<陸自幹部の米陸軍留学体験記> その1
今日から、少しずつ米国(米軍)留学をしたときの経験について共有していきたいと思います。
陸曹自衛官も米国留学のチャンスはありますが、幹部自衛官の方がもちろん留学プログラムはより複数用意されています。
幹部自衛官の場合、僕が参加したような陸自の幹部上級課程(AOC)にあたる米軍の上級幹部課程、グリーンベレーのような特殊部隊の課程、心理戦やサイバー戦等の専門課程、陸自のCGSにあたる米陸軍のCGCS等の課程への入校が可能です。
しかし、留学できる幹部自衛官はほんの一握り。陸自生涯で留学できる人は、同期でもたったの2〜3%といったところです。
かなり狭き門です。
米軍留学は、本当に最高!!!!なんです!!!
自衛隊とは全く環境が異なる環境で、1年近く、英語の勉強や米陸軍の文化、作戦、戦術等の専門的知識を学習できるんですね。しかも、国費で!!
食費、宿泊費、教育訓練費はすべて支給されます!ビールやジャーキー等の嗜好品は流石に支払われませんが・・・
指揮幕僚課程試験1発合格のために頑張ってよかった!!!って心底思えます。最高の”ご褒美”です!!!
あなたが初級幹部自衛官であれば、当面の目標として、指揮幕僚課程試験1発合格を目指すことをオススメします!
今後の陸上自衛隊での進路が大きく好転します!!
指揮幕僚課程前に留学できなくても、指揮幕僚課程を卒業後にも留学チャンスがあります。民間企業への出向、大学院研修等、普通の幹部自衛官が味わえない美味しいメリットが目白押しです!
実は、僕はCGSに合格したらこんな美味しい経験ができるなんて、全く知らなかったんです。本当にたまたま1発合格したらそのような制度があることを知って・・・『棚からぼたもち』状態でした😆
留学できる課程には様々ありますが、今回は僕が経験した指揮幕僚課程1発合格後に入学した米国陸軍の上級幹部課程への留学について紹介したいと思います。
留学参加のための3つの要件は?
留学参加のためには、
✅ 指揮幕僚課程に1発で合格すること
✅ 幹部上級課程(AOC)の成績がある程度良いこと
✅ 参加のための英語の試験に合格すること
が必要となります。
指揮幕僚課程に1発合格したならば、陸上自衛隊の『人財』への投資が始まります!(^o^)
指揮幕僚課程にできるだけ早く合格したかどうかで、組織からの『期待』、『投資』は大きく変わってくるんです。だから僕が何度も別の記事で強調する通り、指揮幕僚課程には1発合格すべきなのです。
そして、留学を狙っている人は僕が作成したプログラムへ参加することをオススメします!いや、留学のチャンスを高めたいのであれば、絶対に参加しておいたほうが良いです。それくらい価値のある内容が詰まっています!
普通に指揮幕僚課程への合格のための準備をしていては、合格できるかどうかわかりません。例え、幹部上級課程(AOC)で成績が上位であっても、この試験に合格できるかどうかはわからないのです。実際、AOCの成績がトップであっても指揮幕僚課程に合格できない人もいます。
AOCで良い成績を取るのと指揮幕僚課程合格では、求められている能力が異なるのです。
留学までの流れは?
1.留学候補者の選定
試験の3ヶ月前くらいに米軍留学の候補者へ連絡があります。CGS試験の合格発表があってから間もなくの時期です。留学時にある程度の語学力が必要とされますので、留学候補者は通常、正と副の2名。正要員が試験に合格できなければ、副要員にチャンスが回ってきます。
ただし、職種によって毎年米陸軍留学の枠がある職種と、2年に1枠しかない職種があります。普通科職種の場合は、毎年、米国陸軍の歩兵職種と米海兵隊への留学の2枠が付与されています。しかし、普通科職種は母数が多いため、留学の枠を勝ち取るのはかなり難しいでしょう。
残念ながら、その年に指揮幕僚課程に一発合格しても、2年に1枠しかない職種であれば、留学することはできません。こればかりはどうしようもありません。しかし、1発合格していれば指揮幕僚課程卒業後に、何かしらの美味しい研修等に参加させてもらえるでしょう。
2.語学試験のための準備期間
なんと!試験までの2週間、小平の語学学校(東京都小平市にある自衛隊の語学学校で英語、ロシア語、中国語、韓国語の教育を行う)でみっちり試験対策の勉強をさせてもらえます!!日々の多忙な業務から離れて!
僕は当時、教官として勤務していたため、学生の教育で多忙でした。戦術室の同僚達の支えのお陰で英語の勉強に集中させていただきました。
最高でしょ??😆
毎日えいご漬けの日々ですが、小平駐屯地に泊まり込みで勉強できるんです。そして、試験対策のための専用の教官も充てられて。結構、恵まれた待遇を受けていました。
当時の小平駐屯地の駐屯地司令がかなりヤバい人で「駐屯地から雑草を抹殺せよ!👎」と、訳のわからない指示を出していて、朝礼が終わった後、駐屯地中の学生、教官達が地面に這いつくばって毎日雑草むしりに勤しんでいました😅
でも、「君たちは試験に合格することが最優先だから教室の中でこっそり勉強しててください。」との教官に配慮いただき、留学組は何とか草むしりを免れることができました😆
この準備期間では、過去問題を含めて文法も1から勉強します。僕は、2等陸尉のときに小平学校の英語過程を受けましたが、それからほとんど英語なんて勉強していなかったのでとても苦労しましたね・・・受かるか受からないかのギリギリのところでした。
ですから、英語の勉強は習慣化しないといけないな〜と、このとき痛感しましたね。
そうそう。このとき、ちょうど米陸軍の特殊部隊に入校する陸曹がいて、気合を入れるために気付け薬を紹介してくれました!
『アンモニア』です。
ツーンときつい刺激が脳を奮い立たせるんだとか。
模擬試験問題を解答する前にみんなで気付け薬で脳を刺激して問題を解いていました。気休めですけどね😁
和気あいあいとしてて楽しかったな・・・😊
3.留学前の語学試験ってどんな試験?
それぞれの米軍の職種学校(歩兵とか砲兵とか)の入校時期に合わせて留学参加のための語学試験が行われます。
もちろん、英語の試験です。
その英語試験には、合格基準が設けられていて、その合格基準に達しなければ残念ながら留学参加はできません。
テキサス州に所在する米国防総省の語学学校(DLI:Defense Language Institute)で2ヶ月の語学研修を受けて、それぞれの本課程の教育を受けることになるのですが、その本課程毎に語学試験の合格基準が定められています。
在京米国大使館相互防衛援助事務所(MDAO)が行う文法・語彙試験とリスニングの試験で100点満点。
試験自体は、日常英語レベルでそれほど難しくありません。ただし、日本では普段使わない単語等も出てくるので、それなりの準備をしていなければ不合格になってしまう場合もあります。
例えば、『elk』。ヘラジカのことです。こんな鹿なんか、日本で目にすることも聞いたこともないでしょう。こういう問題で点数を落としていってしまい、英語の基礎がしっかりできていないと8割超えは難しいでしょう。
100点満点中、76点が合格基準の課程もあれば、82点が合格基準の課程もあります。日本でその語学試験で合格基準に達することができなければ、留学はできません。
ちなみに、僕が参加した本課程は、合格基準が82点で他の課程の留学要員よりも少し高めでした。
せっかくのチャンスを無駄にしないためにも英語の学習は定期的にやっておく必要があります。以前の記事でも書いたとおり、昔と違って陸上自衛隊では英語はマストです!英語ができなければ、かなり苦労することになるでしょう。また、自分を成長させるための多くのチャンスを逃してしまうことになります。
非常にもったいないです!
4.試験当日
試験は、目黒駐屯地(現、教育訓練研究本部が置かれているところ)で行われます。在京の米国大使館が近いことと試験のための施設が備わっているいるからだと思います。指揮幕僚課程の2次試験受験の際に行ってから、目黒駐屯地は2回目。
落ちたら留学の話がなくなってしまうし、2週間も通常業務から離れて英語の勉強の時間を確保していただいていたこともあり、必ず合格しなければというプレッシャーは並大抵のものではありませんでした。
MDAOから黒人のおじさんがやってきて、試験の注意事項を話して試験が始まりました。
リスニング問題は、テンポよく問題を解いていかなければ、どんどん次の問題へ進んでいってしまうため、パニックになったら大幅に点数を落としてしまうんです。
ですから、パニック厳禁!TOEICもそうですが、わからない問題は考えてもわからないので捨てて、次の問題に集中することが大切なんですね。
試験が終わったら、その場で採点されて30分後くらいに合否が伝えられます。
合格発表の瞬間は、心臓が飛び出しそうなくらい緊張します。
そして、僕は『1点差で合格!!』
危なかった・・・
何とか留学の切符を手にすることができました。
とりあえず、職場には余裕で合格できたと伝えて😝3ヶ月後の出国に向けて準備を進めました。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
次回につづく。
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