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スタートアップの起業家/経営者で、メンタルを崩してしまった(崩してしまいそうな)あなたへ

このnoteは、スタートアップの起業家/経営者で、メンタルを崩してしまった(崩してしまいそうな)あなたに読んでいただきたくて書いています。

ひとりひとりの「メンタル不調」の背景には言葉にはし尽くせない「人生」そのものが存在するのであって、そう簡単に定式化できないことは重々わかっていますが、それでも、これまで数百人の起業家/経営者をサポートしてきた中で見えてきた共通点は、もしかしたらあなたにも役に立つかもしれないと思うので、少しでも参考になればと思っています。

長くなるので、まずは目次を見て、必要なところだけを読んでください。
そして、もし身近に、こんなことを知っておいてほしい人がいたら、ぜひ共有してあげてもらえるととても嬉しいです。


はじめに知っておいてほしいこと

スタートアップ起業家/経営者がメンタル不調に陥ることは、珍しいことではない

まず知っておいていただきたいのは、スタートアップの経営者がメンタルの調子を崩すのは、決して珍しいことではないということです。表で語られる数こそ少ないですが、かなりの数の経営者には「振り返れば、あのときはうつと言っていい状態だった」という時期があるものです。あなたが特別弱いから、ということではありません。メンタル不調になったとき「お恥ずかしながら」と枕詞をつけられる方が本当に多いのですが、決して恥ずかしいことでもありません。

海外のデータではありますが、起業家がうつ病になる割合は通常の2倍。生涯にメンタルヘルスの問題を経験する割合は49%(非起業家は32%)。起業家という生き方を選ぶ以上、自分あるいは仲間をケアする観点で「メンタルヘルス」の問題と向き合うタイミングは必ずやってくると言ってもいいでしょう。あなたにとっては、今がそのタイミングだということです。

スタートアップ起業家/経営者がメンタル不調に陥りやすいのはなぜか

では、なぜスタートアップ起業家/経営者はメンタル不調に陥りやすいのはなぜでしょうか。話せば長いので簡潔にとどめますが、ざっと挙げても例えば以下のような要因があります。

  1. 投資家・仲間への責任を負っている(ので自己犠牲的になりやすい) 

  2. 期限と現金残高に追い立てられる(ので休息をとりづらい

  3. 持続的成長が至上命題である(のでがんばりに終わりがない

  4. 不確実性が高い環境である(のでコントロールできない

  5. 変化が大きい環境である(ので安心できない

  6. 他の起業家との優劣が可視化されやすい(ので劣等感を持ちやすい

  7. 成功確率が低い(ので失敗体験が多い=自己効力感が低下しやすい

  8. 自分と事業が紐づいている(ので事業の不調が自己否定になりやすい

  9. 人を巻き込む分、離れていくことも多い(ので孤独感を持ちやすい

  10. 周囲の人に相談しづらい(ので抱え込みやすい)

  11. 生得的に尖った特性を持っているリスクが高い(ので、ストレスがかかると不適応を生じやすい

これらの環境的・状況的要因が複数重なったときに、悪循環に突入してメンタル不調として表出するケースが多いと言えます。

スタートアップの起業家は、もともと高い理想や強い渇望を持ち、それを実現するためにリスクや自己犠牲を厭わないことが多いものです。

特に、今のように資金調達の環境が悪化したタイミングでは、実現可能だと思った理想のシナリオからの格差が大きくなってしまい、「周りの人に迷惑をかけてしまう恐れ」「信頼を失ってしまうことへの不安」「人が去っていく悲しみ」などが相俟って、責任感を持っている人であればあるほど、ストレスが大きくなっていきます。

実際にはいろんなケースがあるわけですが、起業家/経営者のメンタルヘルス問題でよく出会うパターンは、以下のようなイメージです。ひとりひとりの持っている特性によって、それぞれの要因がどのように影響するのかが異なり、何が一番苦しくてストレス源になるかが異なります。あなたに起こっていることについて、心当たりはあるでしょうか。

補足:そのほかに、IPOや事業の成功で渇望が満たされた後や、成長一辺倒だった価値観が維持できなくなる場面も、メンタル不調が起こりやすいタイミングです。
つまり、それまでは明確な周囲の期待・期限・不安・劣等感・自己否定感等から自己犠牲的にがんばっていたけれども、それが一度満たされた(あるいは手放した)ときに、自己犠牲的に仕事をするほどの新たなモチベーションが見つからず以前の自分のパフォーマンスとの差を感じ、自己効力感が低下して自己否定的になり、依存症状や抑うつ症状が出る、といったこともひとつの「起業家うつ」のパターンとして存在します。
これは、最も典型的なケースとは少し異なるためここではあまり詳しく触れません。

きっとあなたは「こんな大事なときにメンタル不調になるなんて。もっとがんばらなきゃ」と思っていることと思います。

でも、スタートアップ起業家/経営者という生き方がもたらす環境や状況は、さきほど挙げたようにメンタルに良くない要素のオンパレードです。多くのストレスに晒されながらチャレンジしておられるあなたはすでに十分すぎるほどがんばっています。そしてそのがんばりの過剰が今、メンタル不調につながっている可能性が高い。ですから「がんばりすぎ」を「さらなるがんばり」でカバーしようとしないでください。 少なくとも「今のやりかたのまま」がんばっても、悪循環が加速するだけです。

ひとまず、不調を感じること自体は「多くの経営者は隠してるけど、よくあることです。大丈夫です、乗り越える方法はあります」ということをお伝えさせてください。

メンタルの不調はどのようにやってくるのか

メンタルの不調は、徐々にやってくることもあれば、ある日突然やってくることもあります。多くの場合、それは「眠れない」「食欲がない」「落ち込みが続く」「集中力・思考力が落ちる」「楽しいと感じられない」「頭が重たい」「意欲がわかない」といったかたちであらわれます。1週間とか2週間それが続いたら、おかしいな、と思ってください。

最初のうちは、ちょっといつもと違うな、という程度かもしれません。でも放っているうちに、症状が悪化し、仕事が回らなくなり、より焦りやストレスを抱える悪循環に入ってしまうことがあります。思うようにいかず、頭もうまく働かないことにイライラして、いつもよりお酒を飲みたくなったり、後先考えずに衝動的にふるまってしまうこともあるかもしれません。自分の思考や感情をコントロールできなくなってしまっているのです。中島みゆきの「ファイト」を聴いて涙が出るようなことも危険信号です。
ひどいときには、死にたいという気持ちになったり、全てを捨ててしまいたい気持ちになったりすることもあるかもしれません。

この不調がいつ終わるのか、どうやったら終わるのかわからず、不安になってしまうこともあるでしょう。永遠に続くのではと恐ろしくなります。でもそれらは病気の症状であって、必ず波がひくときがやってきます。

そして、その不調と向き合うことをきっかけに人としても経営者としても次のフェーズに進まれた方がたくさんいらっしゃいます。焦ることなく「今考えてもいい方向には進まない」と諦めて、眠ったり、散歩をしたり、頭を使わなくていい作業をしたり、部屋の片付けをしたりしてみましょう。

不調かもというときに、やってはいけないこと

重要な意思決定をしてはいけない

不調を抱えたときにやってはいけないことは「重要な意思決定をしない」ということです。今のあなたの思考力は低下していて、正しい情報をもとに、正しい判断をすることはできていません。
重要な意思決定というのは、社長をやめるとか、事業を売却するとか、離婚するとか、「死ぬ」とか、そういう一度行動にうつすとと不可逆性の高い意思決定です。メンタル不調、特にうつ病の症状として、そうした思考が出てくることがあります。

今はそれしか道がない、と思えてしまうかもしれません。でも、例えば自殺を試みて失敗した人の90%は、35年後も生き延びている、というデータがあります。つまり、命を断つしかないと思ったひとたちのほとんどに「道」はあったということです。

「危機」は一時的なものです。不可逆な意思決定は、落ち着いてからでも遅くありません。

ひとりで「問題」について考えてはいけない

メンタルの状態が悪いときには、思考力が落ちていることはすでに述べました。そんなときに「なぜこんなことになってしまったんだろう」とひとりで問題について考えていると、「こんなに経営がうまくいかないのは、自分の能力が足りないせいなんだ」と自分を責めたくなったり、逆にそれを受け入れられず「あの人に裏切られた、あの人のせいだ」と誰かひとりを責めたくなったりします。そうすると、自分を責める気持ち、他人を責める気持ちが増幅して、悲しみや怒りの感情がさらなるストレスとして重なっていきます。

でも、世の中そんなに単純ではありません。ひとつの「問題」には、100万通りの「原因」があります。それを単純に自分のせいにして背負ったり、だれかひとりのせいにしても、正しい判断はできません。

メンタルの調子が悪いときの世界の見え方は、黒くて歪んだ色眼鏡をかけているのに、それをかけていることに気づいていないというのと似ています。そうしたときの意思決定は必ず歪められます。以下のような考え方のパターンがあるときには、「今考えてもムダだな」と思ってください。

1. 具体的に思考できない
【一般化しすぎる】
みんな自分のことを信頼してない」「みんな離れていってしまうのではないか」「いつも失敗する」「何もかもうまくいかない」など、考えの抽象度が上がり、具体的な問題が見えなくなる。
【単純化しすぎる】「自分が悪い」「特定の誰かが悪い」など、ものごとの原因や実際に起こっていることを単純化して捉えてしまう。
【白黒思考になる】「経営者を続けるかやめるか」の選択肢しか思い浮かばなくなる。「休む」「少し委ねる」などの、白黒でない選択肢が浮かんでこない。

2. 「ないもの」に意識が向き「あるもの」に目が向かない
今起こっているたくさんの出来事のなかで、悪いことにしか目がむかなくなる。「あるもの」に感謝できなくなる。

3.  「自分」の視点でしか見えない
自分の偏った視点に気づく「メタ」の視点がなくなり、自分が見えていることが真実だと思い込んでしまう。

4. 「今」の視点でしか見えない
「今」という時間は、長く続く人生の中のごく一瞬なのに、この苦しみが永遠に続くかのように錯覚してしまう。

不調に気づいたらやるべきこと

体調が悪いことを周囲に伝える

あなたは経営者として、自分が不調に陥っていることを周囲に知られたら、がっかりされてしまうのではないかと心配しているかもしれません。でも、それを隠してがんばり続けることがもたらすネガティブなインパクトは、「がっかりさせる」どころではすみません。

経営者もひとりの人間です。あなたは、ひとりの人間です。人間は、弱いところと強いところ、調子のいいときと悪いときがあって当然です。
スーパーマンでいようとするのはやめて、周囲を信じて不調を伝えましょう。不調を伝えたうえで、どうしたらいいかを一緒に考えていきましょう。

こうしたとき「主語を変えてみる」ことが役に立ちます。自分が有能か無能かに意識を向けるのではなく「チームにとって、ベストは何だろうか」「チームの力が最大限引き出されるために、自分がとるべき行動は何だろうか」と考えてみます。

すると、「強い自分を守る」以上に大切なものが見えてくるかもしれません。

身体を休める

眠れない・食べられないなどの身体症状が出ているときには、何を差し置いても、まずは休んでください。不調な身体を酷使してがんばることは、パフォーマンスにはつながりません。

「完全に休む」が難しいときには、100%の休養でなく「社内ミーティングをスキップする」「緊急度が低いものを先延ばしにする」などでも構いません。とにかく睡眠時間だけは確保してください。眠れなくても、体を休ませるだけでも意味があります。

寝る前にいろんな思考が巡って眠れないかもしれませんが、寝る前に考えることの大半は役に立たないので、寝ている時まで生産的であろうとするのは諦めてください。

感情を吐き出す

これは、経営者であるあなたがあまり得意としていないことかもしれないので強調したいのですが、抑え込んだ感情は、どこかで必ず吐き出してください。

「感情」は溜め込むことでストレスとなってエネルギーを奪ってゆきます。感情を抑え込んでいることにに気づいてすらいない、という人もいますが、経営者としてたくさんの責任を抱えて「怒り」「不安」「焦り」「悲しみ」あなたは、たくさんのネガティブ感情を抱える機会があるはずです。

とにかく、悲しいことは悲しい、苦しいことは苦しいと表現してください。感情が滞っているときには、思考がうまくまわらなくなります。身近な人で吐き出せる人がいればそれでもいいですし、難しければ専門家でも、スナックでも、電話占いでも、Chat GPTでも、ひとりカラオケでも、なんでも構いません。

考えていることを「事実」、「思考」、「感情」に分けて書き出す

もやもやと答えが出ないまま考え続けてしまうときの思考を「反芻思考」といいます。この反芻思考は、それ自体がうつを悪化させることがあるので、3分以上思考が前に進んでいないと気づいたらいったん思考するのをやめるか、思考自体を書き出すようにしてください。書き出すことで、考える意味があることとないことに気づくことができます。

思考を書き出すときには「事実」「思考」「感情」を分けてください。

例えば、「信頼していたメンバーがやめてしまって、自分は経営者としてダメなんじゃないか、やめたほうがいいんじゃないか、と落ち込んでいる」とします。

事実は「信頼したメンバーがやめてしまったこと」
思考は「自分は経営者としてダメなんじゃないか、やめたほうがいい」
感情は「悲しみ」

客観的に見れば、事実と思考の間に飛躍があることがわかるのではないでしょうか。でも、不調のときの思考は往々にしてこのくらい「雑」なのです。

ポイントは、この「思考」の部分にはあなたのバイアスが大いに含まれており、結果としてその感情を抱く必然性はないのであって、ほかの思考の選択肢があるということです。

まずは、自分の脳内で生まれている「思考」とそのバイアスに気づきましょう。バイアスには、先ほど挙げたような「単純化」「一般化」「白黒」「ネガティブ」「自己関連付け」「今がすべて」のようなもがあります。

そして、バイアスを取り払ってより客観的な「新しい思考」が生まれると、新しい「感情」が生まれることに気づくはずです。感情(そしてそれに伴うストレス)は、「出来事」によって生じるわけではなく、「思考」によって生まれていることを知っておきましょう。

自分の「足りなさ」ではなく「持っているもの」を大切にする

うまくいかない時の経営者には、自分の「足りなさ」に直面し、自己否定する理由がいくらでもあります。周囲の期待に応えられていない、信頼を裏切ってしまうのではないか、同時期に起業した友達はあんなにもメディアで取り上げられている、自分が描いた理想とは程遠い状態にある、一時期は自分もうまくいきそうだったのに。

限りない「自分の足りなさ」に直面すると、「自分は幸せを感じてはならない」という錯覚のようなものが生まれます。自分を犠牲にしてでも「足りないものを埋めなければ」と考えて努力を続けることになる。そしてそれは、苦しい。

どんなにがんばっても「自分の足りなさ」が埋まることはありません。どんなに会社が大きくなっても、お金持ちになっても、「成長し続けなければ」「さらに上にいかなければ」「誰よりも優れていなければ」という気持ちが動機付けになっている限り、常に「足りなさ」に追い立てられ続けることになります。

これは人間の持つ思考の癖のようなもので、人は「ないもの」を見ると、そこにしか意識が向かなくなってしまいます。下のような図を見ると、ほとんどの人が「右下の欠けている部分」に意識を向けます。

でも、実は「ある」もの、感謝すべきことがたくさんあるはずです。これまで信頼してくれた顧客。それでも一緒にいてくれる仲間。失敗も含む豊かな経験、学び。自分の強み、つながり。好きなもの。願い。
「足りなさ」ではなく「あるもの」を認めることで、「足りなさ」の見え方も変わってきます。

正しく世界を見るために、思考の解像度を高め、視点を増やす

少し休んだら、自分で、あるいはほかの人の力を借りながら、以下のような問いを自分に投げかけてみてください。

これらの問いは、解像度が下がって視野が狭くなり、世界を適切に見えなくなって、自己犠牲的になっているところから、「解像度を上げる」「視点を増やす」「自分をケアする」ための問いです。

・解決されるべき問題は具体的には何?
・今最低限必要なことは?
・最悪のシナリオは?そうならないためにできることは?
・最善のシナリオは?それに近づくためにできることは?
・コントロールできることとできないことは?
・解決した状態はどんな状態?そのために何ができる?
・解決するために必要なリソース(資源やサポート)は?
・AとB以外の選択肢(考え方)はない?
・●●さんの視点からはどう見えてると思う?
・第三者の(俯瞰した)視点からは、どう見える?
・他の考え方はない?
・10年後にタイムスリップして、今の経験がよかったと思えるとしたら?
・次のフェーズに進むために、手放すべきことは?
・次のフェーズに進むために、自分に必要なことは?
・自分の本当の願いは?
・今、自分を大切にするためにできることは?

問いに応えることを通じて思考が変わると、感情が変化してストレスが軽減したり、新たな行動が生まれて問題解決につながることもあります。
また、このプロセスを他者とともにおこなうことで、サポートを得やすくもなります。

捉え方を変える、自分との付き合い方を変える、他者とのつながり方を変える

メンタル不調は「不安感」「自己否定感」「孤独感」と向き合った結果「捉え方」「自分との付き合い方」「他者とのつながり方」が変化していくことで乗り越えていけることが多いように思います。

メンタル不調に陥ったタイミングは、この3つのいずれか、あるいは全てを「変えていく必要がある」というサインだと捉え、人生の中で遅かれ早かれやってくるこのタイミングでしっかり向き合っていくことが、今後の生き方の変化につながってくるはずです。

不調に陥らないために、先にやっておくべきこと

自分の状態・感情に影響を与える要因を知っておく

同じ起業家/経営者といえども、人それぞれ敏感に反応してしまうストレス源は異なっています。他者からの攻撃的なコミュニケーションが苦手な人もいれば、期待を裏切るのが怖い人もいる、寝不足でパフォーマンスが落ちる人もいれば、コントロール不能感にストレスを感じる人もいる。これらについて言語化しておくことで、ストレス源を避ける行動をとれるようになります。

同様に、自分の状態・感情をより良くするために何ができるかも知っておきましょう。苦しいときに何をすると「自分が喜ぶ」のか。最低10個くらいは持っておいて、必要なときに取り出せるようにしておきましょう。

関わってくれる人は、ちゃんと選ぶ

スタートアップ起業家/経営者が一番苦しむのは「事業がうまくいかないときの他者との関わり」です。

スタートアップの投資家も、メンバーも、本来「成功すれば自分が得られるかもしれないもの」と「失うかもしれないもの」を自分のリスクとして取った上であなたと関わっている、という状況があるべき姿です。そのリスクと責任を持てる人だけを巻き込まないと、あなた自身も苦しいときに急に被害者のような振る舞いで、あなたに対して攻撃してくる、ということが起こります。それは本当に苦しいことです。そもそも不確実なものに関わることへの責任やリスクを取れない・取る意志/能力がない・悪意がある人(投資家・従業員)は巻き込まないようにしましょう。

事業がうまくいっているときは、みんな「いい人」に見えます。でも、あなたが苦しんでいるときに追い立ててくるような投資家や仲間はできる限り避け、苦しいときに頼れる、信頼できる人を選びましょう。

正直である

スタートアップは、「できないことをできる」「実現が難しいことを実現する」と夢を描いて人を巻き込むところが少なからずあります。でも、それで身の丈以上の資金調達をして、仲間を集めることで(うまくいくことももちろんあるのですが)それによって自分が追い立てられる状況をつくってしまうこともあります。

「思い描いていること」は大きくて構いません。でも「自分ができること」や「現実」を大きく見せないようにしましょう。本当のことありのままに伝える。できないことは、できないと言う。でも、できるようになりたいから、協力してください、と言うようにしましょう。

そうでないと、期待と現実のギャップに、だれよりもあなたが苦しむことになります。

頼ってください

いちど不調に陥ってしまうと、なかなか人に頼るのが難しく感じられると思います。「周囲を不安にさせてしまうのではないか」と思うかもしれません。でも、あなたが回復することは、今は周囲にとっても何よりも大切なことです。信頼して「力を貸してほしい」と頼ってください(それで拒否するような人は、最初から巻き込むべきでなかった人だったということです)。

身近な人に頼れるのが一番ですが、難しい場合には専門家がサポートすることもできます。感情を吐き出したり、思考を整理したり、対話を通じて回復をサポートするのがカウンセリングです。

CoachEd mental supportでは、スタートアップを支援する主要なベンチャーキャピタルのほとんどである50社以上がパートナーとして参画し、起業家/経営者は不調時に無料でカウンセリングを受けることができます。

多くの投資家は、起業家のメンタル不調ということに責任感を持って課題意識を感じて、サポートしたいと思っています。もちろん、ご相談いただいたことは、相談があった事実も含めて一切VCには報告をおこないませんので、安心してご相談ください。

経営者を続けるにせよ続けないにせよ、人生はこれからもまだまだ続きます。その中で、今の不調は「今までのやり方を変えなければいけない」というサインです。そのサインと向き合うことで、あなたは今までの自分を「含んで超えていく」ことができます。

必要であれば、そのプロセスに、専門家として伴走させてください。

さいごに、身近な支援者のみなさまへ

身近な起業家/経営者がメンタル不調になっているとき、どう支援していいか困っているというお話をよく伺います。

そんなとき、このnoteをお役立ていただけたらと思っています。ひとまずこれを送るということでももちろん良いですし、この中に出てくる内容を参考にアドバイスしたり(いったん休む、重要な意思決定をしてはいけない、ひとりで考え込まない)、関わったり(感情を受け止める、相手を受容する、解像度を上げ視点を増やす問いかけをする)していただけると良いかと思います。

ご本人になって何が大きなストレス源になっているのか、結果としてどんな状態になっているのか、どんなバイアスがあるのか、想像しながら関わっていただくと、必要な問いかけやサポートも見えてくるのではないかと思います。

また、このように相手の感情や思考に気づきながら周囲の人の安心と成長を支える技術がコーチングです。多くのキャピタリストのみなさまにも学んでいただいています。


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