熱海城の憂鬱(とゴジラ公開延期の憂鬱)
熱海によく行く。よくと言っても年に2〜3回なのだが、都外でそんなに行くところは他にない。趣味のダイビングをきっかけに出会った飲み友達の行きつけの温泉旅館があるため、よく誘ってもらって一緒に行くのだ。私自身は一滴もお酒を飲めないので、いろんなお酒を飲み続けるみんなを見てちょっと羨ましく思いつつ、コーラや富士山サイダーなどで楽しい時間を共有している。今日はそんな熱海について。
はい、この一枚。
2021年5月1日から熱海城売店のみで売っているというある意味激レアのゴジラTシャツである。連休明けのガラガラ熱海にフラッと行って買ってきた。こういう「ここでしか買えない」系のTシャツは罪深い。しかもね、たとえばUSJとかならまだわかるんだけど、こんな辺鄙な観光地(失礼!)っていう。ちなみに熱海城の売店では某三本線の超有名スポーツブランドのパロディであるazidesも売っていました。これ、中学の修学旅行で行った京都でも見た記憶あるからかれこれ20年以上のベストセラーってことになる。すげえな。
そもそも熱海城って行ったことあります?ちょっとした崖の上にあるから地味に行くのが大変なんですよね。ルートは三通りあって、熱海の観光地周遊バスである「湯~遊~バス」で行くルート、これは良い。次はロープウェイで行くルート、これも良い。問題は路線バスで錦ヶ浦という停留所から歩くルート。Googleマップなどでだいたい最初に出てくるんだけど、まあ、急な斜面をガンガン登るんですわ。熱海はもともとアップダウンが激しいがここは崖ですからね。キングコングとゴジラが転落した断崖絶壁ですからね。コロナ禍の鈍った体にはキツいのでルートはよくよく調べましょう。さあ、そんな攻め辛く眺めの良い場所に城を建てたのはどこの武将かというと、建ったのは1959年、高度経済成長期が建てた城なのだ。特に晴れた日なんか眺めは抜群に良く、どことなくハワイを感じさせないこともないが、中は金ピカのエレベーターや春画展示フロアなど、なかなかに悪趣味なので、間違える方はいないだろうがちゃんとしたお城を見たい方は近くの小田原城を見に行くように。それにしても、秘宝館もほぼ隣にあるのに春画を展示するところに何かしらの執念を感じる。物好きな人は、クイズに答えると熱海城缶バッジなどをもらえる企画もあるのでやってみるとよい。熱海城の入城料は2021年5月現在1000円。こういう観光地で価格にケチをつけるのも野暮というものだ。その価格の価値についてもあれこれ言うまい。経営難なり何なりで無くなる時に「ショック」「好きだったのに」と騒ぐ前にしっかりお金を落とすべきだ。私は今回熱海城の売店に10000円近く落としてきたからね。会計時にひっくり返りそうになったよ。コロナ禍では難しいだろうが、友達数人のグループなら隣にあるトリックアート迷宮館とセットで1700円なので、ヤケクソで写真を撮りまくると、インスタに載せるのとはまた違う方向の味わい深い写真が撮れるので思い出になるでしょう。トリックアート迷宮館がオープンしたのは2013年とのこと。バブルの亡霊かと思っていたので調べてみて驚きました。一応、ドン曇りの熱海城からの眺めを載せておきます。
で、なんでゴジラが熱海城にいるの?といえば1962年の映画『キングコング対ゴジラ』の最終決戦の舞台が熱海城だから。で、その縁があって2019年から「熱海対ゴジラ」なるイベントも実施している。これはそのイベントとは関係なく、ただ単にゴジラと熱海城の関係をアピールするため、もしくはハリウッド版『ゴジラVSコング』の公開にぶつけてゴジラファンを熱海城に呼び込もうとしたのかもしれないが、残念ながら公開延期となったため、まったくもって謎のタイミングでの発売となった。とはいえデザインは最高である。赤、黒、青、とメリハリの効いた配色。おなじみのゴジラフォントと熱海城フォント。当然バックプリントなし。まったく、痺れるデザインである。日本語プリントについてはある時期まで抵抗を感じていたが、今となっては日本語も英語もその他言語もデザインの一部として受け入れられるようになった。次に熱海に行く時はこれで決まりだ。この熱海城のフォント、いいですよね。
さて、お気づきかと思うが私はけっこうゴジラ好きである。いわゆる平成ゴジラ、VSシリーズで育った世代であり、2016年のご存じ『シン・ゴジラ』によりその記憶を呼び起こされてすっかり現役復帰した。ゴジラ検定も現存する初級と中級を保持している。さらにはデアゴスティーニ(毎号付いてくるパーツを集めて組み立てると〇〇ができる!というアレである)の『週刊ゴジラを作る』も購読し、5月連休中に外皮をペタペタ貼り付けたところだ。まあ、ゴジラについてはまたの機会に。
熱海の話に戻ると、今は新しい風とバブルの夢の跡が共存する不思議な街となっている。熱海銀座というメインストリートには熱海プリン、コーヒーやジェラートが美味しいカフェ、ゲストハウスなどがキラキラと輝きを放っている。メインストリートを外れると廃墟なのか現役なのかよくわからない建物がちらほらと確認できる。
東京に疲れた時、一泊逃避する時にちょうどいいのかもしれない。お昼頃にのんびりと到着して来宮神社か、季節によっては梅園まで歩く。来宮神社にはカフェが併設されているので橙サイダーで一休み。海辺など歩きながら気の利いた温泉旅館にチェックイン。温泉と料理を楽しんで、翌日は張り切って熱海城など行ってもよいし、熱海銀座おさかな食堂で海鮮丼を食べ、食後にQUATROでコーヒーかジェラート。お土産は干物をいくつかと、駅前の平和通り名店街というアーケードにある源楽という饅頭屋さん(本店は修善寺だそうな)の饅頭は絶品なのでおすすめです。それで15時くらいには熱海を出て東京に戻ってくると翌日の仕事にも響かない。
ハードコアなパターンとしては昼からロマンスカーで飲み、小田原で乗り換えがてら一杯、熱海に着いて宿まで歩いて着いたら一杯、温泉入って夕食前に一杯、夕食と共に飲み、食後に一杯、温泉入ってまた一杯、気持ちよく寝て朝湯に入って朝食と共に一杯二杯、宿から駅までタクシーで移動し、帰りのロマンスカーで一杯、新宿に着いて締めの食事と一杯、ってなこともできるがたまの熱海であれば少しは観光すべきだろう。
そんな熱海に、ぜひ。