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ハナちゃん ハワイへ行く  #0  

⛵️Sailing 0: はじまりの話



人生とは
果てしない大海原をゆく
航海のようなものだ

Life is like a voyage
across the endless ocean.


2040年のマリリンへ📖

2020年は世界中の人々にとって忘れられない年になった。
コロナ禍で世の中は大きく様変わりし、
それまでは当たり前だったことが、
当たり前ではなくなった。
政府から緊急事態宣言が出され、外出自粛で自由に出歩くことすらできなかった。

食料を買いにスーパーへ行く時には必ずマスクを着用しなければならなかったし、していなければ周りからの視線が気になった。
マスクをすると目とまゆ毛しか見えないので、
相手の顔の輪郭もよくわからず、
笑顔すらぼんやりとしていたものだ。

家族以外の素顔を見ることはほとんどなかった。家に帰ってマスクをはずすとホッとした。
世の中全体がどんよりと重苦しい空気に包まれていて、マスクがそれを余計に息苦しくさせた。

2019年は「来年は東京オリンピックが開催される!」と、希望に満ちあふれてワクワクしていたから、その落差が激しかったのかもしれない。

ニュースは毎日コロナのことばかり。
先が見通せない、未来が見えない中で、
みんな不安に包まれていた。


彼女の名前はマリリン🌺

そんな中、私は夏に出産した。女の子だ。
愛称はマリリン。
友人たちからは「コロナ禍の希望の光」と言われた。

私は39歳でハワイ大学大学院に留学し、
41歳でアメリカ人の夫と国際結婚した。
その後不妊治療をはじめ、4回の子宮筋腫摘出手術と1回の死産を経験した。
マリリンを妊娠した時には44歳になっていた。
そして45歳で出産。

妊娠が分かったのは2020年1月だったから、
ちょうどコロナが流行しはじめた頃だ。
春になり、おなかの中にいる赤ちゃんが女の子だと分かった時、
「そうだ、生まれてくるこの子のために本を書いてみよう!」
と思いついた。

私の20代、30代は心の葛藤の時代だった。
結婚に対する日本の昔からの固定観念には、どうやってもなじめなかった。
世間が盛り上げる“婚活”といわれるシロモノにも、やっぱりついていけず、
心の中がいつも混沌としていて、スッキリしなかった。

不妊治療をしていた頃、クリニックの近所にあったカフェでこんな悩み相談を耳にした。

「親や親戚が結婚しろってうるさくて、本当にストレス。実家に帰るたびに彼氏はいるのか、結婚はまだかって言われて、帰るのが嫌になる」
その二人組の女性たちは20代に見えたので、私はとても驚いた。

時代は「令和」を迎えた。
でも私よりひとまわり以上も年下の彼女たちが経験していることは、
結局のところ昭和生まれの私と何も変わってはいない。

カフェでの彼女たちの光景を思い出した時、ふと思った。
マリリンが成人する頃も、世間の価値観は
今とさほど変わっていないんじゃないかって。
20年という歳月は長いようでも、過ぎてみればあっという間だもの。

あれ?でも、ちょっとまてよ・・・。
マリリンが20歳になったら、私は65歳。
彼女がもしも私と同じように41歳で結婚したら、私は86歳になる。
45歳で出産したら、私は90歳だ!
え〜・・・。

彼女が将来、人生に悩んだ時に、私はそばにいてあげられるのかな?

不妊治療をしていた時は、ゴールは妊娠だった。
そのことばかりを考え、いざ本当に妊娠した後のことを、のんびり屋の私はたいして考えてこなかったのだ。
なんてこった!

自分がこれまで両親にどれだけ助けてもらってきたのかを思い出したら、なんだか涙があふれてきた。

未来の彼女のために、今、私にできることは何だろう?

悩んだこと。失敗したこと。たくさん経験したから、今の私がある。
もしも将来、彼女が私と同じように結婚や仕事、人生について悩んだら、どうぞこの本が彼女の心の支えになりますように。

※このエッセイに登場する人物の名前やイニシャルは、ほぼ全て仮名です。



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