📗【文書版】✴️礼拝メッセージ『偽預言者たちに用心しなさい』　2024年8月4日

📗先日の礼拝メッセージのテキスト版もここに掲載いたします⬇️
📗礼拝メッセージ『偽預言者たちに用心しなさい』　2024年8月4日
 
新約聖書　マタイの福音書第7章15～23節
 
15　偽預言者たちに用心しなさい。彼らは羊の衣を着てあなたがたのところに来るが、内側は貪欲な狼です。
16あなたがたは彼らを実によって見分けることになります。茨からぶどうが、あざみからいちじくが採れるでしょうか。
17良い木はみな良い実を結び、悪い木は悪い実を結びます。
18良い木が悪い実を結ぶことはできず、また、悪い木が良い実を結ぶこともできません。
19良い実を結ばない木はみな切り倒されて、火に投げ込まれます。
20こういうわけで、あなたがたは彼らを実によって見分けることになるのです。
21　わたしに向かって『主よ、主よ』と言う者がみな天の御国に入るのではなく、天におられるわたしの父のみこころを行う者が入るのです。
22その日には多くの者がわたしに言うでしょう。『主よ、主よ。私たちはあなたの名によって預言し、あなたの名によって悪霊を追い出し、あなたの名によって多くの奇跡を行ったではありませんか。』
23しかし、わたしはそのとき、彼らにはっきりと言います。『わたしはおまえたちを全く知らない。不法を行う者たち、わたしから離れて行け。』
 
主の恵みと平安が皆さんの上に豊かにありますように。
この日も皆さんとご一緒に主の日の礼拝にあずかれますことを心から感謝いたします。
 
　ジャーナリストでありニュースキャスターでいらっしゃいます筑紫哲也さん―有名な方ですね―筑紫哲也さんに、統一教会の関係者とみられる人から脅迫状が送られているんですね。1985年のことだったようですが、私お恥ずかしながら知りませんでした。今年5月にある方のＳＮＳの投稿で知ったんですね。こんな脅迫状だったそうです。
 
【これ以上おれたちの悪口をいうときさまの子供と女房をブチ殺すぞ。おれは韓国製M16ライフルを持っているし韓国で軍事訓練をうけてきた。おれたちの仲間もみんなきさまを殺したがっている。
いいか、これは決しておどしではない。文鮮明様のためだったら命の一つや二つ捨てたっておしくない奴がおれたちの仲間には百人以上いるんだ。(中路）いっておくが警察はおれたちの味方だ。おれたちの操り人形だ。おれたちには岸元首相がついている。まず筑紫哲地のガキとその女房(中路）から殺してやる。それがいやなら次の週の朝日ジャーナルに謝罪記事を出せ>
手紙の末尾は、くアカサタンを殺すことだけが生きがいの文鮮明様の使徒より>と結ばれている。
 
　ということですね。まぁこんな脅迫状が送られてくるとは、と思いますね。ジャーナリストの有田芳生さんによれば、統一教会は銃砲店―空気銃なんかを持っている店ですね―銃砲店なども持っていて、準軍事組織的なものも持っていると言っているんですね。物騒ですよね。
 
　今日のイエス様のみことばは、「偽預言者たちに用心しなさい」ということばから始まります。
　偽預言者とはどういう人か？預言者というのは、預金の預という字を書いている時には、神のことばを神から預かって語る者という意味ですから、聖書のことばを語る者、ということですね。それに偽物がいるんだ、と。
　そしてその偽の預言者の特徴としては、
 
彼らは羊の衣を着てあなたがたのところに来るが、内側は貪欲な狼です。
 
　ってイエス様はおっしゃるんですよね。「羊の皮をかぶった狼」っていうのは日本語のことわざにもなっていますけれども、親切そう、優しそうなふりをしながら、内心はよからぬことを考えている人のたとえ、などと説明されますけれども、狼っていうことは、人を食い物にする者ということですね。
　人を食い物にする、そう言われれば、さまざまなカルト団体がありますけれども、統一教会などもその中の筆頭に入るでしょうね。なにしろ一人から数百万円から数千万円、時には1億円を超える金額を霊感商法で吸い取る。あるいは「自由意思でささげた」というふうになるようにマインドコントロールして、騙された人は、その高額献金でお金を奪われるだけではなくて、家族の関係から何から、もう家庭そのものを破壊されていくわけですね。まぁこれがまさにですね、人を食い物にする、さらには家ごと食い物にしていく、と言ってもいいかもしれません。
　そして、霊感商法やマインドコントロールをしかけてくるのは、統一教会信者なんですけれども、たいてい羊のように非常に優しくて、親切で、賢くて、魅力的な人だと言います。非常に真面目でいい人なので引っかかりやすいというのがあると思うんですけれども、彼ら彼女らは純粋な動機でやっているのかも知れません。けれども、上の方は本当に貪欲な狼なんですね。
　そして、彼ら彼女らを見ますと、性格的人格的には、良い実を結んでいるように見えるんですね。しかし数年数十年経ちますと、特に上の方に、悪い実が沢山見えてくるわけですね。韓国の清平(チョンピョン)に総工費、前は300億円とか言っていたんですけれども、今は建設費511億円か、などと言われているんですよね。それから今の総裁の韓鶴子(ハンハクチャ)氏と教団幹部らが、ラスベガスのカジノで64億円豪遊というのがありました。
　そんなことで、実を見れば分かる、統一教会は「キリスト教系異端」と呼ばれることも多いですけれども、それだけあって、聖書を使うんですよね。神のことばを預かって語っているふりをしながら―つまり私たちの言い方で言えば預言者のふりをしながら―、神のことばを都合よく利用、悪用する、と言ってもよいと思いますけれども、さらに創設者である文鮮明(ムンソンミョン)氏は、韓国の梨花(イファ)女子大学で、72時間説教というのを行なって―聖書の用語を悪用しながら―、学生たちを監禁して加害をしたと言われています。
　このように、悪い実を結んでいるので、―もっとも、おととしからマスコミが統一教会のことをきちんと報道するようになったこともあって―私たちには一目瞭然になったわけですが、こういうのは見分けることが簡単なわけですね。
 
　ここでもう一つですね、偽預言者を考える上で触れておかなければならないことがあると思います。それは、ドイツである時に、教会の信仰のあり方について、偽物ではなくて、本物を志した宣言なんですね。バルメン宣言と言われるものです。カールバルトという牧師たちが中心となってこの宣言の文章を作りました。そのうちの第一テーゼというのを紹介します。二つ、みことばが引用されて、それに文章が続く形になっています。
 
【『第１テーゼ』
「わたしは道であり、真理であり、命である。だれもわたしによらないでは、父のみもとに行くことができない」（ヨハネによる福音書第１４章６節）
「よくよくあなたがたに言っておく。わたしは羊の門である。わたしより前に来た人は、みな盗人であり、強盗である。わたしは門である。わたしを通って入る者は救われる」（ヨハネによる福音書１０章７節、９節）
 
聖書においてわれわれに証しされているイエス・キリストは、われわれが聞くべき、またわれわれが生と死において信頼し服従すべき神の唯一の御言葉である。
教会がその宣教の源として、神のこの唯一の御言葉のほかに、またそれと並んで、さらに他の出来事や力、現象や真理を、神の啓示として承認しうるとか、承認しなければならないとかいう誤った教えを、われわれは退ける。】
 
　それから第三テーゼというのも、抜粋して引用しておきます。
 
【教会が、その使信やその秩序の形を、教会自身の好むところに任せてよいとか、その時々に支配的な世界観的確信や政治的確信の変化に任せてよいとかいうような誤った教えを、われわれは退ける。】
 
　ということですね。（下線は私が引かせていただきましたけれども）これは、もちろん、ナチス、ヒトラーへの抵抗の文脈で考えられた文章ですね。
　ヒトラーは、ドイツ・キリスト者、というのを打ち出しまして、ドイツ人はアーリア人種で優等なのだ、優等な遺伝子を残して理想の世界を作るのだというようなことを言って、やがて障害者やユダヤ人を殺してよいとしました。聖書を引用もするんですよ。ローマ人への手紙第13章に「人はみな、上に立つ権威に従うべきです」と書いてある。だから私に従いなさい、などと言って自らの権力を強めて行きました。(どこかの元大統領も、似たようなところがある)
　この私が下線を引きました「世界観的確信」というのは、そういう優生思想などというものも含むでしょうし、政治的確信というのは、ヒトラーに従えばよいとかいう、そういうことでしょうね。そういうのは、誤った教えなんだと。
　そして、第一テーゼ。
 
【聖書においてわれわれに証しされているイエス・キリストは、われわれが聞くべき、またわれわれが生と死において信頼し服従すべき神の唯一の御言葉である。
教会がその宣教の源として、神のこの唯一の御言葉のほかに、またそれと並んで、さらに他の出来事や力、現象や真理を、神の啓示として承認しうるとか、承認しなければならないとかいう誤った教えを、われわれは退ける。】
 
　ということですね。ですから、要するにこの第一テーゼが何を言っているかというと、イエス・キリストのみに聞き従いますよ、と。他には無い、ということですね。ということは、ヒトラーには聞き従いませんよ、ということを言っているわけです。
　それは、なぜなら神のことばは引用するけれども、それに偽物の言葉を混ぜて、民衆を惑わしているからですね。ヒトラーのしたことは、約600万人ものユダヤ人を虐殺するという恐ろしい悪い実を生み出しました。これも実によって見分けることができるんですね。
　ヒトラーは「ドイツ民族であることを誇りとせよ」と言いました。けれどこれは、鋭いクリスチャンにはすぐ見抜けるわけですね。なぜならパウロの書いたガラテヤ書の中に、
 
「私には、私たちの主イエス・キリストの十字架以外に誇りとするものが、決してあってはなりません(ガラテヤ人への手紙第6章14節)」
 
とあるからですね。だから日本でも日本民族であることを誇りとせよ、なんていう言葉が、どんどん巷にあふれるようになっています。もしキリスト伝道者が、「日本人・日本民族であることを誇りとせよ」などという、そういうようなことを言い出したら、もうこのガラテヤ書のみことばから、ちょっと違うよ、ということが見抜けるわけですね。そして、もう皆さん身に着けていらっしゃると思いますけれども、みことばを解き明かすのではなくて、みことばを引用して別の思想を語る、みことばの一部を前後の文脈から切り離して自分の主張の補強材として聖書を使う、これは文鮮明もヒトラーもそうなんですけれども、そういう用い方で語られるのは偽の預言である、ということですね。
それから、―あからさまに、あるいは巧みにやんわりと、でも不必要に「攻めてくるぞ」などと言って脅威論をあおって―伝道者が戦争に誘導しようとするならば、それは偽の預言である、と考えていいと思います。なぜならモーセの十戒に明確に「殺してはならない」とあるからですね。
そんなことで私たちは、本物の預言かどうかを見分けることができると思います。何よりも「偽物はこういう特徴があって」と勉強するのも有益ですけれども、「聖書を利用して・聖書を使って何かを語る」ではなくて「聖書が何を語っているか？・神が聖書を通して何を語って下さっているか？」を誠実に聴き取った上で、それを解き明かす(だから聖書に対する態度の上と下が逆。偽預言は自分の言いたいことが上にあってみことばが下・補強材。本物の預言はみことばが上にあってその下に立って聴き取る)、そういう本物のメッセージを語って下さっている牧師先生、伝道者が沢山いらっしゃいますので、そういう本物の預言を聞き続けることが大事ですね。
 
そして、まぁここまではですね、ある意味で聞きやすかったと思います。―物騒という意味では聞きにくかったと思うんですけれど―ある意味で、他者に対する警戒であって、自分が問われているのではないからです。
 
　21節からはこう主イエスはおっしゃいます。
 
21　わたしに向かって『主よ、主よ』と言う者がみな天の御国に入るのではなく、天におられるわたしの父のみこころを行う者が入るのです。
22その日には多くの者がわたしに言うでしょう。『主よ、主よ。私たちはあなたの名によって預言し、あなたの名によって悪霊を追い出し、あなたの名によって多くの奇跡を行ったではありませんか。』
23しかし、わたしはそのとき、彼らにはっきりと言います。『わたしはおまえたちを全く知らない。不法を行う者たち、わたしから離れて行け。』
 
　このみことばは、先ほどまでわたくしが話したような偽預言者に対して言われていることばだと理解されることがありますが、そうではない、これは私たち自身に語られていることばなのだ、と取るべきことばなのです。聖書はひとごととしてではなく、自分に語られたことばとして読むべき・聴くべきことばだからですね。
　こうなるとですね、とたんに恐ろしくなると思うんですね。私たちの心がざわざわするかも知れません。わたしに向かって、つまりイエス様に向かって「主よ、主よ」と呼んでいるということは、クリスチャン、ということなんでしょう。主よ、主よ、と呼んでいる者すべてが天の御国に入るわけではない。天におられる父なる神様のみこころを行う者が入る。
　こうなると大変困ったことになる。このみことばの前に立ちすくむような思いになる。その前のみことばと併せて、これは私も偽預言者なのではないか？という問いになってくる。それは神のことばを主に語る私のような伝道者が第一にそうですけれども、私は信徒だから大丈夫、ということにはならないでしょう。クリスチャンは全員が、預言者なんです。身近な人にみことばを語る、ことばでもって、あるいは無言の行ないでもって語って行く預言者なわけですね。
　
　それでここで、
　
「『主よ、主よ』と言う者がみな天の御国に入るのではなく、天におられるわたしの父のみこころを行う者が入るのです。」
　
　このみことばを聞けば、私たちはすぐに「ああ、やはりイエス様を主と呼ぶだけではダメなのか、天国に入れないのか、やはり『みこころを行う者』とあるから、「有言実行」が大事なんだ、と。信仰だけじゃだめで、プラス愛の行ないをしないと救われないんじゃないか。あるいは、前後の文脈を考えて、これまで山上の説教を語られた敵を愛せよとか右の頬をとか、そういうのがここで言われている天の父のみこころだろうと解釈しまして、信仰プラス、山上の説教で言われている行ないもしないと救われないという意味なのか？と、解釈してしまうかもしれません。先ほどの「良い実」というのも、実践、と解釈してしまうかもしれません。
　そう解釈しますと、矛盾が起こってくるんですね。ここで、旧約のヨエル書や新約の使徒の働きのみことばを思い起こす方もいらっしゃるかもしれません。「主の名を呼ぶ者はみな救われる」というみことばですね。これは矛盾する。どういうことなんだろうか？結局ルターの言った「恵みのみ、信仰のみによって救われる」というのは間違っている、ということなんでしょうか？
　
　ここを注意深く聞き取っていかなくちゃいけないと思うんですけれども、このイエス様のみことばを、やっぱり信仰だけじゃダメで、行ないも無いと救われないと語られることが時にあるんですけれども、それはよくよく注意して聞けば誤りだということが分かります。というのは、行ないがある人が締め出されているからなんです。
口先だけで信仰を言い表してもだめだ　大事なのは愛の実践だ、という読み方は、ここで主イエスが言おうとなさっていることとは、まるで逆のようです。
なぜかというと、22節23節でこう語られているからです
 
22その日には多くの者がわたしに言うでしょう。『主よ、主よ。私たちはあなたの名によって預言し、あなたの名によって悪霊を追い出し、あなたの名によって多くの奇跡を行ったではありませんか。』
23しかし、わたしはそのとき、彼らにはっきりと言います。『わたしはおまえたちを全く知らない。不法を行う者たち、わたしから離れて行け。』
 
で、ここで主イエスに斥けられている人びとは、立派な行ないをしたんです。しかもこの言葉からすると彼らは別に嘘をついているわけではないんです。自分でも、主よ、私はこれだけのことをしましたと確信がある。熱心に、立派なわざに生きているんです。けれども、主イエスには分かってしまうっていうんです。お前たちのことは知らない。私から離れて行け、と。
私が、そして皆さんが、終わりの日に、主イエスに、お前のことは知らないと言われてしまう可能性があるということなのでしょうか？
 
ある人がこの箇所を解き明かしながら
このような福音書の記事を思い起こしていました。マルコの福音書第5章に、主イエスが弟子たちとまた大勢の群衆に取り囲まれて歩いておられた時に、12年間出血の止まらなかった女性がこっそり近づいて「もしかしたら、このお方の衣にでも触れれば癒されるかもしれない」と思って、そっと主の衣に触れました。
そうしたら12年間　止まらなかった出血がたちまち癒されたという、そういう記事です。
しかしこの福音書の記事はそこで話が終わらないのであって、主イエスは、自分のうちから力が出て行ったことにお気づきになって「今私の衣に触ったのは誰だ？」とおっしゃいました。
回りにいた弟子たちは、なにしろ、大勢の群衆がひしめきあっているわけですから、
「先生何言ってるんですか。誰がさわったんだって、こんなに大勢の人があなたに触っているではないですか。」と言う。
けれども、主イエスは、
「いや違う。確かに今、わたしに触った人がいる。わたしのうちから力が出て行ったことに、わたしは気付いたんだ。」
そう言ってその人を捜し続けられました。
「どこにいるのか　わたしに触った人は？」
この女性は、もう逃げることはできないとついに観念して、恐れつつみ前に進み出てありのままを話しました。
そうしたら主は、
「あなたの信仰があなたを救った。安心して行きなさい。」
と励まして送り出してくださったというそういう記事です。
この福音書が伝えるできごとは、ちょうど、主よ主よ、と言いながら　主イエスに斥けられた人々の話とは正反対です。
つまり、主よ主よ、私たちはあなたのためにこれだけのことをしましたと言いつのる人々が「お前なんか知らない」と言われる一方で、ただ主の衣に触っていやされただけの人、その人を主イエスは、
「どうしてもその人に会いたい」
と、そうおっしゃるのです。
長血の女などとも呼ばれる、この福音書の記事で興味深いのは、今何度も申しましたように、主の衣に触れた時、主のうちから力が出て行ったと、そう記されていることです。自分の中から力が出て行った。そういう手ごたえが主イエスの方にあったのです。
けれどもここで、主よ主よ、と言いながら主イエスに斥けられた人というのは、じつは主の方からは、なんの力も出ていっていなかったのだと思います。
「主よ主よ、私たちは御名によって、預言し、悪霊を追い出し、多くの奇跡を行なったではありませんか。わたしはこれもしました。あれもしました。全部しました。」
けれども主イエスはおっしゃるのです。いや、わたしからは何の力も出て行っていないよ。あなたはそれをひとりでしたんだね。自分の力でそれをしたんだね。わたしはそれを知らないよ。
こういうことなのでしょう。
 
つまり、ここで主イエスに言われているのは、私たちは、自分の側からのどのような信仰や、行いを神に差し出しても、その自分の側からの捧げものをもって、神に受け入れられることは、あり得ないということです。
 
ナチスドイツに抵抗した、ボンヘッファーという神学者がいました。この人は、まさに、信仰と行いの一致したクリスチャンです。実際に、ナチス政権を転覆させることを目指して活動して、捕らえられ、処刑された人です。多くのクリスチャンが時代の声に忖度していくのを目の当たりにしながら、―神に逆らう権力には抵抗するというのも良い行ないの一つですから―行いのない信仰がどれほど、頼りないものであるかということを、その生き様を通して表した人であるとも言えます。
しかし、とても驚かされることだと思いますが、その人が、この主イエスの御言葉に対して、先ほどまで私たちが辿ってきたような聴き方をしたのです。
一体誰が神に受け入れられるのか？誰が主イエスに受け入れられる者となるのか？
こういうふうにどんどんと狭くなり、細くなっていく狭い門と狭い道は、ついに、神の御前における人間の誠実さの究極にまで至ります。けれども、そこでも「あなたがたを全く知らない」という言葉が響く。
ボンヘッファーはしかしそれこそが、山上の説教のはじめからこの終わりに至るまでを包んでいる秘密であると言います。
終わりの日に神の御前に立たせられる日、その日には、私たちの側からの信仰も、また実践も役に立たないと言います。それが、山上の説教を貫いている主イエスの心だと言うのです。私たちの生み出すものは神の永遠の前に、何一つ持ち堪えることができません。
そこにはいったい何が残るのか？私たちは何も残らないではないかと思う。
けれども、ボンヘッファーは一転して言います。
「その時われわれに残っているのは、『わたしはあなたを知っている』というイエスの言葉である。」
神の御前に立つ背のない私たちを浮かび上がらせるのは、ただキリストの恵みのみです。自分の側からの信仰にも、実践にも、何にも頼ることはできない。自分の中には、永遠に通じるものは何もない。けれど、主イエスは、その心貧しい者に対して、「わたしはあなたを知っている」と語ってくださる。そこに、私たちの唯一の居場所があります。
 
ある説教者はこういった内容のことを言います。今日聞いているみことばで、全ての者を神に裁かれるべき人間、神より「あなたのことは知らない」と言われなければならない罪人であることを隠すことなく語られたキリストが、殺されたということを、私たちは忘れてはならない。しかも誰に殺されたのか？偽預言者に殺されたんだ。私たちは不思議なことに気付くが、そのキリストの十字架において、「あなたがたを全く知らない、不法を働く者どもよ、行ってしまえ」と退けられたのは、偽預言者ではなく、【イエス・キリスト御自身であった】んだ。主イエスが、十字架で、「わが神、わが神、どうしてわたしをお見捨てになったのですか」と叫ばれ、私たちは偽預言者として裁かれないようになった。主イエスは、私たちのために、私たちの立つべきところに立ってくださったんだ！
 
　だから、主イエスが「わたしはあなたを知っている」と言ってくださるのは、心貧しい者として、ここに立つ者なんです。私たちの、自分のうちにある何かを誇りたくなるという偽預言者の罪をも、赦された者として、この十字架のもとに立つ者なんです。
　ここで、12年間病気だった女性とも重なります。彼女がまだそれとは知らずにすがったのは、十字架の恵みだったのではないか。あなたのすべてをゆるした！という主イエスのまなざしではなかったか。そのまなざしの中であったからこそ、ありのまますべてを、主イエスに打ち明けることができたのではないかと、わたくしは思います。この女性は、そういう意味で、天の父のみこころを行なったのだと思います。
 
私たちも、同じところに立たせていただくのです。主が私を知っていてくださる。そのこと以外、寄る辺のない者として、私たちは生きて行くのです。
考えてみれば、山上の説教がひたすらに語って来たのも、そのことだったのです。
天の父が、まさしく私の父でいてくださる。わたしのことを一番、よく知っていてくださる。「だから恐れるな」と主は、一貫して語って下さっているのです。
ただ今より聖餐にあずかります。主イエスに愛された神の子として、ただ主の衣にさわらせていただくほか無い者として　主の流された十字架の血潮のもとに共に立ちたいと願います。
 
お祈りをいたします。
恵みとあわれみに富みたもう、私たちの主イエス・キリストの父なる御神
私たちはともすれば、主のみことばを、他人事のように聞いてしまい、ただ外にいるカルトや異端といった偽預言者に気をつけて警戒さえしていればいいのかと思い込んでしまいます。
しかし主は、きょう、私たちこそが偽預言者ではないかという視点に気付かせてくださり、私たちの心のうちの最も深いところで、実践が伴わなければダメだというふうに、すぐに誤解して取ってしまう傾きがあること自体が、的はずれであることを知らせてくださいました。しかしあなたは限りない愛とあわれみをもって、十字架の元に立たせてくださり、完全なゆるしと、天の御国のゆるがない約束を与えてくださいました。その恵みに共にあずかるための聖餐を備えてくださり心から感謝申し上げます。
主イエス・キリストの御名によって祈ります。アーメン。

#統一教会 #脅迫状