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レイ子爵、シャドウ伯爵、インサイのこと ー 穏やか貴族の休暇のすすめ。[登場人物③]

『穏やか貴族の休暇のすすめ。』登場人物の整理3回目は3人の中高年。
リゼルの本質をいち早く見抜き、知遇を与えた実力者たちです。

リゼルの高貴と才覚を購う大人たち

レイ

憲兵の統括を代々担う貴族。爵位は子爵。金髪に金色の瞳を持つ美形の中年男性で、ジル曰く「美中年の明るいほう」。"昔も今もパルテダの全女性の憧れ"と言われる爽やかな容姿で、キャラクターも嫌味がないため市井での人気も高い。一人称は「私」。

人にしろ物にしろ"見る目"がある人物で、治安維持を職務とするだけあり、事件や世情に敏い。また、「迷宮品コレクター」という側面を持ち、冒険者ギルドに納品依頼を出したり、オークションや伝手で気になる迷宮品を入手している。屋敷は迷宮品で溢れかえっており、客人に迷宮品を自慢するのを楽しむ(骨董収集好きのじいさんみたいなアレ)。ジルが迷宮の深層でボスと対峙している大きな絵画も所有しており、ジル本人に見せて大変嫌がられた。

リゼルとの縁もギルドに出した依頼がきっかけである。
リゼルは冒険者らしからぬ品ばかり宝箱から出すが、その第1号はレイ子爵(匿名)の依頼で迷宮に潜って出した一対のテディベアだった。通常ならそのままギルドに納品するところ、リゼルはジャッジの店に持ち込んで迷宮品としての鑑定を済ませてからラッピングを施して納品した。その粋な心遣いに感激し、「納品してくれた冒険者に直接礼を言いたい」と顔出しで面会したのだった。
折しもパルテダではリゼルの登場によって「貴族を騙る冒険者がいる」と噂されたり、貴族を装った小者がショボい犯罪を起こしたりと騒動になっていたが、現れた冒険者(リゼル)が件の人物であり、その高貴と所作や立ち振る舞いから偽ではなく本物の貴族であると看破した。ただしそれをリゼル本人はもとより一切他言していない。
リゼルもまたレイ子爵とは貴族らしい腹の読み合いを楽しんでいるところがある。

リゼルとジルのコンビを気に入り、マルケイドの領主であり友人のシャドウを間接的に紹介したり、イレヴンに関わる司法取引をしたりと何かと便宜を図っている。もちろん親切心だけではなく、レイ子爵にとってもメリットのある内容が多い。また、リゼルを敵に回すのは国益に反すると考えている。とはいえリゼルと親しく付き合いたいという思いは本心で、惜しみなく知遇を与え、建国祭のときはリゼルたちのパーティを王城へ同伴した。
ジルやイレヴンもそれなりにレイ子爵を信頼しており、リゼルが不可抗力で酔っ払ってしまったり、迷宮で"リゼルたん"になった際はレイ子爵の屋敷を避難所に選んでいる。

基本的に誰とでも接することができる社交派だが、騎士団の統括者たる某侯爵家の面々からは苦手意識を持たれている様子。
また、才色兼備の素晴らしい女性だったという夫人に先立たれて以来やもめを貫いているが、社交界に顔を出すたびに後妻を勧められるのには辟易している。一人息子のライナが敢えて騎士学校に就学中ゆえか跡を継ぐ気がないと周囲に思われている節もあり、余計に後妻話が多いようだ。


シャドウ

マルケイドの領主。黒髪に血のような赤い瞳の中年男性。見目の良い男性キャラの多い本作でも屈指の美しい容姿をしている。レイ子爵とは友人関係である。ジル曰く「美中年の暗いほう(正確には、目立つ顔したテンション低いの)」。独身。一人称は「私」。

爵位は伯爵だが、3代前がマルケイドで商いを成功させ、当時の領主に手腕と人柄を認められて養子となった家系であり、所謂"成り上がり"である。
マルケイドは商業ギルドを設置しない商業自治を基本とする都市であり、その経済活動の全てをシャドウが管理監督している。そのため常に多忙を極めており、四六時中書類と戦っている。食事も睡眠も碌に摂らず働くワーカホリックで、目の下に濃い影(くま)がある。

「ぼくのかんがえたさいきょうのびけい」と呼ばれるほど目立つ容姿をしていながら、領民には全くと言っていいほど顔を知られていない。シャドウの外見を知るのは側近や護衛のほかは、憲兵長、冒険者ギルド長(ギルド職員レイラの母)、そしてインサイのような重要な商人のみらしい。理由は明確で、自領の素の姿を把握するためお忍びで街に出ることを最優先していたためである。
気難しい性格だが、領主そして商業国マルケイドの経済活動のトップとして身を粉にすることを厭わない真面目で高潔な人物。貴族としての意識は薄く、あくまでマルケイドのために生きている。そのためか立ち振る舞いなどはリゼル目線では少々雑で洗練されていないが、おそらく最低限周りに文句を言われない程度に気を遣っているに過ぎない。

リゼルと遭遇したのも、お忍びで街を視察していたときだった。領主(?)に喧嘩を売ってるやつがいるとの騒ぎを聞きつけ様子を見に行った結果、リゼルに本物の領主と見抜かれ、路地で話しかけられた格好。
リゼルはこのとき「あなたに間違われて斬りかかられたのだから、お詫びに夕飯を奢ってほしい」と図々しい要求をして会食に漕ぎ着けている。これはジルのときと同様、何かしら興味関心を引かないと関わってもらえない相手だとリゼルが判断したためでもある。実際シャドウは、自分と間違われた者が妙に高貴でしたたかな冒険者で、しかも噂の一刀らしき男を連れている意外性に職業病的に釣られている。そしてリゼルからレイ子爵の親展書簡を渡され、その書面を見て驚愕した。翌日リゼルに斥候をつけたが、自分と接触した目的がわからず翻弄されてしまう。

それからしばらく後、魔物大侵攻が発生してマルケイドが甚大な被害を被るところ、とある狙いがあって助力に駆けつけたリゼルたちによって壊滅を免れた。シャドウは心中でレイに感謝することになる。
なお大侵攻でリゼルと組んだのは何か吹っ切れるきっかけとなったらしい。「領主として指揮を執ってはどうか」とのリゼルの提案を呑み、城壁に立って憲兵と冒険者に姿を見せたり、リゼルたちがアスタルニアに向かう際には魔鳥騎士団の演習を観るついでにパルテダまでやってくるなど、多少変化がある模様。
(しかもインサイから託された餞別を持ってきていた)


インサイ

パルテダの道具屋店主ジャッジの祖父で、名うての貿易商。ジャッジに劣らぬ高身長だが、精悍な顔立ちで性格は豪放磊落と、まるで似ていない。ジャッジの父と言われても違和感がない若々しさがある。一人称は「儂」。

パルテダールの商業都市マルケイドに商会の拠点を持ち、国内はもとより周辺国の物流にも影響を与える人物として広く知られる。大物商人らしく時流を読むことに長け、商機を逃さない。人を見る目や商材の提案力も確かである。ジルに迷宮品の大剣を売ったのもインサイで、会うたびに「剣の手入れは怠ってねえだろうな?」と軽口混じりに釘を刺している。"空間魔法"の取り扱いもおそらくインサイが行なっている。

若い頃は相手を屈服させるような強引な取引をする商人だったようだが、孫のジャッジが生まれてだいぶ変わったようで、特に彼に対しては完全な爺馬鹿を発揮している。とはいえ商人として英才教育も施してきたようで、ジャッジと暮らすためにパルテダに道具屋を開き、パルテダの冒険者ギルドに孫連れで出入りをしていた。ジャッジにパルテダの店を任せたのはここ2年以内のことらしい。
(ジルが最後に道具屋を訪れたのが2年前で、そのときはまだインサイが店主で、ジャッジは手伝いだった)

ジャッジがマルケイドにやってくるなり護衛を依頼した冒険者のことばかり話すため、会う前はリゼルを警戒していた模様。しかし出立の日にやってきたリゼル本人を見て、孫を託せる人物と判断している。
このときインサイは、地底竜の鱗の市場流通や、古文書に挟まっていたマルケイドの地下通路図の返還といった一筋縄ではいかない頼みを持ち出したリゼルを相手に「久々に血湧き肉躍る商談に向かうようだ」と、高揚した気分を認めている。
さらに、インサイがシャドウを支える立場にいることを見抜いた理由をリゼルに尋ねたところ、「歴史書『マルケイドの興り』にこちらの商会もシャドウ伯爵の3代前とともに街の発展に一役買ったと書いてある。ジャッジ君を義理堅く育てた貴方が当代に力を貸していないとは思えない」との洞察力鋭い回答を得て、リゼルの人柄と才覚を高く買ったのだった。

その後、魔物大侵攻やアスタルニア視察といった折々にリゼルたちと再会しては、ジャッジが慕う面々への配慮も含むだろうが、好々爺らしく世話を焼いている。リゼルたちは、ジャッジがインサイに似たところがあるとすれば、土壇場での力押しと世話焼きなところだと思っている。


個性はそれぞれ強烈だけど、とっても安心して見ていられるオアシスみたいな大人たちです。特にレイ子爵は会ってみたいキャラですねえ。

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