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ハナちゃん ハワイへ行く  #4

⛵️Sailing 4: 日本はやっぱり安全な国


これから海外へ行くのなら✈️

私は「とどめの一撃男」と出会った後は、もう結婚をすっかりあきらめていたが、ハワイに来てから少し心境が変化した。
結婚してもしなくてもいいから、人生のパートナーができないかな、と淡い期待を抱くようになっていた。

日本でとてもお世話になった人生の先輩が、自宅で孤独死されていたことも大きかったと思う。彼女が発見されたのは数日後だった。

私はできることなら、人生を共に笑ったり泣いたりできる誰かと一緒にいたいと思ったのだ。

ただハワイで、特に男性と会う時は、絶対に誰かの知り合いと決めていた。
それにはこんな理由がある。


ハワイはアメリカ!🇺🇸

長年アメリカに住んでいる恩師や、現地で仲良くなった人達に、同じようなことを何度も言われた。最初は「みんな心配性だな!」と思っていたのだが、今では言ってもらえたことに感謝している。

心得 其の一:
日本人は平和に慣れきっていて、危機意識がなさすぎる。
日本人はハワイが天国みたいに思っているけれど、大きな間違いだ。
ハワイはアメリカだということを忘れてはいけない。銃だって持っている。

日本人は自分ではお金持ちではないと思っていても、他国の人から見れば十分にお金持ちである。汚い格好をして出歩いても、日本人だとすぐに分かる。
襲われたくなければ、夜暗くなってからは絶対に一人で出歩かないこと。

心得 其の二:
日本人女性は警戒心がうすい。というか、ほぼないように見える。
知らない男性に声をかけられてもついて行かないこと。
日本人女性というだけでお金目当てに結婚したがる人もいる。
絶対にだまされないこと。


ホームレスの人々

ハワイは実際に住んでみると、貧富の差が信じられないくらいにある。
たとえば数年前に開発されたカカアコは、元々は大勢のホームレスの人々が生活をしていた場所だ。車で通りかかったことがあるが、見渡す限りのテントに驚いた。地域開発にあたり撤去された。

ウォールアートが有名になり、インスタ映えすると観光名所になっているが、以前は危険な地域だったということはあまり知られていない。

ハワイの友人には、観光地以外の公園の公共トイレには行くなと言われた。
麻薬や覚醒剤を打っている人に出くわすことがあるからだ。

実際、カカアコの公共トイレで、日本人観光客がそういった場面に遭遇してしまい、暴行され大けがをした事件が数年前にあったが、日本ではほとんど報道されていなかったと思う。

私はボランティアで、ホームレスの人々に無料で食事を提供する施設に何度か行ったことがある。昼間は午後1時にオープンするのだが、12時頃には外に行列ができ、ドアを開けたら50席あるイスはすぐに満席になった。

若い人もいればお年寄りもいた。車イスに乗った母親の面倒をみる娘さんもいた。親子でホームレスなのだ。女性が2割くらいいたことに驚いた。

その日のメニューはフライドライス(ベーコンたっぷりの焼き飯)に美味しそうなサラダ、ケーキやみかん缶など。
「まるで12ドルのランチみたい。おいしそう!」
と私が驚いて言うと、厨房のおじさんが
「そのとおりだ!」
と言って笑った。
私は配膳したり、お皿にサラダを盛りつけたりしたのだが、たくさんの人々が来て大忙しだった。

ひととおり落ちついた頃、一緒に盛りつけを担当したおじさんに色々と質問してみた。
すると、なんと毎月平均1万5千人が施設に来ると言う。
ざっと計算すると1回250人。そりゃ、毎日忙しいわ。

アメリカ本土からも飛行機に乗ってホームレスがやって来るらしい。気候は最高だし、海辺にはシャワーだってあるし、ここに来ればおいしいごはんが無料で食べられる。確かに過ごしやすそうだ。

母に電話でこの話をしたら、
「ハワイにホームレスがいるの?」
と驚いていた。そうだよね、私も最初はビックリしたよ。

近所の公園の大きなバニヤンツリーの木の下には、ドレッドヘアのホームレスのおじいさんが、いつもイスに座って静かに本を読んでいた。
ホームレスと一言で言っても、色々な人がいる。
あのおじいさんは、今はどうしているのだろうか。


語学学校のアイちゃんの話

アイちゃんは日本で大学院を卒業後、日本語学校の先生になりたくてハワイに留学したそうだ。真面目でいい子だったが、とても驚いたことがあった。

ある日、アイちゃんと私、タイから留学に来ていたメイちゃんの3人で話していた時のこと。アイちゃんがこんなことを言い出した。

「週末にコーヒーショップで勉強していたら、知らない男の子に『日本語を勉強したいから話相手になってほしい』と声をかけられた」
これはハワイでよくあるナンパの方法である。

アイちゃんは迷ったが、断るのも相手に悪いし、英語の勉強になると思って、しばらく一緒に話すことにした。
すると次はドライブに誘われたので、行くことにした。彼は2時間もドライブしてとても疲れたから、家の前まで送ってもらった。

私とメイちゃんはビックリした。特にメイちゃんの驚きようはすごかった。
目を見開いて、信じられないといった様子だ。
でも肝心のアイちゃんは、私達が驚いている理由を理解していなかったので、私は説明した。

「知らない男の子の話し相手にどうしてなるの?その男の子の車にどうして乗るの?誰もいない場所まで連れて行かれたらアウトだよ。おまけに家の前まで送ってもらうなんて、家がバレちゃったよ。ストーカーされたらどうするの?」

メイちゃんはウンウンと大きくうなずきながら、私の隣で聞いている。
アイちゃんはやっと事の重大さに気づいたらしく、
「あ、そっか!そんなことまで考えていなかった」
と言うではないか。私は彼女が心配になった。

その夜、考えた。
アイちゃんは尻軽女ではない。おバカな女の子でもない。
とても真面目。真面目すぎるほどだ。
そんな彼女が、どうして知らない男の子について行ってしまったのだろうか。
私は、彼女が典型的な日本人の女の子だと気づいたのである。

平和な環境で育ってきた私達は、自分の身の安全を守ることに無頓着で、警戒心がうすい。

さらに日本独特の、先まわりしてその場の空気を読み、相手を気づかうことが美徳とされる社会で育ってきた私達は、「断ったら相手に悪い」と思い、ズルズルと付き合ってしまうのだ。相手の男の子は、自分に気があるのではないかとカン違いしてしまうのである。

実際、ある語学学校で、二人の日本人の女の子がストーカー化した男の子につきまとわれたケースを知っている。一人は最終的に暴力をふるわれて警察沙汰にまでなった。

断る時は、はっきりと「No!」と意思表示しないとダメなのだが、それができない。日本人独特のあいまいな態度は、相手に通じない。

随分と前に日本で流行した「KY(空気が読めない)」や「忖度」という言葉は、日本社会をよく表していると思う。

余談だが、海外に長年住んでいる知人は、日本人を「相手を気にしすぎるキチガイ病だ」と言っていた。その場の空気を読み過ぎたり、相手を気づかい過ぎたり。
だからとても心が疲れる。そんな日本は彼女には住みづらいそうだ。
彼女の言葉は衝撃的で、今でもよく覚えている。


色の変わるマニキュア


お父さんがアメリカ人でお母さんが日本人の女の子と仲良くなった。名前はアリサちゃん。彼女は20代とは思えないほどしっかりしていた。

ハワイの治安について話していた時のこと。
彼女によると、夜にクラブに行くと、気づかない間にお酒に薬物を入れられることがあるらしい。レイプドラッグと言われる薬が存在することを、私はこの時に初めて知った。

「だからそのために、薬が入っていないかをチェックできるマニキュアが売ってるんですよ」

さりげなく指先をお酒につけてみて、薬物などの異物が入っていたら、マニキュアの色が変わるそうだ。
そんなことまでしないと、ハワイでは身の安全を守れないのかと驚いた。
(後日知ったが、日本でもレイプドラッグによる被害は増えているらしい)

その後、語学学校で同じクラスだった日本人の女子学生たちと話していた時のこと。
昨夜三人で初めてクラブに行き、男性三人組に声をかけられたと嬉しそうに教えてくれた。一人の白人は軍人で、ドッグタグ(※)を見せてくれたらしい。白いシャツが似合っていて、とてもかっこよかったとキャーキャー騒いでいた。

写真を撮ったから見せてあげると言われて見たが、ちっともかっこよくなかった。私の隣で一緒に話を聞いていたハワイ通のヨウコさんが、冷めた声でズバリと言った。

「ドッグタグはいくらでも偽造できるんだよ。日本人の女の子はそういうの見せられると弱いから、ナンパする時に見せてくるの。よくある話。白シャツを着てるのも、うさんくさいよね。気をつけた方がいいよ。絶対にウソだよ」

すると一人の子が、実はナンパされてしばらくした後、彼らの部屋に移動してSEXしようと直球で誘われてとても驚いたと言い出した。さすがにそれは断ろうとしたのに、もう一人の女の子が「面白そうだから行こう!」とノリノリで言い出して、止めるのに必死だったそうだ。

私はアリサちゃんから聞いた話を教えてあげた。
ハワイに来て気分が浮かれていたのかどうかは私には分からないが、兎にも角にも、女子学生三人が無事で何よりだと思った。
薬物をお酒に入れられなくてよかったね。
いやホントにさ。

注釈(※):軍人が身につけているIDタグ(認識票)のこと

女子学生が行方不明

ハワイ通のヨウコさんの彼氏が教えてくれた話だ。
ハワイでは日本と同じく、コーヒーショップで仕事をしたり勉強をしたりして、長時間滞在する人が結構いる。日本人留学生もよく見かけた。

数年前、あるコーヒーショップで勉強していた日本人の女子学生が、夜10時頃にお店を出た後、行方不明になったそうだ。それ以降、見つかったとの報道はないらしい。

「あの事件はどうなったのか、今でも時々思い出すんだ。ハナも気をつけて。夜道は絶対に一人で歩いたらダメだよ」

もう何度も色々な人から言われたセリフだったが、私は改めて心に刻んだ。


Better safe than sorry

アメリカには『Better safe than sorry』というポリシーがあることを、お世話になったハワイ大学のI先生夫妻から教えてもらった。

「何かが起こってしまってからでは遅い。起こらないように自己防衛する」という考え方だそうだ。

私がちょうど大学院に通っていた頃、レイプ事件があった。レポートを夜9時過ぎに提出に来た女子生徒が襲われたのだ。その日は提出期限日で、教授の部屋のポストに入れに来たところを狙われたらしい。このような事件はたびたび起こるそうだ。

大学の図書館は、試験前は夜中まで開いていたが(貧しくて家で勉強できない学生がいる為)、トイレが地下にあるので、あとをつけられて襲われる。
トイレの入口に監視カメラを設置するよう提案しても、プライバシーの問題でできないらしい。

「だからハナさんも、夜は絶対に出歩いたらダメだよ!」
と言われた。何度も色々な人から言われるので、私は試しに、
「でも一人で行かずに二人だったらいいのでは?」
と質問してみた。すると、すかさずこう言われた。

「相手が二人だったらどうするの?三人だったらどうするの?アジア女性は細くて小さいから、すぐに襲われちゃうよ」

あーあ。なんてバカな質問をしてしまったのだろう。
なんてことはない。やっぱり私も危機意識が低かったのだ。

私は昼間にその図書館に何度か行ったことがあったが、トイレに行くのは昼間でもちょっと怖かったのを思い出した。
地下にあるので人の気配がなく、薄暗い。長くて細い廊下の先にやっとトイレがある。私はこの話を聞いてからは、もうひとつある別の図書館に行くようになった。

なんだか怖い話ばかりたくさん書いてしまったが、これは2年間で私が見聞きした話のほんの一部である。

日本は特別な国

日本はなんて安全な国なんだろうと思った。日本に生まれてきたことに感謝した。

子どもだけで通学できる。小学生が一人で電車に乗って通学していても誰も何とも思わない。
夜でも女性が一人で外出できる。昨今は、深夜はやっぱり怖いけれど。
街中のどこかに必ず交番がある。
清潔な公共トイレもある。しかも無料。
至る所にコンビニがあり、24時間営業している。
レストランの席とりに荷物を置いていっても平気。盗まれない。
落とし物はほぼ返ってくる。たとえ財布や携帯電話であっても。
薬中のホームレスが裸同然の格好で街中を歩いたり、公共バスに無賃乗車していない。
治安に関して、ざっと思い返しただけでもこれくらいのことは容易に思いつく。
まだまだ他にもあるだろう。

それまで当たり前だと思っていたことが、日本の外から見ればこんなに恵まれていたなんて、思いもよらなかった。
これからもどうかずっと変わらないでいてほしい。


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