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サンボマスター山口隆さんがオンラインとオフラインの境界を軽く超越させたフジロック2020の功績

コロナの影響で音楽イベントの在り方に変化が起きている。オンライン開催、グッズ販売、投げ銭などを活用して新たな実験が繰り広げられている。私自身もオンラインゲーム「フォートナイト」内でのDiploや米津玄師のライブにアバターで訪れたり、サカナクションのSAKANAQUARIUM 光 ONLINEに参加したり、フジロック2020のYouTubeライブに参加するなど、どのような体験が心地良いのか探るべく様々なオンライン音楽イベントに"足繁く"通うようにしているその中で「オンライン音楽イベント」のなかにも、いくつか種類があり、それによって求められる体験が変わることに気がついた。

「LIVEライブ」「収録ライブ」「オンデマンド」による臨場感の違い

オンラインイベントではそれが「収録ライブ」なのか?「LIVEライブ」なのか?もしかしたら「オンデマンドライブ」なのか?その前提セッティングが明確でないと、脳味噌のスイッチがライブに切り替わらず盛り上がりにいまいち欠ける。それらの区分けを図のように示してみた。ざっくりとしているがなんとなく伝えたいことは伝わるだろう。

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例えばサカナクションが2020年8月15日(土)16日(日)に開催したSAKANAQUARIUM 光 ONLINEのライブは圧倒的なクオリティの映像が続いていたので、あたかも「収録ライブ」なのかと思ってしまった(実際には「LIVEライブ」だったのを後から知る)。ボーカルの山口一郎さんが演奏途中に「みなさん楽しんでますか?!」という問いかけをしてくれたりリアルタイム映像演出に優れたライゾマティクスが演出を手伝っているのも知っていたので、「LIVEライブ」なんだろうとは思っていたものの、あまりにも完璧すぎる演出と他の来場者の温度感(例えばYouTubeのチャット)が画面上で一切感じられなかったので「収録ライブ」のように勘違いしてしまった。一旦、「収録ライブ」と思ってしまうとオンライン上でのいつでもどこでも好きな時に見られるオンデマンド視聴に慣れている分だけ、なんでわざわざ日曜日の19時に時間を拘束されちゃうんだろうという不満も少なからずわき起こった。ただ、後から「LIVEライブ」と知り、さらに、サカナクション自らが新たなライブとミュージックビデオの融合たる「ライブミュージックビデオ」として当イベントに挑戦していたことを知り、不満はすぐに称賛へと変わったのだが、前提知識なくオンラインライブ会場の扉を開いた当日の私のライブ体験としてはリアルタイム参加へのワクワク感欠乏という寂しさがあったのは事実ではある。

ちなみに音楽ではないが「LIVE」のリアルタイム臨場感として最高峰の挑戦をしていたのは我が古巣バスキュール、だ。2020年8月9日にKIBO宇宙放送局としてオンラインLIVE番組を放送した。中村倫也・菅田将暉をゲストにペルセウス座流星群と国際ステーションが地球一周し朝日をみんなで見るというものだ。待ったなしの地球の回転に合わせたリアルタイム感バリバリの番組で「LIVEライブ」としての臨場感を味わうには最高の体験だった。流星群、日の出、というのは演出しようのない生ものなので、LIVEに地球の自転をゲストとチャット参加者とともに味わい、宇宙ってすごい!というスケールの大きい感動を味わえたものだった。

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アバターが野山を駆け巡り、フェス臨場感を味わう

全世界で3億人ほどのユーザーが遊ぶオンラインゲーム「フォートナイト」のトラヴィス・スコット(Travis Scott)ライブが同時接続数1230万を稼いだというニュースを知った2020年5月の時点から、自分でも一度フォートナイト上でライブを味わってみたいと思っていたのだが、その機会は意外にもすぐに訪れた。2020年7月31日Diplo、8月7日米津玄師と好きなアーティストがほぼ二週連続してライブを行うことになった。いずれも日本時間では夜中の開催。目覚ましをセットして全世界同時配信のライブに参加できるように準備をした。だが、Diploも米津玄師いずれも、開始時間30分前から待機しようとしても満員御礼で会場に入れず弾き出されてしまった。しかたなく、数日後に開催される再放送ライブに参加することになった。ただ再放送であったとしても参加してよかったと思う感動的なフェスであった。

まず、アバターである自分はライブ会場まで行かなければいけない。ライブ会場に近づくと音が大きくなり、照明も明るくなる。フジロックでいうところのフィールド・オブ・ヘブンに向かうときの冒険心のようなワクワク感が会場に向かうまでにはある。

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ライブ会場前では様々な衣装を着たアバターがDiploのステージ前では躍り狂い、米津玄師のステージ前では泣いていた。なぜならばフォートナイトのステージ上の米津玄師がコロナによりライブの機会が減ったというしんみりした話をしていたからだ。アバターが泣いているシーンをみて自分が感動するとはこの時まで夢にも思わなかったのだが、米津玄師というリアルに存在するアーティストがステージ上で生の思いを語っている会場ではアバターであったとしても自分の感情を投影し、心が揺さぶられることを初めて体験した(トマトのアバターが私で左前にいる三人組が泣いていたアバター達だ)

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分散型参加なのに一体感を感じるタイムライン

コロナの感染拡大が大きくなり、オリンピックをはじめとする様々な大型イベントが中止・延期になるなかで私が心痛めたものの一つがフジロックフェスティバルの苗場開催中止だ。心を痛めたと同時に、オンラインで開催するとのことでどのような体験になるのかも気になり8月21日(金)22日(土)23 (日)開催初日21日にフラッと参加したところ・・・

フジロック運営チームが過去アーカイブから引っ張ってきた珠玉のアーティスト群がトイレに行く隙も与えないほど贅沢に音楽を奏で、YouTubeの投げ銭機能付きチャットルームでは、あふれんばかりの音楽、フジロックへの愛が語られ12,000円の投げ銭なども頻繁に入りコロナで打撃を受けたエンタメ業界へ運営および参加者みんなが愛をもって盛り上げている姿に感動をしてしまった。

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思わず翌日22日朝9:00〜の再放送も見てしまった。そして、22日(土)夜、23日(日)朝再放送、23日(日)夜、24日(月)朝再放送、と結局再放送含めて6回全部コンプリートしてしまったのだ。見てしまったというよりも、タイムラインと運営、そしてアーティストの愛がたまらないほどあふれているので、実際に苗場フジロックに行き「音楽って最高だぁぁぁ!」と思った時と同じような感動が体に充満する体験だったので「まだ見たいもっと見たい!」と自然と欲してしまったのであった。

連続参加させるアディクションの要因としてはいくつかあると思う。自分がかつてフジロックに行ったことがある経験からのフジロックの今の状況を応援したいという気持ちと、自分の好きなアーティストが出ていること&知らないアーティストに出会える高揚感、そしてYouTubeのチャット機能・投げ銭付きのスーパーチャット機能がフジロック愛に溢れていてその愛を感じたいし、自分もそこに貢献したいと思ったからだ。

フジロックや苗場への愛はもちろん、この場限りの遊び方を参加者自身が始めており、それに参加するのもとても面白かった。例えば、井上陽水の『傘がない』が流れたときには「傘がないなら傘代払ってやる!」と言うコメントをつけながら投げ銭する人がいたり、ユニコーンの『大迷惑』が流れたときには「迷惑料だ!」とか言いながら投げ銭したり。電気グルーブの時には『NO』の歌詞に「花をいける花瓶がない」と出てきたら「花瓶代だ!」や「電気代だ!」と言いながら投げ銭を入れていく参加者続出などなど、アーティストや歌詞にあわせて投げ銭を入れるという独自の楽しみ方が発生し、みんなバラバラの場所から接続しているはずなのに苗場で一体化しているような気分が味わえた。分散型参加なのに集中型のようなフジロックが醸し出すグルーブ感に圧倒され、感動もした(もちろん自分もそのグルーブにのって投げ銭をしたのは言わずもがな)。

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「私とあなたがフジロックだと思ったら、ここはフジロックなんです」

フジロックの「Liveライブ(当日)」と「収録ライブ(翌朝)」どちらも見て、どちらも感動で泣いてしまったのはサンボマスターだった。「フジロックイズノットデッド!!」「俺たちの未来イズノットデッド!」「笑ってますか?」「悲しみで花が咲くものか!」とボーカルの山口隆さんが放つどストレートの歌詞がコロナ禍で行動の自由を不便に感じている我々の心にビンビンに突き刺さるのはもちろん、フェスの新たな形をアーティスト自らが発していたからだ。それは、

「私とあなたがフジロックと思ったら、ここはフジロックなんです」

という言葉だ。

この言葉がサンボマスター山口隆さんから発せられた瞬間に、音楽フェスは苗場という場所から解き放たれ、フェスや音楽、アーティストを愛するもの同士がつながったのだ。あ、これがフジロックやフェスなんだ、と思った瞬間である。

ここでは山口隆さんというアーティストにミュージシャンの代表として登場してもらっているが、フェスを構成する運営・アーティスト・参加者、全員が同じ方向を向いた時にフェスが登場するという現象は、他でもおきうることなのではないか。

これからの音楽イベントがどうなるのか?私も含め多くの人の関心ゴトではあるが、アーティストと参加者、運営、関わっている「ヒト」全てが同じ方向を目指すとき(一体感をグルーブを感じる時)、もしくは「愛」を共有したときにイベントは最高の盛り上がりを示すとすると、丁寧に設計すれば意外と今まで不可能と思っていた空間や場所でフェスが起こせる気がし始めた。そして、それはオンラインでも可能なのではないか?とも思っている。

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まだまだCOVID-19は治らないし、他の感染症もこれからも起きてくるだろう。場所に行かなきゃ始まらないとは思わずに、リアルな場所にいける際には思いっきりその場を楽しみ、いけない場合ではオンラインでも繋がれる「愛」を受容できるように感度を高めておこうじゃないか。

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サンボマスター含むフジロック2020最終日のアーカイブはこちらから体験できそうである。興味あるかたはぜひ追体験を✌️

※ちなみにこのnoteで利用している画像は8/21-23のフジロックオンラインを視聴中に個人的にスクリーンショットを撮ったものです。もしも問題などあるような場合にはすぐに削除します。引用先:https://www.youtube.com/fujirockfestival 



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