日常と観光の狭間で暮らす日々|2024.啓蟄・菜虫化蝶
倉敷の洗礼を受けました
とかく倉敷は、用水路が多い。
今まで住んできた兵庫県なんかも酒米の田んぼが多かったからそれなりに用水路はあったけれども、倉敷の用水路はなんといっても大きくて深い。
調べてみると、これは倉敷市だけでなく岡山市も同様らしくて、毎年何人もの人が用水路に落ちて死亡していることから「魔の用水路」と呼ばれているらしい。
そんな魔の用水路は、やっぱりわたしの家の前にもありまして。特に夜道をあるくときなんかはヒヤッとするもんだから、いつも足元にスマホで明かりを灯しながら歩くなどする。
のだけれども、ついに先日。お天気の良い昼下がりに「よし、打ち合わせに行くぞ!」と家を出て自転車を漕ぎ出した瞬間に、向かい側から急に車がやってきて。慌ててサドルを切ったら、目の前は用水路。
あぁ、これはもうアカンやつや……
と自転車だけを手放した……つもりだったけれども、自転車が落ちてコンマ数秒で、わたしも用水路の縁に転けて。そのままトポンと、落っこちた。
コケたときに擦りむいた擦り傷が痛いのはもちろんのこと、初春の用水路の中はとんでもなく冷たくて。足首まで用水路に浸かってうなだれていると、車の運転手さんが出てきてくれて「大丈夫か?」と心配してくれた。
とにかく足が痛くて、身体もびっくりして動けなくなってしまったので、自転車だけは運転手のおじさんに引き上げてもらって、わたしも用水路から這い上がった。ぶつかったわけでもないのに、親切なおじさんで本当に助かった。
そんなわけで、全身ずぶ濡れの状況で帰宅して、全身総着替えをして、もう一度自転車にまたがって打ち合わせへ出発。
もちろん、打ち合わせには遅刻するのが確定していたので「コケたので、遅刻します〜」と連絡していた。でも、「一度家に帰らなくてはならないような遅刻だったらこの子は今日は来ないだろう」と思われていたらしく、打ち合わせ会場に行ったらえらくびっくりされた。
ほらわたしは、もと学校の先生なのでね。休み時間や体育の時間にいくら派手にコケた子どもだって、保健室で手当をしたら次の授業にはケロッとした顔で参加していたのでね。
もうそれくらいの感覚で、着替えて傷口を洗って絆創膏を貼ったらもうオッケー。で、打ち合わせ場所についたらみんなが目をまんまるにして
「何があったの?」
と言うから
「いやー、用水路に落ちちゃいましてね」
とケラケラ笑って答えたら
「生きててよかったよーー」
と安堵された。あんまりにもみんなが心配してくれるもんだから、用水路に落ちるというイベントは倉敷市民にとってとても重大な事故なのだろうと思って調べて知ったのが、あの「魔の用水路」というキーワード
そんなわけで、岡山県倉敷市の洗礼行事「用水路に落ちる」を経験したので、また一歩倉敷人っぽくなった移住4ヶ月目。
最近は「先日、用水路に落ちまして。倉敷の洗礼を受けましたよ〜」をネタに自転車をブイブイいわせながら倉敷市街を走り回っている。
やっと傷が治ってきたのでね。
手の擦り傷は膿んでしまうし、足の痣はなかなか治らないしで凹んでいた期間は「もう、用水路に落ちただなんて恥ずかしいことは誰にも言わないぞ!」と思っていたけれども、治ってくると途端にネタにしたくなってくるもんだから、わたしは生粋のお調子者なんだと思う。
まぁでも、怪我はしないにこしたことはないので、これからは安全安心に暮らしていきたい所存。
菜虫化蝶(なむしちょうとなる)
そんな倉敷の魅力のひとつは、やっぱり、街の真ん中に川が流れていること。
わたしの生まれ育った宮城県仙台市にも、街の真ん中に広瀬川や梅田川が流れていて。街の真ん中に川が流れていて、ふと顔を上げると広い空とお山が見える。
そういう景色に安心感を覚えるので、倉敷という街にやってきてみて、街の真ん中を倉敷川が流れるこの景色がとんでもなく愛おしいと思っている。(ちなみに、用水路に親しみは感じていない)
倉敷美観地区は、その象徴のような景色で。そんな倉敷美観地区では、春のお祭り「倉敷春宵あかり」が開催されている。
倉敷美観地区は、お仕事で使っているコワーキングスペースや市役所の近くということもあって、自転車をブイブイ乗りまわしているスポットのひとつ。
川舟や町家ってThe 観光!なイメージを抱きがちだけれども、自転車で美観地区をサイクリングするたびに、生活の足で観光地を走っていることをくすぐったく感じたり。
そんな生活の一部だからこそ、倉敷川の畔で春宵あかりが開催されているのは横目で確認しつつ「まぁいつでも行けるしな」とわざわざ立ち止まることもなくなっているのもまた、わたしの暮らしで。慣れって、なんて恐ろしいんだろう。
でも、この週末はちょこっと時間ができたので「今がその時なのでは!?」といそいそと夜の倉敷美観地区へ行くことに。
改めてゆっくりと歩いてみて、美観地区独特の趣ある町並みとライトアップされた川岸の景色の綺麗さに心を奪われて。日常を営む延長線上で、その日の思いつきでふらりと、観光ができてしまう。なんておもしろい街なんだろうなぁとしみじみと。
この街で暮らすことが徐々に当たり前になりつつも、季節が遷ろうなかで新しい景色を見せてくれるこの街で、きっとこれからも、まだまだ知らないわたしに出会えるんだろうなぁと思うと、わくわくがとまらない。
暮らし、観光し、日常を。
くらしきで暮らしていく日々を一歩ずつ踏みしめながら、本格的な春の陽気を心待ちにしている。