地域おこし協力隊って「移住者」のロールモデルなのかもしれない|2024.立秋・涼風至
涼風至(すずかぜいたる)
暦の上ではもう「秋」を迎えてしまったらしい。
子どもの頃の夏休みの宿題のひとつに、【担任の先生へ暑中見舞いを出すこと】があった。
我が家は毎年夏休みに家族旅行があったのだけれども、それはいつもお盆の後半に出発する。となると立秋を過ぎてしまうので、暑中見舞いは送れない。だから、旅先から残暑見舞いを送るか夏休みのプール開放と宿題に追われるだけの日々にそれっぽい絵を描いた暑中見舞いを送るかいつも悩んでいた。
夏休みの旅行は毎年とても楽しかったから、その旅先できれいだと思ったポストカードを大好きな担任の先生に送りたい気持ちが強かったわたしは、だいたい残暑見舞いになっていた。残暑見舞いを送るんだ!と自分で決めても、お盆前のこの時期は夏休みの宿題一覧にある「暑中見舞いを送る」の欄にチェックできなくてちょっと罪悪感を覚えていたように思う。
まぁ、どの先生も暑中見舞いが残暑見舞いに変わったところで怒ることはないし、むしろいつも「素敵なポストカードをありがとうね」と言ってくれていたのだけれども。
それにしても、旅先や展覧会のポストカードって、なんであんなにも輝いて見えるんだろう。そして、そのポストーカードにお手紙を書くのはなんであんなにも楽しいんだろう。
大人になった今も、毎月一回ポストカードにお手紙をしたためている。一緒に見た景色、一緒に見たい景色、それらと共に「お元気ですか?」「いつもありがとう」文字数は多くなくて毎度同じような内容になってしまうけれども、相手のためにポストカードを選んでそこにメッセージを書く時間が好き。
教員時代は教え子たちに、親元を離れて、関東の友達とも離れた今は関東のみんなに。「これだ!」というポストカードを見つけては送る日々。
地域おこし協力隊って「移住者」のロールモデルなのかもしれない
先日、岡山県地域おこし協力隊の研修会が岡山市で開催されて、その帰りに倉敷市外で活動する協力隊7名ほどが倉敷へ視察に来てくれた。
最初は、いつも仲良くしてもらっている奈義町の協力隊、井原市の協力隊、玉野市の協力隊、津山市の協力隊の4名の予定だったのだけれども。
研修で「倉敷の高石です」と自己紹介したら「あ!あのnote書いている人ですよね?真梨子さんのnote読んで着任を迎えました」という8月1日付採用の協力隊が何名かいて、その人たちも「いつもnoteで見ている倉敷に行ってみたい!」と言ってくれたので気付いたら大所帯になってしまった。
うれしいな。
ふらり半日、倉敷視察
今回の視察はお昼過ぎにスタートしたので、訪問したのはこちら
手打ちうどん おおにしは、言わずもがな美観地区の名店。やさしいお味で定期的に食べたくなるうどん。
つねき茶舗のほうじ茶は、わたしが観光客だったころから大好きなほうじ茶で。他の自治体を視察するときにお土産に持っていったら、今回のメンバーが気に入ってくれて。お店を紹介するはこびになった。わたしが美味しいと思うものを誰かが「また飲みたい」と買いに来てくれるの、嬉しい。
井上家住宅は、美観地区を構成する町屋のうちの一つ。入場料だけで、約1時間かけて倉敷美観地区の歴史と絡ませながら邸内を案内してもらえるので、初心者にはおススメのコース。わたしも井上家住宅で倉敷の歴史や町屋の作りを教えてもらったから、他の町屋も楽しめるようになったと思っている。
それから、倉敷館の2階はわたしが美観地区で一番好きな景色。ここも、関東から倉敷へ観光にくていたころから好きな場所で、人が少ないから落ち着いてガラス越しに美観地区を眺められるスポット。以前、岡山育ちの友人をここに案内したら「こんな場所があるなんて知らなかった!」とびっくりされたので、もしかしたら穴場スポットなのかもしれない。
そして、倉敷珈琲館へ。コーヒーが美味しいのは言わずもがな。レトロな店内や家具の美しさもすごく好きで。倉敷市の採用面接前に訪れてからずっと好きなカフェ。
最後は、LOGIN KURASHIKI内にある立ち飲み屋「カケハシ」。ここは岡山県地域おこし協力隊ネットワークが運営しているお店なので、岡山県の地域おこし協力隊ならばとりあえず訪れたい場所。
地域おこし協力隊って「移住者」のロールモデルなのかもしれない
美観地区の魅力をギュッと集めた倉敷視察。一緒にまわってくれたメンバーみんなが「はじめて訪れたところばかり」と喜んでくれたのもうれしかったこと。
地域おこし協力隊って、三大都市圏から地方への移住を促進する総務省の取り組みのひとつ。だから、どの隊員も「都会」とよばれる場所から地方へ「移住」を真剣に考えた人が多いと思う。
わたしの実家は転勤族だったし、わたし自身も受け入れ団体に興味があったから「そこに仕事ある」という理由だけでふらりと日本中を転々としてしまうけれども。他の協力隊はわりと「三大都市圏から地方に移住してみたかった」と重大決心として移住に踏み切った人も多い。
だからこそ、いろんな移住先を比較しているし、視察という名目でさまざまな移住事例を目にしているし、国や自治体の制度を使って今まさに移住生活をしている人たちで。
移住って地域おこし協力隊が全てではないけれども、じゃあどこか地方に移住しようと思ったときにその土地の地域おこし協力隊が地域にどう受け入れられて行っているのか。その3年間の軌跡がオープンにされているのって地域おこし協力隊だから。
そんな協力隊仲間たちが「まりちゃんのnoteを参考に移住に踏み切ったよ」「まりちゃんの倉敷ツアーおもしろかったよ」と言ってくれるということは、他の地方移住を検討する人たちにも少しは再現性のある情報になっているのかな、なっているといいな。なんてことを、ふと。
地域おこし協力隊として移住する最大のメリットは、移住の仲間がいること
わたしのミッションは「生活者目線での情報発信」と「移住関連イベントへの協力」。
移住のための How to情報の発信や観光スポット紹介とはまた違う、と認識している。
例えば今回みたいに、普段から通っているお店やお気に入りの景色、倉敷での生活をさらに楽しめる知的好奇心をくすぐるスポット。そして、そこでわたし自身がどう心を動かしながら生活をしていっているのか。3年かけて、わたしがどう倉敷の街になじんでいくのか(だんだん合わないところばかりが浮き彫りになっていくのかもしれないけれど)。
そう思うと、倉敷とことこという地元メディアで私が心ときめくスポットやイベントを紹介することはどれも「生活者目線」な情報になっているし、このnoteだって、日々の心の揺れ動きをつぶさに記録した発信になっているのかもしれない。
そういう情報をこのnoteや倉敷とことこをはじめとするメディアへの記名記事たちに重ね続けていくことで、いつか誰かが「地方移住してみようかな」と思ったときの選択肢の一つに「倉敷市」や「地域おこし協力隊」というキーワードも入っていたら万々歳だな、なんてことを考えた倉敷視察の半日間。
地域おこし協力隊になって9カ月。いろんな人から心無い言葉をかけられることもあって、そういうことを重ねるたびに今やってることやここにいる意味みたいなのが分からなくなる日もあるけれども。
同じような条件で、同じようなタイミングにこの地で地域おこし協力隊として活動する移住者たちがわたしの味方でいてくれるということ。路頭に迷ったときに一緒になって怒ったり泣いたり話してくれるということ。本当にありがたいなと思っている。