📗【文書版】✴️礼拝メッセージ『天と地を結ぶ架け橋イエス・キリスト』新約聖書　ヨハネの福音書第1章43～51節 2023年1月14日

📗昨日の礼拝メッセージのテキスト版もここに掲載いたします⬇️
✴️礼拝メッセージ『天と地を結ぶ架け橋イエス・キリスト』
新約聖書　ヨハネの福音書第1章43～51節 2023年1月14日

43　その翌日、イエスはガリラヤに行こうとされた。そして、ピリポを見つけて、「わたしに従って来なさい」と言われた。
44彼はベツサイダの人で、アンデレやペテロと同じ町の出身であった。
45ピリポはナタナエルを見つけて言った。「私たちは、モーセが律法の中に書き、預言者たちも書いている方に会いました。ナザレの人で、ヨセフの子イエスです。」
46ナタナエルは彼に言った。「ナザレから何か良いものが出るだろうか。」ピリポは言った。「来て、見なさい。」
47イエスはナタナエルが自分の方に来るのを見て、彼について言われた。「見なさい。まさにイスラエル人です。この人には偽りがありません。」
48ナタナエルはイエスに言った。「どうして私をご存じなのですか。」イエスは答えられた。「ピリポがあなたを呼ぶ前に、あなたがいちじくの木の下にいるのを見ました。」
49ナタナエルは答えた。「先生、あなたは神の子です。あなたはイスラエルの王です。」
50イエスは答えられた。「あなたがいちじくの木の下にいるのを見た、とわたしが言ったから信じるのですか。それよりも大きなことを、あなたは見ることになります。」
51そして言われた。「まことに、まことに、あなたがたに言います。天が開けて、神の御使いたちが人の子の上を上り下りするのを、あなたがたは見ることになります。」

　主の恵みと平安が皆さんの上に豊かにありますように。
この日も皆さんとご一緒に主の日の礼拝にあずかれますことを心から感謝いたします。

　先日、1月11日に、南アフリカ共和国がオランダハーグにあります国際司法裁判所（ICJ）に「イスラエルはジェノサイド条約違反」として訴えました。ジェノサイドとは民族浄化とも訳されますけれども大量殺戮のことですね。
　これに対して、イスラエル側は、ハマスに対して防衛のための戦いをしていると言っていますけれども、―私は司法については素人なので司法がどう判断するかは分からないところではありますが―この言い分は今までの言動を見れば無理がありすぎるように思います。先週もお話した通り、イスラエルのネタニヤフ首相は、ハマスを、ではなくて、パレスチナ人全体を「滅ぼすべき、―つまり皆殺しにすべき―アマレク」だと言っていますし、イスラエル側は新生児もハマスだって無茶苦茶なことを言って殺しているんですね。明らかにイスラエル側の政治指導者や軍のトップなどが様々なジョノサイドの意図を示す言葉を使っているわけですから、言い訳は通じないと思いますね。また兵士たちもその言う通りに行動しているから、今までに約23,000人のガザの住民が死に、そのうちの子供が9,000人を超えるということなんですね。(行方不明者約7,000人)さらにイスラエル側は飢餓を武器として使うと、事実上言って実行に移しているわけですから、そのガザの人々の飢餓が解消されなければ、さらに数十万人が餓死などで死ぬことになりかねないんですね。
　国際司法裁判所は、審理して、イスラエルに軍事作戦の停止などを命じる仮保全措置をするかどうかを判断するわけです。
　こうして他のさまざまな国際的な圧力も含めて強まって行けば、停戦に導かれる可能性は少しずつ出て来ると思います。イスラエルがこれ以上、恐ろしい罪を犯さないように、またイスラエルとパレスチナの市民、特にガザの住民のいのちと尊厳が守られるように、祈り続けたいと思います。

　そのようにまた物騒な話をいたしましたけれども、今日は、イスラエル、というのが、大事なポイントの一つになってきます。それは、今日神のことばとして与えられましたヨハネの福音書第1章43節以下で、イエス様が、ナタナエルというある一人の人物に「まさにイスラエル人だ」とおっしゃるからですね。
　今のご時世、もうイスラエルという単語は、悪いイメージになってしまっている部分があるかもしれませんけれども、ここではイエス様はもちろん、いいイメージで語っていらっしゃるわけですね。
　別の翻訳では、「ほんとうのイスラエル人」「生粋のイスラエル人」「生え抜きのイスラエル人」「まことのイスラエル人」などなんですね。そのことばにさらに後に「この人には偽りがありません」というイエス様からのお褒めのことばが続きます。そのことも後で深めて行きたいと思うんですね。

　それで今日の記事の少し前の文脈では、時系列的にはイエス様がヨルダン川でバプテスマのヨハネから洗礼をお受けになった後の話ですね。イエス様が弟子をお取りになる・お召しになる、ということですが、この福音書では著者のヨハネなりの書き方で書いています。
バプテスマのヨハネの弟子だった者のうちの2人が最初にイエス様の弟子に加わります。そのうちの1人がアンデレなんですね。そしてアンデレが自分の兄弟シモン・ペテロをイエス様のもとに連れて来ます。今日の記事はその翌日のできごとなんですね。

翌日になって、ピリポという人を弟子としてお召しになります。そして、このピリポの友達だったんでしょうね。ナタナエルという人、この人が、今日のメインになりますけれども、ナタナエルがピリポによってイエス様のもとに連れて来られる、そこで、印象的なイエス様との出会いのできごとを経験するんですね。不思議な出会いです。
　ピリポという人は、聖書に親しんでいれば(別の訳ではフィリポ)、結構印象に残っていると思います。五千人の給食の奇跡の時にも、イエス様に「この民衆に何か食べ物をあげられるだろうか？」と言われた時に、カシャカシャカシャってすぐに頭の中でお金の計算をして、「この人数じゃ200デナリ・200万円でパンを買っても足りませんよ」って言ったんですね。その他にも、使徒の働きにも登場したりなど、12使徒のひとりとして、影は薄くないですね。

　ところがナタナエルってどうでしょう皆さん？ナタナエル、なんだか影が薄いような気がしますね。他に聖書のどこかで出て来ただろうか？ヨハネの福音書では、後から第21章で、ほんの少しだけ、復活のイエス様にお会いした人のリストの中に名前だけ出て来るんですね。それ以外は何も出て来ません。けれど、ここではこんなにイエス様に褒められている。そんな人物なのに、12使徒の中には入れられていないんだろうか？
　実は細かい議論は省きますけれども、このナタナエルは、12使徒のひとりのバルトロマイと同一人物ではないかという説が一番強いんです。そもそも聖書でバルなんとかさんって出てきたら、なんとかさんの子供、っていう意味なんです。バルヨナ・シモンというのも、ヨナさんの息子のシモンという意味です。ですから、トロマイさんの子供であるバルトロマイというのが通称で、本名はナタナエルと、そう考えるのが一番可能性が高いんですね。

　けれどこのナタナエルさんは、今日のできごとの時に、最初はノリが悪いんですね。友達のピリポに誘われても「そんなんえいちや」って言うんですね。そして、疑うんですね。(差別意識や)偏見を持っていたんじゃないかと思えるようなことを言うんですね。「もぉナザレ村から何かえいもんが出るかやぁ？」って。「まぁまぁまぁえいき、えいき来てみいや」そういうピリポさんに袖を引っ張られて、イエス様の前に行くわけですね。

　そうしたら、先ほどのイエス様のことばがあるわけですね。「見なさい。まさにイスラエル人です。この人には偽りがありません。」
　ナタナエルは不思議に思いました。「僕のこと知っちゅうがですか？」ほいたらイエス様は、「ピリポがあんたを呼ぶ前に、あんたがいちじくの木の下におるがを見たぞね」って言うわけですね。
　ナタナエルはびっくりするわけですね。「いやこの人は何で知っちゅうがやろうか？」きっと、そのナタナエルがその下にいたいちじくの木はとっても生い茂っていて、外から中にいる人が見えるようなものでなかったんでしょう。そもそもイエス様はそこを通っていないし、ということで、ある意味で、イエス様の千里眼のような超能力みたいなものに、びっくりしたわけですね。(イエス様は全知全能の力を持っておられますからそれ位たやすいことだったでしょうけれど)
　そこでナタナエルは驚いてこう言っているんですね。

新約聖書　ヨハネの福音書第1章49節
49ナタナエルは答えた。「先生、あなたは神の子です。あなたはイスラエルの王です。」

でもこれはちょっと言い過ぎではないでしょうか？言ってみれば、こんにち風に言うなら、手品師の見事な手品を見たようなものとも思われるかも知れません。でもナタナエルはそうも取らなかったんですね。おまけに、旧約の預言者のような預言者が現れたんだとすら取りませんでした。「神の子です」「イスラエルの王です」と言っているんです。なぜでしょうか？

ピリポがナタナエルを誘った時のセリフをもう一度見てみましょう。

新約聖書　ヨハネの福音書第1章45節

45ピリポはナタナエルを見つけて言った。「私たちは、モーセが律法の中に書き、預言者たちも書いている方に会いました。ナザレの人で、ヨセフの子イエスです。」

　つまり、律法の中に書き、預言者たちも書いている方と言えば、メシア、油注がれた者、平たく言えば救い主ですね。イスラエルの救い主、そういう方に会った、ってピリポは言うわけですね。

　そこで先ほど、いちじくの木の下にいたということを、合わせて考えてみましょう。実は、いちじくの木の下で、何をしていたかというと、これは、律法を学ぶ姿勢なんですね。
　イスラエルでは伝統的に、あの地方は中東の日中熱い地方ですから、ユダヤ教の教師・ラビはですね、こういういちじくの木の下の涼しいところに、自分の机を出して、聖書の写本を広げて、律法を学んだり、黙想をしたり、お祈りをしたり、その木の下で人々を集めて聖書講義をしたりと、そういうふうに、神のことばを学んだり黙想・デボーションをしたりするところが、いちじくの木の下だったわけですね。
　ですからイエス様に言い当てられたのは、単に居場所を言い当てられただけではなくて、「君はそこで律法を学んで、神のことばを心の中に思いめぐらせていたよね。」という意味なんですね。
　いったいナタナエルは、聖書のどこを読んで、どこを黙想していたでしょうか？どの書とは言えませんけれども、おそらく一つは、メシアの預言のところではないかと思うんですね。ナタナエルは、きっと、人一倍、イスラエルの救い主・メシアを待ち望んでいた人ではないかな、と思うわけですね。そう考えると色々つじつまが合うんです。メシアはどういうところに、どんな人物として生まれるか、そういったところを普段から一所懸命読んで研究していたんだと思います。だからこそ、友達のピリポは、「モーセが律法の中に書いちょって、預言者たちも書いちゅう方に会うたぞね。」って誘うわけですね。その後のナタナエルのセリフもよく分かります。「ナザレから何のえい者が出るぞね？」つまり、旧約聖書のどこを読んでも、ナザレっていう地名は出てこないんですね。
　当時の民間の伝承では、メシアはダビデの町ベツレヘムで生まれる、というのがありましたし、聖書にはそう書いてあります。もう一つは、メシアがどこから来るか分からないという、この2つの伝承があったんですね。まぁ実際イエス様は、ダビデの町ベツレヘムで生まれているんですけれども、ピリポはそういう誘い方しませんでしたね。「あのナザレ村のヨセフさんとこの長男よね」って言うわけですね。これは単にピリポが、出生の時に住民登録でベツレヘムに行っていたことを知らなかったのでしょう。そして、メシアはどこから来るのか分からない、というのはミステリアスでもっともな感じがしますね。けれど、それとはかみ合わない、ナザレから、と、場所が分かっていて、それも田舎の田舎であって、今いちじくの木の下で読みよった聖書にはひとっちゃあ出て来ん。
　そういうわけですから、それまでのピリポとナタナエルのやり取りは、とっても自然な流れなんですね。

　それで、このイエス様の言われた珍しいことば「まさにイスラエル人」実は福音書のここにしか出てこない表現なんですね。「まことの、生粋の、生え抜きのイスラエル人。」これは、でも考えてみれば、シモン・ペテロもそうですよね。その兄弟アンデレもそうですよね。ですから、単に血筋のことではないようです。

　イスラエル人、ということを考える時に、今日のヨハネ第1章51節に注目してみましょう。


51そして言われた。「まことに、まことに、あなたがたに言います。天が開けて、神の御使いたちが人の子の上を上り下りするのを、あなたがたは見ることになります。」


　皆さんこのことばで、旧約で何か思い浮かぶことはないでしょうか？（先ほど讃美歌でも歌いました）

　天が開けて、神の御使い・天使たちが上り下りする、それは、創世記第28章の、ヤコブのはしごの記事ですね。
　もしかしたら、ナタナエルは、創世記のヤコブのはしごの箇所も黙想していたのかも知れません。
　あのヤコブが旅の中で、石を枕にして寝た時に、夢を見ました。一つのはしごが地に立てられていて、その上の端は天に届き、天使たちがそのはしごを上り下りしていた。
　そこで主なる神さまが、祖父であるアブラハムに神がお与えになった契約をヤコブに与えるとお語りになるんですね。そこでヤコブは、そこをべテル、神の家と呼んだんですね。
　このヤコブは、ナタナエルにイエス様が「偽りがない」とおっしゃったのとは逆で、悪賢い人物でしたね。偽る人物だと言ってもいいでしょう。なんせ、有名なのは、年老いて目が見えなくなったお父さんのイサクをだまして、お兄さんのエサウだと偽って、長男の祝福を奪い取るんですね。まぁそんな偽りの人物でした。

　この人物が、創世記第32章になりますと、

　ヤボクの渡し、というところで、ヤコブは一晩中天使と格闘します。ヤコブは天使に「祝福してくださるまであなたを去らせません」と言いました。天使は、「あなたの名は、もうヤコブとは呼ばれない。イスラエルだ。あなたが神と、また人と戦って、勝ったからだ」と言うわけですね。ここで、ヤコブはイスラエルという名になります。これは、「神と戦う」あるいは「神は戦いたもう」という意味です。―これ、ちょっとちなみにになりますけれども、イスラエルという名前は、神の王子、神の皇太子、という意味だという説明が、日本のプロテスタントの教会の中には、広く広まってしまっていますけれども、それ誤訳なんですね。日本の福音派のある本にそれが書かれていて広まってしまったという話も聞きましたが、神戸ルーテル神学校のヘブル語の先生に聞きましたら、間違いなく、王子とか皇太子とは訳すことができないということで、誤訳で確定でいいと思います。ともかく、イスラエルは、「神と戦う」あるいは「神は戦う」の意味ですね。―そして、イスラエル人という呼び名は、その子孫だからということですね。

　そして大事なことは、ヤコブつまりイスラエルが、神の契約の受け手だっていうことなんですね。アブラハム契約の受け手なんですが、ここでヤコブのはしごの箇所でも、土地を与えるという神様の約束があるのですが、これは気を付けなければなりません。前回も申しました通り、これを、文字通り土地を受け継ぐ契約がしかも今のイスラエル国家に適応されると解釈すれば―これがキリスト教シオニズム・クリスチャンシオニズムの考え方なんですが―、二重に問題があります。

　一つは、聖書に書いてあるから、この現在のパレスチナの土地を取り戻すのだ、などと言って、イスラエルがパレスチナ人を追い出したり殺したりするのを正当化する向きに行きかねないということですね。ここに人道的、あるいは人権的な問題があります。

　もう一つは、文字通り土地を今でも受け継ぐことが有効だというのは、神学的にも聖書解釈的にも無理があるということです。なぜなら、約束の地を受け継ぐってクリスチャンにとって何でしょうか？牧師の説教でお聞きになったことがあると思いますけれども、天の御国を受け継ぐ、っていうことなんですね。神の国・天の御国を相続地として受け継ぐんです。
　その根拠は、たとえば、エペソ人への手紙第1章14節などがいいと思います。

聖霊は私たちが御国を受け継ぐことの保証です。

　つまり新約聖書自体が、新約聖書そのものが、受け継ぐべき相続地は天の御国だと言っているんです。それが新しい契約なんです。イエス様は、天の御国はあそこにあるここにあるというものではありません。あなたがたのただ中にあるのです。とおっしゃいました。

　皆さんも、置換神学（置き換え神学と書いてちかん神学ですね）は誤りだということは前の教会でも聞いてきたと思います。確かに置換神学は問題です。主イエスを殺したユダヤ人が神に捨てられ、異邦人教会が新しいイスラエルになったというのは、反ユダヤ主義的なので、問題なんです。
　しかしもう一方で、キリスト教シオニズム・クリスチャンシオニズムも人権・人道の観点からも疑問符が付き、さらに神学的、聖書解釈的にも無理がある、であろうということですね。
　ですからその両極端にならないようにその間を行くことが大事だと思いますね。

　ではイスラエルとは何か？ガラテヤ人への手紙第3章28節29節にはこうあります。

新約聖書　ガラテヤ人への手紙第3章28～29節

28ユダヤ人もギリシア人もなく、奴隷も自由人もなく、男も女もありません。あなたがたはみな、キリスト・イエスにあって一つだからです。
29あなたがたがキリストのものであれば、アブラハムの子孫であり、約束による相続人なのです。

と、つまりもはや区別は無いっていうことですよね。新約においては、ユダヤ人も異邦人も区別なく約束による相続人なんだ、っていうんですね。そして、

新約聖書　エペソ人への手紙第3章6節

それは、福音により、キリスト・イエスにあって、異邦人も共同の相続人になり、ともに同じからだに連なって、ともに約束にあずかる者になるということです。

　ということで、この神からの契約の受け手であるということが、まことのイスラエルであるということですね。

　ところで、ナタナエルは、イエス様に、「偽りがない」と言われていますけれども、そんなに偽りがない人だったでしょうか？
　確かに、裏表がない人であったことはうかがい知れますね。それは「疑う」という性質から伺い知れると思います。疑うという人は正直な人だと思います。まっすぐに、これから出会う方が、真実であるかどうかを、真剣に問おうとする姿勢が表れているんだと思います。この方にすべてをかけていいかどうかを、見極めようとする姿勢ですね。
　しかし偽りがないというのは、そういうナタナエルの性格であっても、人生の中で全然嘘をついたことのない人物だということではないでしょう。そんな人は世界中に一人もいません。ではどんな人か？偽りのない人、ということで、多くの人がここで詩篇の第32篇を連想いたします。

詩篇第32篇1～2節

　幸いなことよ
　その背きを赦され　罪をおおわれた人は。
　幸いなことよ
　主が咎をお認めにならず
　その霊に欺きがない人は。

　つまり、聖書は、偽りがない人、欺きがない人とは、嘘をついたことがない人ではなくて、神によって罪をおおわれた人だって言うんですね。
　何によって覆われるんでしょうか？あの十字架によってです。くしくも創世記でアダムとエバは、神様に背いて罪を犯した後、いちじくの木の葉っぱで、腰を覆いました。それは裸の恥を覆うためです。しかし、それでは不十分であるというか、意味がありませんでした。そこで神さまは、二人に動物の皮の衣を着せてくださいました。ここに罪を犯した者への神の愛があるんですね。しかもここで、動物の血が流されて、その血によって罪のあがないがなされたのです。この創世記のできごとは、イエス・キリストの十字架をあらかじめ表す、予型・予表なのです。このイエス様の十字架によって、あなたの罪は赦されました。
　もう一度51節を見てみましょう。

51そして言われた。「まことに、まことに、あなたがたに言います。天が開けて、神の御使いたちが人の子の上を上り下りするのを、あなたがたは見ることになります。」

　このイエス様がおっしゃったヤコブのはしごの話、これは創世記と違うところは、神の御使いたちが「人の子の上を」この表現がありませんでした。人の子、というのは、イエス様がご自分を指して言われたことばですね。メシアを表すことばです。メシアであるわたしが、天と地を結ぶかけ橋となる！そういう宣言が、ここでなされているのです。人の子を通して天と地が一つとなる。こういうできごとが、まさに、ナタナエルが見ることになる、「それよりも大きなこと」なのでしょう。イエス様はここで、ヤコブ物語の再現、いやもっと素晴らしいことをなさっているのです。
　そして、そのやじるしが、だんだんとナタナエルだけではなくて、私たちに向かっているのに、お気づきになっているでしょうか？そう、51節で、いつの間にか、それまで「あなたは」だったのが「あなたがたは」見ることになる、と読者たちに向けられているんです。じつは礼拝で座っているあなたがたが、まことのイスラエルだ！そう呼びかけている神の声を今、聞いているのです。この事実に気づかされて、私たちは驚くのです。そしてそれが、じつは、この福音書自体が求めている読み方なのです。そういうふうに、読む人聞く人に、イエス・キリストとの出会いのできごとを起こすために書かれているのです。ヨハネの福音書だけではなくて、四つの福音書すべてがそうなのですが、それだからこそ私たちは、ヌンクディミティス、今こそ去ります。私はきょう、礼拝においてイエス様に出会えたから死んでもいい。私の人生は満ち足りています。そういうふうに告白するほどに、イエス様との出会いのできごとが実はここにおいて起こっているのです。

　私は実はこのところ不安でした。それは、新しいことに踏み出すということへの不安です。新しい礼拝場所の候補地が与えられたことは大変感謝なことですが、元来私は性格的には非常に臆病な弱い人間なので、何か失敗して誰かに怒られやしないか、近所とうまくやってういけるだろうかその他もろもろ、そういった人間的な恐れや、心細さがありました。
　ナタナエルがイエス様に出会ったのは、裸の自分でした。心が何一つまとっていない、罪もまた丸見えである、そういう状況でイエス様にお出会いして、それでも「まことのイスラエル人」と言っていただけた。ここにナタナエルの罪なんて何一つ書かれていないではないかと思われるかもしれません。しかし、罪とは神との断絶です。そして、それは、得体のしれない、自分とは全く異なる聖なる気高いお方との出会いの中で、恐るべきお方との断絶を感じるのです。そこで、ペテロが恐るべき大漁を目にしてイエス様に言いましたね。「主よ、私から離れてください。私は罪深い者ですから」と言ったように、ひれ伏して悔い改める、ということが、起こるのです。
　ですから、私のちっぽけな心配や悩みが、このイエス様の眩しすぎる光に照らされた時、自分の罪がよく分かる、どこか何か新しい事業のように考えていた部分があるのでしょう。だから不安や悩みになる。しかし、「それよりも大きなことを、あなたは見ることになる」と、このことばが響いてくるわけですね。その大きなこととは、礼拝の人数がどんどん上がるとか、教会カフェや子供食堂か何か分からないですけれども、それらの類のことが新しい場所で立ち上がって成功するとか、運営がうまくいくとか、そんなことよりももっともっと大きな偉大なことは、まさに人の魂に永遠の慰めが生まれることではないか。人集めではなくて、人の魂にイエス・キリストとの出会いが生まれ続けることではないか。「福音によって私の人生は満ち足りています」と告白する人が生まれることではないか。その喜びを「もっと大きなこと」として、私たちの進む道に用意していると、主は約束してくださっているのです。

お祈りをいたします。
恵みとあわれみに富みたもう、私たちの主イエス・キリストの父なる御神
あなた様は、私たちに、大いなることを備えてくださいました。それは、イエス・キリストとの出会いの物語です。私たちはナタナエルです。まことのイスラエルです。私たちは主のその呼び声を受けて、喜びをいつも心の奥底に味わえるようになっています。その心をもって、人びとに呼びかけることができますように。「来て、見なさい」この世には無い喜びがある。この世には無い出会いがある。そのような天まで伸びるはしごを、あなたが架けてくださいましたから心から感謝申し上げます。主イエス・キリストの御名によって祈ります。アーメン。

#国際司法裁判所 #ジェノサイド条約違反