📗【文書版】✴️礼拝メッセージ『試みにあわせないで、悪からお救いください』

📗昨日の礼拝メッセージのテキスト版もここに掲載いたします⬇️
📗礼拝メッセージ『試みにあわせないで、悪からお救いください』
 
新約聖書　マタイの福音書第6章13節　2024年6月16日
　私たちを試みにあわせないで、
　悪からお救いください。』
 
　主の恵みと平安が皆さんの上に豊かにありますように。この日も皆さんとご一緒に主の日の礼拝にあずかれますことを心から感謝いたします。
 
　一昨日の東洋経済オンラインで―これはもともとアエラドットの記事のようですが―こんな記事があったんですね。
 
「一軍」目指し整形に向かう中高生増加の背景
まるで違う顔も、広がる過剰なルッキズム
 
という記事ですね。
このルッキズムという言葉を皆さんご存知でしょうか？これは、見た目や容姿で人を判断することを言います。「外見至上主義」とも訳されて、ＳＮＳの発展で急速に広まったとも言われています。「まるで違う顔も」というのは、整形で高校入学の時と卒業の時では別人の顔のようになっている生徒も中にはいるという意味ですね。
 
アエラが今年5月に実施したアンケートでは、
 
「（子供たちから）『自分はブスだから努力してもしょうがない』『一軍にはなれない』という言葉をよく耳にする」（小学校教諭、27歳、女性）
 
という声もあったそうですね。
昔から、学校内でも、大人の社会でも、見た目で判断というのはあったわけなんですけれども、今は見た目重視でどんどん拡散され、また最近ではそれが収益にも繋がって経済にも関係してくるというＳＮＳの風潮で、「見た目さえよければ、自分もキラキラした人生を送れるのではないか？」ということで、―これは韓国よりもずいぶん少ないとは思いますけれども―中高生のうちに整形をするということが広がっているそうです。また、高校生向けの美容整形クリニックの広告が、ルッキズムを加速するのではないか、という指摘もされています。
 
これと関連することなんですけれども、今インザメガチャーチという新聞連載小説を書いていらっしゃる、「霧島、部活やめるってよ」でも超有名な、小説家の浅井リョウさんが、なんですけれども、興味深いことを言っていらっしゃいます。
 
浅井リョウさんは、私より9歳くらい下の学年になると思いますけれども、いわゆる、ゆとり世代と呼ばれる世代に入るわけですね。
彼がそのゆとり世代と呼ばれる世代の中の学校の文化で育って、実体験として分析していらっしゃることは、ゆとり世代の一番のきつさは、スクールカーストなんだと。
スクールカーストってありますよね。学校のクラス内の序列のことですね。これ必ず自然にできますね。これが1軍から3軍まであるそうです。
それで、ゆとり世代以降の教育現場というのは、比べるのがいけないという風潮になっていったそうです。
私の高校時代には、確か、学年の全員の名前が、テストの得点と順位と共に全クラスの入り口の扉に貼りだされましたね。私はそれが普通だという学校文化の中で育ったんですが、小説家の浅井リョウさんの世代によれば、そんなことはあり得ないと。人を何かで計ることは悪だよね、という価値観の中で、もちろん成績や点数も掲示しない、という学校文化だったそうです。
10年くらい前でしょうか？幼稚園や小学校でも、かけっこ、徒競走で、順位をつけないで、皆で手をつないでゴールしましょう、なんてことをやっていうる幼稚園や小学校が取り上げられているのをテレビの報道で私も見ましたけれども、もろにその時代で、何にせよ順位をつけない、という学校文化になった結果、そのことによってスクールカーストはより過酷になったっていうんです。
ええっ、逆でしょう？順位をつけなかったら競争や序列が無くなるんじゃないんですかと思ったら、そうじゃなくて、勉強でもスポーツでも、アートでも、すべてのモノサシを排除した結果、人間っていうのはどうしても比べずにはいられない性質をもっていますから、じゃあ何で比べるか、唯一残っているのは見た目になるわけですね。クラスの中で、30人クラスなら、1位から30位まで、美男か美女か、太っているか痩せているか、そういうことで序列が付くのだそうで、これほど残酷なことはないんだっていうんですね。
というのは、イケメンか美女か、それが完全にスクールカーストに反映されてしまうと、これは残酷なスクールカーストで、なぜなら学力なら逆転する可能性があるけど、外見は逆転する可能性がほとんど無い。1軍には永遠になれない。だからゆとり世代ってキツかった世代なんだ、って言うんですね。
それでも、浅井リョウさんの時代はＳＮＳが無かったわけで、これにＳＮＳが加わったら、ますますスクールカーストの下に位置づけられた中高生の学校生活の過酷さっていうのは、ある意味で地獄だと思いますね。
＊今のＳＮＳは競争を激化する傾向があると思います。バズり文化というのもどうかと思う部分がありますね。持てる者はますます与えられ豊かになっていく一方で、バズらない者はますます自信を失って行くわけですね。ある人が、「自分の上位互換が秒で見つかってしまう地獄」だって言っていました。
　
　さて、今日は、主の祈りの最後の説教になります。「われらを試みにあわせず、悪より救い出したまえ」ですね。
 
　私たちを試みにあわせないで、
　悪からお救いください。』
 
　この試み、とは、誘惑とも訳せることばです。ここでは試練と言ってもいいんですけれども、誘惑の色合いが強いと思いますね。そして、悪とは、悪とも取れるし、悪魔、とも取れる書き方をしています。悪と悪魔、両方重なって来るんですけれども、私たちの生きている現実は、色んなささやきに取り囲まれていると思います。悪、または悪魔のささやき。さっきのルッキズム等の話は、実は深いところでそれと繋がっていることなんですけれども、そのことも後でまた触れますが、ためしに、宗教改革者マルティン・ルターが、この主の祈りの「試みにあわせず」についてどう言っているか、小教理問答を見てみたいと思います。
 
【われらを試みにあわせず　これは何？
 
確かに神は、だれをも試みにあわせられません。しかしわれわれはこの祈りにおいて、神がわれわれを助け守って、悪魔やこの世やわれわれの肉が、われわれをあざむいたり、またまちがった信仰や絶望、またはその他の大きなとがや罪悪におちいらせないようにしてくださることを、またたとえわれわれが試みにあっても、われわれが最後にはこれに打ち勝ち、勝利を得ることができるようにしてくださることを祈るのです。】
 
　と言っています。
　ルターはここで、私たちを、①悪魔や②この世や③われわれの肉(自己中心の思い)、この3つが誘惑するのだと言っていますが、分かりやすく①の悪魔に集中して考えてみましょう。
 
そうすると、「荒野の誘惑」について考えてみると良いのです。イエス様が公生涯に入る前に、荒野で悪魔の誘惑に遭われましたね。この悪魔の誘惑の内容を併せて考えてみたいわけですが、最初の誘惑は、
 
① 石をパンに変えてみなさい
 
　というものでしたね。
 
　そして次の誘惑が、
 
②エルサレム神殿の頂きにイエス様を立たせて「ここから飛び降りてご覧なさい。天使たちがあなたを支えるって聖書にも書いてあるでしょう。
 
　というものでしたね。
 
そして最後の第3の誘惑が、

③もしひれ伏して私を拝むなら、この世界の繁栄のすべてを差し上げましょう
 
でこれらを分類しまして、私たちへの教訓や模範と捉えて、分かりやすく、「私たちが気をつけて避けるべき3つの誘惑」などと、説教がなされる場合があるでしょう。
 
その場合には、たいてい、パンの誘惑は、食べ物、そしてよくあるのが、もっと広げて、金銭、物質の誘惑、こういったものです。そして人はパンのみによって生くるにあらず、神の口から出る一つ一つのことばによる、というみことばで撃退しましょう、と。
 
そして2つ目の飛び降りる誘惑は、神を試してはならないという教訓です。悪魔は、巧みに、「天使たちが支えるって聖書に書いてあるでしょう？神を試してご覧なさい」と聖書のことばまで使って、いかにも正しそうに誘惑して来るので、そういう場合に、イエス様は同じく聖書のことばを用いて撃退されました。私たちも聖書のことばをたくさん心に蓄えて、何かの誘惑の時には、撃退できるようにしましょう。（あるいは、そうやって目立つパフォーマンスをして、人の評判を集めることへの誘惑です。これも避けましょう。）こういう話になるでしょうか？
 
そして3つ目の誘惑は、権力への誘惑です。これを避けましょう。こういった教訓的なメッセージになることがあると思うんですね。
 
それはそれでクリスチャン生活にとって有益だとは思いますけれども、その3つでいいのだろうか？っていうものがありますよね。明らかに抜けているものがあるでしょう？私たちが誘惑と言ったらすぐに思い浮かべるものは、異性の誘惑ではないでしょうか？政治家や、芸能人などがスキャンダルを起こすのは、いや政治家、芸能人だけじゃない。時には牧師だって、大失敗をするのは、この問題ですよね。それはほとんどのケースで、異性の方が誘惑をしてきた、などというのは言い訳に過ぎないでしょう。自分のうちにある、肉の思い、支配欲もあるでしょう。罪という性質によって、それを起こしたということなんですね。それは十分すぎるほどに注意しなければなりません。
ですから、荒野の誘惑を避けるべき3つの誘惑として教訓的に語るのは、どうやっても全部網羅することはできなくて、不十分ということになりそうです。ですからもっと深く見ないといけません。悪魔や、私たちの内にある肉―自己中心―の性質っていうものは、もっと巧妙で、人間というものが生きているということに分かちがたく結びついているというか、そういうものだと思うんですね。
悪魔の、イエス様への誘惑は、結局のところ、3つに見えるけれども、一つじゃないか、ということなんです。要するにイエス様をヒーローにしようとしたんですよ。十字架を通らないヒーローにしようとした。
最初のパンの誘惑にしてもそうです。あなたの神の子の力で、石をパンに変えてみよ。
これは、奇跡の力を自分のために使って腹を満たせ、ということもあるでしょうけれども、それを民衆のために使ってやれよ、ということでもあったでしょう。悪魔は、明らかに悪いことやってやれ、って言わないんです。皆のためにいいことやったらいいじゃないか。つまり、その石をパンに変える力でもって、空腹の民衆を喜ばせてやったらいいじゃないか。そうしたらイエスよ、あんたの人気はうなぎ上りだ。メシアとしての活動がやりやすくなるだろう？
 
もう一つ、エルサレム神殿の頂きから飛び降りてみろ、っていうのは、いや、イエスよ、あなたのコンサルやってあげますよ。これから町々村々をめぐって、地道に活動するのもいいけれど、それじゃあ効率悪いですよね？コスパもタイパも悪いですよね？やっぱり、大勢にアピールするためには、人がいっぱい集まる、都会のエルサレムで、しかもあの神殿の頂から、飛び降りて、あなたの神の子の力で、天使たちが足を支えてくれるのを分かりやすいアピールにしてみせてあげたら、民衆はコロって行きますよね。あなたのメシアとして活動は、抜群にやりやすくなりますよね。さぁ、やってご覧なさい、って。
 
　そして、最後の誘惑。もし私をひれ伏して拝むなら、このローマ帝国世界、この栄華をすべてあなたに差し上げましょう。そうしたら一番手っ取り早いですよ。地上の国々は皆あなたのものになります。あなたが善政をしいて、この世界の国々を統治して、偉大な王様として、メシア、救い主として、地上の国々の人々を幸せに導いてあげてください。
 
　これらのものは、―のちに述べますけれど―十字架を避けさせることでした。十字架を通らない栄光のメシアとして、華々しいヒーローに仕立て上げようとしたわけですね。とにかくまさに「選択と集中」で、上昇志向に乗せようとしたわけです。
 
　で、ここが凄くポイントで、私たち上昇志向に乗せられる時、これが危ないわけです。
　確かに努力して、知識や技術を磨いて、人を助けるより良い仕事をするんだ、という意識で、上昇志向になるのは、悪いことではないでしょう。先ほど、コスパ、タイパとも言いましたけれども、もっと費用をおさえた上で、より効果的な方法を考えてそれを使う、という意味で、コスパを求めるのは多分問題ないでしょう。タイパもそうですけれども、時間対効果と言いますか、より短い時間で、効率的に、勉強や作業をする、時短で家事をこなす、というのは、悪いことではないと思いますね。
　けれども、気をつけなきゃいけないことは、この上昇志向と、コスパ・タイパ志向には、罠が潜んでいるんです。そのワナっていうのは、やがて人間を切り捨てるようになる、っていう罠なんです。
 
　私はＳＮＳである方が投稿していた漫画を読みました。短い漫画です。クリスチャンで無い方が書いていたと思うんですけれども、悪魔が出て来るんですね。そして、主人公らしき女性の新入社員が出て来るんです。悪魔がささやきかける漫画です。だいたいこういった内容の漫画だったと記憶しています。
　その新入社員の女性は言うんです。私コスパもタイパも悪いから、全然スキルアップしなくて。そうすると悪魔は私に任せなさい、って言って、仕事のスキルを大変、効率的に身に着けるトレーニングを彼女にするんですね。そうすると数年で彼女はスキルアップをして、昇進もしたのでしょう。そこで悪魔にお礼を言うんですね。「おかげで私もコスパ・タイパのいい人間になれたわ」って言うんですね。
　そうすると悪魔は言うんです。「ずいぶん成長しましたね。けれど、それでも、あなたよりコスパ・タイパのいい人間はたくさんいますので、あなたはもうこの世に要らない人間なんです。」
　ちょっとぞっとするような漫画だと思いますけれども、よくそのコスパ・タイパ志向のワナの本質をついていると思うんですよね。そしてそれはどこか悪魔的なものだということを何となく見ぬいている人が描いた漫画だと思いますね。
 
　「映画を早送りで見る人たち」という本の中で、タイパ志向の行き過ぎは、「他者性の欠如」をもたらす、と言います。だんだんとコスパ・タイパの悪い人には会わないようにしよう、そんな時間はもったいない、となるわけですね。そうして、私もびっくりしましたけれども、ある女性が夫に対して、能登の震災の支援が遅れていることについて話したら、夫は「そんなところに税金を使って助けて何のメリットがあるんだよ？」って言ったって言うんですよね。そしてその女性は耳を疑ったっていうんですけれども、そりゃ耳を疑いますよね？もう何か日本中にそういう考えが蔓延していて、「高齢者は集団自決せよ」などと言う自称経済学者の人をテレビが、もてはやすなどという―この発言はナチスみたいだ、という批判も浴びています。ナチスの優生思想は悪魔的であるとはずっと言われ続けていることですね―、こういう人間切り捨てをもてはやすような、おかしな時代になってきているな、と思います。
　
選択と集中と上昇志向のささやきというのは、裏を返せばこういうささやきなんです。ある牧師は、悪魔サタンのささやきの、本質的なものはこれだって言っているんですね。「お前はダメだ」「お前なんかダメだ」っていう声だっていうんです。その通りだと思いますね。
ヘンリーナウエンというカトリックの司祭は、待ち望むということ、という本の中で、だいたいこういった内容のことを言っていたんですね。
 
【私たちのこんにちの時代の空気は、私たちを忙しくするように駆り立てるんだと。そこにとどまっていちゃだめだ。もっと次の場所に行け。お前は無価値な人間なんだ。もっと大きな目立つことをやれ、そして、お前がひとかどの人間であることをアピールせよ、そうしないと誰からも忘れられるぞ、って。】
 
　それで最初の話に繋がってくるんですけれども、学力やスポーツで序列が付かなくなったら、容姿、ルッキズムになってくる。「私にはそのままでは価値が無い」というのが根底にあるので、時には整形してでも価値ある人間になろうとする。でもそこも本質をよく見抜いておきたいのは、ルッキズムについてある記事を書いた人が、「現代社会の美の規範がどこから生まれたのか、考えてみてほしい」「そこには隠された古典的な差別意識がある」と指摘してくれていましたけれども、美とミソジニーという本も出ていたようですけれども(ミソジニーと言うのは女性蔑視、女性嫌悪ですね)、美・美しさというのは、時代と文化によって何が美しいとされるのかが異なるんです。
（たとえば纏足(てんそく)という慣習が中国にはありました。女の子の足を縛って、発達を抑えて小さな足にするんです。この小さな足が美しいとされていましたけれども、これは支配し易さと関係があるんですね。美、美しさ、というもののすべてがそうではないんですけれども。ルッキズムにはそういう側面もあるわけですね。）
 
　そうやって、自分をモノ化する・商品化する、そうすることによって、優生思想ゲーム、いつ座れなくなるのか分からない椅子取りゲームに参加するなら、この世界の栄華をあなたに差し上げましょう、っていうささやきがいつも聞こえるわけですよね。その声というのは、とても一般的で、あらゆるところに満ち満ちているので、まるでその価値観しかないように私たちは思い込んでしまうことがあるかもしれない。
　だけど神さまのみ声というのは、小さくか細いと聖書にありますけれども、よく耳を澄ませると聞こえてくるんです。その神さまの方のささやきの声は、「あなたはわたしの目に高価で尊い。わたしはあなたを愛している(旧約聖書　イザヤ書第43章4節)」という声なんですよね。
 
　で、この誘惑というのは、神さまから引き離そうとする誘惑なんだとそういう説き明かしをする牧師先生は多いんです。そしてそれは全く正しいんです。神さまから離れたり距離が大きくなると、何が問題かというと、一つの言い方をすれば、この「あなたを愛している」という声が、聞こえない、あるいは聞こえにくくなる、ということなんです。
　私たち人間が、なぜ人や自分自身をモノ化するか、能力や容姿で価値を計るかというと、この声から離れてしまっているからなんです。神が人間を愛して愛して作った、あなたがこの世界にいてくれたらどんなにいいだろうと、神のかたちとして作った。そういう存在であることを知らなければ、あるいはすっかり忘れていれば、何かのモノサシで、人間の価値を計らなくてはならなくなる。それは、役に立つか、支配できるか、そういった誰かの基準になってしまう。
だからこそ、この神から引き離すような試みにはあわせずに、悪魔のささやきから守られるように、日々祈ることは、―誘惑にあわせないで、なんて毎日祈る必要があるの？と私たちはともすれば思いがちなのですが―やはり切実な祈りだと思うわけですよね。
　
　この荒野での3つの悪魔のささやきは、イエス様に「十字架を避けさせる」ためのものであったと申し上げました。まさにそこが肝心なんです。イエス様が十字架におかかりになる直前に、どうしても挙げておかなければならない場面があります。その「試みにあわせないで、悪からお救いください」という祈りを、イエス様ご自身がしてくださったのです。それはどこででしょうか？あのゲッセマネの園で、なのです。
　血の汗を流されて、悪魔との激しい格闘をなさいました。「父よ、この十字架の死という苦しみの杯をわたしから過ぎ去らせてください。しかし、わたしの思いではなくて、あなたのみこころのままをなさってください」
　ここで主イエスは、「やっぱり嫌です」と言って、ガリラヤに逃げ帰られたのなら、十字架の救いは無かったけれども、そうやって悪魔のささやき通りに十字架を避けるのではなくて、父なる神のご意志に従われた。そして、近くにいた弟子たちには「誘惑に陥らないように、目を覚まして祈っていなさい」とおっしゃったわけです。私たちは、この弟子の一人になるのです。主イエスは、この祈りを、隠れた、奥まった部屋に入り祈りなさいとおっしゃいました。隠れた場所で、それこそ自分の心の奥の隠れた部屋で、ゲッセマネの主イエスと出会うのです。私たちなら、そのような十字架の苦しみなどということは、とても受けきれなくて、すぐに悪魔のささやきに乗って逃げ帰ってしまうような私たちの代わりに、主イエスは、祈って悪魔のささやきに勝利してくださった。十字架によって、悪魔と罪と死に勝利してくださった！だからこそ私たちは、悪魔と戦って勝たなくても良いのです。イエス様が勝ってくださったので、私たちは避けるだけで十分なのです。
 
イエス様の十字架によって、大げさじゃなくてこの世界は滅びずに済んだのです。造り主なる神から離れ、その神のかたちである人間の尊厳、いのちの価値を忘れた世界は、上昇志向と選択と集中で、結局切り捨ての社会になるでしょう。しかし主イエスは、まさにその上昇志向とは逆の方向に行ってくださった。こんな王は他にいません。こんなメシアは他にいません。ただ、この世の中の人が求める栄華とは逆の方向の十字架によって、私たちのその神から離れ、人間の価値が分からなくなるという罪も、ゆるされました。私たちに今日、主イエスは、そのところに再び落ち込まないように、試みにあわせないで、悪よりお救いください、と、祈るようにと、招いておられます。そして、この主の祈りは、世界を包む祈りです。「私たち」というのは、世界中に広げることができます。日本の人々が、世界の人々が、このささやきに乗らないように、この祈りをするように、主は私たちを招いていらっしゃいます。
 
お祈りをいたします。
アバ、父よ、愛する天のお父様
あなたの聖なる御名があがられますように
あなたのご支配がわたしの内にも、この世界にも来ますように
あなたのご意志が、天で行なわれるように、地上でも行なわれますように
私たちの毎日の糧を、今日もお与えください。私たちに必要なすべてのものを。
そして世界中の人の必要のすべてを満たしてください。物質的なものだけではなくて、霊的な糧である命のみことばを、毎日の罪のゆるしを、私たちに、世界の人々に届けてください。
私たちの負い目をおゆるしください。私たちがゆるせない罪をも、すでにゆるしたという福音の声を日々聞かせて下さい。
私たちを、世界中の人を、誘惑から遠ざけて、
悪魔のささやきから守って下さい。
天の御国と、力と、栄光は、永遠にあなたのものだからです。
アーメン。
 
#主の祈り #試みにあわせず