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高石真梨子のお耳のトリセツ vol.7 倉敷市地域おこし協力隊採用面接と合理的配慮|2024.秋分・雷乃収声


雷乃収声(かみなりすなわちこえをおさむ)

「桃が好き」と大きな声でアピールしていたら、この夏は倉敷市内各所の友人から桃をお裾分けしてもらった。関東や東北にいた頃は、家族5人で2つの桃を分け合っていたのに、倉敷に来てからは一人でまるっと一個かぶりつくようになってしまった。

めっちゃ贅沢。

お裾分けって、親戚のおじちゃんやお茶の先生みたいに、かわいがってくれている年上のかたから【恵んでもらう】みたいなイメージが強かったから、同じくらいの年の友達から果物をわけてもらうっていうのは、なんだかとっても新鮮。

しかも、つい1年前までは縁もゆかりもなかった倉敷市内に住むお友達が「まりちゃん、倉敷の桃食べた?」と気にかけてくれたことが本当にうれしくて。あぁ、この地の人たちに仲間として受け入れてもらいはじめているんだなって。

だから、取材でぶどう狩りに行ってたんまりとぶどうを手に入れた日には、今度は私の番だと、いそいそと

ぶどう狩りでぶどうをたくさん採ってしまって……一緒に食べませんか?

と友人にメッセージを送った。ありがたいことにみんなが引き取ってくれて、しかも「ありがとう~」と感謝までしてもらって、すっかり満足。

お裾分けをしてもらう段階では、どこか「初めての経験をさせてあげたい!」と歓迎されているような、まだまだお客様のような気持ちだったけれども。

実際に自分が地域の人にお裾分けをする側になってはじめて #くらしきに暮らす わたしを見つけた。

秋。実りの秋。

倉敷市地域おこし協力隊も、11か月目を目前にしています。

【秋分】太陽が真東から昇り真西に沈む、昼と夜の長さが同じになる日のこと。
初侯:雷乃収声(かみなりすなわちこえをおさむ) 9月22日~9月27日
次侯:蟄虫坏戸(むしかくれてとをふさぐ)9月28日~10月2日
末侯:水始涸(みずはじめてかるる)10月3日~10月7日

茶道手帳2024

倉敷市地域おこし協力隊採用面接と合理的配慮

倉敷に移住してきてから、定期的にお酒を飲んだり美味しいご飯を食べたりする女子会を開催している。メンバーは三人で、みんな倉敷とことこのライター。

三人なのは、わたしが口を読み取れる相手が多くて二人までだから。以前、ほかの人と飲みに行こうと約束したら相手が勝手にほかの人を誘っていて、わたしの知らないうちにどんどんメンバーが増えていったときは、本当にびっくりした。

「親睦会」のようなものだったら、新たな出会いを求める場としてそれはそれで楽しめるけれども。酔っぱらったら読唇のスキルもお耳の制度もだいぶ落ちるので、お酒は楽しめない。

プライベートで会話やお料理を楽しんで、あわよくばほろ酔いたい日は少人数で存分に楽しみたい。

ちなみに一人は、倉敷とことこで一緒に活動しようと誘ってくれた人。そしてもう一人は、地域おこし協力隊の採用面接の面接官だった人。

三人でしっぽりとお酒を飲みながら「このメニュー、一年前にも食べたなぁ」と呟いたら「もう、季節を一周してしまったのね」と三人でしみじみと。

「そういえば、倉敷市地域おこし協力隊の採用面接って、個人面接が1時間近くあったよね」という話で盛り上がったので、今回は、協力隊採用面接でお願いした合理的配慮の話を振り返ろうと思う。

1.受け入れ団体(一般社団法人はれとこ)との事前面談

やっぱり移住を伴う転職だし、取材ライターって聴覚障がいのあるわたしでもできるのかしら……と心配になったので、倉敷とことこを受け入れ団体とした倉敷市地域おこし協力隊を紹介してくれた友人とはれとこの代表と三人でオンライン面談の場を設けてもらった。

事前にわたしの音声を聴いてもらったり、zoomの字幕生成機能を一緒に確認してもらったり、想定される取材場面とその対応、採用試験でどんな合理的配慮を依頼するのか……具体的な話ができた。

はれとこは、フルリモートかつ音声を伴うミーティングがほとんどないとのこと。テキストコミュニケーション……slackをメインに使用しているとのこと。音声でのやりとりが飛び交う会議、今までは全て手話通訳のあることが普通だったので、ここはかなり不安要素だった。

だから、聴覚障がいのあるわたしがコミットすることで周りの働き方にも特に影響がないことを確認。代表はガジェット系にも詳しいので、音声認識アプリ等にも前のめりで「この人のいるトコロだったら働けそう!」と見通しがついた。

2.書類選考時に「聴覚障がいがあること」「採用の過程、採用後に合理的配慮の提供を受けたいこと」を明記

前職が公務員だったので、自治体は研修等の情報保障の制度がしっかりしているイメージがあったし、人前に出るお仕事なので、聴覚障がいがあることを隠す理由があまりなかった。

むしろ、聴覚障がいのあるわたしが移住する・ライターをすることをウリにしたかったので、書類選考の時点で自分の聴覚障がいや、試験時・採用後にお願いするであろう合理的配慮について、包み隠さず記載した。

おかげで、倉敷市側が書類受理の連絡と共に、採用試験で提供できる合理的配慮やできない場合の代替手段をしっかりと提示してくれたので、安心して選考に臨めた。

3.オンライン説明会は、zoomの自動字幕生成機能を利用

書類を提出すると、まずはじめに受けたのがオンライン説明会。

・手話通訳の派遣ができないのでzoomの自動字幕生成機能を使用すること
・個別説明会であること

がメールで送られてきたので承諾。
当日も、聴き取りにくかった場合には聞き直しができることが事前にアナウンスされた。

倉敷市役所の職員さんとは一度も話したことがなかったので、口の形を読み取るようにiPadのアカウント一台、画面共有された資料をみるためにPCのアカウント一台の計二アカウントでミーティングに入出。

初めて対面で顔を合わせるときまでは、この方法が続いた。

4.採用面接時は、手話通訳一名派遣&面接時間の延長措置

採用面接は、倉敷市役所を会場に対面で開催された。

こちらは、手話通訳が一名派遣された。手話通訳者とは面接の30分前に顔合わせができたので、お互いの手話表現やバックグラウンド、面接で話題になりそうなトピックの手話表現の確認をていねいにおこなうことができた。

手話って方言があるので、関東なまりのわたしの手話を読み取ってもらえるか、通訳者さんの手話をわたしが読み取れるか、不安もあったけれども。幸いにして、手話も読み取りもとっても上手な通訳者さんが担当だと分かってほっと一安心。

倉敷市役所の聴覚障がい職員のほとんどは、庁内でのコミュニケーションに音声を活用しているし、面接官は聴覚障がいのある人と関わったことのない人も多いから音声も使いながら答えると良い、と助言をもらったので手話と音声を併用して面接へ臨むことに。

実際の面接では

面接官の音声

手話通訳

手話で読み取った内容があっているか確認してからわたしが答える

と、回答までにタイムラグが生じることが想定されたので、ほかの候補者よりも15分ほど長い設定時間で面接がスタート。まるっと1時間【6人ほどの面接官対わたし】という、文字どおりの囲み面接。

とっても緊張したけれども、はれとこ関係者のみなさんのお人柄は友人から聞いていたし、市役所の職員さんたちとも合理的配慮の件で密に連絡を取り合っていたので、安心してお話ができたように思う。

手話通訳やzoomの自動字幕生成機能を採用面接時から利用したおかげで、お互いに採用後の合理的配慮についてもある程度イメージをもって着任を迎えられた。

そんな採用試験から、まるっと一年。
「あのときは、すごい圧のある面接だったよね……」
と笑いながら、能登支援の気持ちを込めて石川産の日本酒をグイッと呑んで、ほろ酔いの帰り道。

涼やかな秋風の心地よさにスキップしながら家路についた。
#くらしきで暮らす 秋。










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