日本IBMが挑む!京都の課題解決と未来創造に向けたスタートアップ支援プログラム
日本IBMによる京都市を舞台にしたスタートアップ支援プログラム「IBM BlueHubプログラム in Kyoto」が始動した。京都市の地域課題をAIなどのテクノロジーを活用して解決するスタートアップを募集するものだ。選出されたスタートアップ5社には、B2Bビジネスの現場で活躍しているコンサルタントからのアドバイスや協力投資家とのメンタリング機会を得られ、25年7月開催予定の日本最大級のスタートアップイベント「IVS2025 KYOTO」に合わせてプレゼンの場が提供されるという。スタートアップのスキルやノウハウを育て、ビジネスの基盤がためを支援することを目的にしているとのこと。選出されたスタートアップは、エンタープライズ向けの生成AI 「IBM watsonx」を活用したり、生成AI導入に際してIBMエンジニアのサポートをえられる。AI / 生成AIを中心としたテクノロジーを活用し、B2B / B2B2C サービスを検討しているスタートアップにとって費用をかけずに先進テクノロジーを使える魅力的なプログラムとも言えるだろう。
⛩️京都市の地域課題とは?その課題解決のためのテクノロジーとスタートアップの可能性
観光都市としての知名度ナンバーワンの京都市だが、意外にもさまざまな地域課題を抱えているという。それは、観光都市としての光があたる部分と影となる部分のギャップの大きさや、観光資源となる文化財保護や伝統文化継承にかかる労力とコスト、多くの旅行者が訪れるために対応しなくてはならない住民環境の問題や環境保護、さらには人材流出といったもので、日本の地方都市が抱える問題とオーバーラップするものも。伝統文化が根付きながら革新的なものを生む企業を生み出す、文化と革新が交差するこの街ならではの特性が映し出されている。この、一見相容れない伝統文化と革新を共に育むために、テクノロジーが突破口となる可能性があると日本IBMは考えているという。
スタートアップの革新的なアイデアとソリューションが、京都市の地域課題解決において鍵を握るのではないか?産業、観光、文化財保護/伝統文化継承、人材流出、環境、それぞれの分野の課題に対してスタートアップが貢献できるのではないか?IBM BlueHubで具体的にどのようなスタートアップの参加を求めているのか、日本IBM BlueHubプログラムを担当するIBMコンサルティング Future Design Lab.の矢野裕佳氏と卯月佳菜子氏に話を伺った。
👩💼 京都の産業が欲する経営人材とは?
矢野裕佳氏(以下、矢野):「まず、産業分野では「スタートアップの成長を支える経営人材の不足」が意外なことに挙げられます。京都は世界的ヒットを生み出すゲーム会社や半導体の研究、さらには高度で独創的な研究でよく知られている京都大学などゼロイチを生み出す土壌は備わっています。大学や研究機関が集積し、技術や知識は豊富であるものの、それをビジネスとして活用するための経営人材が都市に新たな活力を生み出す、イノベーションの担い手として重要な存在であるスタートアップにおいて不足しているのが京都の現状だとお聞きしました。残念なことに、経営人材は東京や大阪などの大都市圏に就職する傾向にあるようです。この状況を、生成AIを中心としたテクノロジーを介在させることで打開できたらと考えております。例えば、会社の規模や課題に応じた『人材マッチングプラットフォーム』を進化させたソリューションを提供すると、各社に最適な人材を結びつけることが可能となるでしょう。また、経営アドバイザーAIのようなツールが新たに登場する可能性もあります。このような新たな解決策を提案できるスタートアップと連携することで、0から1を生み出す人材と、それを100まで育て上げる人材が京都に集まる環境を整えることができるのではないかと考えています。これらはこんなスタートアップが応募してほしいというイメージではありますが、こうした構想を持つスタートアップが参加してくれることで、イノベーションからスケールアップまでを実現し、京都の産業のさらなる発展に寄与できるのではないかと考えています。」
🤖 京都の観光が求めるAIエージェント
卯月佳菜子氏(以下、卯月):「観光分野でもテクノロジーの活用が期待されます。京都市では観光客の一極集中が課題となっており、嵐山や清水寺といった人気観光地で混雑が激化している一方で、素晴らしい観光資源があるにも関わらず訪れる人が少ない、もっと言うと、いない地域も。こうした特定の地域への一極集中を緩和し、今観光客には見出されていない観光資源のある地域も訪れていただけるような、混雑緩和の最適化を図るという面で、テクノロジーが大きな可能性を持っています。混雑情報を解析しつつ、訪れると良い場所を示すようなアプリがあれば、京都の魅力にあまねくリーチできると共に、観光客自らが訪れる場所を選択できますし、満足度を高めながら京都を満喫していただけます。これはひとつの行動変容を促すようなことだと考えていて、生成AIを使うことで可能になると思います。もう少し具体的にお話すると、観光客一人ひとりにとってより快適な体験を提供することが大事で、真にパーソナライズされた旅の提案が求められます。私たち一人ひとりが京都に入ったときに「あなたにあった旅のプランを提案します」とルート案内、おすすめのレストランやお茶屋を提案してもらえたら純粋に嬉しいですし、そのプランに沿って行動したら渋滞に遭わないのであれば、街の課題を解決しながらさらに一人一人の旅の満足度が上がると考えております。AI / 生成AIの力を使えばそれが実現できると思います。スタートアップの力を借りてこれらの技術を具体化できたら嬉しいです。アイデアはあってもまだ大規模なユーザー向けのAIテクノロジー導入が行えてないスタートアップに関しては、IBM watsonxを活用いただけますし、IBMのコンサルタントやエンジニアがサポートをするので、構想はあるけれど実行できていないスタートアップのメリットになると考えています。」
🍵 「カルチャープレナー」を増やしていくために
矢野: 「京都市が誇る文化財や伝統文化を次世代に継承するためには、従来の文化財保護の視点に加え、新たな革新的アプローチが必要だと考えています。これまで守ることに重点を置いてきた文化財に付加価値を加え、それを活用することで得られた収益を保全に還元する、持続可能な好循環を実現できたらと考えています。例を挙げると、お寺に宿泊できる100万円のサービスが海外富裕層から注目を集めているそうです。インバウンド需要が高まる中、現代の人々が熱狂するような体験へと文化を昇華させることが重要だと感じています。そのためには、顧客データを活用し、個々の嗜好に合わせた体験設計が鍵となりますが、これはまさにAIが得意とする分野です。
また、弊社が開発、提供しているボリュメトリック技術を活用した『文化のデジタル保存と活用』にも大きな可能性があると考えています。
一方で、文化は長い時間をかけて構築されるものです。ただ活用するだけでは、後継者の育成などが疎かになりかねません。これまで曖昧だった価値の源泉を見える化し、公平に利益を分配するために、データを改竄されることがなく、記録をおっていけるブロックチェーン技術も有用かもしれません。こうしたテクノロジーを活用してソリューションを提供できるスタートアップにも大いに期待しています。
つまり、既存の文化を大切にしながら、新たな視点で次世代や海外に開かれた文化を軸とするビジネス構想を持つ起業家、いわば『カルチャープレナー』を育てることができたら、素晴らしいと思っています。こうした挑戦に共感し、その土壌を作るソリューションを持つスタートアップの皆さまの応募を心よりお待ちしております。」
📕 新しい学びの環境を京都から
卯月:「若い世代が居住地として選びたくなるような「子育て・教育環境」の整備も大きなテーマです。京都市内では空き家があるのにも関わらず、子育て世代が近隣地域に移住をするケースが増えています。また、市内に住んでいる方のおよそ1割が大学生だそうで、市内住みの大学生は市内での就職率が高いことから、なるべく多くの京都市高校生を京都の大学に進学させる必要性もあるようです。家族に最適なサポートプランを自動提案、教育費用や学びの選択肢に関する相談に対して生成AIが個別に対応する「AI子育てアシスタント・教育プランニング」や、地域ごとに子どもや若者向けの居場所づくりをAIが提案する「AI居場所創出プロジェクト」など、地域に根付いた教育の仕組みも必要だと考えております。スタートアップの創意工夫により、次世代が京都を選び、根付く環境を共に作り上げていきたいと考えています。願わくば「AI時代の寺子屋」のように空き家を学舎に転換して価値創造できるようなスタートアップにもアドバイスを色々ともらいたいところです。」
🌳 3/4が森林である京都市の活用
矢野:「京都は3/4が森林だとのことで、その資源をいかに循環型社会へ組み込むかが問われています。現状では、CO2削減や放置森林の管理が追いついていない状況です。ここで期待されるのが、個々の行動や活動におけるCO2削減量の可視化や具体的なアクションプランを提案する「AI脱炭素支援システム」や、放置森林の管理や間伐作業の最適化をAIが支援する「AI森林管理と農林業支援」などの新たな発想だと考えております。先ほどの文化面だけでなく環境でも、AIだけではなくサステナビリティの観点でテクノロジーが活かせると考えております。IBMにはAIだけでなく、ブロックチェーン、クラウド、セキュリティなど様々なテクノロジーと、ビジネスの現場で知見を積んだエンジニアやコンサルティングがおりますので、テクノロジー、人材の両面で支援が可能です。スタートアップの皆様のアイデアと、ビジョンで我々が求めているソリューションに見合うものがあれば是非「IBM BlueHubプログラム in Kyoto」に応募していただきたいと考えております。」
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京都という特別な地域は、日本にとっての一つの象徴的な地域である。この大切な地域がAI、テクノロジーとともに人間が生活する時代においても、特徴である伝統文化や自然環境を守りつつ、より革新的なものを生み出し、産業として育てていくことができるのか?また、次世代人材を生み出す上でも住みやすい環境、教育の仕組みをアップデートしていくべきなのか?面白い挑戦のフィールドが京都市である。この象徴的な地域「京都市」に日本IBMがAIはじめとするテクノロジーとともにスタートアップを応援する座組を整えている。私もPRプロデューサーとしてこの取り組みに携わっており、今後も積極的に情報を発信していく予定だ。興味を持ったスタートアップ、ソリューションをお持ちの方はぜひ「IBM BlueHubプログラム in Kyoto」に応募してほしい。