1日目 コロナは突然やってくる
とある土曜日の朝、実家の父から電話がかかってきた。同居している長男(60歳)がずっと咳をしていて眠れていないらしい。
父「もしかしてコロナなんじゃないか?ボーッとしてる。病院に行くように言ってよ!」
私「熱は?」
父「わからない。直接、話してみてよ。」
とりあえず熱を計らせるように伝え、家の電話を切り、兄の携帯にかけ直す。
私「咳、止まらないの?熱は?」
兄「いま計ったら38.4度ある」
私「今すぐ病院に行って。かかりつけの大きなD病院へ行って発熱外来を受けて!」
数分後、父から電話があり、タクシーを呼んで乗って行かせたとのこと。
これはマズイ。症状からして間違いなくコロナだろう。既に私の周りでも、感染したり、濃厚接触者になったりしている話をいくつか聞いている。陽性と判ってからの対応の仕方もある程度、知っている。
取り急ぎ、兄が感染していたとして自宅療養になること考え、同居の父も隔離しながら自宅で過ごせるように必要なものを開店時間の裏のドラッグストアへ買い出しに行った。消毒液、ぞうきん、非常食、スポーツドリンク、栄養ドリンク、ゼリー、米など…あとで実家の玄関先に届けるか、宅配便で送ればいいかと(これが後々、面倒なことになるんだけどね)
その後、小一時間ほど経ったところでピンポーンと我が家のドアホンがなる。カメラに映る兄。顔面蒼白。おいおいおいおい…何故ここに?まずはマスクを二枚重ねにして距離感を取って対応。私まで濃厚接触者になっては大変だからね。
かかりつけのD病院では土日は検査できないので月曜日にならないと…と言われて、あきらめて、そのまま近くの私の家にタクシーで来たという。マジか?
「他の手段は教えてくれなかったの?」と聞いたところで、もう完全に思考が止まっている。息は荒く、フーフー言っている。やばい、これはここに置いておくわけにはいかない。熱もある。寝込まれても困る。
ネットで発熱外来をやっているところを探し、すがる思いで電話をかける。実家のそばの個人病院。ここだ!ここしかない!看護師さんは丁寧に対応してくださり、「1枠だけ空きがあるので11:45に来られますか?」と言ってくれた。そこから少しの間、買ってあったスポーツドリンクや栄養ドリンクを飲ませたり、気休めの冷えピタをおでこに貼ったりして、寝込まないように気を紛らわせる。財布に当座の現金20000円を追加しておく。「うーーー、うううう」と、苦しんでいるがタクシーに乗せる前にトイレに行かせてから玄関ロビーへ移動。歩くのもやっとだ。
タクシーの運転手さんに病院の名前と住所を書いた紙を託し、大荷物も足下に入れて一緒に送り出す。いま思えば同乗していくべきだったのかもしれないけれど、乗っていってたら濃厚接触者だから、ベストな判断だったと思おう。荷物は持たせない方が良かったような気がするけど。
その後、何の連絡もないまま不安がつのる。
午後3時。実家の父から電話がかかってきた。病院からそのまま、緊急搬送でD病院に送られたと。父が呼ばれて発熱外来の個人病院に駆け付けた時には兄はすでに救急車の中で、顔も見ることも出来ず、父が書類にサインをしてそのまま搬送されていったらしい。父はそのまま帰宅。
その日は何の情報もなく、実際にコロナに感染していたのかも確認できぬまま、ただただ、D病院に救急で入れて良かったな…と思いながら不安な一夜を過ごした。
2日目につづく