【リコリス】女性のカラダと365日のハーブ
1月29日は日本の暦において「大寒」の時期に位置します。大寒は、一年で最も寒い時期を意味し、雪や氷に覆われた静寂と厳しい寒さが特徴です。この時期、人々は暖かく過ごすための工夫を凝らし、心身の健康を保つためにさまざまな対策を講じます。
このような寒さ厳しい季節にお勧めしたいハーブが「リコリス」(学名:Glycyrrhiza glabra)です。リコリスは、その甘みと温かみのある特性から、冷え性の改善や風邪の予防に効果的とされています。また、リコリスは女性の悩みにも寄り添うハーブで、月経痛や更年期の症状緩和にも利用されてきました。
季節の悩みとリコリス
冬は寒さにより血行が悪くなり、冷え性や肌トラブル、体調不良を引き起こしやすい季節です。特に女性は、冷えによる不調を感じることが多く、これらの問題は日常生活に大きな影響を及ぼすことがあります。リコリスは、こうした冬の女性特有の悩みに対して、その温める効果で非常に効果的なハーブと言えます。
リコリスには血行を促進する作用があり、冷え性に悩む女性にとっては、体を内側から温めるサポートをしてくれます。また、リコリスに含まれる抗炎症成分は、肌トラブルの緩和にも役立ちます。冬の乾燥した環境では、肌は敏感になりがちですが、リコリスは肌を保護し、健やかな状態を保つのに役立ちます。
さらに、リコリスは女性ホルモンのバランスを整える効果があるとされており、PMS(月経前症候群)や更年期障害など、女性特有のホルモンバランスに起因する不調の緩和にも有効です。特に冬は、体も心も敏感になりやすいため、リコリスを取り入れることで全体的な心身のバランスをサポートすることができます。
基本情報
学名:Glycyrrhiza glabra
原産地:ヨーロッパ、アジアの一部
形態:多年生の草本植物
使用部位:主に根と地下茎
収穫時期:植栽後2〜3年目の秋に根を収穫
名前の由来
リコリスの名前の由来は、その特徴的な甘みと根の形状に由来しています。古代ギリシャ語で「甘い根」という意味の「glykys」と「rhiza」が語源とされています。これはリコリスの根が非常に甘く、古来から甘味料として利用されてきたことを反映しています。
この名前は、その後ラテン語の「liquiritia」を経て、英語の「liquorice」(北米では「licorice」と綴られる)に進化しました。日本語では「リコリス」と呼ばれ、これは英語名が音訳されたものです。
別名
カンゾウ(甘草) - 日本や中国で一般的に使われる名前。甘い味わいが由来です。
スイートルート(Sweet Root) - 英語での呼称の一つ。文字通り「甘い根」という意味。
リコライス(Licorice) - 英語圏での一般的な呼び名。特にアメリカ英語でよく使われます。
グリチルリザ(Glycyrrhiza) - 学名に由来する呼称。特に学術的な文脈で用いられます。
栽培
適切な場所の選定
リコリスは日当たりがよく、水はけの良い土地を好む。
強い風から守るために、風通しの良い場所を選ぶ。
土壌の準備
肥沃で深く耕された土壌が適している。
土壌pHは中性から弱アルカリ性が望ましい。
植え付け
春か秋に種子または根茎を植える。
根茎は土中に15〜20cmの深さに植える。
水やり
定期的に水を与えるが、過剰な水は避ける。
選定
雑草が生えないように定期的に手入れをする。
病害虫の発生に注意し、必要に応じて対策を講じる。
収穫
収穫時期
リコリスは植栽後2〜3年が収穫の適期。
秋に地上部が枯れ始めた頃が収穫のサイン。
収穫方法
地上部を刈り取り、根を掘り起こす。
根は手で掘り起こすか、小型の農具を使用。
加工方法
掘り起こした根は洗浄し、必要に応じて乾燥させる。
乾燥後、保存用に小片に切ることもある。
保存方法
乾燥させたリコリスは涼しく乾燥した場所で保存。
直射日光や湿気を避ける。
利用の歴史
古代文明における利用
エジプト文明: 古代エジプトでは、リコリスは薬用として使われていました。ファラオの墓からもリコリスが発見されており、重要な植物であったことがわかります。
中国: 古代中国の医学では、リコリスは重要な薬草の一つであり、「甘草」として知られています。多くの漢方薬の成分として利用され、体内の調和を取るために使用されてきました。
ヨーロッパでの普及
ギリシャ・ローマ文明: 古代ギリシャやローマでは、リコリスは胃腸の薬として、また咳止めとして利用されていました。
中世ヨーロッパ: 中世になると、リコリスは修道院で栽培され、薬用はもちろんのこと、食品としても利用されるようになりました。
近現代の利用
19世紀以降: リコリスは甘味料としての用途が広がり、リコリスキャンディやリコリスティーなど、多様な食品に加工されるようになりました。
医薬品として: 現代では、リコリスはその薬理作用に基づき、消化促進剤や咳止め薬、胃腸薬として利用されています。
特徴的な成分
グリチルリチン酸
抗炎症作用があり、皮膚トラブルの緩和や免疫力の向上に役立ちます。
喉の痛みや咳にも効果的です。
フラボノイド
強い抗酸化作用を持ち、肌の老化を防ぎ、若々しい肌を保つのに役立ちます。
体内の炎症を抑える効果もあります。
イソフラボン
女性ホルモンに似た働きをし、更年期障害やPMS(月経前症候群)の症状緩和に有効です。
骨密度の維持にも寄与します。
肉体面への効果
消化器系のサポート
リコリスは胃腸の働きを助け、消化不良や胃の不快感を和らげる効果があります。
胃酸過多や胃潰瘍の予防と治療にも役立つとされています。
抗炎症作用
体内の炎症を抑制し、関節痛や筋肉痛などの症状を緩和する効果があります。
呼吸器系の炎症による咳や喉の痛みの緩和にも効果的です。
免疫力の向上
免疫システムを強化し、風邪や感染症から身体を守るのに役立ちます。
ストレス緩和と心身の安定
ストレスによる身体的な影響を緩和し、神経系を落ち着かせる効果があります。
疲労回復や心身のリラクゼーションに寄与します。
血糖値の調整
リコリスに含まれる成分が血糖値の調整に役立つ可能性があります。
感情面への効果
ストレス緩和
リコリスに含まれる成分が神経系に作用し、ストレスによる精神的な緊張や不安を緩和する効果があります。
リラックス効果があり、心身の安定に寄与します。
気分の改善
リコリスは気分を高め、穏やかな感情状態を促進する効果があるとされています。
憂鬱な気分やマイナスの感情に対して、バランスを取る効果が期待されます。
神経系のサポート
神経系を強化し、神経疲労や過剰なストレスによる影響を緩和する助けとなります。
集中力や記憶力の向上にも役立つ可能性があります。
安眠効果
神経を落ち着かせる効果があり、不眠や睡眠の質の改善に効果的です。
ティンクチャーの作り方
材料
リコリスの根(乾燥):100グラム
ボトル:容量が500mlのもの
高品質なアルコール(ウォッカなどの40〜50%のアルコール度数が理想):約500ml
手順
リコリスの準備
乾燥したリコリスの根を粗く刻みます。
刻んだリコリスを清潔な瓶に入れます。
アルコールの注入
リコリスが完全に浸るまでアルコールを注ぎます。
瓶が満たされるまでアルコールを追加し、蓋をしっかりと閉めます。
抽出プロセス
瓶を暗く涼しい場所に置き、日々軽く振って内容物を混ぜます。
抽出は約3〜4週間かけて行います。
抽出期間中、時々内容物を確認し、必要に応じてアルコールを追加します。
ろ過
抽出が終わったら、布や細かい目の漉し器を使って液体を濾します。
液体を別の清潔な瓶に移し替えます。
保存
ティンクチャーは涼しく暗い場所で保存します。
冷暗所であれば、1年以上保存可能です。
ティンクチャー活用
リコリスティンクチャーのスキンケアローション
材料
リコリスティンクチャー:1ティースプーン
ローズウォーター:1/4カップ
グリセリン:1ティースプーン
アロエベラジェル:1ティースプーン
作り方
ローズウォーターにリコリスティンクチャーを加えます。
グリセリンとアロエベラジェルを加えてよく混ぜます。
洗顔後の清潔な肌に塗布し、しっとりとした肌に整えます。
ブレンドハーブティーレシピ
リコリス&ラベンダーブレンドティー
材料
リコリスの根(乾燥):1/2ティースプーン
ラベンダーの花:1/2ティースプーン
ジンジャーパウダー:小さじ1/4
熱湯:250ml
レモン汁:数滴(お好みで)
作り方
リコリス、ラベンダー、ジンジャーパウダーをティーポットに入れます。
熱湯を注ぎ、約5~10分間蒸らします。
茶こしを使ってカップに注ぎます。
お好みでレモン汁を加えます。
ジンジャーの刺激とラベンダーのリラックス効果を楽しむハーブティーの完成です。
注意点
高血圧の方は注意:リコリスは体内のナトリウムを保持し、カリウムを排出することで血圧を上昇させる可能性があります。
長期間の大量摂取は避ける:リコリスを長期間大量に摂取すると、筋力低下、頭痛、むくみなどの副作用が生じることがあります。
妊娠中・授乳中の摂取制限:妊娠中や授乳中の女性はリコリスの摂取を避けるか、医師のアドバイスを受けるべきです。
こどもの摂取:小さなお子様の摂取はお控えください。
まとめ
リコリスはその独特の甘さと薬理作用で、古来から多くの文化で利用されてきました。消化促進、抗炎症作用、ストレス緩和など、多岐にわたる健康効果を持つ一方で、摂取にはいくつかの注意点があります。適量を守れば、リコリスは健康維持とリラクゼーションに役立つ素晴らしいハーブです。