スキ時代*『スキ・エイジ』*数理落語家 自然対数乃亭吟遊さんの世界
#もしスキがお金だったら
いただいたみなさんの募集記事に、PONOがショートショートを書かせていただいてます。
今回は数理落語家 自然対数乃亭吟遊さんの世界↓
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「人々は不平等感に敏感です。歴史において、常に不平等が是正されるという形で社会は変化します。生活していけるだけのお金を手にするだけでは、不平等感は払拭されません。俺はもらって当然だけれど、あいつはもらうに値しない、と考えるからです。次なる改革は起こるでしょう」
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かくして、2081年。"スキ"がお金になる世界ができた。政府に認定を受けたSNS上ならどれでもいい。つぶやきでも日記でも小説でも写真でも動画でもなんでも、アップしたものに「スキ」されたら、その分がお金になるのだ。
僕はあるとき逃げ出すように離島に移り住んだ。
平等という不自由が生んだ世界が、窮屈だった。
僕はHSPという気質を持っている。
同じような気質の人たちや心が弱い人々も、こぞって「弱者」であることを主張していた。
それは弱さを武器にすることじゃないかと僕は思っていた。
補助金・年金・支援金・税制優遇といった恩恵に預かるために、自らがそのマイノリティーであると主張した"自称マイノリティー”も現れた。これらの者たちは陰で「悪魔に魂を売った」「本当に困っている人たちに迷惑だ」などといった批判を受けたものの、「被害者・弱者であることを疑うこと自体が抑圧だ」と反論し返しかねなかった。そうなると批判した側は勝ちようがない。「弱者」には「黙っていても主張しているとみなしてよい特権」までもが与えられていた。
僕は「黙っていても主張しているとみなしてよい特権」をひたすら使っていた。そんなとき『スキがお金の制度』ができた。
世の中が明るくなったように感じた。
”スキ”は奪い合いじゃなく、与え合うものだ。
”スキ”があふれるから、”スキ”ができる。
だれもが好きなものは違う。
だからこそじぶんが好きなものを、好きだと言えるじぶんが大好きだ。
そして仲間ができつつあるのがとてもうれしい。
誰かが僕の思っていることを代弁してくれるような気分になって”スキ”をすると、その人が喜んでくれて僕もうれしくなる。
そうすると僕にも”スキ”が増える。
いいエネルギーが循環して、僕が好きな人ばかりがまわりにいてくれるようになった。
そう。善悪はない。そうじゃなくて、「スキ」とそうじゃないのとがあるだけだ。
善悪は判定できない。人によって価値基準が違うからだ。絶対的な正義は存在しない。ただ、「スキ」かどうかは人それぞれにある。だからあとは人気投票だ。スキだけあってキライがないっていうところもいい。人はスキを集めるとお金をもらえてよりよく生きていける。だから必然的に人に好かれるようなことをするようになるのだ。気がつくとかつて「善」と呼ばれたようなことが溢れる社会となった。自然とそうなった。犯罪が激減した上に、魅力的な振る舞いをする人が増えた。
今日も僕が離島に来た理由をプロフィールに書いたら、たくさんの”スキ”が入っていた。ありがとうございます。
うれしいと、もちろん思うのだけど、”スキ”をくれた人もしあわせになってほしいと心から思う。
ここに来る前の僕が弱さを武器にしたくなったときの「弱さ」を思った。
僕と同じような人が少しでも前を向いて歩いてくれることが、いま僕のやるべきことじゃないかと思うのだ。
誰もがだれかと一緒にいてもひとりだけど、お互いを深く理解し合えるような、そんな絆を少しずつ増やしていきたい。
そんな誰かを想って祈りを捧げた。
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『スキ・エイジ』という作品……数理落語家 自然対数乃亭吟遊さんの世界観がわたしが最初に書いた話の原点のような気がして、ほんとうにうれしかったです。
”スキ”がお金になったら、「善」があふれる世界になるような想い。この記事、しあわせな気分で書かせていただきました。
数理落語家 自然対数乃亭吟遊さん。深みのある物語をありがとうございました。
この企画の原点はこちら↓
『スキ・エイジ』数理落語家 自然対数乃亭吟遊さん
▼参考にさせていただきました
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▼企画概要
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