リード体験で自分の課題に直面し、克服するまでの学習プロセス
わたしは2021年4月にrootにジョインし、現在デザイナーとして働いています。異業種からの転職ということもあり、これまでプロジェクトのリード経験がありませんでした。
しかし、現在はプロジェクトでリードを担当しています。その背景には、rootで行っているサービス考察での、リード擬似体験の積み重ねが大きく影響しています。
rootでは、若手育成の取り組みの1つとして、月に1回サービス考察を行っています。サービス考察では、事業成長しているサービスの成長要因などを紐解いていくワークをしています。目的は主に2つあります。
わたしは4月に入社してから、これまで4回、リードとしてサービス考察に取り組みました。その中で、取り組みを重ねて気づいた自分の課題や、克服するために行ってきたことをお伝えします。
プロジェクトのリード経験の積み方に悩んでいるデザイナーさんや、若手育成の取り組みに悩んでいる方に読んでいただけると嬉しいです。
サービス考察の進め方
社内メンバーを3〜4名のチームに分けて行います。チームは、リード、アシスタント、アドバイザーの役割で構成されます。
リードは全体のファシリテーションを、アドバイザーリードが不足している観点のアドバイスを、アシスタントはリードのサポートをする、といったそれぞれの役割があります。
サービスを選定してから考察を行うまで、チームごとに、リードを起点に進めていきます。サービス考察の進行は、リードに一任されます。私のチームでは、次のように進めていきました。
見えていなかった「自分の課題」が明確になる
リードとして進行し、議論を発散・収束に導く役割を体験をしたことで、把握できていなかった「自分の課題」が明確になりました。チームメンバーからの指摘もあり、浮き彫りになった自分の弱点が2つあります。
弱点1:議論の現在地を把握できない
考察の議論が発散に向かっているのか、収束に向かっているのか、収束までどれくらい距離があるのかがわかりませんでした。議論の現在地を把握できないため、時間を大幅にオーバーしてしまいます。決めたタイムスケジュールに対してどれくらいズレがあるのかを認識できないからです。
そのため、収束に持っていくタイミングが大幅に遅れ、時間内にチームの意見をまとめられないまま終わっていました。
弱点2:議論を展開できない
リードは、メンバーの発言から観点を広げ、全体の意見を要所で整理する力が求められます。
しかし、私はメンバーが持ってきてくれた観点や意見から、議論を発展させることができませんでした。考察の中で、メンバーはそれぞれ個人が持っている観点を共有してくれます。その共有に対して、感想を言うことで精一杯でした。また、どうしても考察する側に回ってしまい、そもそもリードの役割が抜け落ちていました。
他にも、「焦ると言葉に詰まる」「メンバーの発言量のばらつきに気づけない」など、見えていなかったたくさんの課題が浮き彫りになりました。
課題を克服するためにやった3つのこと
課題が多く絶望しましたが、克服すべきことがわかったので、具体的な改善方法を考えていきました。私の場合は、一気に克服しようとしたら全てが中途半端になってしまうと思い、1つの課題を確実に克服することにしました。
今何を議論されているか「現在地」を把握することで、議論の展開が可能になります。そのため、まずは議論を俯瞰できるようにし、次に議論を展開できるようにする、という順番で解決していくことにしました。
1. 事前のすり合わせで全体の流れを掴む
考察の前に、メンバーとすり合わせを行うようにしました。すり合わせは2段階に分けて行いました。
まずは、アドバイザーとのすり合わせです。「リードとして今回何を挑戦するのか?」を決め、アドバイザーと共有し、達成するためにすべきことを一緒に考えてもらいました。
次に、チームメンバー全員とのすり合わせです。ここでは、メンバー全員で考察の論点とゴールの認識を合わせます。考察の論点とゴールを定め、必要な情報の認識を揃えるようにしました。
2. 毎回KPTを書き出し、分解する
考察の1サイクルを終えたら、Keep(続けたいこと)、Problem(問題があるところ)、Try(次回挑戦すること)を書き出し、分析するようにしました。
特に注力したのは、「Problem」を改善するために何を「Try」するか?という点です。1つずつ、問題の中身を細かく分解しました。どの部分に問題があると感じたのか、それによってどんな弊害が発生したのか、考えられる原因は何か。どんどん書き出していきました。そして、次回挑戦することを1つ決め、必ず実行するようにしました。
3. サービス考察後にチームで振り返る
サービス考察を終えた後、チームメンバー全員で振り返るようにしました。振り返りでは、メンバーがそれぞれよかったこと・よくなかったことを書き出していきます。書き出した内容をカテゴリー分けし、よかったことを続けていくために、また、よくなかったことを改善していくためには何ができるか?を話しながら、具体的な策を一緒に考えていきました。
チーム全体として考察自体を振り返るだけでなく、リードとしての進め方についてもフィードバックをもらいました。
回を重ねるごとに実感した変化
課題を認識し、改善策を考え実行することで、自分の中に変化を感じるようになりました。
議論全体を俯瞰できる
議論を一歩引いた視点で見れるようになりました。これは、アドバイザーとの流れ確認や、メンバー全員との事前のすり合わせを行うことで、全体の流れをイメージできたのが大きな要因だと感じています。
想定からのズレを照らし合わせながら、現在地を認識することができました。発散具合はどうか、収束に近いのか遠いのかという視点を持ち俯瞰することで、時間が詰まっていても冷静に対応を考えられるようになりました。
議論を進めながら思考を回せる
これまではチームメンバーの発言を聞き、感想を言うことで精一杯でした。
しかし、俯瞰できるようになり冷静になれたことで気持ちにゆとりができ、自分自身も考察に参加しながら、会話の中で議論が広げられそうな部分を探せるようになりました。
それからは、チームメンバーの発言を受けて、「なぜ、この発言をするのだろうか?」「どうして、その考えに行き着いたのか?」を考えるようにしました。それを踏まえて、再度チームメンバーに質問したり、違う視点から話すことを意識することで、より議論を進めれるようになりました。
得た知識を業務に活かせる
実際に成長中のサービスをじっくり見ていくため、サービスの成長要因や特徴、ビジネスモデル、セグメントなどの知見が自分の中に貯まっていきます。デザインの判断材料やサービスに関する引き出しが増えたことで、意思決定が以前よりスムーズになりました。
また、クライアントとすり合わせを行うときにも提案の根拠になるなど、リードの擬似体験が実際のお仕事で活きているのを実感しています。
特訓と実践を往復することで、自分に定着する
リードを擬似体験することで経験を積むことができ、リードとしての振る舞いなどを磨いた上で実際のプロジェクトにも活かせます。業務を行いながら取り組むため、OJT的に学ぶことができます。そのため、把握できた自分の課題とその対策をすぐに業務に活かし、スピーディに自分に定着させることが可能です。
課題を克服して強みに変えられるのは、社内の育成体制や周りのサポートの強さが基盤としてあるからだと感じています。業務を行いながら取り組みに参加し、改善策を一緒に考えていただくことで、課題を克服することができました。
主観だけでは、個人の変化にはなかなかつながりません。客観的なアドバイスをもらうことで、1人では見えなかった改善策を見つけることができます。
ぜひ、プロジェクトのリード経験がない方や、若手育成の取り組みに悩んでいる方は、サービス考察のリード擬似体験を取り入れてみてください。チームで取り組むことで、たくさんの気づきを得られるのではないでしょうか。