【第9節 柏戦】前半に先制出来なかった理由
りょー(@YFMsupo)です。
オナイウのゴールで何とか追いついた柏戦。一部メディアでは、先制点の発端となるミスを犯した松原が批判の矢面に立たされました。
ただ、松原のミスが起きたのは67分。先制点を「奪われた」ミスよりも目を向けるべきは、先制点を「奪えなかった」ことではないでしょうか。
特に、内容で圧倒しながらも先制出来なかった前半の戦いに焦点を当て、詳しく振り返ります。
松原健は悪くない
👆動画クリックで失点シーンを再生できます。
確かに、松原のミスは失点に直結しました。ただ、この日彼が見せたパフォーマンスを考えれば責めるに値しないミスであることは明らかです。
👆動画クリックで35分のシーンを再生できます。(投稿者はaztecdragon12さんです。この動画を含め6つの動画を引用させて頂きました。)
35分には、チームを救うブロックを見せました。瀬川のクロスを中のオルンガが触れば間違いなくゴールインで、「1点もの」のプレーでした。
その素晴らしいパフォーマンスは、データにも表れています。パス、ロングボール成功率は驚異の100%。デュエルは4回全てに勝利しました。
攻めては円滑なビルドアップでチームを後方から支え、守っては鋭い出足と粘り強い対応で決定機を作らせず。チームが敵陣でプレーを続けられたのは、まさに彼がいたからこそでしょう。
また、データサイトSofaScoreでは、出場した直近5試合のうちCBとして名を連ねた仙台戦と柏戦の採点が非常に高くなっています。
SBとして出場した試合と比較すると、プレー内容が大きく異なります。CBとしての振る舞いを見せ、この2試合で「マリノスのCB」に必要な資質を存分に発揮したと言えるでしょう。
そんな彼の「空振り」。ただ、難しい試合になったのはこのミスによる失点が理由ではありません。冒頭でも触れましたが、失点は67分。逆にその時間まで先制出来なかった。先制点を「奪われた」ことより「奪えなかった」ことが理由です。
では、なぜ特に前半のうちに先制点が「奪えなかった」のか。これを考えるうえでは、前半の両チームの戦略を整理する必要があるでしょう。
前半の均衡状態と一方的な展開
マリノスの守備は、相手の攻撃機会を減らすことが原則。ポゼッションで敵陣に押し込み、奪われた後もハイプレスで即時奪回を目指します。
対する柏の守備はリトリート。ほぼ全員が自陣に引きスペースを消しながら、攻撃は「オルンガ頼み」のロングカウンターでゴールを狙います。
試合の構図は非常に明確であり、展開が動かない均衡状態に。すると、試合展開を左右するのは、トランジションにおける勝敗と精度になります。
結果的に、前半は一方的な展開になりました。マリノスの切り替えが非常に速く、柏の狙うロングカウンターを高い確率で寸断出来たからです。
前半は(中略)相手の攻撃を許さない守備ができていたと思うが、引っかけてからカウンターに出ていくタイミングで縦に急ぎすぎて、ボールを入れるがすぐにボールを失うという流れが続いた。(柏・ネルシーニョ監督)
(出典:柏レイソル公式サイト)
ネルシーニョ監督も、前半は有効な攻撃が出来なかったと感じていたようです。しかし、分厚いマリノスの攻撃を封じたこともまた事実でしょう。
では、試合を支配しながら攻撃が封じられ、前半のうちに先制できなかったのはなぜでしょうか。
前半に先制出来なかった理由
👆クリックで22分のシーンを再生できます。
22分、天野のシュートから決定機。ペナルティエリア付近でボールを回しながら相手守備のギャップを突きました。しかし、多くのパスを回しながら決定機に繋げたのはこの場面のみ。
前半のマリノスは、撤退する柏にとって非常に守りやすい攻撃を繰り返していました。
つまり、前半に先制出来なかった理由は「撤退守備の難点」を突けなかったことだと考えます。
①ショートカウンターの精度
②ミドルシュートの回数とタイミング
③セットプレーの精度とセット回数
そして、具体的に足りなかったのは上記の3つ。実際のプレーを用いて詳しくみていきます。
①ショートカウンターの精度
前半、柏は16回のクリアを記録。早めに柏が蹴り出してしまうことで、マリノスはボールを奪う位置が低くなり、得意とするショートカウンター攻撃を繰り出す機会が減ってしまいました。
それでも25分と36分の2度、ショートカウンターから好機を迎えています。どちらも前線の守備が連動し、喜田がボールを奪いました。
・25分のシーン
👆クリックで25分のシーンを再生できます。
喜田のボール奪取から素早く攻め切った場面。左右に揺さぶった非常に良い攻撃でした。僅かに合わずオフサイドを取られたのが悔やまれます。
・36分のシーン
👆動画クリックで36分のシーンを再生できます。
エリキのクロスが水沼に合えば1点のシーン。喜田のボール奪取からショートカウンターを発動したことで、柏の最終ライン裏にはスペースがありました。得点の気配がする有効な攻撃でした。
この2つのシーンのように、高い位置でボールを奪い相手の守備が整わないうちに攻めきる。その「回数」と「精度」を高める必要がありました。
柏はマリノスにボールを奪われるより先に前線へ蹴り出してきため、「回数」を増やすことはあまり望めないでしょう。翻って、その「精度」があれば異なる試合展開になったことも確かでした。
「精度」の一例を挙げるなら、ドリブル精度です。前半目立ったのは、奪ったボールを左に構えるエリキが受ける場面。しかし、エリキはドリブルで対面の相手をうまく剥がせませんでした。
確かに、本職CFの彼に突破を求めるのは酷です。ただ、それが難しい分、36分のような連携で剥がす形は増やして欲しいところ。とはいえ、独力突破できるWGが必要なこともまた事実です。
②ミドルシュートの回数とタイミング
前半31分と44分の2度、ミドルシュートを放っています。いずれもマルコスのシュートでした。
・31分のシーン
👆クリックで31分のシーンを再生できます。
このシーンは、ボールを2度奪い返して天野のパスから最後はマルコスがミドルシュートを放ちました。枠には飛びましたが、難しい体勢だったので右サイドを使っても良かったかもしれません。
・44分のシーン
👆クリックで44分のシーンを再生できます。
エリキの持ち上がりからマルコスのミドルシュート。走りながらだったのでコースを狙うのは難しかったはずです。急ぎ過ぎず、空いている右サイドから丁寧に仕上げても良かったでしょう。
31分、44分の場面はいずれもボール奪取からの速攻。シュートで終わったこと自体、悪くはないです。ただ、相手の陣形が整っていないボール奪取直後ではなく、相手の陣形が整っている時にもっとミドルシュートを打つべきでした。
昨季ティーラトンが挙げたこの2ゴールは、どちらも前半の先制点。相手の人数は揃っていましたが、横方向に相手を引き伸ばしてから放ったシュートは見事にネットを揺らしました。
柏の守備陣形が整っている時はもっぱらコンビネーションからの崩しを狙っていましたが、ミドルシュートあるいは寄せられる前のシュートを増やすことが必要だったと思います。
(前略)もう少しゴール前とかシュートを打ってもいいのではないかと、前半戦ベンチから見て思っていました。(中略)そういうところをトライしようと考えていました。(オナイウ阿道)
(出典:横浜FM公式サイト)
実際、同点弾オナイウのシュートは、相手が寄せる前に放っています。この類のシュートが前半に決まっていれば違う試合になっていたでしょう。
③セットプレーの精度とセット回数
前半、柏のファウルが多く、高い位置でのFKは4回。天野とマルコスが2回ずつ蹴っています。
ところで、マルコスと天野が揃ってスタメンを飾るのは東京戦以来。柏は、その東京と同様、自陣への撤退が予想されました。崩しの場面で違いを出すことに加え、回数が増えるセットプレーのキッカーとしても両者に期待していたのでしょう。
以下では、2つのシーンを取り上げます。
・前半29分 マルコス→松原(ヘッド)
👆クリックで29分のシーンを再生できます。
ファーサイドの松原がヘッド。飛び出した相手GKが弾けずゴールはガラ空きでしたが、決め切れませんでした。GKがわずかに触れたか、視界に入りブラインドになったのかもしれません。
データサイトSofaScoreでは、この松原のシュートは決定機ミスとカウントされており、得点の可能性が高いシーンだったことが伺えます。
・前半33分 マルコス→松原(合わず)
👆クリックで33分のシーンを再生できます。
ニアサイドへ走り込んだ松原にはわずかに合わずも、マルコスのキック精度の高さが感じられる場面。松原の動き出しも見事で、狙うスペースが共有されていたのか、2人の感覚も合っていました。
尚更のこと、2つのシーンのうちいずれかは枠内にシュートを放ちたいところでしたね。
マリノスは、セットプレーからのゴールが非常に少ないです。昨季は、総得点68のうち、PKを除いたセットプレーからの得点はわずかに3つ。
一方、19-20シーズンの「本家」マンチェスター・シティはセットプレーからリーグ最多の17得点。総得点102のうち、6分の1はセットプレーから挙げています。そう考えると、マリノスもセットプレーから10得点は欲しいところです。
加えて、今季のマリノスは前半に獲得したコーナーキックの回数が57とリーグ最多。せっかくマルコス・天野と質の高いキッカーが2人もいるので、ショートコーナーに拘らずセットする回数を増やしてみても面白いと思います。
①ショートカウンターの精度
②ミドルシュートの回数とタイミング
③セットプレーの精度とセット回数
そして、この3つを高めると、引いてくる相手に先制し試合を優位に進められるでしょう。
ただこの試合、先制を許しながらも追いつくことが出来たのはポジティブな要素。自分達のスタイルを貫き、先制した試合に滅法強いネルシーニョ柏のゴールをこじ開けたことは自信になります。
おわりに
本記事では、前半の戦いにフォーカスし振り返ってみました。1つのミスに囚われることなく、試合内容を客観的な目で見れると良いと思います。
そして、明後日8/15(土)には第10節大分戦が行われます。早い時間の先制点に期待です。
加えて、11月初旬まで続く23連戦がいよいよ大分戦からスタートします。まずは、選手が大きな怪我をすることなくこの過密日程を乗り切れることを願いましょう。それではまた。
参考データサイト
・SofaScore
・J.League Data Site
・Football LAB
・Footy Stats
・Whoscored
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