映画『桜のような僕の恋人』を観て
「彼女はキレイだった」の中島健人と、「恋は雨上がりのように」の松本穂香の主演作品。原作は、宇山佳佑。
主人公・はるとは、無料クーポン券に釣られて入った美容室で、みさきと出会い、彼女のお客さま第一号となった。
毎月カットでご指名しては高鳴る胸。やっとの思いでデートに誘おうと振り向いた瞬間、はるとの耳にみはるのはさみが!
この耳の大出血事件がきっかけで、ふたりは満開の桜の元で初デートすることとなる。
めでたしめでたしとなる筈だったが、
出会ったときに写真家だと言ったけど、実はもう写真家になる夢を諦めてしまっていたと告白したはるとに、みさきは大激怒する。
「一度決めた夢なら簡単に諦めないで、何があってもカメラ続けなさいよ。」
と、激しくまくしたてて、立ち去ろうとするみさきに、はるとは叫ぶ。
「みさきさん、変わりたいんです。貴女に好きになってもらえるように。」
この言葉を残して以来、すっかり連絡を絶っていたはるとが、ある日突然、写真家助手の初月給を携えて戻ってきた。
そして、春のようなふたりの恋がようやく輝き始めたのだ。
でも神様はなんと意地悪なんだろう!
その幸せ絶頂の矢先、みさきの身体に異変が起こりはじめたのだ。
急に目立ち始めるしらが。時おりひどくなる体の痛み。続く微熱・・・
なんとみさきは、時間を早送りするような、世にも珍しい早老症を発症してしまったのだ。
一年に何十歳も歳をとり、体が弱って行く恐ろしい病気だという。
醜く年老いた姿をはるとだけには見せたくないみさきは、ひとりで別れを決める。
「ずっと一緒に歳を取って行けたら良かったね。さよなら、はると君。」最後と決めたデートで、そう心でつぶやいていたみさきの想いが、あまりにも切なくて哀しい。
みさきに突然振られたはるとは、何がなんだかわからない。
そのショックと苦しみをかかえながら、写真の仕事に打ち込んでいく。
どこまでも救いのない叶わぬ恋の物語は、ラストの切ないすれ違い?で絶頂をむかえる。
彼女の病気に気づいてあげられなかったことを悲しむはると。
そして彼女に気づいてあげられなかったことで、自分を責め、嘆き苦しむはると。
悲しい悲しいお話なのだが、お互いを想い合う切なさと温もりが、胸にしみてくる。
「魔法をつかえるから、美容師になったんです。誰かの髪に魔法をかけて、自分のこと可愛いと思ってもらいたくて・・・」
「誰かのためだけに撮った写真を僕は初めて見たよ。」
等々。ちりばめられた台詞たちも、印象的だった。