地域おこし協力隊をたずねて ~岡山県玉野市~|2024.小暑・温風至
温風至(あつかぜいたる)
夜ご飯を食べた後にどうしてもアイスが食べたくなって、コンビニまで夜散歩をした日のこと。
コンビニとはいえども、知り合いに会うかもしれないし、店員さんとやりとりをするかもしれないから左耳に補聴器をつけて玄関を出ると「ジーーーー」っという音が鳴り響いた。
一緒にいたお耳の仲間は「何も聞こえないよ」と言う。おかしい。
暑さにバテて、ついに補聴器も壊れてしまったのだろうか。二度ほど電源を落として再起動するけれども、やっぱり変な音がする。
仕方がないから補聴器の電源を落としてコンビニへ向かい、店内に入ってから再度電源を入れてみた。すると、何事もなかったようにいつも通りの音の世界がやってきたので、アイスを選んでお会計をしてまた外に出る。
するとやっぱり、異音が始まる。これはもう、補聴器の故障ではなくて、わたしが今まで聴いた経験のない音が鳴っているのだろう。
その正体が掴めないまま数日。先日、キコエル友人と夜道を歩いていたら、またあの「ジーーー」という音が聞こえてきた。
「ねぇ、なんか変な音しない?」
と尋ねると
「うーん。なんの音もしないよ。カエルが鳴いているくらい」
と返ってきた。
「カ・エ・ル?あの、蛙ですか?」
カエルって童謡のように「ケロケロ」「クワックワ」と鳴くものだと思っていたから、びっくり。まぁ、ケロケロもクワックワも聴いたことがないんだけれども。
どうやら梅雨の時期に鳴くカエルには「ジーーー」と鳴く種類のカエルがいるんだとか。
先天性の聴覚障がい者の多くは、動物や虫の鳴き声を聴いたことのある人は少なくて、どれも童謡の歌詞や漫画のオノマトペのような視覚的な情報からそれらを「知っているつもり」になることが多い。
わたしもそのうちの一人なんだけれども、住む場所が変わったり補聴器の性能が上がったりするタイミングで、新しく知る音も多くある。
昨年の夏に地域おこし協力隊の面接で倉敷に来たときも「リリリリリ」という音が聞こえてきてびっくりしていたら「これは、夜の虫の音だよ」と教えてもらった。
おもしろいことに、そのあとトーキョーに戻ると静かな夜にあの「リリリリリ」が聞こえてきたのだ。
苦手な食べ物も、新鮮なホンモノを食べると美味しさがわかって食べられる。みたいなことってありませんか?
それと同じように、より自然に近いところでじっくりと「聴く」を経験した音はわたしのものなっていつのまにか自然に「聞こえる」ようになることがよくある。
倉敷駅から市役所に向かう大通りは車の往来も多くてなかなか気付かないけれども、夜の美観地区や一歩路地に入るといろんな音が聴こえてくる。
それがなんの音なのかはまだまた分からないわたしが #くらしきで暮らす 日々を重ねるなかで自然の音を「聴く」経験を繰り返して、世界がぐっと広がる。
そして、ときたまトーキョーに帰ったり他の地域を旅しながら「あ、〇〇の声かも」みたいなものが増えていくのだったら、とってもおもしろいなぁなんて思う。
地域おこし協力隊をたずねて ~岡山県玉野市~
岡山県倉敷市に移住して8ヶ月目。同じ市内や県内で活動する地域おこし協力隊をはじめとする「移住者」コミュニティのつながりの強さをよく感じる。
聴覚障がい者も日々の生活のなかで「分からない」という経験を積み重ねるしんどさがあるからこそ仲間意識が強いけれども、移住者や地域おこし協力隊もその土地の少数者として仲間意識が強いように思う。
人が仲間を作ろうとするのは、一人では無力だということをよく分かっているがゆえなのかもしれない。
そしてありがたいことに、わたしも地域おこし協力隊をはじめとする「移住者」の仲間たちに支えられながら、倉敷での生活に馴染もうとしている。
このコミュニティは、月に一回程度それぞれの活動する地域を持ちまわって交流会をしていて、前回は倉敷市のお隣にある玉野市の協力隊が幹事をしてくれた。
彼女は移住支援の活動をしているので、市内案内のプロ。今回は、この交流会参加メンバーを対象にしない案内をしてくれた。
・倉敷駅→宇野駅までは公共交通機関で1時間〜1時間半
倉敷市と玉野市は隣接しているけれども、電車は直接通っていない。
そのため、公共交通機関を利用して向かう場合は
・電車のみで行く場合は一度岡山駅へ出る
・バスで茶屋町駅まで出てから電車へ乗り換える
の二択。
所要時間が短いのと、倉敷市内を走る両備バス及び下電バスは身体障害者手帳の提示で乗車運賃が半額になるので、節約も兼ねてわたしは後者を選択。
・渋川海岸
宇野駅からは、玉野市の協力隊が車を出してくれたのでありがたく乗せてもらった。
「倉敷に運転免許証なしで移住してきた」と話すと車社会に生きる人たちにはびっくりされがちだけれども、どの人も無理に免許を取ることを強要してくるわけでもなく「それなら、車出すよ」とか「こんな方法だったらどうかな?」と、車がないなりに移動する術を提案してくれる人たちばかり。
だから、運転免許がないなりにもそこまで困らずに過ごせているのが現状。
渋川海岸は、倉敷市と隣接している海岸。わたしが公私共によく通っている王子が岳の向こう側の海岸で。
穏やかな瀬戸内の夕方、好きだなぁと思いながら砂浜を歩く。
ちなみに、高石真梨子的渋川海岸のオススメポイントはこの車椅子でも波打ち際まで進んでいける整備された道と
セブンティーンアイスです。お気に入りの海をお気に入りのアイスと共に楽しめるの、最高。(推しアイスは、全国どこにでも売っているカラフルチョコ味)
・玉比め神社
こちらは、竜宮城伝説があるという玉比め神社。
この巨石がシンボルらしく、みんなが必死にお願い事をしていた。わたしも、とりあえずパワーを分けてもらうべく触ってみるなどしてきたよ。
・宇野のチヌ
数年ぶりに、チヌに会ってきた。瀬戸芸は、来年度。任期中に瀬戸芸(瀬戸内芸術祭)があるのも、倉敷市の地域おこし協力隊に応募した理由のひとつ。
宇野港、通うにはやっぱり運転免許が必要かしらね……まだまだ悩む日々。
・日の出海岸
ご飯までもう少し時間があったので、夕焼けを見に日の出海岸へ。
歩いていけそうな距離にある島々は、香川県のものなんだとか。東北・関東に住んでいた頃は四国なんて遠い果ての地のようなイメージだったけれども、玉野までくればあと僅か。
・KEIRIN HOTEL 10
そして、交流会のメインご飯会はKEIRIN HOTEL 10にて。このホテル、以前も関西から友人が遊びにきたときにディナーで使ったことがあるんだけど、競輪場を眺めながら美味しいご飯を食べられるユニークなレストラン。
前回カレーを食べたので「今日は海鮮丼を食べるぞ!」と意気込んできたのに、あっさりと本日のディナーのエビチリに目移りしてしまった。
限定ものに弱すぎるんですよ、わたし。
でも、美味しいご飯を食べてお腹も満足、みんなと久しぶりに会えて心も満足、満たされた楽しい時間を過ごせたので良し。
帰りは、車でお迎えに来てもらってウトウトしながら倉敷まで戻った。ありがたい。みんなに助けられながら、楽しく生きている。
・「移住」をキーワードにする協力隊と繋がれる心強さ
地域おこし協力隊仲間と言っても、人によって活動内容は大きく違う。仲間だけれどもそれは「移住者」という意味合いや「地域おこし協力隊」という肩書き的な仲間で。
同じように「移住」をキーワードに活動している協力隊で相談できる相手がいないわたしにとって、玉野市で「移住」をキーワードに活動する隊員と繋がれたことはとても大きな収穫だったなと思う。
彼女は直接的支援、わたしは情報発信とアプローチは違うけれども、わたしはこの8ヶ月間で活動を通して実際の移住希望者に会ったことがない。行政から「倉敷の魅力度調査」なる統計資料はもらったけど、それを見たところで相手の顔は思い浮かばない。
「あなたも移住者でしょう」と言われてしまえばその通りなのだけれども、わたしはライターとしての実績を積みたいという「転職」の感覚が強かったし、どこかに「定住」したことのない転勤族育ち。ありがたいことに元々知り合いがどこかと瀬戸内地域の他拠点生活をしている人も多く、その友人からもらう情報で充分だと思っていた。
だから、意気込んで移住相談をしたり情報収集したりというステップを踏んでいない。
そんなわけで「情報発信」といわれても、求められている情報ってなんなんだろうと日を追うごとに分からなくなっている気がする。そういうときに、直接支援をして移住希望者のナマの声を知っている隊員と情報交換ができるパイプができたことは大きな収穫。
移住者×情報発信×聴覚障がい
孤独だなぁと思うことも多いから、各ベクトルに「仲間」がいることは本当に心の支えだと思う。
このnoteも、季節のお話か本題で倉敷での生活のことを伝えるのはもちろん(仕事だから)、全国のどこかで孤独を感じている人に「この共通項があるから、この部分は仲間だな」と思ってもらえるコンテンツになったら良いなとも思う。
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