"10年で約200倍の進化?!"日本IBMがポッドキャストで語る生成AIとビジネス最前線
ポッドキャストは私にとって、日々の学びを深めるツールの一つだ。特に海外情勢を伝えてくれるポッドキャスト番組がお気に入りで、知らなかった世界を広げてくれる魅力はもちろん、部屋の掃除をしながらでも「ながら学習」ができる気軽さが気に入っている。特に、ナビゲーターの声というのが重要だと思うのだが、お気に入りは「New York Times」のポッドキャスト番組「Daily」のMichael Barbaroだ。彼が引き出すアメリカ事情から学んだことは多数だ。
ナビゲーターの存在がポッドキャストの魅力を際立たせる要素であることは、多くの人が共感するところだと思うが、日本IBMが提供するポッドキャスト『日本IBM 誰かに話したくなる“〇〇”の話』は、私がコロナ禍でYouTube番組「オニワラ」をご一緒させていただいた日本IBMの藤森慶太氏がナビゲーターをやっているので、さらに魅了されてしまう。プロフェッショナルなラジオナビゲーターも好きだが、自分の少し身近な方がナビゲーターを行うというのは、より惹き込まれるものである。
藤森慶太氏は以下の記事でも紹介しているので気になる方はチェックしてほしい👇
10年前との比較「誰かに話したくなる“生成AI”」
さて、ナビゲーターの魅力はもちろん、中身も身近で思わず聞き続けてしまう『日本IBM 誰かに話したくなる“生成AI”の話』だ。日本IBMのAI責任者である村田将輝氏とナビゲーター藤森慶太氏とのトークは、会社員だった時に飲み会などで上司が話すここだけ話を聞いているような得した気持ちにもなる。村田氏は日本IBMの取締役常務執行役員 テクノロジー事業本部長 兼 AIビジネス責任者なので、肩書だけを見るとお堅い・真面目なことが多く語られるのかと構えてしまうのだが、ポッドキャストを聞いているとユーモアを交えながら話してくれるので聞き惚れてしまう。
例えば、ナビゲーターの藤森慶太氏から「ソフトウェアやハードウェアの責任者であると同時にAI責任者でもある背景には、どういった経緯があったのでしょうか? 」と質問された村田氏は「自分の話し方が感情がこもっていなくて、AIっぽいと言われたのがAIの責任者に任命されたきっかけかもしれません」とユーモアを交えて答えるシーンがある。もちろんこれは冗談であり、その後に、実際の理由をお話しされるのだが、ジョークを交えてAIビジネス最前線が学べるのは貴重だ。
村田将輝氏が日本IBMのAIビジネス責任者を兼務されている背景には、2016年のWatson導入時に銀行向けプロジェクトを手掛けた経験があるという。つまり、村田氏は10年近くにわたり日本のAIビジネスの最前線で活躍されてきた人物であり、その視点から語られる内容には一層の説得力がある。例えば、2016年当時はAIビジネスのPoC(概念実証)を1件進めるのに半年以上を要していたのが、2024年現在では、半年で200件以上のPoCを完了するまでに進化しているという。村田氏自身が、AIの急速な進化がビジネスの景色をどのように変えたか、その手応えを数字を交えて語る内容は、評論家や解説者では出せない、ビジネスの現場でAI領域を切り拓いてきた第一人者だからこその説得力を持つ。
技術進化が可能にする「新しい行き先」
「いま知っておくべき生成AIの最前線」エピソードでは、日本IBMのコンサルティングのビジネスと技術のトップリーダーである川上結子氏と前田幸一郎氏が登場し、生成AIの最新動向や活用事例について深く掘り下げるとともに、一般ユーザーがAIの進化を加速させる時代において、B2B企業がどのような姿勢を取るべきかを論じている。難解なテーマを誰もが興味を持てる日常の話題から展開していく構成に惹き込まれていくのだが、例えば「運転免許はマニュアルかオートマか?」という身近なディスカッションを切り口に、AIの進化がどのように一般ユーザーの手によって加速され、社会に浸透していくのかを導き出している点は、親しみやすくもAIを自分ごと化するために説得力がある。
また、UBERを例に運転やカーナビの進化を例に、「技術が進化すれば行けなかった場所に行けるようになる」という具体例も示されており、AIが単なる効率化ツールではなく、新しい働き方や価値創出を可能にする力を持っていることも改めて気付かされる。この「新しい行き先」にたどり着く可能性は、AIを考える上での大きなヒントとなるのではないか?
AIはもはや専門家や技術者だけのものではなく、一般ユーザーの手によって様々なユースケースが生まれ、拡大している現在。この変化を企業がどのように取り込み、社会と技術を繋げていくのかが語られる内容は、AIの現在地を知るだけでなく、これからの企業戦略や社会の変化を考えるきっかけとしても、聞きながらうなづいてしまう方が多く現れることだろう。
AIが切り開く新たな資源循環の可能性
プラスチック廃棄物の資源循環は、サステナビリティーの観点から大きな課題とされているが、AI技術がこの領域に新たな可能性をもたらすかもしれない、と 「生成AIがつなぐ、企業と企業」エピソードでプラスチックの水平リサイクルや未活用資源の再利用にAIを活用するアイデアについて日本IBMのサステナビリティー担当 槇あずさ氏は語る。
日本では廃棄プラスチックの87%が「有効活用」されているとされるが、その62%はサーマルリサイクル、つまり焼却してエネルギーとして利用する方法だ。これは「循環」とは言えず、海外ではリサイクルと認められないケースも多い。法律で規制されているペットボトルや家電など一部のプラスチックは循環システムに組み込まれているが、卵パックのような多くのプラスチックは依然として手付かずの状態にある。槇氏は、こうした状況においてAIが重要な役割を果たす可能性を指摘する。AIは膨大なデータを解析し、人間では発見できない新しい素材の用途を見出す力を持つ。例えば、廃棄される卵パックが洋服の素材として再利用される可能性や、これまで用途が不明だったプラスチックに新たな価値を見いだすことが期待される。「同じものに生まれ変わる必要はありません。AがBに変わる、新しいサイクルをAIが共に考え、資源の可能性を広げてくれるのです」と槇氏は語る。トレーサビリティー技術を活用すれば、廃棄物が何に生まれ変わるかの道筋を明確にし、再生不可能とされていた廃棄物のうち約30%を循環に戻せる可能性があるという。槇氏はAIを「イノベーションの気づきを与えるパートナー」として位置づけており、現在循環されていない資源を見つけ出し、再利用の道を共に探ることで資源管理の新たなモデルを構築できる可能性を示唆している。
AIがもたらすイノベーションは、単なる技術的進化にとどまらず、サステナビリティーにおける根本的な変革をも導くかもしれない。この新たな視点が、資源循環の未来を切り開く鍵となるだろう。
生成AIの実践的なビジネス活用に興味がある方はもちろんテクノロジーの未来を気軽に学びたい方にもおすすめだ。通勤時間はもちろん年末年始の家事のお供に「ながら聞き」しながら、ナビゲーターの藤森慶太氏が掘り下げるAIビジネス最前線、技術最前線の話に耳を傾けるのも2025年以降のビジネス動向を考える上で有効だろう。