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66.広告詐欺のファーザー
ロンドンに暮らす、81歳の認知症の老人アンソニー。記憶が曖昧になっていく彼は、娘アンの手配した介護人を断る。そんなある日、恋人とパリで暮らすと父に告げるアン。しかしアンソニーのもとにはアンの夫だという男が現れ、自宅の所有権を主張し始める。現実と妄想の区別がつかなくなっていく中、やがてアンソニーはある真実にたどり着く。
一度でも認知症の家族と暮らしたことがある人がみたら、もう声だして泣いてしまうんじゃないか。私は、映画を観て初めて声出して泣いた。じいちゃんが死んだ時と同じぐらい泣いた。あの時、一緒に暮らしていた時は常に喧嘩してたし暴言吐いてたし、『◯ね!クソジジイ!!』って言っていた。
じいちゃんは朝起きてパジャマから服に着替えてくれなかった。死んだばあちゃんはどこだと言っていた。認知症の検査のときだけシャキッとしていた。癌になって病室で兄に『金の盃はどこだ』と聞いていた。いつも私の同級生は誰々だっけって100回以上聞いてきたし、100回以上答えたけど覚えてくれなかった。人のことをよく馬鹿にしていた。イライラしたし、ボケていくじいちゃんを見てるのは辛かった。
もし、じいちゃんのほうだって訳のわからない世界に迷い込んでいたのかもしれないって、気付いちゃったらさ。冷静じゃいられんよ。なんて仕打ちをしてしまったんだと思って泣く。じいちゃんがあんなにも孤独で、自分に安心できる場所がないと思って絶望していたらと思ったら悲しくて怖くて泣いてしまう。でも、じいちゃんが死んでるから悲しくて泣けるけど生きていたら優しくできなかっただろうから仕方ない。
別に認知が治るわけじゃない。ただ、ただボケたじいちゃんの視点で話が進んでいく。それだけで最初ミステリーかサスペンスなのか?と不安にさせられる。多分、じいちゃんの認知症が進んでいるから妄想なんだろうと思うんだけど、どこから?誰が現実世界のアンで夫のポールなの?ってなる。そしてここはどこ?私は、誰?ってなる。
辛い。もう絶対に見返さない。こんなアットホームなサムネでこんなことあるのかよ。むごすぎる映画。最悪なんだけど、悔しいぐらいめちゃくちゃ面白い。本当にすごい。毎回部屋が変わり、人がかわる。でもアンソニーは同じフラットだと思っている。
アンソニー役のアンソニーホプキンス、ハンニバルの役しか知らなかったんだけど圧倒的にうまい。俺の家の話の西田敏行かアンソニーホプキンスかもしれん。ボケたじいちゃんの役やらせてこんなに上手なのは。私は洋画の俳優に対して演技が上手いって感じるセンスが鈍いんだけど(吹き替え観がちだから、台詞と表情の微妙な機微がわからない)吹き替えでもビビるほどうまい。うちのじいちゃんを観ているようだった。たまに、ごくたまに正気に戻る時がある。穏やかな時間が流れる時があった。でもすぐに忘れてしまう。過去も捏造してしまう。本当にこのポスターなに!?!?!嘘も体外にしてくれ!!!!見返さないけどみんな見て絶望してほしい!!!!みんな同じ気持ちになってほしい!!!!!!!!
あと、インテリアがめちゃくちゃ可愛い!!!!!おしゃれ!!!!キッチンはアンの家のキッチンにしたい!可愛い〜!!ティファニーブルー?コバルトブルー?が可愛いのよね