食わず嫌い王決定戦＊ショートショート#１分マガジン

会席料理を前にしたお見合いの席。
男は女に勝負をかけていた。
「この中で一番苦手だなと思うものを当てっこしよう。食の好みは重要だ。お互いに苦手なものがあれば知っておくこともいいかもしれない。」

秋茄子胡麻味噌掛け。
柿と地鶏の胡麻和え。
甘鯛の昆布しめ。
さんまのうるか焼き。
松茸とフォアグラの蕪蒸し。
秋茸の天ぷら盛り合わせ。
車海老の赤味噌仕立て。
栗ご飯。
無花果ゼリー寄せ。

なごやかに楽しく会話しながらの食事。
女は終始、笑顔で目の前の皿を堪能し、日本酒を楽しそうに飲み、男は秋の味に舌鼓を打った。
男には旧家を守る義務があった。
今はどんな女もしきたりを否定する。
金の力に任せたとしても、昔のような儀式や家系の色々を嫌い結婚を避けられてきた。若い女をターゲットにすればするほど結婚が遠のいていく。

「君は僕の苦手なものわかった？」
「ええ。わかったわ。柿でしょう。なんだか食べにくそうだったわ。」
「当たった！よくわかったね。君は優しく気遣いのできる人だね。」
「じゃあ、君は？」

女は黙って男を指差した。

男は思った。

”せめて食ってから言ってくれ”

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小牧幸助さんの企画「１分マガジン」に参加させていただきました。
ありがとうございました！