キキ、わらって!


 ことし
 7さいになるキキは

 めったに
 わらわないように
 しています

 なぜかというと
 ちいさいころ 
 わらいかけたとき

 おともだちが 
 びっくりしたかおで かたまって
 にげだしてしまったからです 

 きっとぼくのえがおが
 こわいか
 とてつもなく
 へんだったに
 ちがいない

 キキは
 そうおもって

 おともだちを
 おどろかせないために
 わらうのを
 やめたのでした

 あるひのこと
 となりのせきのマメタが
 おもしろいかおをして
 みんなを
 わらわせていました

 キャハハ
 おもしろいかお
 あははは
 何してるの
 ヒャハハハハ

 みんなわらいころげて
 たのしそう
 でも キキは 
 マメタのかおを
 じっとみるだけ。

 わらいません

 こころでそっと
 おもしろいかおだなぁって
 たのしんでいました

 みんなも
 キキがわらわなくても
 気にしません

 それがふつうで
 いつものことだからです

 わらわないキキに
 みんなも キキも
 なれているのでした


 あるひのこと
 えのじゅぎょうが
 ありました


 クラスのだれかと
 ペアになって
 おたがいのかおを
 かきあうのです

 せんせいがいいました

 「おともだちの 
 わらったかお
 えがおを
 えにしてみましょう」

 それをきいて
 キキはかたまりました

 ぼくはえがおは
 できない

 ルリが
 かたまっているキキを
 しんぱいして
 いいました

 「キキ だいじょうぶ?」

 「ぼく、できない
 ぼくのえがおは
 へんだから
 みせられない」

 キキは
 つらくて
 ないてしまいそうでした

 「そうなの?
 みたことないから
 わからないけど

 きっとすてきだと
 おもうわ!

 みてみたい
 キキ わらってみて!」

 ルリがおおきなこえでいうと

 それをきいていた
 ヨヨが

 「おれも 
 キキのえがお みたい!」

 といい
 そのとなりのコハルも

 「わたしも みたい〜」

 といって
 クラスのみんなが
 キキのまわりに
 あつまってきました

 みんなして
 くちぐちに
 キキ わらって!
 と いいます

 キキは
 こまってしまいました
 そしてついに
 なきだしました

 「うわーん
 うわーん

 ぼくだって
 わらいたいよう

 でも
 だめなんだよう

 ぼくのえがおは
 へんだから

 びっくりされて


 みんな
 はなれて
 いっちゃう

 うわーん
 うわーん

 どうやって
 わらったらいいか
 わからないよう」

 キキはおおごえで
 たくさん なきました

 ぜんぶをみていた
 せんせいが やってきて
 いいました

 「キキ
 むりして 
 わらわなくても
 いいよ

 でもね
 わらわないと
 きめてしまわなくても
 いいよ

 わらってもいいし
 わらわなくてもいい」

 「でも
 ぼくのえがお
 へんだから……」

 「へんっていわれたの?」
 ルリがききました

 「へんって言われた
 わけじゃないけど」

 「けどなに?」
 ヨヨもききました

 「ぼくがわらったら
  にげちゃったから……」

 「ききのえがおが
 すてきすぎて
 びっくりして
 にげたのかも〜!!」

 コハルがいいました

 キキは
 そんなわけないって
 おもいながら

 そうだったらいいなって
 おもいました

 「なみだ、ふいて」

 スズがハンカチ
 わたしてくれました

 「ありがとう」

 なみだをぬぐって
 かおをあげると

 せんせいも
 みんなも
 えがおで
 キキをみていました

 キキは
 このみんなのえがおを
 えにしたいなぁと
 おもいました

 せんせいのうしろから
 ぴょこんと
 かおをだした
 マメタは

 またおもしろいかおを
 つくっていました


 「あーー!!!
 キキがわらった……!」


 みんなは
 キキのえがおの すてきさに
 びっくりして
 おもわず
 かたまり

 そのあとみんなで
 ぎゅっと
 キキを
 だきしめました


 かんせいしたえは
 きょうしつの
 うしろのかべに
 かざられていて

 みんな
 にっこり
 わらっています

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