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技術の進歩との付き合い方:2021年9月26日(ワープロ記念日)

実家にはまだワープロがある。

教員をしていた母が資料を作成するために買ったそうだ。
デスクトップ型のワープロは、ブラウン管の白黒画面に文字が表示され、データの保存はフロッピーだった。30年前以上のものだから、当時はきっと目が飛び出るほどの値段がしたに違いない。

9月26日はワープロ記念日。1978年に世界初の日本語ワードプロセッサ「JW-10」が東芝から発表された日だ。「JW-10」の開発によって培われ日本語の「かな漢字変換」の技術は日本語入力システムの全てにおいて使用されるようになった。
当時の東芝「JW-10」は、重さは220㎏、値段は630万円。今普及しているパソコンとは比較にならないくらい高級品だ。

現在、ワープロはもともとの「ワードプロセッサ」という名前から、パソコンで文書を作成するソフトのことを指して言うことがほとんどだ。ワープロソフトでは、Microsoft Word、一太郎などがよく知られている。

実家にあるようなハードウェアは、ワープロ専用機として区別されており、1978年の発売以降からパソコンが一般化する2000年ごろまでは広く普及した。

発売当初は630万円だったワープロも、2年後の1980年には平均単価200万円となり、5年後の1985年には16.4万円まで価格が下がり、各メーカーがこぞって競争に参加していた。

そして、1985年にはカシオが59,800円でパーソナルワープロと呼ばれる電卓のようなワードプロセッサを発売してから中小企業や個人にも普及したが、同時に既にあったパソコンがその後はワープロを抜く勢いで成長していく。


私の実家にはワープロはあるけれど、パソコンはない
一時期、実家の母はインターネットをやってみたいと考えて回線まで引いていたが、インターネット詐欺被害の新聞記事を見たことがきっかけで、肝心のパソコンを買うことをやめてしまった。

インターネット回線は契約期間が満了しないと高い違約金が発生するものを選んでしまっていたので、パソコンがないのに回線の料金だけ1年ほど払い続けていた。

母がITを仕事にしている娘の私にパソコンのことを相談をしなかったのは、どうやら「まだまだ自分でやれる、やってみよう」と思ってのことだったそうだ。

「高い勉強代だった」と言って笑っている母なのだけど、そんな母も若い頃は真っ先に最新のワープロを買って使うことができていたのだ。


ここ40年余りでIT分野の技術の進歩は目覚ましい。

昨年、自分の担当する顧客がOSをWindows10に入れ替えたばかりなのに、来月10月5日にはWindows11がリリースされる。

そして、「JW-10」の日本語入力システムのように、その基礎を作った先人の方々の開発研究への努力あってこそ、今私たちは効率的に仕事ができて、便利な日常生活を送ることができている。

実家の母は、パソコンの代わりにスマートフォンの操作を覚えた
また、30年前のワープロも町内会の案内文を作るときなどに、今も時々で番があるそうだ。ワープロ本体には、熱転写の印刷機がついているので印刷も簡単にできるので、社会活動に支障はない。

母は、昔ながらのワープロを使いながら、カラー液晶の最新のスマートフォンでLINEや写真撮影などを楽しんでいる。
次に私が日本に帰ったときには、ネットスーパーのアプリの使い方を教えてほしいと頼まれているので、また母用のアプリマニュアルを作っているところだ。(アプリならインターネットのページに直接つながらないことを説明したら、興味を持ったようだった。)


私自身、今ITの仕事をしているけれど、今後はAIに仕事が取って代わられたり、自分自身も新しいことがしんどくなってくることがあったりするかもしれない。

そんな不安もありつつも、母のように技術の進歩とうまく付き合っていきたいと思った。

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