技術同人誌ひっさげてコミケに出た話
こんにちは。
コミックマーケット104が開催されましたね。
私は初めてサークルとして参加してきました。
その振り返りを雑多に書きます。
申込みから当選、執筆、入稿
記念に申し込み
技術同人誌を作り、初めてのイベントにも参加し、つぎのイベントへの参加も決まった2月。同人誌即売会の最高峰に登ってみるのも良いのでは!と思ったのと、同人活動をいつまでつづけるか決めておらず最後になるかもしれないこのチャンスを逃すまいと思ったのとで申し込んでみました。技術同人誌を作った記念のようなものです。
この時点ではコミケは簡単に当選するものではないイメージがあり、たぶん落選だろうと思っていました。もし当選したとしても、5月にイベント向けの新刊を持っていけばよいかと、コミケ向けに新刊を作るつもりはありませんでした。
当選してしまう
当落通知当日、メールでお知らせされると思って待っていました。しかし、届きませんでした。そう、通知用メールアドレスの登録をしていなかったのです。コミケ難しい……。
しっかり者へのメール通知の1時間後にWebCatalogのマイページで通知され、当選を確認しました。よく見る"あなたのサークル~に配置されました!"を投稿し、頒布物をどうするか考えました。
新刊制作を決意するも時間が足りない
5月のイベントでは無事新刊を作ることができました。読者の反応は良いものでしたが、なんとなくコミケらしくはないかなといった印象を持っていました。結局、せっかくコミケに当選したのだからと新刊を作ることにしました。しかし、大きな問題がありました。とにかく時間がない。それは忙しいからというわけではありません。単純に執筆時間が無い、締切まで猶予がないということでした。
それまで作った同人誌はいずれも数ヶ月をかけて書いていました。今回、当選通知が6月7日、いつも使っている印刷所の早割締め切りが7月11日でした。通常入稿でも26日といずれにしても2ヶ月は切っています。これまでとやり方を変える必要がありました。
執筆プロセスの見直し
執筆時間を短縮するために、まず執筆プロセスの見直しを考えました。
それまではテーマ決定後、章立てを考え、各章のあらすじのようなものを書き、テキストベースで内容を下書きし、Wordに流し込んだ後、数式の入力、図の作成と挿入、全体の体裁の整形といった流れで作成していました。その後、校正・修正と進み、脱稿となります。
ここから削れるところを探さなくてはなりません。最初に目をつけたのはWordへの流し込みと数式入力です。Wordの数式入力は半LaTexのような感じでそれなりに簡単に書けるのですが、間違えた場合に修正が面倒なことと、たくさん書いていると重くなるといった欠点があります。Word以外を考えたとき、LaTeXが思い浮かびますが、今のPCに環境を作っておらず、環境構築でつまづくと執筆時間がなくなるおそれがありました。(学生時代にLaTeXで論文やレポートを書いていましたが、本を作ったことはなかったので、印刷所への入稿形式に合致するファイルを作れるかどうかが不安でした)
そこで目をつけたのが、Typstでした。5月から6月にかけて開催された技術書典16でTypstをテーマにした書籍が頒布されていたことでその存在を知りました。数式入力が簡単にでき、環境構築も簡単にできそうでした。とりあえず当選後1週間で環境構築と同人誌制作に必要な内容(奥付とか隠しノンブルとか)の作成ができればTypstで書く、できなければWordで書くと決めました。Typstは使いやすく、VSCodeでプレビューを見ながら書けるのですいすいと同人誌の形を作ることができ、Typstで書くことにしました。
Typstで最終状態を見ながら執筆することで後半の体裁整形も大幅に短縮できる見込みとなり、あとは急いで書くだけになりました。
執筆
テーマはすぐに書ける競馬のデータ処理にして、表紙が流用できる最適化問題として考えるシリーズとしました。そして時間のかかる実データを使った解説は次の機会に回すとして、今回の本ではその前段までの理論編とすることにしました。
今回は最初に章立てを半分くらい決め、以降は書けるところまで書くことにしました。結局、過去最高の章数、ページ数となりました。追い込まれたときのほうが集中して書けるということでしょうかね。
入稿
なんだかんだ執筆し、そろそろ入稿が見えてきた段階でまた問題が発生します。調子に乗ってたくさん書いてしまったばっかりに、締切が早くなってしまったのです。印刷所の締め切りが掲示してある箇所に"~ページを超える本"の締め切りが書かれており、その締め切りのほうが早いのです。この時点で早割は諦めざるを得ず、通常入稿を目指しました。
通常入稿の締切は7月19日。もともとの締め切りから5日も早まりました。ここまで締め切りが早くなって大変!と書いているのに、結局10%早割の7月15日に入稿しました。13日から15日の3連休に一気に仕上げました。その後の平日数日間で原稿が良くなるとも思えなかったので入稿しました。
準備
設営を考える
入稿したら終わりではなく、イベント当日のことを考え始めなければなりません。設営に関しては、これまで参加していたイベントと異なり半卓となるため、設営をどうするか考える必要がありました。
前回のイベントで、書籍の内容をまとめた説明の紙を掲示したら、それをきかっけに立ち止まってくれる人が多かったので今回もやりたいと考えていました。しかし、その設営は横幅を取るので、今回のスペースに合わせた方法を考える必要がありました。
そこで考えたのは、説明の紙を見本誌の上に配置し、横幅を削減する方法でした。それをどのように実現しようか色々と考え、結局、卓上POP立てを4つ揃えて掲示することにしました。
それまで卓上POP立てを1つだけ持っていましたが、先端の固定部分がやや緩く、外れやすいため、別のPOP立てに変えようと、色々探しました。良さそうなものをモノタロウで見つけて注文し、届いた段ボールを開けると、なんと分解できないPOP立てが4つ入っていました。
結局、それまで使っていたものと同じものを3つ買いました。そして、掲示するPOPも作成、自宅のテーブルで設営できるか試し、これでいくと決めました。当日の設営の写真は下に載せてあります。
搬入を考える
つぎに書籍や設営資材をどうやって会場に持っていくかを考えました。これまでのイベントでは宅配便を使っていましたが、あれだけのサークルがいて本当に届くのだろうか、スムーズに受け取れるだろうかなど色々心配になってしまったためです。
今回は自宅から持って行く在庫が2種類で1冊も買ってもらえないことを想定していたこともあり、設営資材を含めて自力で持っていくことにしました。ただ、自力で持っていくためのカートやキャリーケースを持っていなかったのでその選定と購入をする必要がありました。
「コミケ スーツケース」などで検索すると良いスーツケースを紹介してくれているサイトや同人イベントスーツケース荷造りの動画なんかが出てきました。ただ、そのようなものはだいたい多くの書籍を運ぶことを前提にしているようで、少部数のサークルにはオーバースペックのように感じられました。そのため、A5が4冊並べて入る、つまりA3が入るサイズのスーツケースで取り回ししやすい程度のサイズのスーツケースを探すことにしました。色々見て回った結果、静音で車輪交換可能なものを買いました。まあ、A5を4冊並べることはできなかったんですがね……。
宣伝を考える
これまでに参加したイベントとは規模が桁違いなので、Twitterでの宣伝も簡単に埋もれてしまうことが予想されました。とはいえ、他に有効な宣伝手段が思い浮かばなかったので、Twitterの宣伝とコミケのWebCatalogの記述を充実させることにしました。
WebCatalogは割と早い段階で頒布物を追加し、宣伝画像なども追加しました。お気に入り数の存在に気づいた時点で6人がお気に入りに登録してくれていました。最終的に22人まで増えていました。初参加の無名サークルをこんなに見てくれる人がいるとは……ありがたいです。
そして、Twitterでは文学フリマの出店者向けページに記載してある宣伝タイミングを参考にして宣伝してみました。今回、お品書きを貼りつけたツイートをトップに固定していましたが、いいねとは別にブックマークもしてもらっていました。その他にも何度か投稿した結果、お品書き画像を見ながら来てくれる人がいたようでした。一部かもしれませんが欲しい人に伝わったようで、効果はあったようです。
暑さ対策を考える
今年は暑い。とにかく暑いのです。5月頃まで今年は割と過ごしやすいなと思っていた自分、夏に大変なことになります。
暑いので対策を立てないと熱中症で頒布できない事態になりかねません。それは色々と残念なので(命の危険すらある)、そうならないように対策を考えようと思ったわけです。
まずは暑さに慣れるのが良いでしょうと聞いたので実践しました。2週間くらい前から、在宅勤務中、冷房をつけずに過ごす時間を作りました。最初は30分くらいからはじめて最後は3時間くらいまで伸ばしました。32度でも作業できる程度になりました。本当に慣れたのか、慣れたつもりになっているだけかはわかりません。
その他に、当日の装備も考えました。飲み物、食べ物、体を冷やすものなどいろいろ考えましたが、おそらく世の中にある熱中症対策装備をしていけばよいのではということになりました。今回は、水500mlペットボトル2本、凍らせるアクエリアス(inゼリーみたいな形のやつ)1つ、inゼリー2つ、カロリーメイト2箱、歌舞伎揚12枚、塩タブレット1袋、去年の夏コミでもらった叩くと冷えるやつ1つ、拭くと冷えるやつ1パック、扇子を持っていきました。
水と凍らせるアクエリアスは帰るまでにぴったり飲み切りましたが、もう1本あっても良かったなと思いました。inゼリーは1つ、歌舞伎揚げは4枚?、塩タブレットは3~4個食べました。それ以外に、売り子さんからもらったみかんの凍った美味しいゼリーみたいなやつもいただきました。
当日は少し暑い時間帯もありましたが、熱中症になることなく終えられたので、対策できたということでよいのではないでしょうか。
当日
暑い暑い暑い
朝からとにかく暑い!8時ちょっと過ぎに入場しましたがその時点で汗だくでした。汗だくだくだく……くらいです。西ホール内は涼しかったのですが、設営のために動き始めるとまた汗をかく。開場後に人の熱気で汗をかく。1年分の汗をかきました。明らかにズボンがゆるくなりました。
慣れない設営
半卓(ひとつの机の半分)が自分のサークルのスペースとなるイベント(だいたいの同人誌即売イベントはこの形式)への参加は初めてだったので、色々設営に手間取りました。机上の配置は事前に考えて練習していたのですが、段ボールやスーツケースを展開したり、設営資材を一時的に置いたりするところを確保しながら設営するのが難しかったですね。
コミケ初参加は1冊も買ってもらえないは嘘
開場すると、最初の30分くらいは暇でしたが、以降はだいたい人が来てくれる感じでした。大きくないジャンルのなかでもメインのテーマではないサークルの書籍に目を留めてくれた人がたくさんいてありがたかったです。
今回は競馬をテーマにした新刊を中心に頒布しましたが、競馬ファンだけでなく幅広い方々に興味を持ってもらった印象でした。競馬は知らなくてもなんとなく気になる人が多いようです。そのため、データサイエンス・AI系、数学系、ノンエンジニア、学生など様々な方々がきてくださり、お話できました。
その他にも、さすがは最大のオールジャンル同人誌即売会というだけあって色々な人が来てくれました。来てくれる人の紙袋を見るのも面白かったですね(色々回った後にここにきたのか、割と早い段階できたのかなどわかるので……)。
感想嬉しい
技術同人誌の初頒布からそろそろ1年になりますが、これまでのイベントで買ってくださった方から感想を直接いただけることが増えてきました。
「役に立ってます」「就職して共感することたくさんあります」など伝えていただきました。書いた本が届いていると実感した瞬間でした。
学生さん多し
今回、お試しで学割をやってみたのですが、意外と多くの学生さんがきてくれました。ありがたい。
自己申告でOKだったのですが、学生証を見せてくれる人がたくさんいました。中国の大学の学生証を初めて見ました。
また、放送大学の学生さんもいらっしゃいました。社会人学生に買ってもらう裏テーマを達成できてよかったです。
集計したところ、だいたい3分の1は学割での頒布でした。つぎのイベントでも継続したいですね。
売り子さん助かる
今回はなんとコミケらしく、コスプレイヤーさんが売り子としてきてくれました。朝早くから来てくれて、しかも差し入れまで持ってきてくれて……ありがたい!開場後もブースを盛り上げてくれました。技術系のイベントでコスプレはなかなか見かけない(禁止されていたような)ので、新鮮でした。
で、やはり人がいると散歩や買物が捗ります。とはいえ今回は当初目をつけていた1サークルと友人のサークルのみまわるにとどまりました。人多くてけっこう時間食ってしまうんですよね……。その分読者の方々とお話するチャンスが減ってしまうので早めに戻りました(実際、トイレ等で離席したとき、戻ると立ち読みしながら待っていてくれる人がいました)。
帰りの新ルート
コミケの帰りは駅への入場制限などでだいぶ待たされることがよくあります。そこで今回、できるだけ暑さを回避しながら変える方法を調べました。
結論、有明テニスの森駅まで歩く!(異論は認めます)
有明テニスの森駅は、ゆりかもめで有明駅のひとつ豊洲側の駅です。ビッグサイトに近い駅は長蛇の列なので、外でかなり待たなければいけません。夕方といえかなり暑いです。前日のTwitterによると50分待ちなどの情報も散見され、なかなか厳しい戦いであることが伺えます。
周辺で待ってもよいのですが、近い店は混雑していること、かなりの時間を待たないと駅の混雑が解消しないことなどから積極的に取りたい策ではありません。
そこででてくるのが、一時的なコスト(動くことによる暑さ)は許容し、なるべくはやく涼しい空間に入ろうという戦略が有明テニスの森まで歩くということになります。
有明テニスの森はホームまですぐ入れます。平常時の駅です。そして、豊洲へ向かいます。乗客が少ないのです。豊洲から有楽町線に乗り換え、好きな方向へ帰るという感じです。
有明テニスの森まで歩くのはそんなに長くないとはいえ厳しいように思えるかもしれませんが、適度に日陰もあり、16時半すぎくらいにビッグサイトを出て16時57分発の豊洲行に余裕を持って乗れたので、悪くないと思います。
是非、次回、試してみてください。(と言いたいところですが、この戦略を取る人が増えると破綻するのであまり知られないでほしいとも思っています……)
最後に感想
感動のコミケ
初めて技術同人誌を書いて参加したイベントで憶えた感動、それが蘇ってきました。
今回、これまでと異なることが多く、また新たな内容の本を書いたということもあり、どれだけ受け入れてもらえるかが不安なポイントでした。ただそれは杞憂でした。頒布数もさることながら、本のテーマや内容、執筆の背景など様々な会話ができ、また続編を期待する声もいただけました。短期間ながらコミケに向けた新刊を作ってよかったと思いました。
とはいえ暑かった
参加者全員が感じていることでしょう。サークル参加の自分がこれだけ暑さを感じているということは、外で待ち、歩き回っていた一般参加の皆さんはそれ以上に暑かったことでしょう。本当にお疲れさまでした……。
今後は……?
まだ書きたいテーマがあるし、今回の新刊の後編も書きたいのでまだイベントには参加し続けるとは思います。が、ペースを落とすかもしれません。少なくとも冬コミは出ない見込みです(寒いし)。今年の前半はほぼずっと本を作っていたので、少しインプットの時間を取りたいと思っています。でもまあだいたいイベント直後に良いアイディアが降ってくるのでどうなるかはわかりませんね。
では次回のイベントでお会いしましょう!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?