「子供」の表記について
「子供」と「子ども」という表記の違いにより何十年も前から様々な議論が巻き起こっていることをご存知ですか?
「子ども」と書いたらガキどもという意味になる
「はれときどきぶた」の作者矢玉四郎さんは、子供という表記を強く推奨されている方です。ご自身のホームページ「子ども教の信者は目をさましましょう」では、子どもと書いたらガキどもという意味になるとおっしゃっていて、そしてこのように主張されています。
「子供」という言葉の歴史
古代における日本ではそもそも子供という言葉は「子」に複数を表現する接尾語である「ども」が付いたのが始まりと言われているそうです。
後に複数単数関係ない一般名詞となり中世では「子共」、「子等」という漢字が充てられたそうです。
それを経て、江戸時代になって「子供」という漢字が充てられるようになりました。ということは、子供の「供」という漢字は当て字だということになります。
戦後、「子ども」という表記が用いられるようになり、教育界を中心に供という字が「お供」のように従属、隷属を意味する「供」の字がふさわしくない、子供は親の所有物ではないと「子ども」表記が提唱されるようになりました。柔らかい表現と好感され新聞、テレビなどでも多用されるようになったようです。
2013年、文科省が公用文中の子ども表記を子供に統一
国会では、2013年3月木原稔議員が「「供」は当て字でしかなく、否定的な意味はない、他の役所も文科省にならうべきだ」とし、2013年6月下旬から文科省が公用文中の子ども表記を子供に統一しました。
丸山穂高衆議院議員の「「子供」の表記に関する質問主意書」(2021年)
2021年、丸山穂高衆議院議員が「「子供」の表記に関する質問主意書」を菅内閣に提出しました。
質問1.
平成22年11月の訓令における「子供」の使用、及び文部科学省が平成25年度の省内協議において「子供」の表記について差別表現でないと結論付けたことは、現在も有効か。
質問2.
文部科学省は政府の一部であることから、政府全体として「子供」の表記について差別表現でないという認識にあると考えられるか。
質問1.2.に対する政府答弁
「公用文における漢字使用等について」は、現在も効力を有している。「「子供」の表記について差別表現」であるかについて同省において判断したことはなく、政府としてもこれについて判断したことはない。
質問3.
厚生労働省を含めた他省庁や地方公共団体においては、「子ども、こどもの表記」が未だに公用文や組織名称等で用いられ、平成25年度の文部科学省内での周知以前の「子ども、こどもの表記」も残っている。政府内で異なる表記を続けることで、表記による差別が存在するとの誤解を与えかねない。このことから、訓令に反した状態にある公文書については、省庁や地方公共団体を含め「子供」に統一する必要があるのではないか。
質問3.に対する政府答弁
政府の各行政機関が作成する公用文における漢字使用は、訓令に基づき、公用文においては、原則として、「子供」の表記を用いている。ただし、訓令においては、特別な漢字使用等を必要とする場合にはこれによらなくてもよいこととしている。
訓令は、地方公共団体が作成する文書を対象としておらず、各地方公共団体において適切に判断されるべきものであると考える。
質問4.
昭和25年の文部省用字用語例においては、「仮名書きが望ましいが、漢字書き、交ぜ書きも可」としており、文部科学省が「子ども、こどもの表記」を用いてきたことに従い、他省庁や地方公共団体も「子ども、こどもの表記」を使ってきた。この経緯を踏まえれば、「子供」の表記で統一したことは、その運用の前提が変わったことになる。文部科学省は運用の前提が変わり、「子供」の表記を使用している旨の通知を発出しなければならないのではないか。
質問4.に対する政府答弁
現行常用漢字表及び訓令においても「子供」の表記は用いられることが原則であり、「運用の前提が変わった」という指摘については誤りと考える。
質問5.
令和3年4月9日の衆議院内閣委員会において、坂本哲志内閣府特命担当大臣は、「子供」の表記について「世論の動向、こういったものを注視してまいりたい」と発言している。「子供」の表記が差別表現でないことを通知しなければ、「子供」の表記に関する世論の認識も差別表現との誤解が残るのではないか。
質問5.に対する政府答弁
国民の「子供」の表記に関する認識の在り方については政府が積極的に働きかける予定はない。
質問6.
法令上の固有名詞について、報道される「こども庁」の創設提言に関する政府の取組を見る限り、「子ども、こどもの表記」と漢字両方の記載が残ることは混乱を生じる。今後、新法制定及び改正法令において「子供」で統一し、混在を解消してはどうか。
質問6.に対する政府答弁
政府は子供に関する施策を進めるための新たな行政組織の創設について検討しており、与党の議論も踏まえて適切に進めていくこととしている。
子供表記は差別的表現ではない
子供という言葉は「子」に複数を表現する接尾語である「ども」という言葉を付けたのが始まりで、漢字は当て字でしかないということが前提だということを理解する必要があると思いました。供をあえて平仮名にすることは不要な差別に対する誤解を生じるおそれがあり、特に公文書では複数の表記を統一する必要性があることがわかりました。「子供派」、「子ども派」のそれぞれの表記には、日本語に対する思いや、日本人の思想が表れているということもわかりました。