【POGにも使える?】2022年デビュー予定の気になる2歳馬(サトノダイヤモンド産駒オンリー)
POGは興味こそあれ、本格的に参加したことはありませんでした。しかし、やはり沼ですね……。わたくし、見事に2歳馬情報を収集するマンと化してしまいました。そこにある無数の未来、無限の可能性は本当に素敵なものです。
さて、競馬には新馬がつきものですが、同時に新種牡馬も毎年のようにデビューします。2022年に初年度産駒がデビューするところでいえば、ディープインパクトの子どもであるリアルスティールとサトノダイヤモンドが人気面での双璧となるでしょうか。
今回は、2016年の菊花賞馬にして有馬記念馬で、また同年のJRA最優秀3歳牡馬である、サトノダイヤモンドの子どもたちに条件を絞り、気になった子どもたちを紹介していきたいと思います。
独断と偏見がたっぷり詰め込まれていますが、決してその才能や素材を貶すことなく、馬たちの個性を尊重し、そのストロングポイントに注目していくスタンスで俯瞰していきましょう。
なお、データなどの一部箇所においては敬称略にて表記させていただいております。
アズライトムーン(アズールムーンの2020)
厩舎:池添 学(栗東)
生産:ノーザンファーム(安平町)
馬主:シルクレーシング
馬名由来(予想):母の名前をベースに、父の宝石要素から「アズライト(藍銅鉱)」
母アズールムーンは中央で2勝。その初仔がアズライトムーンです。伯母には2014年の関東オークスを圧勝し、韓国遠征でトゥクソムCにおいても優勝したエスメラルディーナ。彼女は芝レースのジュニアCでも優勝し、フィリーズレビューでもベルカントから0.2秒差の3着に好走しました。
さらに、叔父には1つ年上で2022年6月現在も現役のコンシリエーレがいます。彼は新馬戦とカトレアSを連勝し、サウジダービーにも遠征して3着に入り、帰国後は兵庫CSで3着と、これまで4戦がすべて3着以内となっています。
今月6月のユニコーンSにも出走予定でしたが、残念ながら熱中症などのコンディション不良があったため、大事を取って回避しました。
近親に活躍馬が多いことから、アズライトムーンにも期待が持てますね。クラブ馬主であるシルクの持ち馬で、1口価格は4.8万円の500口募集。ノーザンファームの馬にしてはお買い得ながらも、芝よりはダート傾向が強い面も大きいのでしょう。
母父Malibu Moonが2戦1勝の後に故障で引退し、繁殖として才能を開花させた完全なダート傾向の馬なので、父系のサトノダイヤモンドがどれだけ芝適性およびスタミナを受け継げるかが鍵でしょう。
芝もいけるにせよ、ダートに専念するにせよ、菊花賞と有馬記念を制したサトノダイヤモンドの雄渾な能力の継承が望まれます。
コンヴィクションIIの2020
厩舎:池江 泰寿(栗東)
生産:ノーザンファーム(安平町)
馬主:野田 みづき
馬名由来(予想):未定(2022年6月23日時点)
まだ名前が発表されていませんが、当歳時にセレクトセールにおいて8,140万円で購買されており、生まれも1月と早いので、仕上がれば高い競争能力を発揮してくれるでしょう。
購入したのは冠名「ミッキー」の野田みづき氏であり、彼にもこの冠名が使われることになると推定されます。ドゥラメンテ産駒の半兄レヴェッツァは、2022年6月下旬現在までに、11戦3勝の実績。
勝鞍は芝2000mと芝2200m。3勝クラスではクラスの壁に行き当たっていますが、直近の掲示板を外した2戦は出遅れと進路喪失という経緯があるため、OP入りも十分に望める資質があると考えられます。
母のコンヴィクションIIは、アルゼンチンの牝馬G1である「フィルベルトレレナ大賞典」の優勝馬です。このレースはレシステンシアやグラティアスの母であるマラコスタムブラダも勝利しており、コンヴィクションIIの能力の高さも窺えます。
預託厩舎から生産牧場まで超一流。あとは命名と近況の情報が待ち望まれる存在といえますね。
サトノグランツ(チェリーコレクトの2020)
厩舎:友道 康夫(栗東)
生産:ノーザンファーム(安平町)
馬主:サトミホースカンパニー
馬名由来(予想):冠名+ドイツ語の「Glanz(栄光)」
「これぞサトノ馬」といった感じの良血。母チェリーコレクトはイタリアオークス(G2)とイタリア1000ギニー(G3)の勝ち馬で、日本に輸入されてからもダノングレース(中央4勝)、ダイアナブライト(中央4勝・地方1勝・うち重賞1勝)、ワーケア(中央2勝・弥生賞2着・現役)、クロンターフ(中央3勝)、エリカコレクト(中央1勝・現役)と、すべての産駒が勝ち上がっています。
全国のエリートがそろう中央競馬。そうした激戦区にあって、きょうだいのすべてが勝ち上がるというのは、それだけでも名牝の誉れを得られる快挙です。サトノグランツもまた、この偉大な兄や姉たちに続き、さらに追い越す活躍が期待されています。
母父のOratorioはMotivator、Shamardal、Dubawiといった名馬たちと戦いを繰り広げた馬で、デインヒルの特徴をしっかりと受け継いだ馬でした。引退後は故郷のアイルランドで種牡馬入りし、オーストラリアにもシャトル種牡馬として旅をし、2012年からは南アフリカに輸出され、種牡馬を続けています。
近親には国際G1を制した名馬たちがずらりと並び、サトノグランツへの期待も高まります。そんな彼は、2021年のセレクトセールで1億1,550万円で落札されました。この出費をペイできるかどうかは、サトノダイヤモンドがより「日本の芝向きの能力」を与えられたか否かにかかっているでしょう。
トゥルブレンツ(トラウムの2020)
厩舎:須貝 尚介(栗東)
生産:追分ファーム(安平町)
馬主:G1レーシング
馬名由来(予想):ドイツ語の「Turbulenz(乱気流)」
姉のトロイメントは中央2勝、兄のトラウンシュタインは中央1勝でなおも現役。そんな母トラウムの子どもたちの3番仔として生まれたのが、トゥルブレンツです。母父はDansiliで、母母父はSadler's Wells。良血ではあるのですが、日本競馬という観点から見れば、かなり重めの血統なのも違いありません。
したがって、サトノダイヤモンドが持つ日本、アメリカ、アルゼンチンの血が、どれだけ硬くて速い芝コースに適応させられるかが勝負の分かれ目となるでしょう。
預託厩舎は栗東の須貝尚介厩舎、生産牧場も社台グループの追分ファームで、スタッフ面での質は保証されています。所有するのはクラブ馬主のG1レーシングさん。1口40万円の40口販売は、追分ファーム出身と活躍のギャンブル性の高さに起因していそうです。
裏を返せば、父系の劇的な助けがあれば、すでに活躍している近親たち以上の結果を残すことも可能と推察されます。デビューが近づいたら、その調教過程に注目したいところですね。
ブルーペクトライト(ピースエンブレムの2020)
厩舎:池添 学(栗東)
生産:ノーザンファーム(安平町)
馬主:キャロットファーム
馬名由来(予想):鉱石「Blue Pectolite」はラリマーとも呼称され、ヒーリングストーンとしても人気が高い
魅力的なヴァンドノワール一族の一員です。近親での出世頭は、2008年の秋華賞馬であるブラックエンブレムでしょう。彼女はまた繁殖でも活躍し、2014年の札幌2歳S馬であるブライトエンブレムや、2019年のフローラSを勝ったウィクトーリアを送り出しました。
また、妹のアドバンスクラーレも、南関東4勝のグローバルステップや、園田と姫路で6連勝を飾り、中央に出戻りをしたホテルカリホルニアを出しました。
この2頭のあいだの仔であるピースエンブレムからも、中央1勝のエターナルピースが出ました。ただ、彼女は非常に体質が弱く、4歳の今、4戦1勝ながらも厳しい状況に置かれているようです。
近親の活躍馬は多数。それもあって、ブルーペクトライトはどういう輝きを見せるかが注目されています。母父は名前から推察されるとおりにウォーエンブレム。キャロットファームでは、1口6万円の400口募集でした。
先述の通り、ディープブリランテ産駒の半姉がかなり体質面で苦しんだため、ブルーペクトライトはその点のリスクが心配されるものの、競走能力は勝ち上がり可能なポテンシャルを示しています。
ヘリックス(アップワードスパイラルの2020)
厩舎:大竹 正博(美浦)
生産:パカパカファーム(新冠町)
馬主:フクキタル
馬名由来(予想):英語「Helix(らせん)」は転じて渦巻き飾りの意、母の「スパイラル」からの連想
セレクトセール実況でいろんな意味で大人気、パカパカファームの生産馬です。馬主もこのパカパカファームが母体のクラブ馬主、フクキタルさんですね。1口6.4万円で500口。2022年6月23日現在、出資会員の募集が継続中です。
母アップワードスパイラルのきょうだいたちの中では、キズナ産駒の半兄であるスパイラルノヴァが中央で3勝を挙げ、今なお現役を続けています。現在は3勝クラスで、昇級後も2着4着と好走。OP入りも十分に視界良好です。
スパイラルノヴァの勝鞍は芝2000mが1つと芝1800mが2つ。キズナとの組み合わせでこの結果なので、サトノダイヤモンド産駒となったマテンロウカノンも芝中長距離での活躍が期待できるのではないでしょうか。
兄の活躍とサトノダイヤモンドへの期待感もあってか、1口価格が2万円上昇しています。所属予定の大竹正博厩舎が2022年不調ながら、あの有馬記念馬のブラストワンピースを育てたこともあって、芝中長距離へのノウハウは蓄積されていますね。
また、大竹師は順調な成長が心配とコメントされていましたが、掲示板情報によれば、一気に体重が増えて良い仕上がりになってきたようです。無事に入厩したという情報もありますので、広くて走りやすい新潟デビューの予定が現実味を帯びてきました。
マテンロウカノン(ウォークロニクルの2020)
厩舎:萩原 清(美浦)
生産:ノーザンファーム(安平町)
馬主:寺田 千代乃
馬名由来(予想):冠名+英語「Canon(正典)」、母のウォークロニクル(War Chronicle)は「戦記」「戦史」を意味するので、そこからの連想か
昨今、所有馬の活躍が目覚ましい馬主さんのひとりである、寺田千代乃さん。アート引越センター創業者にして、パッケージングされた引越サービスの草分けとも言える方でしょう。現在は社長職を退き、同社の名誉会長を勤めておられます。
アート引越センター株式会社(一時はアートコーポレーション株式会社)は、2022年1月にヤマトホールディングスが所有していたヤマトホームコンビニエンスの株式の過半数を取得しました。今なおその勢力を拡大し、強みを存分に発揮しています。
そんな寺田氏は、以前から「ディア」の冠名で多くの馬を所有しておられました。2007年のマーメイドSを優勝したディアチャンスは、彼女にとっての初のJRA重賞勝利をもたらしています。
しかし、なんといっても昨今は冠名「マテンロウ」の馬たちの活躍に目覚ましいものがあります。マテンロウボス、マテンロウハピネスはOP入りまで果たしましたし、2022年の年初にはマテンロウオリオンとマテンロウレオが次々に3歳重賞のシンザン記念ときさらぎ賞を勝ちました。
マテンロウオリオンに関しては、NHKマイルCでもダノンスコーピオン、カワキタレブリーらと大接戦を演じての2着。さらなる活躍が望まれています。
なお、マテンロウオリオンとマテンロウレオは、いずれも栗東の昆貢調教師が管理しています。昆師は「うちに預けてくれている個人馬主さんたちには、ほぼG1を勝っていただいた。あとは寺田さんだけ。ぜひG1をプレゼントしたい」と、熱い思いを語っておられます。
そうしたつながりからも見えるように、寺田オーナーの通算での勝鞍は昆貢調教師が圧倒的で、2位の清水出美調教師をはるかに超える、60勝を挙げています。単勝回収率は102.3%であり、ざっくりいえば「昆厩舎の寺田オーナー馬を買い続けていれば、銀行に預けるより儲かる」というすごい状況です。
そんな中、今回は初めて美浦の萩原清調教師とのつながりが生まれました。開業から27年、26個もの重賞を勝利してきており、昨年2021年も安田記念において、ダノンキングリーが女王グランアレグリアを接戦の末に下す大金星を挙げました。
良い材料の多いマテンロウカノンは母ウォークロニクルの2番仔であり、半兄にキズナ産駒のクロニクルノヴァがいます。まだ中央未勝利の身ながらも、最高着順は2着と勝ち負けできる実力があり、夏競馬での未勝利脱出を目標に据えています。
そして、2代母はクロノロジスト。すなわち、伯母には偉大なる春秋グランプリウィナー、クロノジェネシスがいる点が推し材料となるでしょう。クロノロジストの仔たちはクロノジェネシス以外も、ナオミノユメ中央2勝、アドマイヤゼファー中央1勝、ハピネスダンサー中央5勝、ウォークロニクル中央1勝と地方2勝、クロノスタシス3勝、レッドラフィーネ地方2勝、ノームコア中央6勝と海外1勝うちG1競走を2勝と、紛れもない名牝の輝きです。
牝馬のマテンロウカノンについては、その競走能力もさることながら、繁殖能力にも期待が掛かっているといえます。
特にイチオシのサトノダイヤモンド産駒(厩舎の観点)
いずれも魅力的なサトノダイヤモンドの子どもたち。しかし、あえて「オススメ順位」をつけさせていただくなら、すでに文章の量からもにじみ出ていますが、マテンロウカノンが第1位として最も個人的にオススメしたい存在といえるでしょう。
安平町のノーザンファーム生産というバックアップ態勢も当然ですし、所有する馬がJRA重賞を次々に勝利している寺田オーナーが、2020年のセレクトセールで8,580万円で購買したという事実も強みとして働きます。
そんな寺田オーナーが新たなつながりとして萩原師に預けたのは、大いなる意欲を感じます。同師はこれまでにG1を3勝。2021年安田記念のダノンキングリー、2019年ヴィクトリアマイルのノームコア、2018年チャンピオンズカップのルヴァンスレーヴ、そして2009年日本ダービーのロジユニヴァースです。
ダービートレーナーであるとともに、2018年からここ数年の固め打ちで良い流れが来ている点も、推薦したい材料なのは間違いありません。
萩原厩舎は最近美浦の有力若手騎手への依頼が多くなっており、実際に結果を出している点もポイントです。事実、直近1年の萩原厩舎は、横山武史騎手で7勝、菅原明良騎手で6勝、吉田隼人騎手で2勝という並びなのです。吉田隼人騎手は少ないように見えますが、6回乗って2-1-1-2という優秀さなのは、押さえておきたいところでしょう。
馬券に役立ちそうなネガティブなデータも書き添えておくと、直近1年の萩原清厩舎×戸崎圭太騎手は13戦して0-1-1-11です。1番人気3回、2番人気1回、3番人気2回を含んでこれなので、この組み合わせは危険とおぼえておくと、波乱のレースが見えてくるかもしれません。
逆に、6勝している菅原明良騎手は18戦して6-0-0-12で、単勝回収率620.0%、複勝回収率149.4%です。6勝のうち4頭5戦は4番人気以内なのですが、昨年8月の新潟、3歳未勝利のキャニオニングで10番人気83.3倍で1着をもぎ取ったのが効いていますね。芝2勝のダート4勝なので、萩原清厩舎×菅原明良騎手の組み合わせは今後、ひいては直近の夏競馬でも要チェックといえるでしょう。
特にイチオシのサトノダイヤモンド産駒(血統の観点)
マテンロウカノンは、血統面でも面白さを含んでいます。母ウォークロニクルは重賞を勝利した妹のノームコア(ハービンジャー産駒)やクロノジェネシス(バゴ産駒)と違い、ウォーエンブレムの産駒でした。というより、クロノロジストはほとんど毎年違う種牡馬をつけているので、それでこのアベレージの高さは同馬の繁殖能力がいかに高いかを証明しています。
このウォーエンブレム、母父、いわゆるBMSに入ると、サンデーサイレンスの血統とかなり相性が良いデータが出ています。
例えば、母父ウォーエンブレムの馬はJRA重賞を3勝しているのですが、これは2014年札幌2歳Sのブライトエンブレム(ネオユニヴァース産駒)、2019年フローラSのウィクトーリア(ヴィクトワールピサ産駒)、2019年府中牝馬Sのスカーレットカラー(ヴィクトワールピサ産駒)といった並びです。
「ヴィクトワールピサってネオユニヴァース産駒でしょ? じゃあ、サンデーサイレンス系よりネオユニヴァース系、つまり狭い範囲との相性が良いのでは?」
こういう疑問も出るかと思いますが、最近の活躍馬はほかのSS産駒の流れが増えており、とりわけディープインパクト系と相性が良いのが特筆すべきところなのです。
例えば、中央4勝のリアンティサージュはオルフェーヴル産駒(父父ステイゴールド)でしたし、同じく中央4勝のサトノグランもハーツクライ産駒(父父サンデーサイレンス)でした。
長い活躍で中央7勝を挙げたアストラエンブレムはダイワメジャー産駒(父父サンデーサイレンス)であり、今なお現役でさらなる成長を見せている中央3勝、小倉2歳Sとフィリーズレビューで3着のアネゴハダはキズナ産駒(父父ディープインパクト)です。
したがって、父父ディープインパクトとなるサトノダイヤモンド産駒は、母父ウォーエンブレムとの親和性が高いと考えられます。しかも、母系はクロノロジストの雄渾な血ですので、これからウォークロニクル自身の潜在能力も見えてくるかもしれません。
「走りそうだし、何より追いかけて楽しい材料にあふれている」
こうした観点から、「マテンロウカノンこそがイチオシのサトノダイヤモンド産駒である」として推奨させていただきました。