4つの法則なんてのもありますよね。
 
　神さま私との間に崖があって、その間に橋を架ける。ある人は哲学で、ある人は宗教で、ある人は自分の善い行ないで、こちらから架けようとしても、決して届きません。正確には逆方向に行くかもしれないですね。パリサイ人たちは善行で自分の努力で神に近づこうとして、その結果、イエス様に「その心は神から遠く離れている」と言われてしまいましたもんね。こちら側からの努力という橋では道にならないんです。じゃあイエス様はどうしてくださったでしょうか？
　あちら側から橋をかけて、神さま側から橋をかけてくださった。十字架のかけ橋をかけてくださった。だから道ができたんです。恐れ多いことかもしれませんけれども、人々に踏みゆかれる「その道」となってくださいました。
　それはまるでこの話のようです。あるビルが火災になって、父親と二人の息子が逃げ遅れました。その時、隣のビルの窓が開いていた。間は1m50cm。父親は身を投げ出し、隣のビルの窓枠につかまり、体で橋を作りました。「お父さんの上を渡って逃げなさい。」息子たちは恐る恐る、お父さんの上を渡りました。
　二人が渡り終えると、父親はついに力尽きて、体はビルの谷底に落ちて行ったのです。父親は自ら救いの道となって、二人の息子のいのちを助けました。
　イエス様はまるでこの父親のようです。息子を愛するがゆえにわが身を投げ出して犠牲となって下さった。十字架をもってご自身を道として踏みゆかせる。恐れと不安と混沌の上を道となってくださった。このことによって、あなたの罪は赦されました。あなたと神との関係の断絶は終わりました。いっさい神はもうあなたに怒(いか)っていないのです！あなたに向けられている神のまなざしはもう、真実の愛と赦しと受け入れだけです。あなた側の努力や善行や献金などは一切なしに、天の御国にあなたに「居てほしい」っていう居場所が備えられました。これを「はい。その通りです」と受け取ることが、「救いの道を渡った」ということなのです。
　ここでしかし、何かすっきりしないというか、それで本当にいいんだろうか？と思われる方もいらっしゃるかもしれません。イエス様が、先ほどのたとえの父親だとすれば、私たちが、ビルの向こう側に渡れたとしても、お父さんが下に落ちて死んだとしたら、お父さんの犠牲の愛には感動するけれども、私たちは心から喜べないかもしれない。もしかしたらお父さんを犠牲にして自分たちだけ助かってしまったという罪悪感で、ずっと心が騒いでいるかもしれない。お父さんどうして僕たちと一緒に助からなかったの？お父さん帰ってきて、って。
　けれども、イエス様は、決して十字架で終わらなかったんです。混沌に落ちたままで終わらなかったんです。復活なさいました！だからこそ私たちは、心の底から、腹の底から喜ぶことができます。「主は復活なさった！」だからこの道は喜びの道です。あなたはもうそれを私たちと一緒に歩んでいます。
 
お祈りをいたします。
恵みとあわれみに富みたもう、私たちの主イエス・キリストの父なる御神。
あなた様は、御子主イエスを地上にお送りくださいました。心騒ぐ私たちです。でも、神との関係の破れから来るその根源的な恐れや不安から、再び、やわらぐ関係を結ぶために、アバ父よ、あなた様は御子主イエス・キリストを十字架におつけになりました。そのため、私たちのあなた様との断絶はすべてゆるされ、父の家で愛されている子供として、天の御国に居場所がある者として、すでに招き入れられていますことを心から感謝いたします。この十字架の道を通って、あなたのご愛と慈しみと恵みと平安とを、受け取られる方々がなお起こされていきますように。また、そのために私たちの唇や、また手や足を、お用いください。主イエス・キリストの御名によって祈り願います。アーメン。