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清水真砂子『子どもの本のもつ力』を読んで
『ゲド戦記』全6巻の翻訳家でもある、児童文学者・清水真砂子さんの『子どもの本のもつ力』を読んでみました。
清水さんの選んだ60冊の子どもの本ということで、
「どんな本に出会えるのだろうか」
と、期待を寄せていましたが、この本にはそれ以上のものが、つまっていました。
清水さんはこう言うのです。
「子どもの本」というと、多くの人が
反射的に「かわいい」と、いうけれど、その「かわいい」子どもの中に、
自分の考えを主張したり、大人の言うことをきかない子どもは想定されているでしょうか?と。
そして、
子どもを「娘」とか「おばあさん」とかに言いかえてもいい。
私たちは、自分の支配下に置ける者に対してしか〈かわいい〉とは言わないのではないかと。
〈かわいい〉という言葉を聞く度に、『支配』の匂いをかぎとらずにはいられないとも。
自分の思い通りになりそうなもの。自分の価値観がひっくり返されることなど、よもや起こりそうもないと見えるもの。・・・・・つまりは、心地よい現状維持が保証されるもの。
に対してしか使わない言葉だというのです。
そして、子どもの本と聞くと、反射的に〈かわいい〉という言葉が出てくるとしたら、なんだかもったいない。
と、続けるのです。
だから、彼女の選んだ本は、子どもが喜びそうだからとか、子どもの役に立ちそうだからと考えてとりあげた本は一冊もないそうです。
自分が読んで、手にした喜びを、誰かと分かち合いたかった。ただそれだけで選んだものだそうです。
それぞれの本についてのメッセージを読んだだけですが、想像力が必要な絵本や、夢のあるお話や嬉しいことだけではなく、悲しい話や、怖い話、そして、戦争のこと、貧乏のこと、平等でないこと、世界の遠くで起きた事など、さまざまなことを感じられる本が選ばれていると思いました。
目が弱ってきている私に、60冊はかなりハードルが高いですが、少しずつ読んでいきたいと思っています。
興味深い本ばかりで、どれから読めばいいのやら。迷うぐらい楽しみです。
私がとやかく言うよりも、彼女の言葉を載せたほうがずっといいと思ったので、最後に、清水さんのまえがきとあとがきの言葉を少し引用したいと思います。
☆まえがき☆
私はよく学生たちから質問されました。「先生はどうやって、子どもに贈る本を選ぶんですか?」
私の答えはいつも同じでした。
「『おばちゃんは、ぼくが子どもだったから、あんな本をくれたんだ。』と、将来言われない本を。」
ここにとりあげた本もそういう本であってほしいと、私は祈るような気持ちでいます。
☆あとがき☆
私は、子どもの文学ってステンドグラスみたい、とよく思います。黒一色の真っ暗な世界と見えていたものが、ステンドグラスを通した光の中ではそれぞれが美しい彩りをもって立ち上がってきて、世界のあちこちに暮らす人々とつなげてくれる。「国際競争に勝つため」でもなければ「この社会の勝者になるため」でもなく、時空をこえて、お互い人としてつながるために、子どもの本もあるのだと、あらためて思うこのごろです。
☆☆☆