📗【文書版】✴️礼拝メッセージ『すべて疲れた人、重荷を負っている人はわたしのもとに来なさい。』新約聖書　マタイの福音書第11章28～30節

📗昨日2023年7月9日(日)の礼拝メッセージのテキスト版もここに掲載いたします⬇️

✴️礼拝メッセージ「すべて疲れた人、重荷を負っている人はわたしのもとに来なさい。」

新約聖書　マタイの福音書第11章28～30節
28すべて疲れた人、重荷を負っている人はわたしのもとに来なさい。わたしがあなたがたを休ませてあげます。
29わたしは心が柔和でへりくだっているから、あなたがたもわたしのくびきを負って、わたしから学びなさい。そうすれば、たましいに安らぎを得ます。
30わたしのくびきは負いやすく、わたしの荷は軽いからです。」

　主の恵みと平安が皆さんの上に豊かにありますように。この日も皆さんとご一緒に主の日の礼拝にあずかれますことを心から感謝いたします。
　黄色と黒は勇気のしるし、二十四時間戦えますか。
　いきなりえらい懐かしいのが出たな、と思われたかもしれません。あの栄養ドリンクのCMソングですね。1989年の歌でして、バブル真っ最中の時だったでしょうか。はるか世界で戦えますかと、とにかくシャカリキに働くジャパニーズビジネスマン、ということでしょっちゅうこのCMソングが流れていたと思います。
　その同じ栄養ドリンクのCMが、2014年にはなんと、3，4時間戦えますか。というキャッチコピーに変わっていたんですね。
　まぁ時代の流れですね。24時間戦えますかだとブラックだからということもあるでしょうし、労働時間の短縮であるとか、そういうことが言われるようになってから、こういうキャッチコピーに変わったわけですね。
　そんなふうに、日本でも、働きすぎは良くない。休むことの重要さ、というのがきちんと言われるようになったことは良いことだと思います。日本人は働きすぎだ、ということが言われていましたからね。過労死なんていうことは、諸外国にはあんまり無いようでして、英語でもそのままKaroshiとアルファベットで書くそうですね。
　今年の夏も、日本で、旅行業界が、リトリートのツアーなんていうのを売り出しているそうですね。リトリートというのは昔からキリスト教会で使われていた教会用語だったと思うんですけれども、バイブルキャンプなど自然の豊かなところに行って何泊かして、静まって、神さまから―リトリートってもう一度取り扱われるっていう意味だと思いますから―神さまからお取り扱いを受けて、リフレッシュして、再び働きに戻ると、こういう意味だと思いますね。ですからアシュラム(や祈りのサミット)などもリトリートなんですけれど、まぁ旅行業界も、観光地を回りまくって疲れるようなことよりも、自然の中でゆったりとした時間を過ごすことを、今は勧めているようですね。日本でも休むこと、心と体の癒しが重要視されている時代と言えると思います。
　
　さて今日のみことばは、そんな体と心の癒しとはまた違う、魂の深みまで休みが与えられるみことばです。

28すべて疲れた人、重荷を負っている人はわたしのもとに来なさい。わたしがあなたがたを休ませてあげます。

　このイエス様のことばは、よく教会の看板に記されているのを目にしますね。教会の看板に書かれている聖書のことばアンケートを日本全国で取ったら、多分一位になるんじゃないかと思います。看板によく書かれるくらいですから、人の心、魂を打つみことばですね。そのままでもよく分かる。道行く人が、その看板を見て、「疲れた人、重荷を負っている人とは私のことだ」と、心惹かれて、教会の礼拝にふらっと来て、そしてそのまま、礼拝に参加し続けて、やがて信仰告白して洗礼を受けた、という話もよく聞きます。
　それほどに、このことばには、不思議な力があるんですね。聖書にはよくそういうことがありますね。
　口で絵筆を加えて素敵な詩と絵をお書きになる車いすの詩画家の星野富弘さんが、首の骨を痛めて、首から下が全く動かなくなってから、色々紆余曲折あってクリスチャンになるまでの間に、聖書を読むんですね。しかし手足が動きませんから、お母様にめくってもらうまで、見開き2ページが固定されて何回も読むことになるそうですね。まぁそれがかえってじっくり読めるので幸いだったそうですけれども、このマタイの第11章の28～30節の今日の箇所に目が留まったんですね。そして、幼いころの記憶を突然思い出したそうなんですね。
　それは故郷の田舎の山さとでした。そこで、山の中に、お墓があって、そこに、このみことばが刻まれていたそうですね。そしてそれが幼い富弘少年の心になぜだか残っていて、大人になって思い出した、っていうんですね。「重荷を負っている者はわたしのもとに来なさい」実際、その時、肥溜めから汲んだ肥を入れた、こういうのをかついでいたそうなんですね。重荷を負っていたそうなんですけれど。
　それがフラッシュバックしまして、また、今の、両手足が動かない状況がまさに私は「重荷を負って苦労している者だ」とそう思ったのでしょう。
　だいたいでも、世の中の道徳訓とか、処世訓とか、哲学とか、名言集であるならば、重荷を負っている人、苦労している人は、「その苦労は実体のない霧のようなものだ。あなたの心の持ちようで軽くも重くもなる」とか「もっと苦労している人を思いなさい」とか「耐えてこそあなたの人格は磨かれる」であるとか、だいたいそういった方向になると思うんですね。でも、「わたしのもとに来なさい。休ませてあげよう」こう言える人間っているんだろうか？いやフツーの人間だったら言えないよなぁ？聖人君子だって言えないよなぁ？こんなこと言えるのは誰だろうか？不思議なことばだ、ということで、おそらく世の中の言葉とは何か違う、というのが、まぁ聖書のことばが、何か普遍的に、人間の心の、魂のどこかに印象深く残る理由の一つであると思います。

　さて、先ほどのサラリーマンの話ではないんですけれども、何も長時間労働をしていたら、疲れていて、重荷を負っているかというとそうでもありません。
　どこかに雇用されている、あるいは経営をしている、あるいは自営業、フリーランスで働いている、というようなことがなくても、主婦であったり、家事育児をしている。学生であって勉学に励んでいる。家族の介護をしている。自分自身が闘病中である。あるいは、―この呼び名自体が押し付けられたスティグマではないかと思いますけれど―ニートと呼ばれる状況にある、とか、別に長時間労働しているかいないかにかかわらず皆疲れていて、重荷を負っていると思うんですね。この得体の知れない重荷とは何だろうか？

　それを理解するために、ここで、新約聖書の当時、重荷と言ったらどういう意味で使われていたかということを考えてみたいと思うんですね。イエス様が重荷と言った時に、当時のユダヤの人々はどう聞いたか？
　それは、やっぱり律法のことだったんですよ。モーセの律法が613あって、それに加えて、口伝律法と言われる、文章化されていない、イエス様が「先祖たちの言い伝え」と呼んだものですね。安息日に関する口伝律法は、なんと1500あったそうなんですけれども、そんなに細かくですね、細かい規則規則をパリサイ人や律法学者たちは作っていたわけですね。それを民衆に負いきれない重荷として負わせて、民衆はそれにがんじがらめにされて、きゅうきゅうとしていて、苦しめられていた、これが民衆を苦しめていた律法主義という重荷だ、という説明がよくされます。この律法主義は、民衆にとって強力な同調圧力でした。
　ただ、律法主義とは、決まり規則を厳格に言う、ということだ、という理解されることがあるんですが、それは実は律法主義の本質ではないんです。私は律法を守れている、という、自分で自分を支える、自分の律法の行ないで自分を支える、自分の行ないで、神との関係は良くなるし、神の前に義とされるし、死んでも天国に行けると、こういう行ないによって救われるというのを、難しいことばで「行為義認(こういぎにん)」と言いますけれど、もっと分かりやすく今の時代のことばで言えば、自己責任論なんですよ。霊的な自己責任論。できるやつはオッケー。でも律法を守れないやつは、努力不足。自己責任。あなたがそうなったのは、あなたが悪いからでしょ？あなたが罪を犯したからでしょ？っていうやつです。

　パリサイ人や律法学者たちは、イエス様のことを「取税人や罪びとたちと一緒に食事をするのかー！？」ってそういう言い方をよくしますよね。イエス様が仲間になって、一緒に食事をしたりした取税人や罪びとたち、この種の人々をパリサイ人律法学者たちは、軽蔑しました。地の民アムハーレツと呼びました。これは下層民を指すことばで、地べたのクズ人間、といったニュアンスですね。よく今のことばで底辺って言いますけれど、それより酷い感じのニュアンスですね。
　そういう人たちは、律法を守れない、宗教的にきよい生活をできない、だから見下されていたわけですが、それも構造的な問題があってですね、たとえば安息日には仕事をしてはいけないという律法がありますね。料理してもダメなんです。火を使うことは仕事にあたりますから、じゃあパリサイ人や律法学者たちはどうしたかというと、召使いにさせていたそうなんですね。要するに透明なゲタを履かせてもらっていてですね、しかもおそらくそれに無自覚で、「私たちが律法が守れるのは私たちが努力したからだー。」ってやってたわけですよね。
　
　当時の羊飼いたちのことも考えてみましょう。ちょっとこれは諸説あることなんですけれど、一説には、羊飼いも当時アムハーレツと呼ばれていて、彼らが羊を育てていたのは、委託されて、いけにえ用の羊を育てていたそうなんですね。そして、生き物相手の仕事ですから、安息日の当時土曜日のシナゴーグというユダヤ教の会堂での礼拝には出席できない。だから安息日律法を守れないわけですね物理的に。ですから「律法を守れないやつらだ、あなたたちが守れないのは努力が足りないからだ。自己責任」と言われて見下されていた。
　でもよく考えたら、パリサイ人や律法学者たちが、神殿での礼拝で、ちゃんといけにえの動物をささげることができたのは誰のおかげですか？羊飼いたちが育ててくれているからでしょう？そうやって透明なゲタを履かせてもらっていながら、「下層民、アムハーレツ、律法を守れない穢れた民よ」ってやってたわけですよね。
　イエス様は、そういう、こんにちの私たちが「構造的な暴力」などと呼んだりする、そういった問題をもやはり見抜いておられて、だからこそ、激しく、パリサイ人や律法学者たちのあり方、そしてまた律法主義の同調圧力を批判されたわけですね。

　ですから同調圧力が強かったのは、今の日本も、昔のユダヤもおんなじなんです。違うのは多分、言葉があるか無いかなんですね。昔のユダヤの場合は、おそらく、言葉が飛んでくるんですね。律法違反だ、口伝律法違反だ、うるさく言われるわけですね。
　日本の場合は、多くの場合、言葉が無いんですね。空気と、暗黙のルールで進んで行きますので、いわば得体の知れない窮屈さがあるわけですね。
　私たちもまた、見えない量りに押しつぶされそうになっていると思うんですね。世間の空気っていうものを自分のうちに内面化してしまって、その量りで自分を量る。もっと自分を磨かなくては、―まぁ自分磨きやキャリアのためにスキルを上げて行くことが楽しいなら別にいいんですけれど―ああ同じ年代でもっと活躍している人がいるのに、とか。
　以前読んだ本の中に面白い言葉がありました。今は若い人が「自分の上位互換が秒で見つかる地獄」なんだって言うんですね。
　どういうことかというと、勉強でもスポーツでも、秀でていますと、まぁ一昔前だったら、地区の大会に出るとか、そういうことでもしないと、なかなか「ああ自分より凄いやつがいるなぁ」となかなか可視化されなかったんですけれど、今は、SNSや、ユーチューブなどで、数秒で見つかるんですね。そこで、ああ自分なんてダメなんだ。底辺なんだ、って思っちゃう、ということですね。
　そこでああ自分は価値がないって思う。大人になってもそうです。もっと獲得しなくっちゃ、もっともっと、って、どこまで行ってもきりがないですよね。そして、「あなたが今そうなったのは、努力が足りなかったからですよ。自己責任ですよ。」と言われて切り捨てられないように、優生思想ゲームのような、広い意味での現代版律法主義の重荷に、実は皆が疲れ果てているんだと思います。
　
　じゃあいわゆる勝ち組と呼ばれるような人になれば、安心で心が平安でやすらぎがあるかというとそうではありませんね。
　たとえばあのホリエモンと呼ばれる堀江貴文さんなどですね。彼は成功者と呼ばれるわけですが、けっこう所得の低い人などを見下す発言があるんですよね。けれど、そうやっているご本人は、恐れていると思うんですね。
　刑務所に一回入りましたよね。その時に、悩まされたのは「死への恐怖」だそうですね。刑務所の中では、寝る時間早いんですね。夜9時だか9時半とかで消灯だったと思いますが、大の大人が9時台に寝られるはずなんてなくて、夜眠れなかったそうですね。そこで、頭を離れないのが、死への恐怖だったそうですね。それに非常に悩まされたということで、彼が人一倍エネルギッシュで、仕事熱心であるのは、「死への恐怖を忘れるためなんだ」とご本人が言ってらっしゃったそうですね。
　これが実は、すべての人にあるんですけれども、ヘブル書第2章がまさに言うように、「人は一生涯死の恐怖の奴隷となっていた」ということの意味ですね。
　ですから思うに必要以上に、自分のところにお金や資産を集めて独占したりする人や、必要以上に人を見下したりマウンティングする人は、実はひといちばい恐れているかも知れないんですよね。ポールトゥルニエという精神科医が言ったとおり、強い人なんていなくて、強そうに見せている人がいるだけで、人間みんな弱いんだ、ということですね。それが人間存在の真実でしょう。そしてイエス・キリストは、それでいいんだよって。人間みんなそんなもんだよって。わたしのところに来なさい。休ませてあげよう、って、おっしゃっています。主イエス・キリストは、弱い人も、強そうに見える人も、等しくご自分のもとに招いておられるのです。29節30節、イエス様のことばです。

29わたしは心が柔和でへりくだっているから、あなたがたもわたしのくびきを負って、わたしから学びなさい。そうすれば、たましいに安らぎを得ます。
30わたしのくびきは負いやすく、わたしの荷は軽いからです。」
　
　どういうことでしょうか？重荷を下ろすかと思えば、「わたしのくびきを負いなさい」と言われている。くびきとは

(【画像】スクリーンに映す)
　こういうものですね。今は家畜を用いて農業をしているのを見ることは殆どありませんので説明しますと、牛などに、こう2頭ワンセットで首につけて、労働させるための器具ですね。
　こういうのを見ますと、窮屈じゃないか。って思うわけですね。しかしイエス様はわたしのくびきは負いやすく、わたしの荷は軽いって言われるんですね。イエス様のくびきを負ったら、たましいに安らぎが来る、いったいどういうことでしょうか？

　このくびきは、通常、二頭の牛をつなぐものなので、ある解釈では、人生の重荷が半分になる、半分はイエス様が負ってくださるからだ、と解釈する人もあります。それは美しい、イメージのわく解釈ですけれど、それは少し違うのではないかと思います。なぜなら、私たちの肩はそんなに強くないからですね。イエス様と同じくらいの重荷はとても背負えないからですね。

　またある説教者はこう言います。「私たちが生きるということの重みをすべて主に委ね、神にゆだねることがここで許される」ということを言っています。つまり半分じゃないんです。全部なんです。この重荷をすべてゆだねるんです。

わたしは心が柔和でへりくだっているから

　と、主イエスはおっしゃいます。ピリピ人への手紙第2章に、イエス様の究極のへりくだりのお姿が描かれています。

新約聖書　ピリピ人への手紙第2章6節～8節
キリストは、神の御姿であられるのに、
神としてのあり方を捨てられないとは考えず、
ご自分を空しくして、しもべの姿をとり、
人間と同じようになられました。
人としての姿をもって現れ、
自らを低くして、死にまで、
それも十字架の死にまで従われました。

　これは十字架の死にまでへりくだって従われた、日本語のへりくだりとか謙遜とかとは全く異なる、イエス様の究極のへりくだりを賛美する当時の讃美歌なんですね。
　つまり、

28すべて疲れた人、重荷を負っている人はわたしのもとに来なさい。わたしがあなたがたを休ませてあげます。

　このことばをお語りになるために、主イエスは、すべての責任をお取りになったのです。柔和で、心優しく、へりくだった、謙遜な僕となられたのです。
　もう、このくびきとは何かを、多くのことばをもって説明する必要は無いでしょう。イエス様が言われるこのくびきとは、十字架のくびきなんです。そして人生の究極の重荷は、罪の重荷なんです。自助努力で頑張んないと愛されない、ゆるされない、認められないというのは、神さまのみこころから的が外れているという意味で罪なんです(聖書の言う罪は的外れ・神さまとの関係の破れのことだから)。十字架の身代わりの死によって、あなたのその罪はゆるされました。永遠のいのち・天国の約束があなたに与えられたので、もう、死んだ後にどこに行くか分からないという恐怖は無くなりました。このイエス・キリストという神は、そしてその父なる神は、私たちの自助努力や自己責任に応じて愛するのではなくて、あまりにも愛が大きくて、あふれて、全く無条件で、あなたを愛して、受け入れてくださいました。それゆえに、限りのない承認欲求と存在証明のゲームからも解放されます。時代によって変わりゆく世間の価値観でも、消えゆく人間のことばでもなくて、「あなたは価値ある者だ。わたしの宝の民だ」と言ってくださる、人間を創られた神の権威ある宣言によって、「あなたはわたしの目に高価で尊い」と呼ばれているのです。
　その、ゆるしというくびきは負いやすく、ここちよい。ゆるされ、愛されているという、魂のやすらぎが、今、あなたに与えられています。

お祈りをいたします。
恵みとあわれみに富みたもう、私たちの主イエス・キリストの父なる御神
私たちはかつては重荷に苦しんでおりました。現代日本でのきりのない存在証明と自己責任のレースに、みなきゅうきゅうとしております。主よあわれんでください。どうぞ皆を神の愛に気づかせてください。そのために私たちの唇や手足が必要でしたらお用い下さい。私たちもまた、きりのないレースに引き込まれてしまいそうな時がありますが、そのたびに、主の愛のもとに立ち帰らせてください。あなたのもとに安らぎ、魂の安息を得て、恐れから解放されて、あなたに支えられて、かろやかな歩みをすることを得させてください。今、世界の片隅に置かれて、現代のアムハーレツのように扱われている人々を助けてください。その人たちに、いやすべての人に、あなたの愛と安らぎを届けることができるように、私たちを祝福して遣わしてください。主イエス・キリストの御名によって祈り願います。アーメン。

#マタイ11章 #疲れた者重荷を負っている者は