熱々のうちに食べてほしかった。
今夜、Tくん(主人)はzoom飲みだった。
ぎりぎりまで仕事をしていて遅くなったし
どうせ一緒に食べれない。
「ふだん作らないようなものに挑戦してみよう」
居酒屋メニューっぽいものを
レシピ検索しながら作ることにした。
冷蔵庫の中身を見ながら
作って順番に出したのがこんな感じ。
~ 居酒屋っぽいメニュー ~
きゅうりとセロリのピリ辛
トマトと茄子のチーズオリーブオイル焼き
ししゃものみりん煮
アンチョビポテトフライ
だし焼き お餅グラタン
レシピがあればたいてい失敗しないし
居酒屋メニューっぽいだけあって
工程も少ないので楽しい。
いいじゃん。
ビールに合いそうじゃん。
と、全然お酒も飲めないわたしも
そんなことを思いながらちょこちょこ運ぶ。
* * *
とくに、最後の「だし焼き お餅グラタン」は
トースターから取り出した時点でおいしそうだった。
表面だけこんがり焼かれたお餅が
ぐつぐつ膨らんでいる。
だしと、刻んだネギが、ふわぁ~っといい香りがする。
ちょっと味見したら、やっぱり。
これは自信作。
Tくんは、だしの香りが好き。
きっとおいしいって喜んでくれるはず!!
でも、猫舌だから少し冷まして
ちょうど食べごろになったころに運ぶ。
「ここに置いておくね」
まだかなー
早く食べてくれないかなー
おいしいねって振り返る笑顔が見たくて、
しばらく近くで待ってみる。
まだ会話中か……
食器を洗いながらチラチラ見る。
ところが、なかなか食べてくれない。
まあね、飲み会も盛り上がってるし…
いやでも。
どんどんお餅しぼんでる。
まわりが固くなってきてる。
「熱いのはお皿だけだよ?」
もう一度だけ声をかけたけど
「OK」と目で合図しただけで
お皿を取らずに会話に戻ってしまうTくん。
* * *
しばらくして、やっとお餅を食べたTくんは
わざわざマイクミュートにして振り返ってくれた。
「お餅、おいしいね! ありがとね」
でも、熱々を食べてほしかったわたしは
すっかり拗ねていた。
「もう冷めちゃったもん」
Tくんは
わたしの様子を察して
「…ごめんね、おいしいよ」
と言って、またイヤホンを耳に戻した。
* * *
はーーー。
子どもか、わたしは。
でも。
きっと喜んでくれると思ったから
その反応が見たかった。
熱々を食べてほしかった。
一口食べてくれたら満足で、
そのあとどんなにゆっくり食べてくれても
よかったのに。
ちょっと期待しすぎたのかな。
料理なんて当たり前になってゆくのかな。
そのうち、
料理出しても意識はどこか他のところに
いったりするのかな。
ちょっぴり反省しつつも
やっぱり かなしくて、ぽろぽろ泣けてくる。
ああ、もう。
情緒不安定はすべて妊娠のせいにしてしまおう。
あとでわたしの涙の跡を見て、
またTくんはぎゅってしてくれるんだろう。