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二次感染を防ぐための処理手順と環境消毒のポイント

介護施設では、利用者さんが体調を崩し、嘔吐や下痢といった症状が発生することがあります。その際に適切な処理を行わないと、ウイルスや細菌が広がり、ほかの利用者さんや職員に感染が拡大するリスクがあります。

特にノロウイルスやインフルエンザなどの感染症は、二次感染を防ぐための対応が非常に重要です。ウイルスの種類によっては、空気中に広がりやすかったり、触れた手を介して感染が広がったりするため、迅速で確実な処理と環境消毒が必要になります。

今回は、二次感染を防ぐための処理手順と環境消毒のポイントについて詳しくお話しします。正しい対応を身につけて、安全な環境を守りましょう。

なぜ二次感染が起こるのか?

嘔吐物や排泄物に含まれるウイルスや細菌は、適切に処理しないと他の人へ簡単に感染が広がることがあります。特に、以下のような感染経路に注意が必要です。

1. 手指を介した感染

  • 処理時に手袋をしていない、または手洗いが不十分だった場合、手を介してドアノブや手すりなどにウイルスが付着し、他の人に感染が広がる。

2. 飛沫・空気感染

  • 嘔吐した際にウイルスが飛散し、周囲の空気中に広がることがある。

  • 乾燥した嘔吐物の処理時に粉じん化し、それを吸い込むことで感染することも。

3. 物を介した接触感染

  • ベッドや車椅子、テーブルなどにウイルスが付着し、他の利用者さんや職員が触れることで感染が広がる。

  • 衣服やリネン類が汚染され、そのまま放置すると感染源となる。

4. トイレを介した感染

  • 下痢の便には大量のウイルスが含まれているため、トイレの使用後に適切な消毒をしないと感染が広がる。

  • 水を流す際にウイルスが飛び散る可能性があるため、フタを閉めて流すことが重要。

このように、感染経路はさまざまですが、正しい処理手順を守れば二次感染のリスクを大幅に減らすことができます。

嘔吐物・排泄物の処理手順

嘔吐物や下痢の処理を行う際は、「いかにウイルスを拡散させずに処理するか」が重要になります。

1. 事前準備(防護具を着用)
まず、適切な防護具を着用し、感染防止対策を徹底します。

  • 使い捨て手袋(2枚重ねが理想)

  • マスク(可能ならN95マスクが望ましい)

  • エプロンや防護ガウン(使い捨てが理想)

  • 靴カバー(嘔吐物の上を歩かないように)

2. 嘔吐物・排泄物の処理

  • 使い捨てのペーパータオルや新聞紙で、嘔吐物や排泄物をそっと覆う(飛び散りを防ぐ)。

  • 処理用のビニール袋を準備し、ペーパータオルや汚れた物を入れる。

  • 消毒剤(次亜塩素酸ナトリウム)を汚染箇所にかけ、10分ほど放置(ウイルスをしっかり不活化させる)。

  • 汚染部分を慎重に拭き取り、新しいペーパータオルで乾拭きする。

3. 汚染物の廃棄

  • 使い捨て手袋、マスク、エプロンなどはすべてビニール袋に入れて密閉する。

  • 汚れた衣類やシーツは、ウイルスが広がらないようビニール袋に入れてすぐ洗濯する。

4. 手洗い・うがいを徹底する

  • 手袋を外した後、必ず石けんで30秒以上手洗いを行う。

  • アルコール消毒も併用し、手指の消毒を徹底する。

環境消毒のポイント

処理後は、感染が広がらないように施設全体の環境消毒を行います。

1. 使用する消毒剤

  • ノロウイルス・ロタウイルスなどに効果的な「次亜塩素酸ナトリウム(家庭用漂白剤)」を使用(0.1~0.5%濃度に調整)

  • アルコールはノロウイルスには効果が低いため、次亜塩素酸を優先する。

2. 消毒すべき場所

  • ドアノブ、手すり、ベッド柵、スイッチ類(手が触れやすい場所)

  • トイレの便座・レバー(ウイルスが特に多く存在する場所)

  • 食堂やリビングのテーブル・椅子

3. 換気の徹底

  • 嘔吐物や排泄物の処理後は、しばらく窓を開けて換気し、空気中のウイルスを減らす。

  • 扇風機や換気扇を使って、空気の流れを作るのも効果的。

4. 共有物の管理

  • タオル、コップ、食器は共用しない。

  • 消毒が不十分な物は、一度使用を中止する。

60歳から介護職を選ばれた方々へ

60歳から介護職を始められた方にとって、感染症対策や嘔吐物・排泄物の処理は最初は戸惑うかもしれません。

しかし、正しい手順を理解していれば、焦らずに対応することができます。

  • 自分を守るために、防護具の着用を徹底する

  • 感染を広げないために、環境消毒を徹底する

  • 手洗い・うがいをこまめに行い、自分自身も感染しないようにする

最初は大変に感じるかもしれませんが、一つ一つの対応が、施設全体の安全を守ることにつながります。

まとめ

  • 嘔吐物や排泄物の処理は、適切な防護具をつけて行う

  • 感染拡大を防ぐために、次亜塩素酸ナトリウムでしっかり消毒

  • ドアノブやトイレなどの共有部分も徹底的に拭き取る

  • 手洗い・うがいを徹底し、自分自身の感染を防ぐ

適切な処理と消毒を行い、施設全体を安心できる環境にしていきましょう!

新型コロナウイルス感染症への追加対策

新型コロナウイルス感染症については、通常の感染症対策に加えて、以下の対策が重要です。
換気の重要性

  • 共有スペースは十分な換気を確保

  • キッチンやバスルームなどの共有空間の換気を徹底

  • 可能な限り2方向の窓やドアを開けての換気を実施

接触制限と距離の確保

  • 感染者との接触は必要最小限に

  • 可能な限り1メートル以上の距離を保つ

  • 介護が必要な場合も接触時間を最小限に

マスクと防護具の適切な使用

  • 介護者は感染者と同じ部屋にいる際は必ずマスクを着用

  • マスクが湿ったり汚れたりした場合は直ちに交換

  • 使用済みのマスクは密閉して廃棄

清掃・消毒の強化

  • よく触れる場所は1日2回以上の清掃・消毒

  • 一般的な家庭用洗剤で清掃後、0.1%次亜塩素酸ナトリウム溶液で消毒

  • 汚染された寝具や衣類は60-90℃の温水で洗濯し、完全に乾燥

これらの対策を通常の感染症対策と組み合わせることで、より効果的な感染予防が可能となります。


介護職員が手袋をつけて、トイレの便座とレバーを消毒している様子

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