【小説感想】タタール人の砂漠
「タタール人の砂漠」読み終えた!
■凄い!
ドラマチックで無く、
かといって悲惨な人生でもない。
しかし平凡な人生でもない。
感動ではない何かがごっそりとある。
■ひとりの人生をまるごと味わった感じだ。
これは俺だ!と嘆くことも出来るし。
つまらない奴だ、
と切り捨てることも出来る。
■それがなぜだか面白いのです!
何か起こりそうで何も起こらなくて、
退屈なはずなのにそうではない。
なんとなく「ヨコハマ買い出し紀行」に近いかも知れません。
■全てのシーンが情緒的に
絵画的に幻想的に描かれて、
あぁ、ここは人生として素晴らしい瞬間なのかな
と思わせる美しさ。
■しかし、主人公はやってくると期待している
ドラマチックな冒険活劇の運命をただただ待つことにより
青春を浪費していくのだった。
■いや、特段彼が何もせずにボーッとしていたわけじゃなく。
一生懸命勉強して軍部のエリートコースに入ったのだが。
しかし、だからこそゆえ。
人生の分岐点での判断を誤る。
今までの道を捨てて新しい進路に向かうことに躊躇する。
せっかくのこれまでの経験があるのだから、
今、選択を変えるのは違う気がする。
そう思ってしまうのだ。
そうしてそれは多くの人がそうしてしまう出来事だ。
■いや、しかしたまたま彼がその運命に巡り合わなかっただけで。
同じ判断をして成功する人もいるだろう。
なので何が正しくて何が間違っているのかはわからない。
■それが人生だ、と言ってしまえばそれまでなのだが。
それでも人生は面白いと思ってしまう話なのかもしれない。
期待通りには行かないが。
それでも、なんとか。
いや、それこそが。
要領よくうまく人生を乗りこなしてやろうなんて
おこがましい話なのだ。
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