きこえない 地域おこし協力隊 ユニバーサルルームと手話での学びと |2025.小寒・雉始雊
雉始雊(きじはじめてなく)
年始の東京帰省を終えて、滋賀での協力隊研修を終えて、やっと倉敷に帰ってきた。
この週末は久しぶりの倉敷で取材や撮影のお仕事が立て込んでいたので、平日になった今日、やっと落ち着いてPCに向かっている。外でいろんな人たちと関わることと同じくらい自宅で黙々と作業する時間も好きなので、自分の塩梅で出たり籠もったりできるワークライフバランスを結構気に入っている。
そうそう。
東京へ帰省した理由は、お茶の教室の初釜があったから。
初釜というのは新年最初のお茶事で、いわゆるお稽古はじめの日。
こういう節目節目に「まりちゃんもぜひ来てね」と連絡をくれる門下のみなさまが東京に居場所を残してくださるおかげで、倉敷でも頑張れている。
「移住」って、今まで暮らしていたコミュニティからも抜けることになりがちなので、それがこと情報量の多い三大都市圏から地方だと抵抗を感じる人もいるんじゃないかと思う。
わたしも、例にもれなくその一人で。
定期的に集まりたいカメラ友達やお耳の仲間、趣味の美術館巡りにお茶のお稽古。
もちろん、倉敷にだってカメラとカレーを愛する人はいるだろうし、お耳の仲間だっているし、美術館だってあるし、お茶の教室もある。
でも、特別展の数も仲間の数もお教室の数も少ないし、そもそも数年かけて作ってきた「わたしの居場所」だったからこそ、手放すのが惜しいのは当然だと思う。
それでも、わたしが倉敷にひょいと移住できたのは東京に両親の家があるから。わたしが「居場所」だと思えるコミュニティのある場所にちゃんと拠点があるからこそ、倉敷も東京もわたしの拠点だと胸を張って言える。
そして、東京の「居場所」だと言えるコミュニティが「今度、こんな集まりがあるんだけどまりちゃんも帰ってこられる?」と声を掛けてくれるから。安心して日常を倉敷で暮らして、たまの非日常に東京へ帰れる。
同じように、学生時代を過ごして初めてお耳の仲間ができた仙台もわたしの拠点のひとつで。仙台におじいちゃんのお家があって、わたしの部屋がそこにあり続けるので、倉敷・東京・仙台の3拠点生活をしているような感覚。
転勤族育ちのわたしにとって「完全な移住」が何なのかはよく分からないけれども、居場所がたくさんある多拠点生活はなかなかに良いものですよ。と、常々思う。
令和6年度地域おこし協力隊ステップアップ研修を手話通訳付きで受講してきました
東京での初釜を終えて、1月15・16日の二日間は滋賀県大津市にある全国市町村国際文化研究所で開催された「地域おこし協力隊ステップアップ研修」に参加してきました。
全講座に手話通訳を派遣してもらったので、キコエル隊員と同じ条件で研修に臨むことができました。本当に感謝です。
全講座に手話通訳を派遣してもらった理由
これはもう、単純にわたしに聴覚障がいがあるからです。
特に今回は、全国から地域おこし協力隊が集まるので、ほとんどの参加者が初めて会う人。しかも、隊員だけで70名近い参加者がいて大きな会場での研修だったので、口の読み取りや補聴援助システムの力だけでは聴き取りに限界があると判断しました。
通訳派遣のお願いは、倉敷市のくらしき移住定住推進室を通してお願いしました。2024年4月に障害者差別解消法の改正があった影響もあるのでしょうか。スムーズに手話通訳派遣の申請を許可していただき本当にありがたかったです。
当日は、二日間で七名の手話通訳者さんがわたしのために研修所まで来てくださいました。
手話は地域ごとに方言があるのでどの手話通訳者さんも「内容、分かる?」と心配してくださいましたが、わたしに初めて手話を教えてくれた友人が近畿出身の子だったこともあって、わたしは近畿地方の手話に親しみがあるので大丈夫。
滋賀県、手話通訳者さんのレベルも高くて快適に読み取れました。本当にありがとうございます。
全国の隊員さんも、たくさん話しかけてくれました
手話通訳者が横にいると、わたしではなく手話通訳者さんに対して話しかける人も多くいますが、多くの隊員さんがわたしの目を見てお話をしてくれました。これ、ほんっとうに嬉しい。
最初に話しかけてくれた隊員さんは手話学習経験者のかたで手話を使って話しかけてくれたし、スタッフや同じ岡山県の隊員がわたしに向かって口をゆっくり動かして話しているのを見て、同じように話しかけてくれました。
通訳者さんもわたしがキコエル参加者とコミュニケーションをしているときはそっと見守ってくれて、あとから内容を要約して再度伝えてくれたり、どうしても分からないときだけそっと通訳してくれたりと、細やかな心遣いをしてくださる方ばかりで。
おかげで、今回の参加者で作ったLINEグループにもいち早く入れてもらい、わたしと同じように移住や情報発信に携わる隊員や地元宮城出身の協力隊などたくさんの仲間と顔見知りになることができました。
同じ自治体で相談できる移住や情報発信ミッションの隊員がいないわたしにとっては、本当に心強い出会いばかりでした。
(活動での個人的な困りごとも「ここはなんでも本音で相談する場所だよ」と寄り添ってもらって、ざっくばらんに相談できたのもありがたかったな)
ユニバーサルルームを用意していただきました
一番のびっくりポイントは、研修所にユニバーサルルームがあったこと。
そして、わたしがバユニバーサルルームに案内されたこと。
ちなみにユニバーサルルームというのは、健常者や赤ちゃん、妊婦、けが人なども快適に滞在できることが必須条件で、さらに車いすでも異動しやすいように段差をなくすなど、設計にも工夫が施されたお部屋のこと。
聴覚障がいのあるわたしは、補聴器を外すと音が聞こえません。もちろん、お部屋へのノックも分かりません。
そのため、ユニバーサルルームにはお部屋の入り口にインターホンが設置されていて、
インターホンが鳴るとパトライトという電気が光るシステムが導入されていました。
これ、大学院在学時の寄宿舎にも設置されていて、とっても重宝していたのを思い出します。
さらに、お部屋は車いすでも入れるように広く、段差がない設計。
窓際のカーテンも、リモコンで操作できるようになっていました。
また、お部屋の中にユニットバスがあるのもありがたいポイント。
車椅子で、どちらの身体が麻痺していても入りやすい設計で感動!
とはいえども、わたしは体が自由に動くので、ほかの隊員は共用の浴室やシャワー室を使うのにわたしだけ部屋のお風呂を使っていいものか、ちょっぴり後ろめたく思いました。
そのことを他の隊員に話したら
「浴室で話しかけられたり、シャワー室ノックされても気付かないでしょう?部屋で入れた方がそういうストレスなく過ごせていいんじゃない?
わたしたちとまりちゃんでは、お風呂で話しかけられることやノックに気付かないことへのストレス度が全然違うと思うよ」
と言ってもらい、目から鱗。
確かに、今回の研修の目的は集団行動を送ることではないので、研修外の時間におこるであろう不必要なストレスを予防してもらっていると思えばありがたすぎる配慮。
おかげで、ゆっくりとお風呂に入って気持ちよくベッドインして、翌日の研修に備えられました。
聴覚障がいがあっても、地域おこし協力隊の研修はキコエル隊員同様に受講できる
今回の学びは、聴覚障がいがあっても、地域おこし協力隊の研修はキコエル隊員同様に受講できるということです。
どの隊員も、手話を使う聴覚障がいのある地域おこし協力隊と出会ったのははじめてだったそう。でもこうしてたくさんの隊員がいる場で、聴覚障がいのある協力隊がいることを知ってもらえたのは大きな収穫。
そして、今現在活動している隊員のなかに、日本語をベースとする中途障がいの聴覚障がい隊員がいることも判明。
とっても前向きに活動されている方とのことなので、いつか出会えたらいいなと思います。
また次回以降、どんな学びがあったのかもレポートしますね。