芒種
沖縄が梅雨入りして、台風1号が発生、いよいよ雨の季節がきた。芒種は種まきの季節で同時に雨の季節でもある。しとしとくらいならいいけれど、土砂降りや、線状降水帯はごめんこうむりたい。被害のないようどうかお手柔らかにお願いしますよ、龍神様。
さて、怒涛の春を終えて全県ツアーも順調にすすんでいる。やればやるほど、関係者に感謝の気持ちがわいている。ライブをさせてくれたお店の皆さん、アテンドしてくれた皆さん、ライブに来てくれたお客さん、一緒に演奏してくれるマリノさんをはじめとしたミュージシャンの皆さん、応援してくれる家族。どれが欠けても続けられなかった。本当にありがとうございました。と、まだ終わったわけでもないのに、ゴールがうっすら見えてきた途端に油断をする因幡の白兎タイプだよ。集中!(太ももぺしっ!)
さて北陸ツアーは心に残るものだった。いろんな意味で。
金沢もっきりやは今年54年を迎える老舗中の老舗。大きく貼られた浅川マキさんの写真と今日も目が合う。久しぶりにお会いしたマスターもお元気そうでよかった。
この日は浅川マキさんの「あの娘がくれたブルース」と浅川マキさんをリスペクトしてやまなかった遠藤ミチロウさんの「カノン」を合わせて演奏した。この日来ていたお客様でミチロウファンがいらした。「スターリンの時によくライブに行っていたから『カノン』と聞いてびっくりした」と言っておられた。「ピアノで歌うとぜんぜん違うね。別の歌かと思った」とも笑。
印象的なできごともあった。ふらりと入ってきた若い女性は1人後ろに座った。マスターによればそんな風にライブを聴きに来店される外国の人も多いそうだ。休憩中に物販対応をしていたら、彼女と目が合った。何か言いたそうだったので近づくと携帯電話を見せてくれた。画面には翻訳ソフトで変換した日本語で「あなたの歌の言葉は一言もわかりませんでしたが、ずっと涙があふれていました。素晴らしかったです」とあった。わー、ありがとう〜。
それからしばらくわたしの下手な英語で会話をしたところによると、彼女はマレーシアからの一人旅の最中だという。金沢に来てからどこかライブが見られるところはないかと町中を探していたのだそうだ。前日にもっきりやの店頭に貼られていたライブのポスターを見て、必ず見に来ようと決めたのだそうだ。
「本当に来てよかった。このライブがわたしの金沢のハイライトになりました」と言ってくれた。いえいえ、こちらこそありがとう。翌日は京都に行くと言っていたね。楽しい旅になりますように。
翌日はレンタカーを借りて富山県小矢部市の創業150年の料亭「魚政亭月あかり」へ。2年前のもっきりやにお客として来てくださっていた女将さんのお誘いでライブが実現した。富山県は「マイラストソング」以来。
それにしても建物の素敵なこと!広い敷地の中をわーわー言いながら案内してもらう。
大正モダンというのか、和洋折衷な感じがとても美しい。もう文化財の域ではないですか。でもよくよくお話を聞くと、もともとは普通の建物だったのを今の大将と女将が二人三脚で20年かけてDIYで整えてきたのだそうだ。それぞれ来歴の違う電灯や家具がちゃんと調和している。とてもセンスがいい。死んだ父が見たらうらやましがるだろうなあ。こういうのわしもやりたかったって。
跡取りの息子さんも料理人になるべく有名店での5年間の修行を終えて戻って来た。そこへコロナ禍がきてしまった涙。家族でお店をやっていく夢が潰えて、どんなにか無念だったろう。
「50代の時に一年発起して、20年かかって店をきれいにしてきて、さあこれからという時にコロナが来た。コロナが終わったら今度は『老い』が来た」となんだか歌の文句みたいな言葉が胸にささってマリノとわたしは絶句してしまった。それだけ手をかけてきた店なのだ。
体調もくずされて、お店もできないでいたけれどやっと最近もちなおして予約制で少しずつお客さんにきていただけるようになったとのこと。息子さんはコロナ禍の間にIT関係のお仕事に就かれることになったそうだ。
今回のライブ会場「月あかり」ではもちろんお食事もできるけれど、ピアノも常設だ。これからは主催ライブだけでなく、箱貸しなどもしていこうかなと言っておられた。ここでライブをやりたいミュージシャンはたくさんいるだろうなあー。
その夜は上の部屋に泊めてもらった。食事も美味しかった。別棟の奥の部屋には、政博さんのレコードコレクションがあって、アルテックのスピーカーで聴くことができる。翌朝にもまたマリノと政博さんがレコードをとっかえひっかえして楽しそうに話しているのをわたしは女将のゆかりさんとお茶を飲みながら見ていました。
能登地震のことは本当に心が痛む。報道も少なくなってしまったから現地の様子はあまりわからず、今回の北陸ツアーも初めは行くべきか迷っていた。でも、両店ともぜひ来てくださいと言われた。現状を見たり聞いたりして欲しかったのだと思う。ボランティアに行ったり、現地を見に行ったりはできなかったけれど、テレビでは聞けないお話が聞けたりした。
このツアーのチケット収益はわずかだけれど義援金とさせていただくことにした。もっきりやさんのほうは、松江市と姉妹都市の石川県珠洲市へ寄付した。また魚政亭のほうは輪島の海女さんたちが所属する能登磯入組合へ女将を通じてお渡しすることにした。その昔海女さんたちが冬の間、魚政亭に住み込みで出稼ぎに来ていたことがあったそうだ。そのご縁を大事にしたいとのこと。
後日直接の義援金をとても喜ばれたと女将からご連絡をいただいた。インスタにも載せていただいた。ありがとうございます。がんばってなんて簡単には言えないけれど、これからも応援していますからね。
全県ツアーはここまでで37県(5月19日現在)残り10県(マジック点灯)。秋田、青森、新潟、福井、群馬、埼玉、栃木、千葉、静岡、和歌山の皆さんどうぞよろしく!