植物療法スタートセットから思うこと
去年の夏、植物療法スタートセットというのを作成した。春に無事に本を出版させていただき、読者の方からいろんな感想をいただいたのだけど、その中で、「やり方はとても簡単なことはわかったけど、いざ始めようというときのハードルがやっぱり高い・・・」と、こんな感想が予想以上に多かったのだ。それはハーブの製剤法などの理論的なことよりも、道具類や基材類の調達など、本当に初めの一歩の前の一歩というところ。それがなきゃ始められないのだから・・・・。
自分の生活にハーブやアロマテラピーを取り入れるようになって22年。その生活が楽しくて、そして健康や美容に効果的で、こんないいこと、多くの人に薦めたい・・・そんな思いでサロンやスクールを立ち上げて19年。これだけの年月が経つと、やり始めた頃のことを思い出すのもちょっと難しいときがある。
ハーブやアロマテラピーを実践するには、多かれ少なかれ実験室で行うような作業がつきまとうのだけど、その点において自分は理系(有機化学系)出身だったから、ビーカーや計量など、実験的な道具類や作業は特に難なくこなせた。でも現実はそういうところに敷居の高さを感じる人が多いということを知る。
「これさえあれば、植物療法がいつでもスタートできる」というセットをつくれば、もっともっと植物療法が普及するかしら・・・そんな気持ちで作り始めたスタートセットでした。
箱の中に入るのはビーカーやスポイト瓶や混ぜ棒などの道具類、容器類、そしてホホバ油などの基材類に、オーガニックハーブとオーガニック精油。これさえあればいつでもチンキ剤も浸出油も仕込める。ホームケア・セルフケアも初歩的なことはできる。見た目はまるで手品師の道具箱みたいな感じのセットになったけど、よく売れています。
(少しでも手品師の道具箱感を払拭すべく、女子力高いスタッフが可愛く包装などしてくれました 笑)
そんな売れ行きに、よかった・・・という思いと同時に、今私の心の中では「これ(植物療法)が長続きしてほしい」と切に願っています。
購入してくださった方は、『ずっと憧れていた植物療法を、やっと自分もスタートすることができて嬉しい!SNS等で魔女仕事のように投稿されている作業を実際自分が行っていることがとても新鮮!』と思うでしょう・・・でもふと気づくはず・・・
「え?!?!植物療法ってこれで終わり?!?!とっても地味・・・・」って。笑
そう、やってみると気づくと思うのですが、植物療法ってとっても地味なんです。いわゆるインスタ映えする華やかなシーンなんてほんの一瞬。むしろオタクみたいな行為多いし、何やらいろんな瓶が並ぶ光景は人によっては怖いかもしれない。(私の夫も当初は引いていた・・・何を飲まされるんだ、、と…)出来上がるものも、カレンデュラや紫根など色がきれいなものもたまにあるけど、だいたいが茶色。笑
手作りするのだから容器だって無地のもの。市販のようなきらびやかなラベルや豪華なボトルではない。飲む行為、塗る行為・・・人に見てもらうものでもない。薬効だってじんわりと。薬のようにストレートに効いてくることはあんまりない。(症状とハーブによってはたまにあるけど)
そうか、植物療法ってこんなんなんだ・・・
一度味わったら、おなか一杯になってしまって、このセットはお部屋の片隅かクローゼットの中で眠ったままになってしまうかもしれない。
誰かが植物療法を生活に取り入れるかどうかなんて、そこまで気にしなくてもいいと思うかもしれない。今までの私はそんな風に思っていた。でもこのセットを作って、植物療法に背中を押すようなことをした以上は、「植物療法が長続きして、(植物療法が)非日常から日常に変わっていく人を一人でも多く増やしたい」と、真剣に思うようになりました。
やはり継続していると、その地味な作業の中にも楽しみが見いだせてきます。(もちろん初めから性に合っていて楽しいと思える人もたくさんいらっしゃると思いますが。)
刻んでいるときに感じる香り・・・葉のツヤや繊維の固さ・・・「葉」の一言でくくっていたけど、どれだけ葉に違いがあるか。いろんな葉を知れば知るほどいくらでも語れる・・(ものすごいオタク!笑)
透明だった液体がだんだんと茶色く濁っていく過程・・・口に含んだ時に感じる収斂作用・・・一つ一つ違う植物の味や香り
それらが自分の体に溶け込んでいく感覚、次の日の感覚、一週間後、一か月後の心身の変化・・・その観察の楽しいこと!
いつの間にか、薬だけに頼っていた生活から、薬と植物を場面によって上手に使い分けることができるようになっている。
いつの間にか土を触ったり、緑に触れることが楽しくて、本能的に接することを求めている。自分も自然の一部だと体感し始める。
そんな最高に地味だけど、小さな幸せと本当の豊かさに気づかせてくれる植物療法のスタートの後押してくれるのが、『植物療法スタートセット』
私にとっては新しい課題も生まれた。ただ売れたらいいとは、決して思えない自分がいる。買ってくださった方へのフォロー。
『モノを売るって・・・』と、いろいろ考えさせられたセットです。